新しい課題は、関係の作り方とすばやい対応のコツ

こんにちは、松本淳(@a_matsumoto)です。「フォロワー1000人」企画も第3回。11月6日の第1回執筆時には126人だった私のフォロワー数は、約1ヵ月が経過した12月4日現在、現在850人を超えている状況です。1000人まであともう少しです!

これまで、さまざまな方法を試したり、第2回でインタビューさせていただいたコグレマサトさん(@kogure)、いしたにまさきさん(@masakiishitani)をはじめ、多くの方からご意見をいただいてきました。

そうした中で感じるのは、多くのフォロワーがいる(=多くの方にツイートを読んでもらえる)ことに価値があるのはもちろんですが、ただフォロワー数にこだわるよりも、積極的にTwitterを楽しみ、一歩踏み出してコミュニケーションを取ることがより大事だということ。これは前回も書いた通りです。そして、そのためには、いかにフォローするか、どのようなスタンスで他の人のツイートを読み、会話に加わっていくかが大切です。

Twitterは、千人、一万人といったこれまでではなかなか経験できない単位のユーザーと、フォローする/フォローされる関係を作っていけるサービスです。しかし、結局のところ大事なのは、話の合う方、自分に関心を持ってくれて、いざというときに助けてくれる方たちとの関係を作るという、現実世界と同様の、ごく当たり前のことだと実感しています。

そうした関係を核とし、その周辺で私に興味を持ってくれた方が気軽にフォローし、何かのきっかけで会話に加わってくれる、という形でフォロワーが増えていくのが理想的な姿だと言えそうです。


12月8日の時点で、フォロワーは896。注目度や、自分がどう見られているかを知るバロメーターとして、最近はリストへの登録数(35)も気にかけています

「関係を作る」ということを考えていく中で、どのようにユーザーを探し、会話をしていけばいいのか? また、リアルタイムで話題が進行していくTwitterですばやく対応するにはどうすればいいのか? といったことが、最近の新しい課題となってきています(課題がレベルアップしてきたような気がします!)。


松村太郎さん「SFCでもTwitterコミュニケーションが急増中」

そうした課題を解決するヒントをいただけることも期待して、11月24日に、慶應義塾大学SFC(湘南藤沢キャンパス)上席研究員の松村太郎さん(@taromatsumura)にお話を伺ってきました。SFCでは毎年、研究成果を一斉に発表するORF(オープン リサーチ フォーラム)というイベントを六本木ヒルズのアカデミーヒルズで開催しています。今回は、取材前に松村さん主催のTwitterに関するセッションにも参加しました。



ORF会場にて、セッション準備中の松村さん。セッションの模様は、「USTREAM」というサービスで松村さんが中継していたもののアーカイブを見ることができます
Air Open Campus 11/23/09 11:35PM, Air Open Campus 11/23/09 11:35PM taromatsumura on USTREAM. Conference


松本:私が松村さんのことを初めて知ったのは、2004年に「CNET Japan」に掲載されていたコラム「大学サークルの新歓活動もメッセンジャーで」でした。当時SFCの学生だった松村さんが、「SFCではサークルの新歓活動をWindowsメッセンジャーで行っている」と書かれているのを、大変興味深く拝見しました。

松村:SFCでは早くから学内全域に無線LANの設備が導入されていましたから、どこでもパソコンを持ち歩いてWindowsメッセンジャーを利用できました。授業中、私語をせずにWindowsメッセンジャーで話していたぐらいです(笑)。

松本:あの頃から5年が経ち、Twitterが登場して、新しいコミュニケーションの形が生まれているのではないでしょうか。授業のノートをTwitterで公開・共有しようという「sfcnote」も、そうした新しい試みのひとつかなと思います。



sfcnoteはSFCの教室名に対応したハッシュタグが付いたツイートを自動的にまとめ、授業ノートとして記録します


松村:そうですね。学内の連絡手段としてゼミ専用のSNSが用意されていたりもするのですが、日常的なコミュニケーションはTwitterに移行しつつあると感じています。重要な連絡用にはメーリングリストが使われていて、それ以外はTwitterという感じですね。

「sfcnote」のような取り組みについては、海外の大学ではさかんに行われているフリーフローエデュケーション※1の流れにあるものだと解釈しています。しかし、これまでSFCの授業はインターネットで広く公開されることを前提として設計されたものではないため、先生側には困惑もあります。

また、海外のフリーフローエデュケーションは、大学から社会へ知を還元し、大学に人を集めるという目的があります。「sfcnote」がそうしたシステムの中にあるかというと、まだそうではないかもしれません。SFCの先生のTwitter利用者は20~25人だそうで、まだ、Twitterのコミュニケーションに対する構えが不足しているということでしょう。今後、授業の再設計も必要になってくると思います。

現在、非常勤講師として教鞭を執っている嘉悦大学の授業では、履修者全員にTwitterを使ってもらい、授業中の質問や感想、課題提出をTwitterを通じて行ってもらうという、実験的な授業スタイルに取り組んでいます。学生の自発的な活動に加えて、大学や授業がオフィシャルに取り組むことも大切でしょうね。

松本:なるほど。第2回のインタビューでも、ブログなどに慣れていた人にとってもTwitterは新しい体験であり、利用法が定まるまでには時間がかかったという話がありました。個人だけでなく、学校や組織も変わっていくことが求められるのかもしれませんね。

今日のセッションでは、ノマド・ワーキング(オフィスなどの固定された場所でなく、移動を伴いながらどこででも仕事をする働き方)の話題も出ました。Twitterのようなツールの登場で人と人とのかかわり方が変わり、働き方の変化や、それを支える社会インフラの変化も求められていく、という話でしたが、大学に限らず、社会全体でもも起きつつある変化だと言えそうです。


自分のツイートから「フィードバックを得る」という経験をすることが重要

松本:Twitterによって、コミュニケーションにどのような変化が起こっていると感じていますか?

松村:基本的には、ブログなどから地続きのものだと思います。ブログはなかなか続けることが大変な面もありましたが、Twitterは比較的、楽に続けることができます。しかし、どちらにおいても、長く続けていけるかは、自分が書き込んだことから何らかのフィードバックを得る経験をできたかどうか、が別れ目であると思います。


「自分の書き込みを通じて新しい発見をする、何らかのメリットを得るといった経験を早い時期にできたら、続けられるようになりますね」

ブログの場合は、1年ぐらい書き続けていくことで、過去ログが自分に示唆を与えてくれるようになると感じます。一方でTwitterでは、フォロワーの人にちょっとした疑問に答えてもらえたとか、誰かと特定のテーマ議論ができたといった経験を、短期間でできますね。

今日のセッションでも、オンラインのコミュニケーションに慣れるコツとして「誰かに頼ってみる」とおっしゃった方がいましたが、そういうことも、少し勇気を出せば比較的簡単に経験できるのではないでしょうか。

松本:「誰かに頼ってみる」というのは大切ですね。ネットの向こう側にいる人を信頼して、自分ひとりでは解決できないことについて相談してみるということですね。この企画をスタートさせたのも、Twitterでは、林信行さんのおっしゃる「リアルタイム検索エンジン」的な、新しい規模の「誰かに頼ってみる」体験ができるのではないかというのがきっかけでした。


関係の作り方を考えることは、自分のタグラインを考えること

松村:それで、フォロワー1000人を目指して取り組んでいるわけですね。

松本:そうなんです。ただ、続けてきた中で、単にフォロワー数を求めるのではなく、相手がどのようなテーマをどのように語っているかを把握した上で、話の合う人や、自分とはちょっと違う視点を持った人をフォローし、関係を作っていくことが大切だと感じているところです。

松村: それは自分のタグライン※3を付ける、つまり自分が何に関心があってどう見られたいのか、ということを明確にしていく作業でもありますね。さらに言えば、フォローしてくれた人・フォローする人についても、ある意味「種類」がある、ということを意識すると良いかもしれません。


Twitterにおける「チアリーダー」と「バディ」の黄金比とは?

松本:フォローやフォロワーの種類、ということですか?

松村:ある人のタイムラインを見ると、その人が、リツイート※2で他の人の発言を積極的に広めていっているのか、あるいは、自ら情報を発信することに重点を置いているのかなど、ある種の傾向が見えてくると感じています。

松本:なるほど、確かにそうですね。

松村:最近Twitterをやっていて思うのは、自分がひとりで考えてツイートするよりも、他の人との対話の中で示唆を得たときに、よりおもしろいツイートができるということがあります。フォロワーの中に、そうした自分のいい発言を引き出してくれる人がいて、また一方で、おもしろい発言をリツイートによって広めてくれる人もいたらいいですよね。

松本:そういう循環が生まれてくると良いですね。

松村:リツイートで自分の発言を広げてくれる人を、僕は「チアリーダー」と呼んでいます(笑)。

松本:チアリーダー、ですか(笑)!

松村:そして、自分の発言をさらに深めてくれたり、新たな視点を与えてくれて、いい発言を引き出してくれる人は、ダイビングでの「バディ(パートナー)」のような存在ですね。

松本:会社で言えばメンター(豊かな経験を持つアドバイザー)的な存在とも言えそうです。

松村:そうです。いつも考えていたら疲れてしまいそうですが、フォロワーの中に自分にとっての「チアリーダー」と「バディ」がきちんといてくれることが、Twitterを楽しむコツではないかと思うのです。他にも、特定の分野ならば何でも知っている仙人のような存在とか、いろんな人がいますよね。そして、それぞれのタイプの人とどのような割合で付き合うか、黄金比とでも呼べるようなものがあるのではないかと感じています。


「常に意識しているのも変だし、疲れてしまうと思いますが、『チアリーダー』や『バディ』がフォロワーにいてくれたらTwitterが楽しくなると思います」

松本:そういう人はどうやって見つける、あるいは見抜けば良いのでしょう。

松村:やはりその人のタイムラインを見るのが一番わかりやすいと思います。自分よりもフォロワーが多くて、しかも、リツイートを積極的に行っている人がいたら、それはありがたいチアリーダーだと言えますよね。


ツイートの機動力を高める2つの訓練法

松本:ところで、この企画を進めていて1つ悩みがあります。フォロワーが増えたことで返信をいただくことも増え、すぐに反応したいことも多くなったのですが、出先だったりするとすぐに対応できなくてタイミングを逃がしてしまうこともあります。松村さんはiPhoneの使いこなしでも一家言あると思いますが、何かコツはあるのでしょうか?

松村:ひとつは単純に、入力のスピードアップを図ることが必要ですね。松本さん、iPhoneの文字入力って1分間にどれくらいですか?

松本:うっ、実はまだ1分間に38文字程度です......。

松村:僕は今1分あたり91文字なんですが、それでもまだじれったさを感じることがあります。時間があればトレーニングしているんですよ。


松村さんが利用しているiPhoneのフリック入力練習アプリは「FlickTrainer」。私も利用しています


松本:もうこれはタッチタイピングと同じで、訓練しかないですね。がんばります!

松村:あとはつぶやく内容、言い換えればネタに対する感性を磨くのが良いのかもしれません。以前にアナウンサーの梶原しげるさん(@shigerukajiwara)と対談をしたときに伺ったのですが、プロのアナウンスの世界だと25秒でコメントするとちょうど140文字くらいになるのだそうです(参照:【82】Twitterの140文字はしゃべりを活性化する奇跡の25秒だ! - 日経ビジネス Associe)。

もうひとつ、これは企業研修でも行われていることのアレンジですが、移動中に10個のネタを見つけてつぶやくという訓練が有効だと思います。家を出てから会社に着くまでに、10個つぶやきのネタを見つけ、端的に表現できるかどうかということですね。そういえば、最近散歩系のテレビ番組って多いですよね(笑)?

松本:確かに。普段見慣れている景色にも、いくらでもネタは潜んでいるということですね。

松村:Twitterは文字だけでなく、写真や動画も使えますから、いろいろな情報を一気に発信できます。今自分がいるその場所でしか発信できない情報というのは、他の人にとっても価値があるということを意識しておくといいと思います。


自分にとっての「チアリーダー」、「バディ」は誰だろう?

当初掲げた「年内にフォロワー1000人」という目標は、これまでのペースでいけば達成できそうです。フォローいただいた皆様、ありがとうございます!

現在のところ、フォロワーが増えて何かが変わったというよりも、Twitterをより積極的に使うようになったことで、自分の中でのTwitterへの向き合い方が変化しました。ちょっとした疑問をツイートして、返信でその答えや関連する情報をいただいたり、ハッシュタグを使って体験を共有したり、といった楽しみ方をしています。最近では、11月29日からNHKでドラマ放送が始まった「坂の上の雲」の話題が熱いです(代表的なハッシュタグは「#sakakumo」)。

また、先日は「ASCII.jp」に書いた「ASCII.jp:Google日本語入力が描くIMEの未来像とは?」という記事に、大学で自然言語処理を研究されている方から詳しいコメントをいただくという経験もできました。

この「フォロワー1000人」企画についても、応援やご意見をいただくことが多いのですが、これまであまり接点のなかった分野の専門家の方と会話する機会を持てるということは、テーマ単位で気軽に対話ができるTwitterならではの得難い経験だなあと感じました。


Yo Ehara(@niam)さんから記事にコメントをいただきました。発表した記事に対してすぐに、専門家からのコメントをいただけるのは貴重な経験でした。まさにバディのような存在と言えます


第2回の結論のように一歩踏み込んでTwitterを楽しむことに加えて、これからは、関係の考え方として「チアリーダー」、「バディ」ということを意識していきたいと思います。

松村さんは「タグライン」と表現されていましたが、自分にとっての「チアリーダー」は誰か、「バディ」は誰かを考えることは、自分自身が誰にとっての「リアリーダー」や「バディ」なのかを考えることでもあります。そして、Twitter上でどのようなことに興味を持ち、周囲とどのような関係を築いていくかを考えることにもつながっていきます。

現在も、Twitterユーザーはどんどん増えています。その中で、いかに気の合う・話の合うユーザーを見つけていくか、そして、見つけてもらうのか、今後もさまざまな方法を探り、試していきます。


ちなみに、編集部の担当者とは、オフ会の計画も話しています。この企画を通じて、フォローさせていただいた方、フォローいただいた方と、これも何かのご縁なので、リアルでも交流できる場を持てたらと考えています。詳細は追ってTwitterでお知らせします!


※1:フリーフローエデュケーション
自校の学生に対してだけでなく、ネットなどを活用して開かれた教育を進める動き。「オープンエデュケーション」とも呼ばれ、海外ではマサチューセッツ工科大学の「Free Online Course Materials | MIT OpenCourseWare」やスタンフォード大学の「Stanford School of Engineering - Stanford Engineering Everywhere」、国内では東京大学の東京大学 講義 UT OpenCourseWareが事例として有名です。

※2:リツイート
他のユーザーのツイートを自分が繰り返し、紹介すること。
※3:タグライン
キャッチコピーやスローガンなど。主に企業のブランディングにおいて使われる用語。