XバッテリーはVAIO Xの性格そのものを変えるアイテム

筆者がVAIO Xを購入してから1ヵ月以上が経ちました。実のところ、仕事の合間に紅葉の写真を撮りに出かけたりなんだりと忙しく、前回の記事を執筆してからあまり時間が経った気がしないのですが、VAIO Xはそのすばらしい携帯性で、すっかり普段の持ち物の一つとして定着しました。


紅葉を撮影中の1枚。フォトストレージやビューアーとして活躍しています


今回はそんな中で気が付いた点などをご紹介していきたいと思います。まずは、前回触れなかった大容量バッテリー「Xバッテリー」の話から始めましょう。

このXバッテリーは容量にしてLバッテリーの2倍。公称駆動時間約20.5時間という超ロングライフバッテリーです。そのデザインは実に独特で、VAIO Xの底面全体を覆う形になります。Lバッテリー(Sバッテリーも大きさは同じです)装着時には13.9mm厚のフルフラットボディだったものが、Xバッテリー装着時には底面後方が盛り上がった形に変化。重量も約765gから1,045gへとアップし、ややズッシリとしたボディに変身します。

極薄のボディにパーツを詰め込んでいるVAIO Xでは底面の冷却能力が非常に重要なため、単に全体を覆ってしまうわけにはいきません。そこで、Xバッテリーの本体後方部分はバッテリーと本体との間に空間を設けるようになっています。おかげでキーボードは常にチルトアップされることになり、その傾斜はLバッテリー装着時に小さなスタンドを展開した状態よりも大きくなります。

筆者としてはこれくらい傾斜が付いているほうが打ちやすいですね。さらにXバッテリーが底部全体をカバーすることで、ボディ全体の剛性もアップします。しっかりとした強度テストが行われているとは言え、その薄さゆえに片手で持っていると少し不安になってしまうこのB5ノートが、なかなかに安心感のあるものになります。



装着しているのがXバッテリー(右はLバッテリー)。VAIO Xではバッテリーも全体の剛性を保つパーツの一部となっていますが、底面全体をカバーするXバッテリーを装着することで剛性感がさらにアップします


Xバッテリー装着時は後方が持ち上がるため、キーボードに傾斜が付き打ちやすくなります。駆動時間も延び、使い勝手としては申し分ないのですが、携帯性は損なわれてしまいます


しかし......、重量が300g変わるだけでこんなにも違うのかと思うほど、手にしたときのずっしり感が増します。そして何より極薄のフルフラットボディを捨てることになるので、カバンへの収納事情が大きく変化し、存在すら忘れるほどだったものが、しっかりとカバンの中で存在を主張するようになってしまいました。


20時間駆動でもACアダプターは手放せない

20時間駆動ならば、ACアダプターなしでもほぼ1日使えるじゃないか、とも考えらるのですが、実際にはディスプレイ最大輝度の状態かつ、無線LANの電源を入れっぱなしにすると、8時間持ちません(素直にLバッテリーの2倍という印象。なお、輝度を1、2段階下げることで1時間以上駆動時間は延びます)。筆者は目が悪いせいか、あまり輝度を落とした状態で長時間使うのは好きではないので、徹底的に省電力設定にして使うのは、あまり気が進まないところです。

とはいえ、約1kgのPCがこれだけの時間動くというのは間違いなくスゴイことです。しかし「今日はXバッテリーだからACアダプターは置いていこう」という気にはなれず、Xバッテリーの分だけ他の荷物が減らせる、というわけにはいきませんでした。

海外旅行などで長時間充電のできない飛行機に乗ったり、朝現地着の深夜バスで旅行に出かけたりといったシチュエーションではXバッテリーの出番になるでしょうが、それ以外だとLバッテリーの可搬性を捨てる気にはなれず、Lバッテリー+ACアダプターの持ち歩きで満足、というのが現時点での感想です。

なお、いずれのバッテリーも、閉じる際にVAIO Xを休止状態にしておくと、これまで触れてきたどのノートPCよりも消費電力(自然放電)が少ないという印象です。金曜日に仕事場で満充電して持ち帰り、土日使わずに、月曜日に起動したらバッテリー残量が97%と表示されたときにはかなりおどろきました。旅行に持っていく際には、こうした未使用時のバッテリーの持ちのよさは非常に頼もしいところです。




前回の記事での課題でもあったXバッテリー装着時用のケース選びは、VAIO Xの薄さを生かせると思えるものに出会えなかったため、カメラ用のラッピングクロスを採用(写真はソニーの一眼レフ「α」シリーズ用の「LCS-WR1AM」)。カラーはホワイトにしたのですが、汚れが目立ちやすいので、ブラウンかブラックのほうがおすすめかも?


VAIO type P用のACアダプターも使えた

ちなみに、標準ACアダプターは約150gと軽量ですが、試してみたところVAIO type P用のACアダプター(約108g)も使用することができました。

厳密には同じ10.5Vタイプながら、VAIO X用の2.9Aに対して1.9Aと出力が低いのですが、今のところ特に問題は感じられません(光学ドライブなどの外付けUSB機器使用時に動作不安定になることがあるそうです)。

VAIO type P用ACアダプターのメリットはVAIO X用よりも軽いことと、純正のウォールマウントプラグアダプター(家庭用コンセントに直接アダプター本体を接続するアタッチメント)が利用でき、配線がすっきりすることです。

新規で購入するとどちらもソニースタイルでは同額の13,800円となり、わざわざ他モデル用の新規購入を人に勧めるのは気が引けますが、type Pユーザーの方はぜひ試してみてください。



使用は自己責任ということになりますが、type P用のACアダプタも使用可能。ウォールマウントアダプタを使えば、ほんの少し持ち運びが楽になります

WiMAXモジュールへの未練と、モバイル無線LANルーターとの組み合わせ

VAIO Xのオーナーメードでは、高速ワイヤレスインターネット接続の「WiMAX」対応通信モジュールも選択できます。無線LAN機能のみの場合とは1万円の価格差なのですが、筆者はこれは選択しませんでした。なぜかと言うと、すでに家や仕事場には無線LAN環境が整っており、あえてWiMAXを利用する理由が見当たらなかったのです。

公衆無線LANサービスを利用すれば新幹線内(対応車両を選ぶ必要はありますが)でも利用できますし、全国チェーン系のビジネスホテルなら、たいていは有線LANが整備されています。この夏に沖縄の離島に行った際には、数年前はケータイもNTTドコモ以外入らなかったような宿に、有線LANが整備されていて驚きました。

しかし、WiMAX対応エリアも順次増えており、VAIO Xに搭載できるWiMAXモジュールは下り最大13Mbpsとのことで、条件さえよければ非常に快適な通信ができるでしょう。料金も必要なときに払えばいいだけ※1です。どうせなら搭載しておけばよかったか......と実は後でちょっと思ったりしました(苦笑)。


新幹線内の無線LANはちょっと重い印象ですが、Lバッテリー搭載のVAIO Xなら、東京-新大阪間(約2時間30分)を余裕を持ってディスプレイ輝度最大のままで使い続けることができます



筆者のVAIO Xの電源は、カバーをそのまま閉じるとスリープ、電源ボタンを押すと休止になる設定。なるべくこまめに休止にして、移動時の消費を抑えるようにしています

そのような後の祭りとなったWiMAXモジュールのことを思いつつ、先日購入してしまったのがイー・モバイルの「Pocket WiFi(D25HW)」です。

WiMAXより対応エリアが広く、これ1台で5台までの機器を無線LANでインターネット接続できるという点に惹かれました。使ってみるとなかなかおもしろく、筆者の持ち物ではVAIO XなどのノートPCのほか、iPhoneや携帯ゲーム機も気軽にインターネット接続が可能になります。

解像度はかなり落とされますが、Windows 7の新機能「リモートメディアストリーミング※2」を活用して、自宅のWindows 7マシンで録画しているテレビ録画データを、外出先で見ることだって可能です。


イー・モバイルのPocket WiFi(写真中央)はVAIO Xのモデム、または5台まで接続可能な無線LANアクセスポイントとして使えます。月額使用料は定額データプランで4,980円から



公衆無線LANがつながらない場所でも、Pocket WiFiを使ってVAIO Xをすぐネットに接続。旅行中に内蔵GPSと連動して周辺の情報をチェックすることもできます。ただ、VAIO Xの内蔵GPSは、GPS内蔵ケータイなどに比べてそれほど精密ではなく、近いときでも大通り1本分くらいは外れて表示される感じ。周辺情報を拾うにはいいですが、細かい道案内役としては若干不安があります


VAIO XのWebカメラがきっかけで、親戚内テレビ電話ネットワークが

ここで余談を少し。VAIO Xの機能のうち、意外なところで役に立ったのが、ディスプレイ上に標準で搭載されているWebカメラでした。

先日、両親から「札幌に住んでいる孫(筆者の姪)とテレビ電話がしたい」と相談されたので、両親のデスクトップPCにWebカメラを取り付け、VAIO XにSkypeをインストールし、すぐに「こんなのでいい?」とサンプルを見せることができました。

正直なところ、これまで購入したVAIO type Zでもtype PでもWebカメラを搭載したことはなく、VAIO XのWebカメラはジャマだなあと思っていました。しかし使ってみると、これがなかなか便利なものです。31万画素というカメラの解像度は、サードパーティーから発売されている130万画素や200万画素のものと比べると見劣りしてしまいますが、筆者の顔をそんなにきれいに映されても困るので(?)必要十分です。

思いがけず、VAIO Xを始まりとして、親戚内テレビ電話ネットワークが構築されることになりました。両親の家と札幌の姪の家にはロジクール製の200万画素Webカメラをプレゼントし、高解像度映像でのテレビ電話ができるようにしました。

VAIO XとPocket WiFiと組み合わせると、どこでもテレビ電話に参加できます。あんまり目立つ場所でVAIO Xを開くのは、はばかられますけどね。



標準搭載の31万画素Webカメラ。これと内蔵マイク(どこにあるかは外からは見えません)で、すぐにインターネットテレビ電話が可能。オーナーメイドでも、これを外した構成にはできません


片手で持って気軽にSkypeテレビ電話。VAIO type Pでも同じことは可能ですが、こちらのほうが映像は見やすいはず。両親にVAIO Xごとテレビ電話用にプレゼント......するのはちょっと懐具合が

起動したまま手で持つことが多くなって気が付いたのが、電源ボタンの配置。バランス的にヒンジ近くが持ちやすいので間違えてつい押してしまいます。ボタンを休止に割り当てていると、ちょっと面倒ですね

一度使ってしまったら、もう大きなPCには戻れない

筆者はこれまで何台もVAIOを購入してきましたが、B5サイズのモデルを購入したのは、1999年発売の「VAIO N505」以来です。VAIO Xに飛びついたのは、プレミアムモデルであったVAIO 505 Extremeを除けば、このVAIO Xが久々に登場したフラットボディの1スピンドル機(SSD搭載なので正確には0スピンドルですが)で、しかもバイオノート505シリーズより薄い、待望の製品だったからでした。まさかここまで薄いノートを所有できる日が来るとは、思いもよりませんでした。

もちろん、VAIO Xがパーフェクトなのかと言えば、そういうわけではありません。薄さのためにはやむをえないとはいえ、キーボードは昔のバイオノート505シリーズのような形のほうが好みですし、マシンパワーも今時のマシンとしては物足りません(いわゆるネットブックなどを基準とすれば、これこそが今時の水準なのですが)。今後、もう少しグラフィックス性能を強化したVAIO Xが発売されるのなら、筆者は機を見て買い換える気でいます。

それにしても、このVAIO Xのモバイル性能は、一度慣れてしまうとほかのノートPCを持ち歩く気にすらならなくなります。そもそもVAIO Xは持ち歩いていることすら忘れそうになるのですから、次元が違うと言ったところ。マシンパワーは断然これまで使っていたVAIO type Zのほうが上ですが、そちらはこの1ヵ月で、すっかり家でお留守番役になってしまいました。

type Zだけでなく、以前はよく使っていたエプソンのフォトストレージ「P-7000」も同様にすっかり出番を失っています。160GBのHDDを内蔵したP-7000は、液晶が美しく、重量も約433gと軽量なのですが、ややずんぐりした形状なので、VAIO Xのほうがカバンの中ではジャマにならず、バッテリーも長持ちするのです。これまでは1泊2日程度の旅行ならノートを持たずにP-7000で、ということもあったのですが、完全に逆転した形になりました。

最近は携帯ゲーム機ですら無線LAN接続できるものが当たり前になり、Webブラウザを使うだけならノートPCは必要なくなってしまいました。旅行時の持ち物重量配分で言うとカメラ機材が大部分を占めることが多い筆者にとっても、重くかさ張るノートはできれば避けたい存在。ライターという職業にあるまじき所業なのですが、そんな中でノートPCが居場所を勝ち取るには、このVAIO Xのようなマシンが現在の究極の形なのだろうと思います。

それほどパワーはないけれど、バッテリーが長時間持ち、薄くてジャマにならず、どのデジタルガジェットとも連携可能なベースマシンになる。VAIO Xは間違いなくお勧めの「モバイル」ノートです。



出番がなくなったエプソンのフラグシップフォトストレージ「P-7000」。これにはこれのよさがあるのですが......256GBのSSDを積んだ筆者のVAIO Xなら保存できるデータ量も負けません


ケータイ、デジカメ、携帯ゲーム機など、大量のモバイル機器と一緒に持ち運ぶにはVAIO Xくらいコンパクトなノートが理想的。コンパクトさと実用性を兼ね備えたPCとして、当分手放せない存在になりそうです


※1:UQ WiMAXでは、月額課金のプランの他に、600円で24時間利用できる「UQ 1Day」というプランも提供しています。
参照:UQ WiMAX | 料金/サービス

※2:インターネット経由で外部から家庭内にアクセスし、自宅のパソコンにある音楽や動画コンテンツを再生する機能。