ユーザーの価値観の理解

Instagramで映える被写体「インスタジェニック」を知る

「リア充アピール」できることが価値になる

Instagramマーケティングには、ユーザーの気質や価値観を理解することが必要です。ユーザーの価値観を表す重要なキーワードに「インスタジェニック」があります。Instagramと「フォトジェニック」(写真映えする)を掛け合わせた造語で、Instagramで映える被写体となるモノやコト、という意味で使われています。

Instagramはもともと写真好きが集まるSNSなので、「きれいな写真を共有する」という基本の共通認識があります。そのうえで「いいね!」やコメントのやりとりをするので、そうした反応をしやすい/集めやすい写真が重視されます。

ただフォトジェニックなだけでなく「インスタジェニック」だというとき、そこには2つの条件があります。1つは、色彩豊かだったり、形が特徴的だったりして、一瞬で見る人を引き付け、「いいね!」させるインパクトがあることです。

もう1つは「リア充アピール」ができることです。「リア充」とは「リアルが充実」を縮めた言葉で、実生活が充実している、楽しんでいる様子を指します。例えば、人気ブランドのパーティーや高級ホテルのプールなど、被写体そのものに価値がある写真や、大勢の仲間と楽しんでいる様子を撮った写真は、リアクションをもらいやすく、ちょっとした自慢にもなります。

では、一般的なマラソン大会で走る写真と、「カラーラン」の大会で全身原色にまみれて走っている写真の、どちらがインスタジェニックでしょうか? 最近は若年層を中心に、カラーランやバブルランなどの「◯◯ラン」が大流行しています。その背景には、「自分にはこんなに友達がいて、楽しそうで、リア充なんだ」とアピールしたい参加者の心理があるでしょう。つまり、カラーランの写真のほうがインスタジェニックなのです。 このように、インスタジェニックとはただ被写体を選ぶ基準になるだけでなく、「普通に走るよりもカラーランで走りたい」というように、Instagramユーザーの行動や購買を方向付ける指針にもなっています。

カラーランはインスタジェニックの典型例

カラーラン(@thecolorrun
真っ白な服を着てスタートしたランナーが、コース内に設けられた原色のカラーパウダーを浴びながら走る「カラーラン」。「地球上でもっともハッピーな5km」というコンセプトで、参加者全員で走ることを楽しむ。Instagramでカラーランの模様を伝える写真が公開されている。

HINTInstagramユーザーの「指を止める」写真の条件は?

一般的なInstagramユーザーは、50人程度から多くて1,000人ほどのユーザーをフォローして、毎日何十枚、何百枚という写真を見ています。写真がメインなのでじっくりと文字を読むことはなく、スマートフォンの画面を素早くスワイプしてスクロールしながら、次々と写真を見ていくことが多くなります。

こうしたユーザーが「指を止める」、つまりスクロールせずに特定の写真に注目する要素は2つあります。1つは、自分と関係のある写真だと認識すること。「自分ごと化」とも言いますが、仲のいい友達や好きな有名人が投稿した写真など、強い関心の範囲内にある写真には指が止まります。もう1つは、純粋に写真がきれいで、見た瞬間に引き込まれる写真であることです。

前者の「自分ごと化」された写真は、第3章で解説するユーザー巻き込み型キャンペーンでの狙いとなります。後者の「きれいな写真」を撮る技術については数々の解説書がすでにありますが、本書でもいくつかのヒントを提供します。 「インスタジェニック」とは、いわば、この2つの要素をミックスした価値観です。ユーザーの関心事を、インパクトのある写真として撮ることで、多くの人の指を止めることができます。