視聴ユーザーは音のトラブルに敏感です。ソーシャルストリームで指摘があったら、すぐに確認しましょう。
まず、マイクの位置や接続、レベル設定を確認します。複数のマイクを使用したライブ中継で特定の人の声だけに問題があるような場合は、これらに原因がある可能性が高いです。音量が小さい、または音が割れて聞きづらいという場合には、中継用ソフトの音量設定を確認し、適切な音量に設定しましょう。
音が途切れる場合、ほとんどの原因は上り回線(中継用パソコンからインターネットに動画をアップロードするための回線)の帯域不足です。イベント会場でイー・モバイルなどの回線を利用している場合、イベントの参加者が増えて皆が同じキャリアの回線を使うことで、いちじるしく帯域が狭くなってしまうこともあります。来場者には利用を自粛してもらうなどして、帯域を空けるようにしてみましょう。
帯域を空ける努力をしても音声が途切れるようであれば、画質を下げてデータ量を減らします。このとき、音質を下げてはいけません。聞き取りにくくなるだけでなく、音質を下げてもデータ量はさほど減らないからです。
Ustream Broadcasterの場合は[アドバンス設定]の[フレームレート補正]でフレームレートを下げます。講演会など動きが少ないライブ中継の場合は、15程度にしてもまったく問題はありません。それでも途切れる場合は[画質]のスライダーを下げます。70ぐらいまでは許容範囲です。
Ustream Producerの場合は、ライブ中継中にクオリティを変更することができません。いったんライブ中継を中断し、設定を変更しましょう。その際には、スピードテストサービス(http://netspeed.studio-radish.com/など)を利用して上り回線の速度を調べ、その70%程度の画質にすれば(上り回線が500kbps前後であれば、350kbpsの[Standard SD]以下。詳しくはレッスン20を参照してください)、問題が起こることは少なくなります。
映像に関するトラブルの多くは、パソコンが映像入力を正しく認識できていないことに起因します。外部Webカメラをノートパソコンで利用している場合には、接続するUSBポートを変更すると解決することがあります。その他にオーディオインターフェースなどをUSB接続していると、ポートの電力不足が原因で正常動作しなくなってしまう場合があります。
Ustream BroadcasterもUstream Producerも、まだ未成熟で不安定な部分があります。パソコンの環境によっても動作状況が変わるので、ソフトの動作がおかしいときに原因を見極めるのは、なかなか困難です。ここでは一般的に有効な、中継用ソフトを安定動作させるための方法を紹介します。
まず重要なのは、余計なソフトを起動しておかないことです。動画配信には膨大なCPUパワーが必要になるため、中継用ソフト以外はすべて終了しましょう。
次に冷却です。ノートパソコンでは、下に設置して冷却を助けるクーラーパッドを利用してもいいでしょう。
インターネット接続回線のトラブルには、3つの原因が考えられます。1つ目はイベント会場のルーターがダウンしてしまう場合。会場のネットワーク担当者がいるはずなので、すぐに再起動をしてもらえるよう、連絡体制を整えておくことが大切です。
2つ目はケーブルが抜けた場合。イベント会場で用意されている有線LANケーブルは「カチッ」と固定するためのツメが折れてしまっていることも多く、注意が必要です。
3つ目は、回線速度が急激に落ちて接続できなくなってしまう場合です。これは先述の音声が途切れる場合と同様に、回線の帯域不足がさらに深刻になった結果起こります。
重要なライブ中継には、イー・モバイルやWiMAXなどのモバイル回線をバックアップ用に用意しておきましょう。カメラからの映像やマイクの音声を2つに分岐できるようなら、最初から有線LAN経由のメイン番組とモバイル回線経由のサブ番組の2つを中継しておきましょう(パソコンが2台必要になります)。メイン番組が止まってしまいそうなときにソーシャルストリームで「回線トラブルのため別のURLに変更します」とサブ番組のURLを告知することができます。
ヒマナイヌでは数々の経験から、安定したインターネット回線が提供されるわけではない場所でのライブ中継には、Ustream ProducerよりもUstream Broadcasterをおすすめしています。Ustream Producerではいちどライブ中継を開始したら動画のクオリティを変更できないため、回線に関するトラブルが発生したとき、柔軟に対処できないからです。
ソーシャルストリームでURLを含むツイートをすると、自動的にリンクが張られます。しかしURLにハイフン(-)などの記号が含まれると、正常なリンクが張られません。これはUstreamの問題ですが、暫定的な対策としては、bit.ly(http://bit.ly/)などの短縮URL作成サービスで短縮したURL を入力するようにします。
中継ユーザーは映像と音を駆使できますが、視聴ユーザーはキーボードを打つことでしかメッセージを伝えられません。言葉足らずで意味がよくわからないツイートもあるかもしれません。しかし、それでもきちんとしたコミュニケーションを取ろうという努力をしなくては、よいソーシャルストリームは生まれません。
ソーシャルストリームにツイートしてくれる視聴ユーザーは、さまざまな番組からあなたの番組を選んで視聴し、ツイートしてくれる、本当に大切な存在です。いつも自分が他のユーザーの番組を視聴しているときの気持ちを、注意深く観察して覚えておきましょう。
あなたの番組のソーシャルストリームに参加してくれる視聴ユーザーは、それだけ番組にシンパシーを感じてくれているはずです。しかし、そのツイートへの対応がよくないと、反対に怒らせてしまうこともあります。視聴ユーザーの気持ちをマイナスにし、怒らせてしまう要因として、主に次の3つが挙げられます。
寄せられるツイートのすべてに返信する必要はありませんが、完全にソーシャルストリームを無視しているようでは、「なぜUstreamをやっているの?」という根本的な批判を受けてしまう可能性もあります。ツイートから話題を広げるなどの工夫をしていきましょう。
人を見下したような「上から目線」の態度は嫌われます。初心者からの質問に「そんなこともわからないの?」というような態度を取るなどが典型的です。相手がどのような人か確認できないこともありますが、常に敬意を持って接することが大切です。
人間は、知っている人と知らない人を分けて考えます。知っている人とは、ストレスなくコミュニケーションができるものです。だからといって、知っている人のコメントばかりに反応していると、新しい視聴ユーザーは仲間はずれにされている気分になります。
ブログのコメント欄にネガティブな発言があふれたり、ケンカが起こってしまう状態は、「炎上」として話題になりました。対してTwitterでは、各ユーザーの発言は流れていき、特定の「場」が作られることがないため、炎上はあまり目立ちません。
しかしUstreamでは、番組のソーシャルストリームが「場」となり、ケンカなどが起こってしまうおそれもあります。そのような場合は、すみやかに仲裁に入りましょう。
ライブ中継中のなにげない言葉が、ひとり歩きしてしまうことがあります。ちょっとしたジョークのつもりで友人のことを悪くいって「本当は仲良しなんだけどね!」と後でフォローしたつもりでいても、悪くいった部分だけが注目され、いつのまにか「あの2人は仲が悪い」ということになってしまう可能性もあります。誤解を招きやすい表現や、特定のなにかを非難するような物言いは避けましょう。刺激的な言葉ほど、ひとり歩きして広まりやすいものです。
Ustreamの認知が世間的に進むにつれ、「荒らし」や「スパム」がソーシャルストリームに混ざってくることも増えると考えられます。
現在のUstreamには、こうしたツイートを防ぐ機能がありません。Twitterの問題があるユーザーのページで[スパム報告する]をクリックし、Twitter側に告発することが唯一の対策となりますが、残念ながら即効性はありません。
ソーシャルストリームではなくコメント欄での問題がある発言については、コメントの削除や、許可設定を[あなたの承認を必要とする]に変更することで対策できます。自分の(Ustreamでの)フォロワーであれば、[ブロック]してしまうことも可能です。
ソーシャルストリームに寄せられるネガティブなツイートでもっとも多いのが「音が小さい」「映像が止まる」などの技術的な問題の指摘です。こうした指摘については、可能な限りすみやかに対応しましょう。あえてツイートしない視聴ユーザーの多くも、同じ不満を持っていると考えられます。対応が遅れてしまうとタイムラインの雰囲気が悪くなり、番組の内容そのものはよくても、それらに関するツイートが目立たなくなってしまいます。
Ustreamで「顔出し」をすると、電車に乗っているときに知らない人から「Ustream見てますよ」などと声をかけられる可能性も出てきます。このように有名になることはよいことばかりではなく、思わぬトラブルに巻き込まれる可能性も否定できません。顔だけでなくライブ中継をしている場所も特定できるような状態であれば、なおのことリスクは高まります。顔を出すか出さないか、顔を出してどのような話をするのかは、よく吟味しましょう。
Ustreamは、iPhone1台さえあれば、すぐにライブ中継ができます。ボタンひとつであらゆる映像も音も全世界に配信できてしまうということは、実に画期的なことです。
しかし、なんでも勝手にライブ中継してしまっていいわけではありません。「撮影禁止」とされている店内や美術館では、Ustreamでのライブ中継ももちろん禁止です。その他の場面でも、ライブ中継してはいけないもの、あらかじめ許可が必要なものがあります。次に、代表的な例を紹介します。
肖像権とは、簡単にいえば「自分の姿を他者に使用されない権利」です。もっと大きな枠で捉えたプライバシー権という「自分の私的な情報や活動について、他者に知られない権利」もあります。
「肖像権」「プライバシー権」は、法律で明確に定義されている言葉ではありません。しかし、メディアの過剰な報道や、一般ユーザーが携帯電話などで写真を撮影し、公開するようになったことなどに対抗するような形で、耳にする機会が多くなっています。
記憶に新しいところでは、Googleが「ストリートビュー」のために無断で撮影を行い、道路に面した家の様子や、自動車のナンバーなどが映っていることが問題となりました。抗議を受けたGoogleは、家の様子を映さないようにカメラの位置を下げる、車のナンバーなどにぼかし処理を徹底的に行う、といった対策をしています。
例えば「街の人混み」をライブ中継するのならば、カメラを地面に向けて足下だけを映す、遠くからひとりひとりの顔がわからないように映す、といった配慮が必要です。もちろん、あらかじめ相手の許可を得ていれば、顔を映すことなども問題はありません。イベント会場などでは、ライブ中継を行うことを事前に周知し、参加者の許可を得ておきましょう。
絵、写真、文章、建造物、さらには音楽や朗読など、人が創作したものを総称して「著作物」と呼びます。もちろん動画もそのひとつです。これらの著作物には、創作した人の「著作権」があり、著作権を持つ人(著作権者)に無断でライブ中継してしまうことは、著作権の侵害として、罪に問われる可能性があります。
著作権の問題は非常に複雑で難しいですが、基本的には、マンガのページを撮影して配信する、テレビ番組をそのまま配信する、市販のCDを番組のBGMとして流す、といったように、他の人の著作物を主要なコンテンツとして使うことはダメ、と考えてください。他者の著作物であっても、街の様子を撮影した中に映り込んだポスターや、近くで流れたためマイクが拾ってしまった音楽などについては、著作権侵害を問われることは、まず考えられません。
著作権侵害は「親告罪」といい、著作権者が訴えることで、はじめて罪に問われるという特性を持っています。つまり、著作権者の許可を得ていれば問題にはなりません。
テレビ番組の映像や映画など商用の著作物も、理論的には許可を得れば利用してよいことになります。しかし、そのための手続きは難しく(どのように扱われるかを事前に確認できないため)、一般的には、許可を得ることは困難だと予想されます。
Ustreamの利用規約では、番組の内容に関して、これまでに解説した肖像権や著作権に関する内容のほか、ヌード、中傷、低俗、暴力的、などの禁止も定めています(「6. 当社ユーザーの義務」の6)。これは、投稿型のWebサービスとしてごく一般的な禁止事項です。Ustream Live Broadcasterからのアカウント登録時に表示されるものとは内容が異なるので、改めて確認しておきましょう。
Ustreamの話ではありませんが「飲み会の記念写真だと思って撮ってもらった写真が、友達のブログに載っていた。ブログで公開されるなんて思っていなかったので困る!」といったトラブルを、時おり耳にします。インターネットにいちど公開された情報を、完全に削除することは困難です。おおもとはお互いのちょっとした認識のズレが、取り返しのつかないことになってしまうこともあります。こうした場面で重要なのは、心情的な「納得できるかどうか」ということです。インターネット上に自分以外の情報を公開するならば、あらかじめ説明して許可を得てから行いましょう。
タレントなど、その人の肖像が経済的価値を持つと考えられるケースでは「パブリシティ権」も問題になります。著名人の映像などを勝手に配信することは、価値がある肖像を勝手に利用したとして、損害賠償を請求されるなどの可能性があります。
2010年7月6日に、USTREAM AsiaはJASRAC、イー・ライセンス、JRC(ジャパン・ライツ・クリアランス)の3つの著作権管理事業者と包括的利用許諾契約を締結しました。これにより、Ustreamの番組で3事業者が管理する楽曲を演奏したり、歌唱したりした動画を配信することが可能になります。ただし、CDなどのアーティストが演奏した音源は、アーティストの著作権があるため、そのまま利用できるわけではないことに注意してください。
Ustreamは、ライブ中継と同時に録画ができます。録画を公開することで、ライブ中継を視聴できなかったユーザーにも視聴してもらうことができます。
録画はしておいて、自分専用の記録として非公開にすることもできます。基本的に録画があって困ることはありませんから、ライブ中継開始時には録画をしておくといいでしょう(録画後に破棄することもできます)。
ライブ中継では編集されていないことが魅力となりますが、録画になると、単調な動画だと感じられるようになっています。見所をピックアップしたハイライトを作成するなどの工夫をするとよいでしょう。
イベントや発表会などについて、紹介してもらいやすい「まとめページ」を用意しておきましょう。まとめページがあると、参加者や視聴していたユーザーが、Twitterやブログで「こんなイベントに参加した/Ustreamで見た」と紹介しやすくなります。
ブログがあれば、ブログの記事を1本作成し、録画とソーシャルストリームのまとめを埋め込んでおきます。Ustream自体はソーシャルストリームをまとめる機能を持っていませんが、Twitterのログまとめサービス「Togetter(トゥギャッターhttp://togetter.com/)」を利用するといいでしょう(ちなみに、Togetterでのログまとめは、Internet Explorerからは利用できません。Firefox(http://mozilla.jp/firefox/)などのブラウザーを利用してください)。
Twitterのログをまとめる作業は、ソーシャルストリームに寄せられた声を読み返すことにもなり、イベントやライブ中継の反省点を見つけることもできて一石二鳥です。
ライブ中継をしていないときの配信ページにユーザーがアクセスする可能性もあります。そうしたユーザーががっかりしないように、配信ページを整備しましょう。
ライブ中継をしていないとき、映像にはスライドショーと「関連動画」の一覧が表示されています。関連動画の一覧には、これまでの録画の題名とサムネイルが表示されます。録画を保存するときのタイトルは、ここでクリックしたくなるようなものを考えましょう。
録画を保存するときの入力する説明文は、録画の再生中に表示されます。録画の冒頭から視聴するユーザーのために、内容の説明や見所の紹介を100文字程度で簡潔に書いておきましょう。また、見所はあらかじめハイライトを作成しておくことも有効です(ハイライトの作成方法はレッスン15を参照してください)。
スライドショーは、Ustreamのサイトにログインし[番組設定]-[Off-air設定]から設定を変更することで、過去の録画に変更することも可能です。こうするとライブ中継をしていないときも常に動画が表示された状態になります。
また[スライドショー]をクリックすると、写真をアップロードしてスライドショーに追加できます。自分の活動や、これまでの番組の好きな場面をキャプチャーした画像をアップロードしておくことで、短時間で番組のムードを伝えることができます。
こうした方法をうまく活用して、ライブ中継をしていないときでもアクセスしてくれたユーザーに番組の情報を提供し、録画を楽しんでもらえるようにしましょう。
ライブ中継をしているときは機材の操作や番組の進行などで手いっぱいになるため、うっかり録画を忘れてしまうこともあります。これを防ぐためには「録画ボタン押したか?」と書いた付箋紙をパソコンのモニターに貼っておいたり、指さし確認を習慣化するといった、原始的な手法が効果的です。複数人で作業をするときは、互いに声をかけあって確認することも大切です。
ライブ中継中に録画を一定時間ごとに区切って保存することで、後で録画をYouTubeにアップロードできるようになります(2010年7月末現在では10分以内ですが、今後延長される可能性があります)。埋め込んだ動画の動作の安定度はYouTubeのほうが上で、また利用できる埋め込み用タグの種類や機能も豊富です。
ソーシャルストリームを利用すると、チャット機能は基本的に必要なくなります。いたずらに使われても困るので非表示にしましょう。[番組設定]-[詳細設定]で、[チャットを表示する]の[いいえ]をクリックし[変更を保存する]をクリックします。
ライブ中継は文字どおりの「生放送」ですから、さまざまなハプニングや、予期せぬできごとが起こります。周囲に迷惑をかけたり、視聴ユーザーを不愉快にさせてしまうようなトラブルは困りますが、みんなが楽しめるようなものであればOKです。いいかたを変えれば、なにか不測の事態が起きても、それをハプニングとして楽しんでしまうことができればOKといえます。
Ustreamのライブ中継で起こりがちなハプニングの例を、次に紹介します。イベントや発表会といったある程度公共性の高い内容ではなく、個人的なライブ中継では、実にさまざまなことが起こるでしょう。そのような場合にはあわてずに、ソーシャルストリームの向こうにいるユーザーと一緒にハプニングを楽しみましょう。
Ustreamの番組を視聴していると、出演者が途中で電話に出てしまう、という場面を目にすることがあります。
テレビなどでは考えられないことですが、Ustreamではこれも「あり」です。ソーシャルストリームにはすかさず「ちょ、ケータイ出てるし!」といった突っ込みのツイートが書き込まれます。突っ込みのツイートが多ければ多いほど、多くのタイムラインにライブ中継のURLが露出していくことになりますから、これはむしろ大歓迎。そして電話に出ているという行為が「まさに今現在起きていることなんだ」ということを実感させてくれます。編集された動画では見られることがない、ライブ感が出てくるのです。
場所が明示されている会場からライブ中継をしていると、近くにいる人が番組のことを知ってやってくることがあります。ライブ中継を見ながらふらっと参加できてしまう、いわば映像の中に物理的にアクセスできるのは、Ustreamならではのおもしろさだといえるでしょう。
この合流可能性を使った番組は、これから増えていくと思います。地域の祭りなど、実際に参加してほしいイベントには、Ustreamはぴったりです。
テレビでは、いくら生放送の番組でも、途中で出演者がトイレに行ったりなど、画面からいなくなるということはありません。
しかしUstreamでは、これが許されます。趣味で行っているライブ中継なのでスポンサーがいるわけでもなく、出演、中継するユーザーの自由にできるからです。
「ちょっと飲み物取ってくる」とか「トイレに行ってくる」といって画面に誰もいなくなったという状況が、Ustreamではしばしば見られます。そして、このような状況でも、ソーシャルストリームは意外と盛り上がるのです。
なぜ盛り上がるかというと、画面から人が消えるとソーシャルストリームにいる視聴ユーザーどうしが会話をしやすくなるからです「あ、放置プレイだ!」「ゆっくりいっておいでー、みんなで待ってるから」「そうそう、待ってるよー」など、温かいムードに包まれることもあります。個人的なライブ中継は、ライブ中継を始めたらずっとカメラの前にいないといけないとか、話を途切れさせてはいけないといった思い込みを捨てて、もっとリラックスしてやってみましょう。
ハプニングが視聴ユーザーに楽しんでもらえるのは、当然ながら個人的なライブ中継に限られます。発表会や勉強会などでは、ハプニングが起きないよう十分な準備を行いましょう。また、どのような場合でも、音声や映像の技術的なトラブルは問題になります。こうした問題の対処方法は、レッスン35を参照してください。
テクノポップグループ「YMO(イエロー・マジック・オーケストラ)」のコピーバンドをしているユーザーが坂本龍一氏についてのライブ中継をしていたら、YMOのメンバーでもある坂本龍一氏がソーシャルストリームに現れて(好意的な)ツイートをしたことがありました。これは、Ustreamというメディアのおもしろさの象徴的なエピソードとして、多くのユーザーに語られています。
Ustream Broadcasterでは[投票]機能によって、アンケートや投票を行うことができます。質問に対して4 つまでの選択肢を設定でき、リアルタイムに投票結果を確認できます。一般的なアンケートの他、次に取る行動を投票で決める、クイズを出題するなど、さまざまな応用が可能です。投票の設定は簡単です。番組中に気軽に使ってみましょう。
いくつものUstreamの番組を視聴していると、短時間で視聴をやめたくなる番組と、最後までずっと視聴してしまう番組があることに気づきます。自分の番組も最後まで視聴してもらいたいものですが、最後まで視聴してしまう番組には、どのような共通点が考えられるでしょうか?
有名人が出演しているような番組を除けば、最後まで視聴する番組は、出演者のパーソナリティ(人柄)に惹かれていることが多いです。特に、プライベートな雰囲気の番組では、そうした傾向が顕著です。番組はその人が作り出す空間であり、バーやラウンジ、カフェのような場所だと捉えられます。
心地よい空気が流れていると、人はその空間に長くいたいと感じます。Ustreamは映像メディアだと思われがちですが、実は空間メディアなのです。
Ustreamの番組では、いかに出演者のパーソナリティをUstreamというメディアに合わせて表現するかがポイントとなります。
テレビ番組とラジオ番組での、語り口の違いを考えてみましょう。テレビ番組は、多くの人々に向けて解説したり説明したりするような語り口のものが主流です。テレビの画面の中には大きな空間があり、その中に司会役や解説役の出演者がいて、シナリオ(台本)に沿って番組が進行します。こうしたスタイルでは、ソーシャルストリームとの一体感を作りにくいという難点があります。たくさんのユーザーを巻き込むことをめざすには、あまり向かないスタイルだといえるでしょう。
一方でラジオ番組は、小さなスタジオに出演者がいて、リスナーのひとりひとりに向かって話しかけるような語り口です。車の中やヘッドホンなど個人的な空間でラジオ番組を聴いていると、不思議なことに自分に直接話しかけてくれているように感じられます。
そのときに、自分の投稿したハガキが読まれて名前が呼ばれたり、質問への回答をされたりしたら、親近感は一気に高まります。Ustreamではソーシャルストリームのツイートとコミュニケーションをすることが、これに当たります。このときの語り口は、特に重要だといえます。
Ustreamはラジオに近い感覚のメディアですが、ラジオとは異なる点もあります。新しいメディアなので「この語り口が正解」といえるものはありませんが、研究しながら、自分のパーソナリティをうまく表現できる語り口を見つけてください。
次に、Ustreamでの3つの語り口のスタイルを紹介します。ソーシャルストリームに寄せられるツイートをどのように取り上げ、コミュニケーションしていくかに、違いが現れます。
ラジオ番組では、投稿者の住所やラジオネームを読んでから、投稿内容を紹介するのが一般的です。Ustreamでもソーシャルストリームからユーザー名を読み上げてツイートを紹介するのがいいのですが、ラジオネームと違ってTwitterのユーザー名は、読めないことも多いのが問題です。
ここで読みかたを考えていると番組の進行が止まってしまうので、ユーザー名を読み上げるより「犬のアイコンのかたからです」などソーシャルストリームの全員が見ているアイコンの外観を端的に表現するのもよいでしょう。
ラジオ番組への投稿ハガキは選ばれたものだけが読まれますが、ソーシャルストリームは、選ばれる前に視聴ユーザー全員が読んでいます。それを前提として、ユーザー名は省略し、ツイートだけを読み上げていくスタイルもあります。
ここで気を付けるのは、話が散漫にならないようにすることです。全体の文脈としては一定の方向にきちんと向かうことを意識しながら、友達との会話のように話していくとよいでしょう。
Ustreamによるライブ中継やソーシャルストリームのツイートはリアルタイムだといわれますが、実際には多少のタイムラグがあります。そのタイムラグが積み重なると、話の前後関係が崩れて文脈がわからなくなってしまうことがあります。そうしたときに、すべてのツイートから大勢のユーザーがいいたいことを読み取り、それに対して回答するのが、このスタイルです。
ソーシャルストリームの流れを鳥瞰的に把握する必要があるのではじめは難しいですが、慣れてくると、だんだんできるようになってきます。このスキルを身に付けると大量のツイートにも対応できるようになります。
語り口を研究するには、他のユーザーの番組をたくさん視聴することが有用です。話を聞き、ソーシャルストリームを見ながら「ここで自分だったらどう対応するかな?」とシミュレーションをしてみると、よいトレーニングになります。
他のユーザーのライブ中継を視聴しているときに、ソーシャルストリームにたくさんのコメントが寄せられているにも関わらず、出演者がそれを意識していないと、冷たくされたような印象を受ける場合があります。きめ細かい対応をすることが難しい場合でも、出演者の手元にパソコンやiPadを置くなどしてソーシャルストリームを表示しておき、「見ているよ」ということを伝えるだけで、視聴しているユーザーは安心してツイートしてくれます。
Ustreamのサイトがさまざまな方式で番組の紹介をしていたり、Ustreamの番組紹介サイトも登場したりと、あちこちで新しい番組を知る機会が増えてきています。しかし、ライブ中継の視聴に結び付く導線の主流は、なんといってもTwitterのタイムラインです。
Twitterのタイムラインを見ていたら興味深いツイートが流れてきて、そこにあるURLをクリックしたら動画が始まった。そこで自分もソーシャルストリームにツイートした。それをまた誰かが見て……といったユーザーの行動が次々と連鎖して、Twitter経由の視聴ユーザーが増えていきます。
この方法で大きな結果を出すには、多くの人がソーシャルストリームにツイートしてくれることが重要です。それによって、より広い範囲にライブ中継の存在が伝達されていきます。
ここで考えたいのは、ツイートしてもらう内容です。ライブ中継中の内容についてツイートされ、それによって視聴してくれるユーザーが増える、というのが基本的な流れですが、内容そのものとは関係のない「この子かわいいな」とか「この場所おしゃれだね!」といった、本能的な欲求をダイレクトに刺激するツイートをされると、おどろくほど多くの視聴ユーザーが集まることがあります。ときには、こうした効果を狙った演出をしてみてもいいでしょう。
Ustreamの「イベント」機能でライブ中継の予告ができますが、よほど高い関心を持ってくれるユーザー(すでにファンになっている場合や、予告内容に強い興味がある場合など)以外には、それほど効果的ではありません。
ライブ中継の本番開始前から視聴ユーザーを集めたい場合は、本番前から中継を開始して準備中の会場の様子を映しておき、「○時からここでライブ中継をします!」と告知をするというワザが有効です。
Ustreamのライブ中継は1、2時間やそれ以上の長丁場になる場合が多いこともあり、最初から最後まで視聴してくれるというユーザーはほとんどいません。そうした中で、視聴ユーザーの主な行動パターンは次の3種類に分類できます。
もっとも多いのが、チラッと眺めただけで、特に興味がそそられないために離脱、というパターンです。
配信ページを開いた瞬間の場面がおもしろければ、こうしたユーザーもしばらくは視聴を続けてくれます。また、魅力的な人物がいたり、かわいらしい動物が映っていたりすることで、離脱率を下げることもできるでしょう。
内容で勝負、という場合には、コメントで「どのような番組か」を伝える、登場人物や話の流れについて画面内のタイトルやソーシャルストリームなどで補足を入れるなどして、短時間で「この番組を見続けよう」と判断してもらえるようにしましょう。
チラッと眺めたときに興味を持ったものの、なんらかの理由で視聴をやめ、その後に戻って視聴を再開する、というパターンです。
席をはずしていた視聴ユーザーが戻ってくる場合もあれば、途中で離脱してしまった視聴ユーザーが、他のツイートによってふたたび興味を持ち、視聴してくれるという場合もあります。
一度離脱してしまった視聴ユーザーも、こうしたパターンで呼び戻すことは可能です。ライブ中継中に番組の方向性を見直しながら、ツイートしてもらえるようにしていきましょう。
配信ページを開いてみたら、おもしろかったので最後まで視聴してしまった、という理想的なパターンです。
番組内容や出演者のパーソナリティに興味を持ってもらい、好奇心に火を点けることができたら、ソーシャルストリームで積極的にツイートして新しい視聴ユーザーを呼び込んでくれる、ありがたいユーザーになってくれる可能性があります。こうした視聴ユーザーを、自分のファンにしていくことがとても大切です。
Twitterでは、常に多くのユーザーがUstreamのライブ中継を視聴したり、ライブ中継をしたりしています。キーワード「ustre.am」で検索してみると、そうしたツイートをたくさん発見できます。
「LiveJam番組表」は、現在ライブ中継中の番組や、これからのライブ中継の予定をまとめたサイトです。豊富な情報がすっきりとまとめられており、番組を探しやすくなっています。
これまでに繰り返し述べているとおり、Ustreamは単なる無料動画配信システムではありません。ライブ中継がソーシャルストリームと合流し、ハプニングやコミュニケーションが生まれ、ときにはライブ中継の内容も変化していくことが、テレビや他の動画共有サービスにはない、Ustreamならではの特徴です。
では具体的には、どのような番組が「Ustreamらしい」といえるのでしょうか? いくつかの例を紹介します。
Ustreamでは、対談番組が安定した人気を誇っています。その理由は、議論が白熱してきてもCMによる中断がないこと、話の腰を折るようなタレントも出てこないことなどです。
テレビでは厳密な放送時間があり、なおかつCMの入る時間が決められているので、事前に緻密な構成台本が作られます。Ustreamの番組では話の流れによって番組の構成が変化していくことも多く、それが余計な演出のない、リアルな対談につながっています。
議論そのものが白熱してくると、視聴している側も意見をいいたくなりますが、Ustreamでは、ソーシャルストリームにいつでも書き込むことができます。
DJ TARO氏、サッシャ氏、ジョージ・ウィリアムズ氏など、ラジオで活躍する人たちがプライベートで行っているUstreamの番組は、ソーシャルストリームとの対話のしかたが巧みで参考になります。
彼らの番組に共通するのは、自分で話しながらも巧みにソーシャルストリームのツイートを拾い、話を広げていく手法です。視聴者にとって、自分の発言を番組の中の人が取り上げてくれるのは、うれしいものです。
ラジオの場合、メールやFAXで投稿したものは番組のディレクターがチェックするため、出演者がすべてを読むとは限りません。ところがUstreamでは、すべてのツイートが、出演者だけでなく他の視聴ユーザーにも見えています。
たとえすべてのツイートに反応していなくても、この番組はソーシャルストリームの話題を拾ってくれるということが理解されると、親密度が上がります。
講演会やイベントなどで、会場のスクリーンにソーシャルストリームと同じ内容のツイートを表示することがあります。
「TweetBubbles」などのツイートを表示するソフトを利用し、ソーシャルストリームと同じハッシュタグのツイートを表示することで、実現できます。
このように、会場で全員がソーシャルストリームを見ていることがわかるようにすると、ソーシャルストリームに参加している視聴ユーザーの意識に大きな変化が起こります。
ライブ中継を見ながらツイートすると、映像の中に自分のTwitterのアイコンとツイートが表示される、そしてそれを会場の人たちが見ている、ということを実感できるので、前向きに関与していく気持ちになるのです。
また、こうしてソーシャルストリームを表示することは、視聴ユーザーだけではなく、会場にいる参加者にも大きな心理的影響を与えます。今目にしていることに対する視聴者の率直な感想や、多様な捉えかたが表示されることで、イベントの内容が重層的に楽しめるのです。
漫画家がペン入れの作業を、アーティストがペイント作業を、ミュージシャンが録音風景を、宇宙飛行士が船外活動をUstreamでライブ中継している番組があります。
こうした「プロセスキャスティング(仕事の過程のライブ中継)」とでもいうべき番組はとても人気があり、固定ファンがしっかりと付いています。これまでダイジェストでしか見ることができなかった「なにかを作っていく過程」をリアルタイムで目撃できるのはとても新鮮で、リアリティに引き付けられます。
こんなスピードで作品ができあがっていくんだ! という驚きがあったり、自分が寝ている間もこんなにがんばってもの作りしているのか! と等しく与えられた時間を他者がどのように使っているかを、リアルに感じることができます。
プロセスキャスティングは、有名人のものでなくても興味深いものです。編集されていない「今」という時間を共有する、Ustreamならではのダイナミズムがもっとも発揮できるジャンルといえます。
Ustreamで人気がある番組のジャンルのひとつに「DOMMUNE(ドミューン)」など、クラブやライブハウスからのライブ中継があります。小さな画面に小さなスピーカーまたはヘッドホンでの視聴となりますが、そこにアーティストやDJの息づかいが感じられ、大きな感動を与えてくれます。
ヘッドホンならば大音量で楽しむこともでき、ソーシャルストリームとともに、非日常的なハイテンションにもなれます。
音楽ライブのソーシャルストリームは、理屈や議論ではなく、どう感じているか? のコメントがどんどん流てくるので、独特の雰囲気があります。有料の音楽ライブをライブ中継することもありますが、視聴ユーザーがそのライブハウスの存在を知り、次に足を運ぶことで、宣伝としての効果が期待できます。音楽ライブ中継は、パブリシティとしてもこれまでの衛星放送の音楽チャンネルのような役割を担っていくでしょう。
ラジオもテレビも放送法のもと放送が行われているので、全国、全世界に同時に情報を伝達することはできません(各社ごとに放送できる地域が決まっており、全国放送は全国の放送局をネットすることで実現しています)。しかしUstreamは、インターネットがあれば全世界どこからでも視聴できます。
なにかと東京中心になりがちなラジオやテレビと違って、Ustreamではさまざまな地域からの多様な情報が、リアルタイムに発信されています。
地域で取り組んでいる祭りやイベントの様子をライブ中継することには、大きな意味があります。こうしたもののライブ中継が成功する基準は「現場にいる人数よりも多くの人に情報が伝わること」です。
最初から100人、1000人の人に視聴してもらおうとする必要はありません。10人の会議が15人の視聴ユーザーを集めることができれば、成功といえるのです。そこから徐々に視聴ユーザーを増やしていけるように中継を工夫していきましょう。地域の元気を全国に伝える絶好の回路がUstreamです。
「子どもと動物には勝てない」とよくテレビの世界ではいわれますが、それはUstreamでも同じです。動物のライブ中継は、番組の素材として非常に強力です。ふくろうの巣に仕込まれたカメラによる中継「The Owl box(http://www.ustream.tv/theowlbox)」は世界一の人気を誇る番組ですし、子犬の中継なども、常に人気コンテンツ一覧に並んでいます。動物はカメラを意識しない、究極的にリアルな存在です。なにかペットを飼っているのなら、その様子を中継してみるのもおもしろいでしょう。
Ustreamらしい番組の特徴の1つに、テレビ番組のように作り込まれたものでなく、現場や生活のそのままのリアリティが伝わるライブ中継の番組であることが挙げられます。また、ソーシャルストリームによって視聴ユーザーが番組に参加できる双方向性が、積極的に活用されていることも、特徴の1つといえます。
Ustreamの番組は、誰かが出演し、話したり歌ったりしているところをライブ中継するのが基本的なスタイルです。しかし、アイデアと中継用ソフトの使いかたしだいで、ひと味違った、ユニークな番組を作ることもできます。ここでは、そうしたアイデアを少し紹介します。
ライブ映像は使わず、写真のスライドショー+トーク(音声)、というライブ中継のスタイルもあります。
高級なDVカメラを使っても、家庭用の製品では映像のクオリティに限界があり、プロ用の機材で撮影したような画質にはなりません。しかしデジタル一眼レフカメラを利用すれば、ボケ味を活かして深みのある写真を撮ることができます。このスライドショーを利用して、ぜいたくな画質の番組を作ってみましょう。
せっかくのUstreamだから撮影した写真をすぐにライブ中継したい、というときには、無線LANを内蔵したSDカード「Eye-Fiカード」を利用しましょう。Eye-Fiカードの設定をあらかじめ済ませておくと、無線LANを利用して、撮影した写真を自動的にパソコンやWebの写真共有サービスにアップロードします。
Windowsパソコンでは「Windows Liveフォトギャラリー」などのソフトでスライドショーを実行できます。また「Picasaウェブアルバム(http://picasaweb.google.co.jp/)」などの写真共有サービスは、アップロードした写真をスライドショー化できます。
画面が単調になりがちな講演会や座談会などで複数のビデオカメラを用意できない場合にも、こうした手法で写真を組み合わせるのは効果的です。固定のビデオカメラからは捉えられないような出演者の表情や会場の臨場感を一眼レフカメラで捉え、適宜切り替えて見せていくのです。
録画した動画をメインにしても、ライブの魅力を活かすことができます。ライブであることの醍醐味は、ソーシャルストリームを通じて、中継ユーザーと視聴ユーザーのコミュニケーションが成立することにあります。番組の内容すべてが、必ずしもライブである必要はありません。
例えば海外旅行に行ってきてたくさんの動画や写真を撮ってきたとします。これを素材として中継する場合、ソーシャルストリームの反応を見ながら見せる写真や動画を選んでいくことができます。デジタルデータだけではなく、現地から持ち帰ったエアチケットさまざまなカタログ、おみやげなどをその場でカメラに映して見せながら話すのもいいでしょう。視聴ユーザーに親近感を持ってもらえるはずです。
自分の日常は当たり前すぎて、それをライブ中継しても誰も視聴してくれないのでは? と思いがちですが、それは違います。庭先の家庭菜園の様子や、自宅前の田んぼで合唱するカエルの声などをライブ中継してみると、思わぬ反応が得られることがあります。
海や森の近くに住んでいる人は、窓から見える自然をライブ中継してみましょう。できれば高音質なマイクを使って。きっと人工音ばかりに囲まれた都会のユーザーが、癒しを求めて視聴してくれるでしょう。こうした「ライブカメラ」は昔からありますが、Ustreamの登場によって、より気軽にできるようになりました。
USBでパソコンに接続できる顕微鏡や天体望遠鏡を利用し、その画面をスクリーンキャストすることで、ミクロの世界や宇宙をライブ中継することもできます。常時ライブ中継用に利用できるパソコンがある場合は科学実験のようにずっと中継し続けるのもいいでしょう。テレビ番組のようにどこかで始まってどこかで終わるのではなく、ずっと流れている中継もできるのが、このメディアの自由でおもしろいところです。
「EOS Kiss X4」などキヤノンのデジタル一眼レフカメラは、付属ソフト「EOS Utility」によって、ライブビューをパソコンから制御できます。このライブビュー映像をスクリーンキャストすれば、一眼レフカメラを通した動画の中継が可能になります。設定は複雑ですが、ビデオカメラ以上の画質が期待できます。
Ustreamというとテレビのように顔を出して話さないといけないのでは? という先入観を持たれがちです。しかし実際には、自分の顔を出さなくてもいろいろな中継ができます。例えば料理中の鍋やネイルを塗っている指先を中継しながら今日あったことをつぶやく、というライブ中継のスタイルもあります。テレビ番組を見慣れていると、このように一部を隠した「引き算」の手法で作られた番組は、かえって気になるものです。見えそうで見えないというような状況は、人の想像力に訴えかけます。
ホールや大きめの会議室、セミナールームなどを利用して、企業の発表会や説明会、勉強会などのライブ中継を行う場合を考えてみます。これまでに紹介してきた比較的小規模な場面と比べ、より大規模な機材セットが必要になります。
発表会や勉強会では、不特定多数の来場者の存在が前提になります。そのため、機材を置きライブ中継の作業を行うブースは、たいてい会場の横側か後方になるでしょう。
そのために絶対に必要になるのが、ズーム機能の付いたDVカメラと三脚です。三脚は、少なくとも自分の身長程度の高さになるようなものではないと、後方から来場者の頭ごしにステージや登壇者を狙うことは難しくなります。ズームの倍率は10倍から12倍は欲しいところです。DVカメラの入手が難しい場合は、コンポジット出力(一般的な黄色の端子)でカメラスルーの出力ができ、録画していなくてもスリープに入らないカメラを入手し、アナログ-DVコンバーターなどを利用してパソコンに映像信号を渡すとよいでしょう。
音声は、会場のミキサーからキャノン端子で取り込むためにオーディオインターフェースを用意しておきましょう。会場のスピーカーからの音をマイクで取り込むのでは、聞き取りにくい音声になってしまいます。
会場のミキサーアウトから直接音をもらうことでクリアな音になります。20m程度の延長ケーブルを用意しておくと、配信ブースからミキサーが離れている会場でも対応できて便利です。
発表会などでは、プレゼンテーションをどのように中継するか、という課題がでてきます。これには主に3通りの方法があります。もっともシンプルなのは、スクリーンに投影されたプレゼンテーションを、カメラで撮影する方法です。ただし、暗い会場では、白飛び(明るい部分が白くなってしまうこと)を起こして、字がつぶれて読めなくなる、といった問題の起こる可能性があります。
発表者のパソコンからの映像出力を分配アダプターで分岐させ、ビデオスイッチャー経由で取り込む方法もあります。この方法では、PinPで自由に位置を変えたり、発表者とプレゼンテーションの画面構成を入れ替えたりといった演出が可能になります。
最後の方法は、ライブ中継用のパソコンでプレゼンテーションしてもらい、スクリーンキャスト機能で中継する方法です。ただ、この方法ではライブ中継とプレゼンテーションを1台のパソコンで兼ねることになるため、トラブルでプレゼンテーションとライブ中継の両方が止まってしまうというリスクがあります。これを回避するには、発表者の使うプレゼンテーションのファイルを受け取り、発表者のプレゼンテーションに合わせて、ライブ中継用のパソコンでも同時にページを送る方法があります。
発表会や勉強会、講演などをライブ中継する際には、音声がクリアで、映像が的確に登壇者やプレゼンテーションを捉えていることが大前提となります。
その上でさらに重要なのが、タイトル(テロップ)を利用して中継内容を説明することです。Ustream BroadcasterやUstream Producer Proでは文字を入れてタイトルを付けることができ、途中から視聴を始めたユーザーに、どのようなことを中継しているのか把握してもらうための重要な情報となります。
タイトルがないままライブ中継されている番組も多いですが、その場合、しばらく視聴を続けていないと、なにについて話しているのか、画面に映っているのは誰かなどを把握できません。
Ustream Broadcasterでは臨機応変に何種類ものタイトルを簡単に追加してオン/オフできるので、人の名前、所属、Twitterアカウントなどを、適宜表示しましょう。発表が終わった後でTwitterのフォロワーが増えていると、発表者はうれしいものです。
Ustream Producer Proでは、ショットの[タイトル]レイヤーに最大3行のタイトルとキャッチコピーなどを入力できます。表示できる行数と文字数はデザインによって異なります。
スライドを映すために発表会場を暗くする場合、カメラで撮影すると画面内の明暗の差が大きくなりすぎ、見づらい映像になってしまいがちです。可能であれば明るい部屋でも利用できるプロジェクターを用意しましょう。また、発表者に光が当たっていないと、発表者の顔が映像では暗くつぶれてしまうことがあります。発表者の位置や照明の位置を調節しておきましょう。
ライブ中継が予定されている発表会では、ライブ中継を意識したプレゼンテーションを作成しましょう。重要なのは「細かくしない」ということです。Ustreamの映像は通常パソコンで見ている画面ほど高解像度ではありません。低い解像度でも読めるよう大きな文字で簡潔に作成し、詳細な説明などは声で行うようにします。
発表会や勉強会のライブ中継にあたっては、事前に参加者にライブ中継をすることを知らせ、了解を取っておきましょう。発表者の顔を映していいか許可を取り(不可の場合はプレゼンテーションだけを映すなどして対処します)、プレゼンテーションの内容についても確認を取ります。ライブ中継を前提にすることで修正が必要になる場合も考えられるので、早めに確認しましょう。一般の参加者にも知らせて、映されたくない人は後ろの席に移動してもらうなどしてもらいましょう。
タイトルに詰め込みきれない細かな情報は、番組の説明文に含ませることもできます。番組の説明は、配信ページのタイトルやソーシャルストリームの下部分に表示されます。編集するにはUstreamのサイトにログインして[番組設定]をクリックし、[基本]の[番組の説明]に入力します。
自宅や小さな貸し会議室などを利用してライブ中継を行う場合、1人ですべての操作を行うのか、2、3人程度での分業が可能なのかで、適切な機材が違ってきます。
1人ですべてを行う場合は、ライブ中継中に操作をする必要がないWebカメラとヘッドセットを利用します。
音をもっとよくするには、指向性の狭いUSB接続の外部マイクを利用しましょう。RODEのPODCASTERやBlueのYetiなどはラジオのスタジオにあるようなデザインなので、気分を盛り上げるのにも役立ちます。
多人数での座談会などを行うには、人数に応じて機材を拡張する必要があります。考えかたとしては、まず音声関連を拡張し、それから映像関連の拡張を考えます。
出演者が増えたときには、1人に1本ずつのマイクを用意するのが理想的です。マイクはハンディ型よりもヘッドセット型やタイピン型のほうが、全員の音声を安定して取り込めるようになり、おすすめです。マイクの本数を揃えるのが難しい場合は、全員の座る位置を調整し、同じ音量で声を取り込めるようにします。
複数のマイクを使う場合は、ミキサーが必要になってきます。BEHRINGERの「XENYX X1204USB」など、USBでの出力に対応したミキサーを、マイクの本数に合わせて選ぶといいでしょう。
次は映像関連の拡張です。対談ならば1人ずつの表情を捉える「A」「B」の2カメラ、もっと人数の多い座談会ならば全体を捉える「C」カメラを追加すると、変化のある映像が撮れます。
中継作業を1人で行う場合はカメラが複数でもすべて固定にします。カメラマンとスイッチャー(カメラの切り替えやパソコンの操作担当)を分業できる場合は、メインとなるカメラにカメラマンを付けるといいでしょう。
機材が増えてくると、1人ですべてを操作することは難しくなります。数人のライブ中継チームを組んでの分業を考えましょう。その場合の体制作りについて、人数別に解説します。
2人チームの場合は、中継担当と集客担当に分けます。中継する人は音声とカメラを担当。自分が話す場合は自分にカメラを向け、被写体がある場合はそちらにカメラを向けます。
集客担当はソーシャルストリームで番組の解説を行います。いわばデジタルファシリテーターです。デジタルファシリテーターの役目は、中継の内容をツイートしていくことと、まだこのライブ中継を知らない人に向けて、興味を持ってもらうようなツイートをすることです。リアルタイムに要約する編集力と、人の興味をかき立てるコピーライティングの力が必要になります。
3人チームの場合は、中継担当を音声と映像それぞれに分けることができます。その際には複数の人間が1つの中継用ソフトを操作することは困難ですから、音声用のミキサーやビデオスイッチャーを利用することになります。
音声担当はテレビやラジオ番組制作の「ミキサー」と同じ役割となり、声のバランスに耳を澄ましながら調整を行います。
映像担当は、視聴ユーザーが見たいと感じるであろう映像を作ります。登場人物が複数いる場合は話しているほうを狙います。Ustreamは小さな画面で見ることが多いメディアですから、全体チームでの分業体制を決めよう135を捉える映像はときどき使う程度にし、メインは人の表情がわかるようなアップのものを使いましょう。
3人チームでは音声と映像は1人が担当したままで、ディレクター的な役割をプラスすることも考えられます。ディレクターは、どの方向(ディレクション)にライブ中継を持って行くのかを示す指令塔です。ソーシャルストリームから寄せられるコメントをピックアップして出演者にフィードバックしたり、カメラが映している範囲の外から、出演者に「話題変えて」とか「その話そのまま続けて」などと指示を出します。ソーシャルストリームの空気を読みながら、視聴者が求めている流れを作っていく役割となります。
ここからは具体的なライブ中継現場のシチュエーションを想定し、現場ごとに必要になる機材のセットと、覚えておきたいテクニックを解説していきます。
このレッスンでは、1人で機材を持ち出して屋外やイベント会場などでライブ中継を行うという、ミニマムなライブ中継スタイルを想定します。
屋外など電源が利用できない場所でライブ中継を行う場合は、取り回しの容易なiPhoneで、Ustream Live Broadcasterを利用することをおすすめします。Android用の「Ustream Broadcaster」も公開されているので、Androidスマートフォンユーザーも同様のことができます。また、Ustreamライブ中継に対応したデジタルカメラ「CEREVO CAM live!」という選択肢もあります。
Pocket Wi-FiやWiMAX Speed Wi-Fiなどのモバイル無線LANルーターを別途用意し、iPhoneは3G接続ではなくWi-Fi接続にします。一般にイー・モバイルやUQ WiMAXのほうがソフトバンクモバイルの3G接続よりも高速な通信ができるため、Wi-Fi接続のほうが高画質での配信が可能になるためです。
iPhoneを利用したライブ中継では、音質が課題となります。iPhoneの内蔵マイクの感度では、iPhoneを持っている人の声以外の音が小さくなってしまうためです。そこで、ロジテックの「LIC-iREC03P」のような外部マイクアダプターを接続し、状況に応じてタイピン型マイクやバウンダリー型マイクを接続して、音質の向上を計りましょう。
「LIC-iREC03P」はDockコネクタをふさいでしまいますが、電源を供給できるUSB端子も搭載しています。ここに三洋電機の「eneloop mobile booster」などの外部バッテリーを接続することで、バッテリー駆動時間を延ばすことができます。
こうした機器をすべて接続すると、元のスマートで取り回しやすかったiPhoneとはかけ離れた、巨大なものになってしまいます。しかし、視聴ユーザーによい音を届けるためです。がまんしましょう。
「上」ロジテック「LIC-iREC03P(実勢価格7千円前後)」。iPhoneのDockコネクタに接続して利用。本体がステレオマイクを搭載しているのに加え、外部のマイクを接続するコネクタも搭載していますク
「下」CEREVO「CEREVO CAMlive!(直販価格19999円)」。無線LAN接続に対応し、撮影した写真を自動的にアップロード。また、カメラ単体でUstreamでのライブ中継が可能です
iPhoneを利用したライブ中継で見落とされがちなのが、集客(視聴ユーザーを集める)用の機器です。iPhoneでライブ中継を始めたときに定型文でのツイートが行われますが、フォロワーの全員がその瞬間のツイートを見ているわけではありません。また、告知のツイートを見た全員が配信ページのURLをクリックしてくれるわけでもないため、視聴ユーザーを集めるにはライブ中継中に何度もツイートして、多くの人の関心を集める必要があります。
集客用の機器としては、ライブ中継用とは別のiPhone、またはiPad、iPod touchがあるといいでしょう。Safariで配信ページにアクセスし、ソーシャルストリームからツイートできます(基本的に、Safariで配信ページにアクセスしてもライブの視聴はできません。一部の番組のみ視聴が可能です)。
ただし、集客用の機器と中継用の機器を1人で同時に操作するのは、さすがに無理があります。本格的にやるならば、2人組などのチームを作る必要があるでしょう。集客担当はソーシャルストリームでライブの様子をツイートしたり、ライブに関する突っ込みなどをして、盛り上げ役もしてもらいます。
このとき、集客担当のTwitterのフォロワー数が多いほうが、一般的には視聴ユーザーを増やしやすくなります。フォロワーの多い友人がいたら、お願いするとよいでしょう。
電源が使える会場や会議室でのライブ中継用機材セットは、ノートパソコンとDVカメラを中心した機材で組むとよいでしょう。DVカメラを中心にする場合はDVカメラとパソコンをIEEE 1394ケーブルで接続します(IEEE 1394対応機器が揃えられない場合は、USB接続のWebカメラを利用するのが無難です)。
音声はUSBマイクを利用するか、UA-4FXなどのオーディオインターフェースを介してパソコンに入力します。音響設備がある会場では、ミキサーから音声信号をもらうのが鉄則です。たいていは会場のミキサーからキャノン端子でモノラルのミックス音声をもらうことができるので、これをUA-4FXに接続し、デジタル信号に変換してパソコンに入力しましょう。
このセットの構成は(それぞれの機材は異なりますが)、年間200本以上の“ダダ漏れ”出張中継をこなす「ケツダンポトフ(http://ketudancom.blog47.fc2.com/)」のそらのさんと同じです。
会場で有線LAN回線が借りられる場合は、それをライブ中継用パソコンに接続し、安定した中継を行うため、他の参加者には同じ回線を使わないでもらって占有します。ただし、自前のモバイル無線LANルーターが圏外で接続できない場合などは、会場の有線LANをネットワークハブで分岐させ、集客用のノートパソコンの回線もまかないます。
DVカメラをIEEE 1394接続すると、DVカメラのマイクやDVカメラに装着した外部マイクで取り込んだ音声を、そのままライブ中継用に使うこともできます。ただし、機材の相性などさまざまな原因によってうまく音声が入力できないこともあります。使用する中継用ソフト(Ustream Broadcaster/Producer/Pro)とDVカメラの組み合わせで音声に問題が起きないか、必ずテストしておきましょう。
Ustream Live Broadcasterは、ライブ中継をしながらソーシャルストリームにツイートすることが可能です。それならばライブ中継と集客を1台のiPhoneで行えるではないか、と思いますが、Ustream Live Broadcasterからツイートすると、なぜか配信ページのURLを自動的に付けてくれません。中継用と同じiPhoneで文字入力をし、URLを自分で入力する手間を考えると、別のiPhoneやパソコンがあったほうが、ずっと楽だといえます。
ライブ中継前には、必ず機材やソフトのテストをしておきましょう。現場と同じ機材を揃え、実際に接続し、ソフトを起動して、映像や音声をきちんと中継できるか確認します。このように本番のライブ中継と同じテストをしておくことで、ソフトの操作や手順を確認できるだけでなく、ちょっとした小物類など忘れがちなもののチェックにもなります。配線を間違えやすい部分に説明を書いたテープを貼っておいたり、オーディオインターフェースの最適な音量の目安となる部分にシールを貼っておくなどすると、現場でのセッティングがスピーディーにできます。
どのような場所でライブ中継をする場合でも、電源はもっとも重要です。イベント会場など、いつもと違う場所に行ったとき、電源コンセントがすぐ近くにあるとは限りません。長い電源延長ケーブルは常に持っておきましょう。
また、延長した先を何口に分けるか、どのような形状のコンセントがあればよいのかを考えておくことも大切です。機材が増えれば、それだけ電源も多く必要になります。
ヒマナイヌでは「IDEA」ブランドの「ICON SOCKET」を常に2セット持ち歩いています。このタップは円形の形状で4方向にコンセントが付いており、MacBookのような大きなACアダプターも、互いに干渉せずにつなぐことができます。
電源の次に重要なのは通信回線です。会議室などでライブ中継をする際、会場で借りられる有線LANは、回線の帯域確保のため、中継用パソコンだけに占有させましょう。
一方で、配信ページを開いて配信状態をチェックしたり、ソーシャルストリームに参加してツイートすることも必要ですが、こちらのためのパソコンは自前の別回線(モバイル無線LANルーターなどを用意)で接続するようにします。イー・モバイルの「Pocket WiFi」、UQ WiMAXの「WiMAX Speed Wi-Fi」シリーズ、NTTドコモの回線を利用する「ポータブルWi-Fi」など、各キャリアから製品が登場しています。
なお、製品単体のバッテリーでは長時間の中継をまかなえないので、ACアダプターなどによる給電手段を用意しておきましょう。
会場によってはWiMAXやイー・モバイルの電波が届きにくい場合もあります。そのような場合には、配信以外に利用するパソコンも会場の有線LANを利用します。複数のLANケーブルを借りられるとは限らないので、ネットワークハブを持っていると安心です。4ポート程度のハブならコンパクトなので、持ち歩いても負担になりません。
映像制作においては、カメラと同じくらいにカメラを固定するための三脚が大切です。カメラを直接乗せる「雲台」と呼ばれる部分の安定性や、動かす際のスムーズさが、カメラワークに大きな影響を与えるためです。
三脚は多数の製品がありますが、おおまかにいって、3万円以上の製品であれば安心して使えます。ただしUstreamの場合は製品選びのポイントが少し異なるので、注意してください。
Ustreamでライブ中継をする際には、カメラマンが他の作業を兼ねる場合がほとんどです。チームを組むケースもありますが、1人でパソコンやカメラなど、すべての作業をする場合も考えて三脚を選ぶべきでしょう。
そうした観点から考えると、カメラはパソコンの近くに置き、それを片手で操作できるようにするべきです。そこで重要になるのは、コンパクトさであったり、机の上に直接固定できるような形状であったりします。自分のスタイルに合わせてカメラをオペレートしやすい三脚を選びましょう。
例えばNEPの「MS-5」というミニ三脚は、机の上に家庭用のビデオカメラを簡単に固定することができます。パソコンの作業をしながら片手でカメラを操作し、狙ったアングルにカメラを向けたりズームしたりできます。
シュアテープは映像業界で広く使われているメンディングテープの一種で、「パーマセル(以前のブランド名)」と呼ばれることもあります。適度な接着力がありながら、跡を残さずはがせます。黒と白があり、黒は光を反射しないよう梨地に表面が加工されています。
DVカメラを使う場合に、カメラの電源ケーブルやIEEE 1394ケーブルが万が一抜けてしまうと大変です。ケーブルはまず三脚などの足で一回転させ、誰かがケーブルに足をひっかけてもすぐには抜けないようにしてきます。さらにケーブルの根本などをシュアテープで貼り付けておくとよいでしょう。
パソコンとWebカメラ程度の輸送なら普段使いのカバンでもまったく問題ありませんが、映像に凝ってカメラを2台にしたり、電源や音声などの延長ケーブルを用意したりしていると、荷物の量はどんどん増えていきます。
そのような場合におすすめなのが、4輪キャリーです。2輪のキャリーもありますが、快適さが全然違います。2輪の場合はバッグの重量をある程度負担しながら引きずるのに対し、4輪は小さな力で滑らせるような感じです。階段など以外では運んでいるものの重量からまったく解放されるので、手ぶらで移動しているのに等しくなり、10キロ程度の機材でもまったく疲れません。ライブ中継用の機材を運ぶだけで体力を消耗してしまうようでは本末転倒です。
特におすすめなのは、スワニーの4輪ウォーキングバッグシリーズです。独特のしなるハンドルがバッグの重心の中心に巧みに寄り添い、最小限の力で重いカバンを転がせます。デザインは海外のキャリーバッグに比べるとあか抜けませんが、その操作性の素晴らしさは特筆に値します。
複数のカメラを切り替える場合に、ビデオスイッチャーを使うという手があります。ビデオスイッチャーとは、その名のとおり複数の映像入力を切り替えて出力するための装置です。切り替えのエフェクトや、合成ができる機種もあります。中継用ソフト側でもカメラの切り替えはできますが、パソコンの環境によっては、切り替え操作によって不安定になってしまうことがあります。ビデオスイッチャーで映像を切り替え、パソコンは純粋に配信だけを行うようにすると、こうした問題を避けられて安心です。
ローランドの「V-4」「V-8」や「LVS-400」「LVS-800」などは、ライブ中継の現場で使われている代表的なビデオスイッチャーです。ローランドVシリーズは主に音楽イベントでのVJプレイ向けのシリーズ、LVSシリーズは放送局のビデオスイッチャーを簡易化して講演やライブ会場で使えるようにしたシリーズです。数字の4や8は入力可能な映像ソースの数を示しており、V-8やLVS-800はパソコンの信号も扱えることが特長となっています。ビデオスイッチャーは高価で荷物も多くなってしまいますが、映像の操作における信頼感が大幅に向上するため、おすすめです。
ソニーなどが、パン棒(雲台の下から突き出ている、カメラを動かすための棒)にリモコンを内蔵した三脚を発売しています。リモコン三脚を利用すると、ビデオカメラ本体にあるズームボタンに手を伸ばさなくてもズーム操作ができ、ライブ中継の現場ではとても助かります。ただし、同一メーカーでもリモコン操作に対応したカメラの機種が限定されていることがあるため、あらかじめよく確認してから購入しましょう。
初めて利用する貸し会議室など、慣れない会場での中継には、音声や映像などの変換ケーブル/ジャック類を準備していると安心できます。キャノン端子とフォーン端子、フォーン端子の標準端子とミニ端子、映像であれば、アナログ映像をデジタルに変換してIEEE 1394向けに出力するアナログ- DV コンバーターも重宝します。カノープスの「ADVC-55 for Windows/Mac(実勢価格1万8千円前後)」が代表的です。
Ustreamは配信ページの小さな画面で視聴することが多いですが、カメラの性能が上がると、小さな画面でも印象が変わります。これはちょうど、コンパクトデジタルカメラで撮った写真と、デジタル一眼レフカメラの写真を同じサイズで見比べても違いがわかるのに似ています。細部のシャープさや立体感に、レンズの性能のよしあしが現れるのです。
WebカメラはもともとSkypeなどのビデオチャットで、比較的小さな画面、低い解像度での利用を前提に設計されています。近年では高性能の機種も登場していますが、画質にはおのずと限界があります。より高画質での配信をめざすならば、ビデオカメラを利用しましょう。
Ustreamでは、カメラをWebカメラからビデオカメラに変えるだけで大きな画質向上が見込めます。ビデオカメラは動画を撮ることを前提にレンズやインターフェースが設計されているので、ズームやホワイトバランス、露出の調整など、Webカメラでは難しいことも自在に行えます。
レッスン18でも少し解説しましたが、Ustreamで使えるビデオカメラに求められる条件は、次の1点です。
ビデオカメラを使ってライブ中継をするためには、パソコンに接続して使うことが前提になります。そのため、USBかIEEE 1394(「FireWire」「i.Link」とも呼ばれます)での接続に対応している必要があります(そのほかに接続可能なインターフェースもありますが、機材のコストが上がるので、ここでは触れません)。
また、現行のビデオカメラには、パソコンと接続したときにUSBメモリーのようにファイルの操作をすることしかできず、カメラの映像をそのままパソコンで利用する「カメラスルー」に対応していない製品も多くあります。カメラスルー非対応機はライブ中継に使えないので、気を付けましょう。
2005年ぐらいまでに販売されていたミニDVテープを使うデジタルビデオ(DV)カメラは、IEEE 1394接続のための「DV端子」を標準で搭載し、カメラスルーも利用できます。古くなって使わなくなったDVカメラがあれば、ひっぱり出してみてください。2010年現在販売されている製品でも、一部に対応した機種があります。
有限会社バッタネイションの岩沢卓さんが運営している「Ustream番長(http://www.battanation.com/ustream/)」というブログでは、Ustreamに使えるカメラ機材の情報がよく取り上げられています。IEEE 1394接続が可能でカメラスルーに対応したDVカメラを探す際には、こちらを参考にするといいでしょう。
ワイドコンバーター(ワイコン)とは、カメラのレンズの先に装着し、通常よりも広角の撮影を可能にするレンズです。DVカメラを使って座談会や対談などを中継する場合、出演者全員をカメラに収めるためにカメラを引くのでなく、カメラ位置はそのままでワイコンによって全員を収めるようにすると、視聴ユーザーは出演者の近くにいるような気分になります。Ustreamでは、視聴ユーザーの目と画面との距離がテレビよりも近いため、カメラと被写体との距離感が、演出上重要な効果になります。カメラを遠くに置いてズームでコントロールするよりも、ワイコンを利用して大胆に出演者の近くにカメラを置いたほうが、迫力が増すこともあります。販売終了になってしまっているDVカメラ用のワイコンも、ネットオークションなどで探してみると入手できることがあります。
Ustreamは「誰でもテレビ局」などといわれることもあり、ライブ中継をするにあたっては映像に関心が行きがちです。しかし本当に大切なのは、映像よりも音声です。
中継する側にいると気づきにくいですが、実際にいくつかの番組を視聴してみると、よくわかります。音声がダメな番組は、いくら映像がよくても視聴するストレスが非常に高いのです。
視聴ユーザーは、自分のかけがえのない「今」という時間を使ってあなたのライブ中継を視聴してくれます。ソーシャルストリームに「音が聞こえにくいのですが」などのコメントが寄せられたら、すぐに対策を取りましょう。よくある原因は、使用している中継用ソフトの音量設定が低い、またはマイクの配置が悪いことです。
この問題を放置したままライブ中継を続けると、視聴ユーザーはどんどん離れていきます。離れていくばかりか「音ひどいから離脱」などとツイートを残して去る人も出てきます。あなたの大事なイベントや商品のために設定したソーシャルストリームに、こうしたツイートが蓄積されるのはよくありません。中継をしているあなただけでなく、そのイベントに出演している人たち全員の印象まで悪くなりかねないのです。
ここでは音声のクオリティを高めるためのマイクの選びかたや使いかたについて解説します。
ライブ中継で扱う音声の中でも、もっとも大切なのは、出演者や発表者が話す声です。ベストな状態で人の声を配信するには、外部マイクを適切に使用して声を取り込み、「オーディオインターフェース」という機材を通して聞きやすく整えてからパソコンに音声を入力します。
人間の脳には優秀なノイズキャンセリング機能があり、喫茶店や発表会場などで耳からノイズ混じりの音が入ってきても、そこから大事な人の声だけを抽出し、聞くことができます。
ところがマイクが取り込む音にはすべての音が同じように含まれていて、脳が処理しているようには再現してくれません。これをそのまま配信すると、聞き取りにくい音声になってしまいます。
聞き取りやすいクリアな声を取り込むためには、どのようなマイクをどの位置に置くかが重要になります。
また、パソコンのマイク入力端子は「とりあえず付いています」という程度のものなので、ノイズの混入やレベルの不一致(マイクが出力できる音量とパソコンが要求する音量の不一致)が起こりやすく、決して高音質で音声を取り込むのには向いていません。そこで役立つのが、オーディオインターフェースです。
オーディオインターフェースは、アナログ音声信号をパソコンで扱いやすいデジタル信号に変換し、同時にノイズの低減や低音域・高音域のイコライジング(音質の調整)などを行う機器です。聞き取りやすい音を作り、劣化させずにパソコンに取り込むことができます。
マイク選びには専門的な知識が要求され、なかなか難しいものです。しかしUstreamのライブ中継で音質を向上させるためには、マイクの種類や特性について、大ざっぱにでも理解しておく必要があります。知っておくべきマイクの特性には、大きく分けて「形状の違い」、「音響特性の違い」、「出力端子の違い」の3種類があります。
形状には、カラオケなどで使う「ハンディ型」、アイドルがコンサートのときに使うような「ヘッドセット型」、テレビのアナウンサーが使うような「タイピン型」、テレビ電話の会議室にあるような「バウンダリー型」などがあります。
ラジオやテレビ業界の専門家と違い、Ustreamではアマチュアがしゃべることになるので、マイクの扱いに不慣れだと考えられます。ハンディ型マイクは持ちかたによって音質が著しく変わってしまうため、タイピン型やヘッドセット型のように、マイクの位置と口の位置が常に一定の距離に保たれるものをおすすめします。
次に、音響特性の違いです。これは、主に指向性の違いのことを指します。カメラに広い範囲を撮影できる広角レンズや狭い範囲を切り取る望遠レンズがあるように、マイクにも音声を取り込める範囲があり、これを「指向性」と呼びます。
マイクを向けた正面だけの音を狙う指向性の狭い製品は、周囲のノイズを排除して話し手の声だけを取り込むことができます。指向性が狭く、1人の声だけを取り込むことが想定されたマイクを「単一指向性」と呼びます。前方と後方の2つに狭い指向性を持つ「双指向性」のマイクもあります。一方、指向性の広いマイクは、会議などで机の真ん中に置いておけば、部屋全体の音を取り込むことができます。このようなマイクは「無指向性」と呼びます。
例えば4人が丸テーブルを囲むように座った状態で単一指向性のマイクを使用すると、特定の人以外の声がまるで聞こえないといった失敗につながります。それでは無指向性マイクならば「大は小を兼ねる」になるかというと、エアコンや部屋の外の音まで拾ってしまい、別の問題が出てくることもあります。状況に応じて最適なマイクを選んでください。
出力端子の違いは、マイクの音声がどのような端子を通じて出力されるか、という部分です。業務用で使われる3つのピンを使った「キャノン端子(XLR端子)」や、家庭用の製品でよく使われる、ギターなどとも同じ「フォーン端子(TS端子/TRS端子。ピンジャックとも)」があります。フォーン端子には標準、ミニ、マイクロという大きさのバリエーションがあり、マイクへの電源の供給を同時に行う「プラグインパワー端子」もあります。
また、オーディオ機器全般で使われる端子に、ピン端子(RCA端子とも。AV機器でよく使われる赤と白の端子)があります。
マイクがあらかじめ用意されている発表会場などでは、マイクとオーディオインターフェースの端子が合うかを確認しておく必要があります。
種類は多くありませんが、USB端子の付いたマイクも発売されています。こうしたマイクでは、オーディオインターフェースを通さなくてもデジタル化したクリアな音声をパソコンに取り込めます。入力する音声がマイクだけでよい場合は、USBマイクを利用することで荷物の軽量化が図れます。
マイク選びは、ライブ中にどのような状況で話し手が話すかによって変わってきます。ここでは登場する人数や状況別に、ポイントを解説します。
1人で話す場合に注意する点は、話しながらパソコンのキーボードを打つかどうかです。ノートパソコン内蔵のマイクを利用すると、マイクはカメラの横やキーボードの横に付いているため、キーボードを打つ音が、視聴ユーザーにはこちらが思っている以上に大きく聞こえる場合があります。
これを避けるためには、パソコン内蔵のマイクは使わず、Skype用のヘッドセットなどを使うことをおすすめします。ヘッドセットでは電話並みの音声を確保することができます。
さらに音質にこだわり、ラジオのようにクリアな音声にアップグレードしたい場合は、USB接続の指向性の狭い外部マイクを使うとよいでしょう。RODEの「PODCASTER」やBlueの「Snowball」などが最適です。
2人で話す場合、横に並んで話すか、対面になって話すかで、マイクのセッティングは大きく変わってきます。
並んで話す場合はPODCASTERやSnowballのような指向性の狭いマイクでも対応できます。しかし対面になると、2台のマイクを使わなければいけなくなります。
そのようなときは、Blueの「Yeti」が重宝します。Yetiは設定によって単一指向性、双指向性、無指向性、ステレオの切り替えができるので、人数が多い座談会にも利用できます。
多人数が小さなテーブルを囲んで話すような場面であれば、1本のマイクで収録できます。Yetiを無指向性に設定し、テーブルの中心に置くとよいでしょう。1本のマイクで収録するときは人の個体差による音量を調整できないので、現場での配置にも気を配る必要があります。
座談会のテーブルが大きくて人が離ればなれに座る場合では、マイクを人数分用意する必要があります。その場合は複数のマイクの音声をいったんオーディオインターフェースにまとめる必要があります。マイクの本数が多い場合は、複数の音声入力を合成するためのミキサーを通すこともあります。
ローランドのオーディオインターフェース「UA-4FX」は、もっとも多くのライブ中継現場で使われている定番の製品です。価格が手ごろでコンパクトなことと、USB端子から電源の供給ができるため電源ケーブルを必要としない手軽さが魅力です。「ノイズを取る」「音をシャープに」「低音の音圧アップ」「高音の音圧アップ」という4種類の音声の調整機能を搭載しており、会場のミキサーからの音声やマイクなどを接続することで、これ1台でたいていの場面でのライブ中継がこなせます。
オーディオインターフェースは多数の音声入力には対応していません。それよりも多くのマイクを利用する場合には、2つの方法があります。多数の音声入力をまとめられるミキサーを通してからオーディオインターフェースに接続する方法と、USB出力ができるミキサーを利用し、オーディオインターフェースの機能を兼ねさせる方法です。前者なら市販されている膨大なミキサーから好みの機種が選べます。後者は機種は絞られますが、BEHRINGERの「XENYX X1204USB(実勢価格2万5千円前後)」などがおすすめです。
出演者・発表者から中継機材までの距離が十メートル以上離れるような場合になると、ケーブルの取り回しが大変になります。そのような場面ではワイヤレスマイクを活用しましょう。おすすめの製品は、ソニーの業務用ワイヤレスマイク「UWP-V1」です。もともと定評のあった旧モデルを改善し、耐久性、音質ともに向上。タイピン型なので装着も簡単です。有線マイクと比べると高価ですが、複数セットを用意しておけばわずらわしいケーブルが必要なくなり、とてもすっきりします。
ライブ中継を高画質・高音質で楽しむためには、大きく分けて2つの重要なことがあります。1つ目は、パソコンに映像と音を取り込む前の、マイクやカメラの選びかた・使いかたです。マイクについてはレッスン21、カメラについてはレッスン22で詳しく解説します。
そして2つ目は、中継用ソフト(Ustream Producer)で適切な設定をすることです。Ustream Producerは、Ustream Broadcasterより高画質・高音質のライブ中継ができます。しかし、常に高い画質を設定すればいいというわけではありません。通信回線の状況に合わせて、快適に視聴できる画質に設定しましょう。
回線帯域が足りない(高速通信ができない)環境で高画質の中継を行おうとすると、音声が途切れたり映像が動かなくなったりしてしまいます。回線に応じて適切な設定することが大事です。
Ustream Producerで[Settings]をクリックすると、配信する動画のクオリティ(Encoding Preset:画質と音質の設定)を10種類の中から選択できます。
光回線など高速なインターネット回線で外部と接続し、パソコンを有線LAN接続できている環境であれば、最高のクオリティでの配信にも耐えられると考えられます。まず[Best SD Quality]を選択しましょう。映像の縦横比[4:3]か[16:9]かは、使用するカメラが対応しているものを選択します。
このクオリティでテスト配信をしてみてブラウザーで配信ページを確認し、音声や動画の視聴に不具合があるようなら、その会場の回線帯域が足りないと考えられます。クオリティを下げていきましょう。
Ustream Producerで設定できるクオリティは[Best SD]から[High SD][Standard SD][Basic SD][Lowest SD]の順に画質・音質が下がっていきます。[Best SD]ではスムーズな配信ができない場合は順次クオリティを下げながら、確認していきましょう。
画質の目安として[Lowest SD]〜[Standard SD]は、およそVHSビデオレベルの画質、[High SD]と[Bset SD]はアナログ地上波テレビレベルの画質となります。音質に関しては[Lowest SD][Basic SD]はモノラル、[Standard SD]以上ならステレオになります。一方で、視聴ユーザーの回線やパソコンの性能によっても、視聴しやすさは大きく変わります。
Ustreamの一般的な視聴スタイルは、配信ページで番組を視聴しながら、ソーシャルストリームに参加するというものです。このとき、映像は横480ピクセルで表示されます。配信ページできれいに見てもらうことを考えると、画質は[High SD](横640または720ピクセル)以上があれば十分だと考えられます。
●Ustream Producer/Proで設定できるクオリティ
画質の設定 | ピクセル数 | 画質 | 音質 | |
---|---|---|---|---|
4:3 | 16:9 | |||
High HD Quality | ― | 960×540 | 30fps 800kbps |
AAC 41.1k ステレオ |
Standard HD Quality | ― | 960×540 | 30fps 650kbps |
AAC 41.1k ステレオ |
Best SD Quality | 640×480 | 720×405 | 30fps 600kbps |
AAC 41.1k ステレオ |
High SD Quality | 640×480 | 720×405 | 30fps 500kbps |
AAC 41.1k ステレオ |
Standard SD Quality | 320×240 | 352×198 | 30fps 350kbps |
AAC 41.1k ステレオ |
Basic SD Quality | 320×240 | 352×198 | 20fps 350kbps |
AAC 32k モノラル |
Lowest SD Quality | 320×240 | 352×198 | 20fps 200kbps |
AAC 23k モノラル |
有料のUstream Producer Proでは、より高画質の設定が可能になり[Standard HD]、[High HD]という2つのクオリティが加わります。「HD」は「高精細度(High Definition)」の略で、Ustream Producerで選択できた「SD(標準精細度:Standard Definision)」と区別されます。
HD画質で配信する最大のメリットは、画面を拡大しても高画質が保たれることです。iPadのUstream Viewing Applicationで視聴するときは、画面を横にしてテレビのように全画面で見ることが多くなりますが、HD配信ならば高画質で楽しむことができます。
Ustream Broadcasterには[画質][音質]の調整用スライダーがあります。また[アドバンス設定]をクリックすると、画質補正などが利用できます。さらに[より高画質へ]をクリックすると新しいウィンドウが開き、高画質でのライブ中継ができるエンコーダー(動画をデジタルデータ化するためのソフト)をインストールするための案内が表示されます。Windowsのみの対応ですが、利用機会が多い人はインストールしておきましょう。
Ustream Producer/Proでは、設定したクオリティをライブ中継中に変更することはできません。本番前にテスト配信を繰り返し、中継場所の回線帯域に応じた最適なクオリティを見つけましょう。なお、イベント会場などでは、来場者が増えて回線の利用が増加するなどして、中継中に帯域が不足してしまうこともあります。
ピクセル数はカメラの特性によりますが、一般にハイビジョン対応をうたう製品は16:9、それ以外の製品は4:3です。画質の「fps」は毎秒のフレーム(動画のコマ)数を、「kbps」は1秒あたりの動画のデータ容量を表し、いずれも数字が大きいほど高画質となります。音質の「AAC」は音声の圧縮方式を、「○○k」は音声をデジタルデータ化する際のサンプリング周波数を表します。サンプリング周波数の数字が大きいほど高音質となります。
有料の中継用ソフト「Ustream Producer Pro」は、Ustream Producerからアップグレードすることで購入できます。支払いにはカード決済などが利用できます。
Ustream Producer Proの画面は、一見したところではUstream Producerと似ています。しかし、高度な機能を多数搭載し、ユーザーインターフェースは複雑になっており、似て非なるソフトだと思えるほどです。ここでは、Ustream Producer Proの特長を紹介します。
Ustream Producerではすべての操作を1つのウィンドウだけで行いましたが、Ustream Producer Proでは、さまざまな操作のために「インスペクター」と呼ばれる別のウィンドウが開きます。
さらに、もっとも大きな違いとして、ショットにレイヤー(階層)という概念が存在します。[シーン(ノーマル)]をベースに、[タイトル]、[フォアグランド]、[バックグランド]、[オーディオ]と5つのレイヤーがあり、これらの重ね合わせでショットができあがっています。Ustream Producer Proを使いこなすには、このレイヤーの概念をマスターする必要があります。
[タイトル]は、いちばん上の階層で、ショットに文字を挿入するためのレイヤーです。[フォアグランド]は[シーン]よりも上に表示され、透過情報を持った画像を合成することができます。[バックグランド]はもっとも下のレイヤーで、PinPを利用したときなどに、すきまに表示されます。[シーン]では3画面までのPinPが利用でき、エフェクトの種類も豊富です。ショットを切り替える際のエフェクトも、大幅に増えています。
5つのレイヤー、タイトル、PinPや切り替えの多彩なバリエーションを組み合わせることで、表現の幅はUstream Producerよりも格段に広がります。その一方で、使いこなすには、センスとある程度の慣れが必要になります。あれもこれもと盛り込もうとすると「機能を使わされている」ような印象の画面になってしまうので、少しずつ機能を試しながら利用していきましょう。
Ustream Producer Proでは、同時に利用できるカメラの台数に制限がありません。数人での対談や座談会などでは、カメラを複数切り替えることで、立体的な映像を提供できます。HD(High Definition:高精細)画質にも対応し、さらに「HDV Option」を購入すれば、業務用ビデオカメラから高精細なHDV規格の映像を、そのまま取り込むことができます。
演出にこだわり、複雑なショットの切り替えをしたい場合には、プレビュー機能が役立ちます。画面下の[オートライブ]のチェックをはずし、メニューから[レイアウト]-[プレビュー]をクリックしてプレビューを表示させましょう。
Ustream Producer Proは、機能が増え表現力が増すことで、よりわかりやすく、伝わりやすいライブ中継を行うことができます。個人の趣味でのライブ中継といったレベルを超えて、企業などが利用するのにも十分な機能があります。
Ustream Producerの画面で[Upgrade]-[Upgrade to Ustream Producer Pro]をクリックし[環境設定]が表示されたら[Purchase Now]をクリックすると、[Ustream Store-Catalog]が表示されます。ここで[Ustream Producer Pro-Windows]を購入して支払い手続きを済ませると、Ustream Producer Proのシリアルナンバーが発行されます。次に[環境設定]から[Enter Serial Number]をクリックしてシリアルナンバーを入力すると、アップグレードが完了します。なお[Upgrade][-TryUstream Producer Pro Futures]をクリックすると、試用版のUstream Producer Proが起動し、Ustream Producer Proの全機能を試すことができます。
Ustream ProducerとUstream Broadcasterはコンセプトが異なるソフトだと説明しました。一方、Ustream ProducerとUstream Producer Proの関係は、あくまでも同じコンセプトのソフトだと考えられます。機能の高度化にともなってユーザーインターフェースが異なる部分が多いですが、Ustream Producerでできることは、すべてUstream Producer Proでもできます。下の表は、両者の違いをまとめたものです。
Ustream Producer | Ustream Producer Pro |
|
---|---|---|
サポートする解像度 | SD | SD/HD |
サポートするカメラの台数 | 1 | 無制限 |
ショット切り替えエフェクトの種類 | 3 | Windows:9 Mac:20 |
映像の重ね合わせやタイトルの挿入 | 不可 | 可 |
HDV の利用 | 不可 | 可 |
PinP のカスタマイズ | 不可 | 可 |
ここまでの解説で取り上げたパソコン内蔵のWebカメラは、扱いが簡単ですが、画質がさほど高くない、カメラを動かせない、といった難点があります。少しUstreamに慣れてきたら、外部カメラを利用することをおすすめします。
外部カメラとして安価で扱いやすいのは、USB接続の外付けWebカメラです。マイクも搭載した機種では、音声がUSB接続で入力されることになるため、マイク端子に接続した場合よりもクリアな音質が期待できます。外付けWebカメラでおすすめは、マイクロソフトの「LifeCam Cinema」です。かなり集音範囲が広く感度のいいステレオデジタルマイクが付いています。
Webカメラは、使用中にカメラ自体を操作することを想定して作られていないため、露出補正(明るさの調整)、ホワイトバランス(色味の調整)、ズームなど、映像をコントロールするための機能がありません。1人で中継も出演も行う場合には、そもそも操作が不可能なため気になりませんが、イベントなど自分が中継に専念できる場面では、画質の調整や場面に合わせたズームによって、よりよい映像を届けたいものです。
高画質での撮影のためには、外部にビデオカメラを接続して利用しましょう。おすすめなのは、IEEE 1394(FireWire、i.Linkとも)接続に対応した「DV」端子を持つデジタルビデオ(DV)カメラです。こうした機種はレンズの口径が大きくたくさんの光を取り込めるため、Webカメラとは比較にならない鮮明な映像が得られることもメリットです。
デジタルカメラの中に、パソコンに接続してWebカメラ(PCカメラ)として利用できる機種があります。デジタルカメラの付加価値的な機能としては魅力的ですが、こうした機種は、あくまでWebカメラの替わりになるだけです。パソコンに接続してのズームや露出補正などは利用できないので注意しましょう。
Ustream ProducerおよびUstream Broadcasterでは、同時に1台のカメラしか扱えません。内蔵のWebカメラの他に外部カメラを接続している場合には、切り替えて利用することになります。Ustream Broadcasterの場合は[ビデオソース]からカメラを選択します。なお、外部カメラを利用する場合は必ず、Ustream ProducerやUstream Broadcasterを起動する前に接続し、電源を入れて利用できる状態にしておきましょう。起動後に接続した場合には、カメラが認識されません。
ここでは外部カメラの利用について紹介しましたが、音声についても同じように、外部マイクを利用することで音質のアップと利便性のアップ(適切な場所にマイクを配置して、的確に音声を取り込める)が図れます。音声は映像に比べると地味なため軽視されがちですが、視聴ユーザーの立場から考えた場合、映像の質よりも音声の質がしっかりしていることのほうが大切です。映像は多少乱れていても気にせずにいられますが、音声にひどいノイズが混ざっていたり、音量が適切でなかったりして乱れているのは、なかなかがまんできるものではありません。Ustreamのために機器の購入を考えている場合は、マイクにも十分な予算を割くようにしてください。
「スクリーンキャスト(Screencast)」は、パソコンの画面をショットとして追加し、中継するための機能です。
簡単な機能のようですが、アイデアしだいでさまざまなことができます。ソフトの使いかたを説明する際に利用する、画像ビューアーで写真のスライドショーを再生してそれを中継する、PowerPointでプレゼンテーションを行う、などが考えられます。
ソフトの使いかたを説明するのならば、実際の画面を中継する他に、パッケージ写真、操作する自分の映像などのショットを用意しておき、適宜切り替えながら中継するといいでしょう。
スクリーンキャストを行う際には、Ustream Producerと同時にインストールされる「Desktop Presenter」というソフトが起動し、パソコンの画面をどのように(デスクトップ全体か、特定のウィンドウか、全画面かなど)ショットに追加するかを設定します。
この際の音声は、特に設定をしなければマイク入力のままとなります。別途に音声ファイルを用意しておいて利用することも可能ですが、ソフトからの音声は利用できません。
スクリーンキャストしたいソフトのウィンドウに、Ustream Producerのウィンドウが重なってしまうことがあります。操作するウィンドウをスクリーンキャストしたいソフトに切り替え、いちばん上に表示すれば、重なっていても問題ありません。Ustream Producer側の操作をすべて完了させてからウィンドウを切り替えましょう。
Desktop Presenterで[Source]にディスプレイ([Main Display]など)、[Selection]に[Select Screen Region]を選択して[Change Region]をクリックすると、デスクトップ上の選択した範囲をスクリーンキャストできます。これはソフトに関係なく特定の範囲をスクリーンキャストしたい場合や、ウィンドウの一部分だけをスクリーンキャストしたい場合に有効です。
「PinP(Picture in Picture)」は、Ustream Producerで利用できる映像のエフェクト機能です。その名の通り、映像(ショット)の中にもうひとつの映像を入れるという、2画面表示を行う機能です。簡単なエフェクトですが、画作りには欠かせないものです。効果的に利用しましょう。
PinPの使いかたとしては、例えば、自分の作品を紹介する際に、メインの映像として自分の作品を映し、その映像の左下に話している自分を映す、といったものが考えられます。
Ustream Producerでは1台のカメラしかサポートしないため、2画面のうち1画面は、静止画や先に録画しておいたビデオなどを利用することになります。文字を表示する機能の替わりに、あらかじめテロップ用の画像を用意しておき、PinPを利用するのも効果的です。
これは裏技的なものですが、画像編集ソフトでアルファチャンネル(合成用の透過表示情報)をもったPNG形式の画像ファイルを利用してPinpを適用させると、カメラの映像の上に、ロゴマークを合成したように見せることもできます。
有料版のUstream Producer Proでは複数台のカメラを利用できるため、2台のカメラで別々の出演者を映し、PinPを利用して対談や座談会風の画面を作る、といった活用もできます。
Ustream Producerのショットはいくつでも追加可能で、ショットの一覧からはみ出てしまうときには一覧が複数行表示になり、ショットをスクロールしながら選択できるようになります。演出を考えながら、途中で挿入したい写真やビデオをあらかじめすべて追加しておき、切り替えながらライブ中継を行いましょう。
複数のショットがあるとき、それぞれのサムネイルをクリックすると配信するショットを切り替えられます。テンポのいい切り替えで、視聴ユーザーを楽しませましょう。
Ustream Producerで利用できるPinPのエフェクトは3種類です。「PinPを利用する」の手順1で紹介した「Picture in Picture」の他、2つの画像が向き合うように並ぶ[Side by Side]、PinPと同じ配置で少し斜めのパースがついて立体形に見える[Angled]の2種類があります。また、Ustream Producerでショットを切り替えるときには、切り替え用のエフェクトが選択できます。元の映像がフェードアウトして次の映像に切り替わる[Smooth]、元の映像と次の映像が重なるようにして切り替わる[Cross-dissolve]、エフェクトがなく、すぐに切り替わる[Cut]の3種類があります。