こんにちは、ITジャーナリストの高橋暁子です。
子どもに防犯や見守り用の端末を、と考えている保護者は多いでしょう。登下校や塾の行き帰り、ひとりで遊びに行っているときなどに、自宅から子どもの居場所を確認し、必要に応じて連絡もできる防犯グッズがあれば安心できます。
こうした端末としてよく知られているのは、大手携帯電話会社のNTTドコモ、au、ソフトバンクが提供しているキッズ携帯です。また、警備会社のセコムやALSOK(綜合警備保障)が提供しているGPS端末を使った見守りサービスも、子どもの見守り用に使えます。
ここでは大手携帯電話3社のキッズ携帯と、セコムの「ココセコム」、ALSOKの「まもるっく」を比較し、何ができるのか、各社のサービスにどのような違いがあるのかを比較します。※本記事は2018年5月現在の情報に基づいています
位置確認と通話・通信機能で子どもの安全を見守る
はじめに、キッズ携帯やGPS端末でできることを整理しましょう。基本的なサービスには「位置の確認」と「通話」(または通信)の2つがあります。
位置の検索
位置の確認機能では、帰りが遅くて気になったときなどに、子どもの現在位置を親のスマートフォンやパソコンからWebページを介して検索し、どこにいるのかを確認できます。
各社のキッズ携帯とまもるっくでは、あらかじめ設定した地点(学校や塾など)に着いたときや、設定した時刻になったときに、親にメールで通知する機能があります。子どもの行動を毎日自動で確認でき、安心できる機能です。
まもるっくの位置をスマートフォンから検索したところ。現在端末がある場所がわかり、学校や塾にいるのか、遊んでいるところか、帰宅途中か、などを確認できます。
通話
もう1つの基本的なサービスに「通話」があります。各社のキッズ携帯は家族間の通話が無料となります。まもるっくは親などの指定した電話番号からの着信だけが可能で、外出中の子どもにどこにいるのか聞いたり、帰ってくるように伝えたりできます(まもるっくからの発信はできません)。
ココセコムは通話機能がありません。その代わり、親から発信して子どもが持つ端末のバイブを振動させ、子どもからの応答を確認できる「しらせてコール」や、一定時間ごとにバイブを振動させ、その都度応答を確認する「みつめてコール」という通信機能が利用できます。
キッズ携帯は安さが魅力。SMSも利用できる
次にキッズ携帯の特徴を見ていきましょう。キッズ携帯は名前のとおり子ども向けの携帯電話で、小学校低学年の子どもでも扱いやすい小型の端末に、携帯電話として最低限の機能に加え、見守り用の機能も搭載しています。
携帯電話会社が取り扱っており、親の契約のオプションサービス的な位置付けで安く利用できることが魅力です。下の比較表には通常の端末代金や月額料金を記載していますが、実際には各種キャンペーンによって端末の代金や月額料金が無料になる場合も多くなっています。
また、携帯電話なので通話だけでなくSMS(メッセージ機能)が利用できることも利点です。小学校低学年の子どもでも簡単な文字入力は覚えられるので、SMSで連絡を取り合うことができます。
難点は、親の契約が前提になることです。NTTドコモとソフトバンクは親の契約が必須で、子どもだけの契約はできません。auは子どもだけだけの契約も可能ですが、親向けのサービスとして提供される位置情報の検索や家族間の無料通話が利用できず、メリットが大きく減ります。
学校や塾で携帯電話の持ち込みが禁止されている場合は、キッズ携帯も持ち込めないことがあります。学校や塾に持って行かせたい場合は、あらかじめ確認しておきましょう。
別途契約で利用できる現場急行サービス
auとソフトバンクでは、別途契約することで警備会社の現場急行サービスを利用できます。これは、端末からの通報を受けて最寄りの警備員が駆けつけ、保護などの必要な対応をするものです。
auは、セコムの現場急行サービスを月額無料で利用でき、現場急行の料金は1回あたり5,000円(消費税別)となります。
ソフトバンクはCSP(セントラル警備保障)の「CSPケータイdeアシスト」を利用できます。月額料金は300円、現場急行の料金は1回あたり5,500円(いずれも消費税別)です。
キッズ携帯は「携帯電話であること」が特徴。通話のほかSMSも利用でき、電話帳も備えています。
キッズ携帯 サービス比較表
キャリア/製品名 | NTTドコモ キッズケータイ F-03J | au ジュニアケータイ mamorino 4 | ソフトバンク キッズフォン |
---|---|---|---|
端末代金 | 10,368円(一括購入時。消費税込み) | 16,200円(一括購入時。消費税込み) | 18,200円(一括購入時。消費税込み) |
契約手数料 | 3,000円 | 3,000円 | 3,000円 |
月額料金 | 500円(2年契約) | 500円(2年契約 mamorino4専用プラン) | 490円(2年契約 みまもりケータイ用通話定額ライト) |
位置確認 | 月額基本料金200円。検索1回あたり5円(イマドコサーチ) | 月額基本料金300円(安心ナビ auスマートパス会員は無料) | 無料(みまもりマップ) |
移動通知 | 指定エリア、指定時刻で通知 | 指定エリア、指定時刻で通知 | 指定エリアで通知 |
通話 | 20円/30秒(家族間は無料) | 20円/30秒(家族間は無料) | 20円/30秒(家族間は無料) |
SMS | 3円(受信は無料) | 3円(受信は無料) | 3円(受信は無料) |
親の契約 | 必要 | なくても可(ただし位置確認など親向け機能が利用できない) | 必要 |
その他の主な機能 | 防犯ブザー/見守りアラート | 緊急通報メール/現場急行サービス(セコム) | 現場急行サービス(CSPケータイdeアシスト。別途契約が必要) |
※端末代金以外の金額は消費税別です
GPS端末は「見守り」に徹したシンプルさが魅力
一方のGPS端末は、携帯電話とは違い「見守り」のために作られている端末です。子どもが自分から電話をかけることはできず、SMSなどの機能もないため、子どもは本当に「持っているだけ」でOK。携帯電話の持ち込みを禁止している学校でも、GPS端末なら許可される場合があります。
現場急行サービス(駆けつけサービス)が基本のサービスとして利用できるのも、キッズ携帯にはない特徴です。実際に利用する場面がないに越したことはありませんが、いざというときを考えると安心感があります。
GPS端末の料金は、一見するとキッズ携帯よりも高めです。ただし、キッズ携帯の安さは親の契約のオプションサービス的な意味合いがあるのと、2年契約を前提とした料金設定となっているため。GPS端末は警備会社との独立した契約となるため、携帯電話会社にしばられずに利用できることも魅力だと言えます。
よって、親が格安スマホを利用すれば、家計の負担をトータルで抑えることも可能です。また、GPS端末を契約期間の途中で解約することになった場合も、解約金はかからないか、キッズ携帯ほど高くありません。
ココセコムとまもるっくの違い
ひとまとめにして「GPS端末」と呼んでいますが、ココセコムとまもるっくは、かなり異なる性質を持ったサービスです。
ココセコムは、端末を振動させて応答を受け取る「しらせてコール」や「みつめてコール」を利用できますが、通話機能を持ちません。また、位置情報を検索できる回数が料金プランによって異なり、もっとも月額料金が安い「毎月10回プラン」の場合は1カ月に10回まで。超過分は1回100円となります。
例えば、通学の距離が短めだったり、塾への電話などほかの連絡手段があったりして、いざという場合にだけ備えられればいいと割り切れる場合は、ココセコムは安い料金で十分な機能を持っていると言えます。
一方のまもるっくは、端末からの発信はできませんが、親の電話からの発信で通話が可能です。また、位置情報の検索は何回でも無料です。親が日常的に位置を確認したり通話したりしたい場合は、まもるっくの方が適しています。
まもるっくの端末。中央のもっとも手が届きやすい位置に[緊急・通話]ボタン(ALSOKのコールセンターに通話、または緊急通報)があるのが、キッズ携帯との大きな違いです。
GPS端末 サービス比較表
提供会社/サービス名 | ココセコム | まもるっく |
---|---|---|
端末代金 | 2,000円(充電器代。本体はレンタル) | 0円(レンタルプラン) 21,500円(お買い上げプラン) |
契約手数料 | 5,000円(Web申し込みの場合4,500円) | 4,500円(Web申し込みの場合4,000円) |
月額料金 | 900円(毎月10回プラン) 1,900円(毎月30回プラン) 2,900円(毎月60回プラン) | 2,000円(レンタルプラン) 1,100円(お買い上げプラン) |
位置確認 | プランの上限回数超過分1回につき100円 | 何回検索しても無料 |
通話 | なし | 登録した番号からの着信のみ。通話無料 |
現場急行サービス | 10,000円 | 6,000円 |
※金額は消費税別です
必要なのは「携帯電話」? 「防犯サービス」?
見守り用の端末を選ぶときには、料金や細かな機能の違いもありますが、子どもからも発信できる携帯電話を持たせたいのか、現場急行サービスを含む防犯サービスがほしいのかを、まず考えてみてください。
キッズ携帯は、子どもから電話やSMSの送信ができるので、「塾が終わったら電話する」「遊びに行くときにはSMSで知らせる」のように、親子で使い方のルールを決めて利用できます。携帯端末を利用したコミュニケーションに慣れさせたい場合に向いていると言えます。加えて、持たせておけばGPS端末のように位置の確認も可能になります。
GPS端末は子どもからのコミュニケーションはできませんが、持たせておくだけで役に立つ端末で、現場急行サービスも利用できます。携帯電話を使わせるにはまだ早いと考える場合や、学校で携帯電話の持ち込みが禁止されている場合には、GPS端末が適しています。実際にGPS端末を学校に持ち込めるかは、事前に確認や相談をしておきましょう。
auとソフトバンクのキッズ携帯は、現場急行サービスに契約することで、携帯電話と防犯サービスを両立できます。子どもから連絡させるようにしたい、なおかつ現場急行サービスもほしいという要望に応えられる端末です。
「いざというとき」が来る前に検討しておきたい
以前、よく買い物に行っているショッピングモールで小学校低学年の息子が迷子になり、真っ青になったことがありました。
慣れた場所で迷子になるなんて予想もしていませんでした。そのときは何も連絡を取れる手段がなかったため、名前を呼んで探すしかありません。幸いにも無事に発見でき、話を聞いたところ、通り道の大道芸に気を取られているうちに、私を見失ってしまったそうです。
子どもがひとりで遊びに行ったまま帰らず、何の連絡手段もないとしたら、途方に暮れてしまいます。
「いざというとき」はいつ来るかわかりません。しかし、そんな場合でも子どもと連絡を取ったり、大まかな居場所を確認したりできる端末があれば、あわてずに済みます。
一番大切なのは、子どもの安全です。保護者ができることには、日ごろの言い聞かせなどいろいろとありますが、見守り端末を持たせることも、安全のためのきわめて有用な手段となります。