1台あたり1万円以上お得。このチャンスをどう生かす?
無償アップグレードの期限となる2016年7月29日が、いよいよ間近に迫ってきました。
2015年に発売されたマイクロソフトの最新OS「Windows 10」は、発売から1年間の期間限定で、Windows 7/8.1からの無償アップグレードが可能になっています。この件に関するニュースも増え、「どうしようか?」と真剣に悩んでいる人も多いことでしょう。
マイクロソフトでは「毎月10日はWindows 10の日」と銘打ち、アップグレードを推奨するキャンペーンを展開しています。
「Windows 10 の日」キャンペーン - Microsoft atLife
従来、Windowsをアップグレードするには、新しいバージョンを購入する必要がありました。Windows 10のパッケージ版の実売価格は、「Home」が19,008円、「Pro」が27,864円(いずれもMicrosoft Storeでの税込価格。2016年6月9日時点)。これだけの費用を支払わずに最新のOSが手に入るのですから、お得であることは間違いありません。家族用、仕事用など、アップグレードしたいパソコンが複数台ある場合は、なおさらです。
OSとしての出来が悪いなら、アップグレードを見送る手もあるでしょう。しかし、登場から1年が経過し、すでに多数のユーザーがいるWindows 10の評判は、決して悪いものではありません。起動やアプリなどの動作は軽快で、伝統的なWindowsの操作体系を受け継ぎ、音声アシスタント「Cortana」(コルタナ)をはじめとした革新的な機能も備え、今までのWindowsとの互換性も十分に確保されています。
音声アシスタント「Cortana」を使っている様子(Insider Preview Build 10532で撮影)。Windows 10の代表的な新機能です。
もちろん、互換性は万全とは言えません。パソコンに付属していた年賀状ソフトやDVD再生ソフト、古いバージョンのまま使い続けている会計ソフトなどは、Windows 10にアップグレードすることで使えなくなる可能性があります。
しかしながら、Windows 10で動作しないソフトウェアは、そもそもメーカーによる製品のサポート自体が終了しているケースが多いのも事実です。そうした製品はセキュリティ上のリスクが大きく、脆弱性を悪用するマルウェアも増えています。
サポートが終了したソフトウェアは、Windows 10で動くか動かないかを論ずる以前に、使おうとすること自体がおすすめできません。であれば、いっそOSごと最新のバージョンに移行してしまったほうが得策とも言えます。
7ユーザーは「東京オリンピックまで」が1つの判断材料
とはいえ、「なかなか決断できない」「忙しいから時間がない」というのも本音でしょう。今のパソコンをそのまま使えるなら手間もかかりませんし、二の足を踏んでしまう気持ちも分かります。
では、質問を変えましょう。
今使っているパソコンを、いつまで使い続ける予定ですか?
壊れるまで? 次の購入資金が貯まるまで? いろいろ事情はあると思いますが、その判断基準の1つとして考えてほしいのが、東京オリンピックが開催される予定の2020年です。以下の表を見てください。
Windowsの延長サポートが終了する期限
OS | 延長サポート終了日 |
---|---|
Windows XP | 2014年4月8日 |
Windows Vista | 2017年4月11日 |
Windows 7 | 2020年1月14日※ |
Windows 8/8.1 | 2023年1月10日※ |
※Skylake搭載PCは2018年7月17日まで
Windowsには「メインストリームサポート」と「延長サポート」という2種類のサポート期間が設定されており、延長サポートが期限を迎えると、重大な不具合を修正するための更新プログラムの提供が終了します。多くのユーザーが現役で使っているWindows 7の延長サポートは、東京オリンピックが開催される2020年の1月が期限となっています。
2014年には、当時まだ多くのユーザーがいたWindows XPのサポートが終了しました。OSのサポートが終了すると、不具合や脆弱性が発見されても修正されず、マルウェアの格好のターゲットになります。また、オンラインバンキングなどのWebサービスも、Windows XPでは利用できないケースが増えています。
よって、Windows 7を使っている人は、今から4年のうちにパソコンを買い換えるつもりであれば、「Windows 10にアップグレードせずに使い続ける」という選択もありでしょう。現時点でアップグレードによる互換性などのリスクを負うことは避け、新しいパソコンを購入したときに環境を移行し、古いパソコンは処分してしまえばいいのです。
一方、2020年以降も同じパソコンを使い続けるつもりなら、今が思案のしどころになります。
4年後、サポートが終了したWindows 7から、Windows 10へと移行する必要があるのは明白です。しかし、Windows 10にアップグレードするには、有償で購入しなければなりません。愛用しているソフトはもちろん、オンラインバンキングなどのサポートも順次終了していき、セキュリティ上のリスクは日に日に高まっていきます。
つまり、今アップグレードしないと、問題を先送りしただけになる可能性が高いのです。検討するための時間は稼げますが、どのみちアップグレードは避けられず、支払わずに済んだはずの費用がかかることになってしまいます。
Windows 10の「今」を把握しよう
無償アップグレードの終了まで、まだ時間はあります。単に費用を抑えたいがために、やみくもにアップグレードしてしまうのも考え物なので、しっかり準備して納得してから、Windows 10に移行するのがいいでしょう。そのためには、アップグレードによって何が問題になるのかを、事前に把握しておくことが大事です。
使っているパソコンの機種やソフトによって、問題とその対処法は異なってくるので、各メーカーが公表している情報をチェックしてみましょう。特に確認しておきたいポイントは以下の通りです。
- Windows 10へのアップグレード対象機種かどうか
- Windows 10に対応したBIOSや、パソコンの内蔵機器(Wi-Fi、SDカードリーダーなど)のドライバーが提供されているか
- パソコンに付属していたソフトや、自分で購入したソフトのアップデートが提供されているか
Windows 10が登場した当初は、パソコン、周辺機器、ソフトウェアの各メーカーとも、自社製品の対応状況を把握しきれていなかったうえ、対応に必要なドライバーや更新プログラムの提供も間に合わない状況がありました。
しかし、登場から1年が経過した今、この状況はかなり改善されています。メーカー製のパソコンで、Windows 10へのアップグレード対象となっている機種であれば、ドライバーやソフトウェアに加えて、移行用のツールなども用意されている場合があります。
オンラインバンキングなどのサービスも、現在では多くがWindows 10からの利用に対応しています。事前にしっかりと情報収集し、必要な準備を整えておけば、アップグレードしてから後悔することはないはずです。
将来のより大きなリスクを避けるために
Windows 10にアップグレードする/しないを冷静に考えてみると、どちらにもリスクは存在します。しかし、手元のパソコンを長く使っていくつもりなら、将来やってくる大きなリスクを避けるためにも、今の段階でWindows 10にアップグレードしておくメリットは大きいはずです。
費用がかからないだけでなく、登場から1年が経過し、ユーザーとメーカーの双方でノウハウが蓄積されてきた今は、Windows 10へのアップグレードを決断する最適なタイミングとも言えるでしょう。今のうちにしっかりとした準備や下調べをして、新しいパソコン環境への移行にチャレンジしてみてください。