ヒートマップツール」とは、Webサイト内のページにおけるユーザーの動きをサーモグラフィのように可視化する解析ツールのことです。 ここでは全3回にわたって、ヒートマップツールの価値や活用方法、ほかのツールとの使い分けについて紹介していきます。

  • 第1回:ヒートマップツールで何ができるかを知ろう(本記事)
  • 第2回:(2017年4月公開予定)
  • 第3回:(2017年5月公開予定)

第1回:ヒートマップツールで何ができるかを知ろう

まずはヒートマップツールの実際の画面を見ながら、「できること」と「できないこと」を把握しましょう。ヒートマップには大きく分けて、以下の2種類があります。

クリックヒートマップ

クリックヒートマップ(Ptengine)

ユーザーがクリックした箇所と回数によって色が変化するヒートマップです。リンクを配置していない箇所でも、クリックされたかどうかを計測できます。また、マウオーバーの回数や時間、クリック率も表示できます。(提供:Ptengine)

アテンションヒートマップ

アテンションヒートマップ(Ptengine)

ユーザーがページ内のどの箇所に関心(アテンション)を持っているかを濃淡で表すヒートマップです。よく見られている場所ほど赤く表示されます。(提供:Ptengine)

アクセス解析ではわからないデータを直感的に把握

現在では多くの企業がWebサイトを運営しており、そのサイトのデータを用いた改善が求められるようになっています。改善のためのもっとも一般的なツールは「Googleアナリティクス」に代表されるアクセス解析ツールですが、最近ではヒートマップツールにも注目が集まっています。

その理由は大きく2つあります。1つは、アクセス解析ツールでは把握しづらい「ページ単位」の「ユーザーの動き」がわかることです。アクセス解析のデータだけでは、該当ページの離脱率はわかっても、該当ページ内でユーザーがどう動いたかは把握できません。

もう1つは、アクセス解析ツールでは得られない直感的なデータが手に入ることです。たとえば、アクセス解析ではページ下部にマウスの動きが集中しているといった傾向を捕捉できませんが、ヒートマップツールでは視覚的に表現することが可能になっています。

ヒートマップで得られるデータは3つある

ヒートマップツールでは、個々のユーザーの「クリック」や「マウスの動き」をリアルタイムに取得し、大量のデータをWebページ上にマッピングすることで、サーモグラフィのように可視化します。これらのデータから、以下の3つのことがわかります。

ページのどこがクリックされているか

Webユーザビリティの世界では「ひと目でクリックできるところがわかるか」という点が非常に重視されますが、そもそも「クリックできるところがわからない」「クリックできると思ったらできない」というサイトも多いものです。

もし「クリックできない要素なのにクリックしている」ことがわかれば、その箇所にリンクを配置するなどして使い勝手を改善できます。こうしたデータは前掲のクリックヒートマップでわかります。

ページのどこが見られているか

一方のアテンションヒートマップでは、「見てほしい要素がちゃんと見られている」ことの確認や、「あまり重要と思っていなかった情報が実は見られている」といった気づきの発見が可能です。サイト内の要素のレイアウト変更などの参考になります。

アテンションヒートマップのデータは、ブラウザーでユーザーが閲覧したエリアの滞在時間を基にしています。ユーザーがページで閲覧したエリアをその場所での滞在時間から総和し、ヒートマップの濃淡で表示しています。この機能によって、直帰ページの滞在時間が正確に計測できるというメリットも生まれています。

ページがどこまでスクロールされているか

リスティング広告で用いられる「縦長のランディングページ」などでは、ユーザーのスクロールの度合い(≒どれほど興味を持ったか)が非常に重要になります。

これがわかれば「この広告から来たユーザーはスクロールしていない(興味が薄い)」「画面上部のメッセージの 興味づけが足りていない」といった仮説を立てられます。ヒートマップでは、ユーザーの何%がどこまでスクロールしたかを視覚的に表現することも可能です。

ヒートマップではユーザーの心理はわからない

一方で、ヒートマップツールだけではわからないこともあります。その1つが「なぜ注目しているのか(クリックしているのか)」という、ユーザーの「心理データ」です。

予想外の要素が注目されていたとしても、それが「その要素に興味を持ったから」なのか、「単に内容がわからなかったから」なのか、あるいは「ポジティブなのか、ネガティブな印象なのか」といった心理面の状態を得るのは難しいと言えます。

マーケティングにおける行動データと心理データ

マーケティング界の権威、フィリップ・コトラー氏によると、マーケティングのデータは大きく「行動データ」(behavior)と、その裏にある「心理データ」(attitude)があるとされます。このうちの心理データは、ヒートマップだけでは把握できません。

もう1つは、「そもそも存在しない要素の要否」です。Webサイトの改善を行う際には、「該当ページにユーザーが求めているコンテンツがない」というケースも想定できますが、ヒートマップだけでは、それが正しいかどうかを判断することは不可能です。

よって、ヒートマップツール単体でWebサイトの改善策を考えると、要素の位置やリンクの配置といった個別の機能に留まりがちです。ヒートマップツールをはじめ、アクセス解析ツールが導き出すのは「現状に対するユーザーの行動データ」にすぎません。

サイト内の「ユーザーの心理」や「新しいアイデアや要素の良し悪し」を検討したい場合は、ユーザーテストやアンケート、A/Bテストといったほかの手法との併用が望ましいと言えるでしょう。

マーケティングにおける行動データと心理データ

Webサイトやアプリの分析を、アクセス解析、アンケートやユーザーテスト、ヒートマップの3手法を用いた改善までのフロー。各手法を連携して使うことで、分析の精度を高めることができます。