本コンテンツでは、無料で使えるBIツール「Googleデータポータル」(旧:Googleデータスタジオ)の使い方を連載形式で解説していきます。隔週ペースで更新予定。
あらゆる業界に浸透する「BI」
ビジネスの現場において、「BI」(ビーアイ)という言葉を見聞きする機会が増えてきました。BIは「Business Intelligence」の略で、Wikipediaでは以下のように説明されています。
ビジネスインテリジェンス(英: Business Intelligence、BI)は、経営・会計・情報処理などの用語で、企業などの組織のデータを、収集・蓄積・分析・報告することで、経営上などの意思決定に役立てる手法や技術のこと。
ポイントは2つあり、1つは「企業などの組織のデータを、収集・蓄積・分析・報告する」の部分です。この説明をもう少しかみ砕くと、「業務で扱うデータ(情報)を、整理して見やすい状態にする」と表現できると思います。
もう1つは「経営上などの意思決定に役立てる手法や技術」の部分です。BIは「手法や技術」を表す概念であり、特定の製品やツールを指す言葉ではありません。
例えば、みなさんが社内で売り上げなどの報告をするとき、月ごとの傾向や目標予算に対する進捗度合い、売上額と原価の比率など、さまざまな指標の中から必要な情報を選別し、わかりやすく資料にまとめていると思います。BIとは、その作業そのものと言い換えられるでしょう。
BIを実現するのがBIツール
一方、BIを実現するには、コンピューター上で動作するアプリケーションが必要になります。それらは「BIツール」と呼ばれ、具体的な製品やツールが存在します。
本記事執筆時点で、代表的なBIツールには次の4つがあります。それぞれのツールがトップページのタイトルで訴求しているメッセージも列記しました。
Googleデータポータル
"ダッシュボード作成、データ視覚化ツール"
※画面をクリックすると、それぞれのツールのWebサイトにジャンプします
Domo(ドーモ)
"データ、システム、人々をつなぐ"
Tableau(タブロー)
"ビジネスインテリジェンスとデータ分析"
Power BI(パワービーアイ)
"対話型のデータ視覚化 BIツール"
それぞれ異なるメッセージを打ち出していますが、いずれのツールにも「データ」という言葉が登場しました。BIツールにとってデータ、しかも大量のデータを効率よくスピーディーに扱えることは、基本機能として必須です。
加えて、そのデータの視覚化や分析により、ステークホルダーとなる人々に効果的なメッセージとして伝えることで、ビジネス上の意思決定を行えるようにすることが、BIツールを使う目的だといえます。
こう説明すると、BIツールを使うには高度な専門知識や分析のスキルが必要、という印象を持つかもしれません。しかし、先に挙げたBIツールは「セルフサービスBI」とも呼ばれ、導入する企業が自社内で運用できるように工夫されています。必ずしも専門家に依頼するものではなく、使い方や分析手法に習熟しさえすれば、誰でも自社のビジネスに生かせるようになっています。
常時観察の「監視系」、深掘りの「探索系」
具体的なBIツールを4つ挙げましたが、ここでBIツールの種類についても触れておきましょう。BIツールは大きく次の2つの種類に分かれます。
監視系
「最新のデータを常に更新し続け、リアルタイムに表示・反映する」ことを主な役割とするBIツールです。さまざまなデータを視覚化し、それらを1つの画面に集約した「ダッシュボード」を構築することで、自社にとって重要な指標を評価するために使います。GoogleデータポータルやDomoは、この監視系の特徴を色濃く持つBIツールです。
探索系
「特定の条件で抽出したデータを基に、さまざまな切り口で分析して新しい発見を得る」ことを主な役割とします。いわばデータを"深掘り"することに適しており、TableauやPower BIは探索系のBIツールと考えられます。
とはいえ、いずれのツールも「監視系と探索系のどちらかにしか使えない」ということはなく、両方の用途で利用できます。例えば、Googleデータポータルをデータの深掘りのために使うこともできますし、Tableauは同社のサーバー製品と組み合わせることでダッシュボードへの転用が可能です。要は得意分野が異なると覚えておいてください。
データポータルの最大の特長は「無料」であること
本コンテンツのテーマであるGoogleデータポータルは、監視系を得意としつつも、探索系としても使えるBIツールです。実際にGoogleデータポータルで作成したダッシュボードの例を紹介しましょう。
次の画面は、筆者が企画・開発を手がけるリアル店舗トラッキングシステム「esasy」が計測したデータをダッシュボードにまとめたものです。気温などの気象データ、店舗前の交通量や入店率、年齢・性別ごとの入店数などのデータが基になっており、それぞれのグラフを1つの画面に集約しています。
Googleデータポータルで作成したダッシュボードの例。直近の1週間を集計期間として選択していますが、これは自由に変更でき、すぐに反映されます。
こちらは日次(リアルタイム)のダッシュボードです。リアル店舗トラッキングシステム「esasy」が計測した、店舗前交通量や店頭VP(ヴィジュアル・プレゼンテーション)視認数のデータが表示されています。
大量のデータがグラフとして視覚化され、リアルタイムで更新可能な状態にあることが、理解できるのではないかと思います。
そして、こうしたBIツールとしての機能を「無料で使える」ことが、ほかのツールにはないGoogleデータポータルならではの特長となっています。今後の記事で、Googleデータポータルの使い方を学んでいきましょう。