本コンテンツでは、無料で使えるBIツール「Googleデータポータル」(旧:Googleデータスタジオ)の使い方を連載形式で解説していきます。隔週ペースで更新予定。

定常的な用途なら「ダッシュボード」が適当

"先月の支出額の一覧、レポートにまとめておいてくれる?"

そうした依頼を上長から受けることは、多くのビジネスパーソンにとって日常茶飯事ですよね。具体的には、以下のようなExcelのレポートが思い浮かぶと思います。

【Googleデータポータル】レポートとダッシュボードの違い。Excelから移行すべき理由とは?

レポートと称されるExcelファイルの例。月次データを一覧化した[サマリー]のシートのほか、各月の元データが記録されたシートがあります。

そもそも「レポート」(report)という言葉は、社内で「報告書」の意味で使われていると思います。そして報告書とは、特定の読み手と目的のために情報を整理した書類のことです。

よって、レポートの本来の用途は「そのときに必要な情報をとりまとめて参照する」ことにあります。しかし、日本ではいわゆる"定例レポート"のように、「定常的に必要な情報をとりまとめて参照する」ための用途で、レポートという言葉がしばしば使われているのが現状です。

ただ、正確には、後者の用途は「ダッシュボード」(dashboard)と表現するのが適当だといえます。両者の違いは以下のようにまとめられます。

  • レポート ...... 特定の条件のもとにデータを集計し、一定の示唆を得るためのもの
  • ダッシュボード ...... 定常的に監視するために、随時データを集計して表示するもの

レポート作成の繰り返しはロスが大きい

定例レポートの代表としては、売上額の集計、Webサイトのアクセス解析などが挙げられます。こうした定例レポートの作成・提出がルーチンワーク化している現場は多いと思いますが、2つの点で課題があります。

1つは、レポートを作成するための作業負荷です。

売上レポートなら顧客名や担当者名、金額、予算達成率など。アクセスレポートならページタイトルやページビュー数、コンバージョン率など。毎週・毎月のスパンで、いつも同じ種類のデータを、社内で定められたExcelファイルのフォーマットにコピペして整形するという単純作業のために、貴重な時間が失われています。

もう1つは、レポートに基づく意思決定のスピードです。

定例レポートが会議などの場で提出されると、参加者にとっては、そこで初めてデータを目にすることになります。しかし、初見となるデータを基に、会議中に意思決定の結論を出すというのは、なかなか難しいものです。レポートの内容を読み合わせるだけで会議が終わってしまい、その後のアクションの検討がうやむやになることも多いでしょう。

これでは、レポート作成者と意思決定者の双方にとって、生産性の悪い状況になってしまいます。定常的に参照するもの、定型化されたデータをとりまとめたものは、レポートではなくダッシュボードとして運用すべきなのです。

ダッシュボードへの移行に大がかりな計画は不要

とはいえ、ダッシュボードやBIツールといった言葉が出てくると、途端に大がかりなことをしようとする機運が社内で高まり、コストや要件定義の工数が問題になることがあります。ふだんからレポートを作成している人、レポートに基づく意思決定をしている人は、冷静に対処してしてください。

まず、本コンテンツのテーマである「Googleデータポータル」を利用すれば、単純にコストがかかりません。これは、ほかのBIツールにはない大きなメリットです。

要件定義については、これまで捕捉していなかったデータや、馴染みのない計算式にまで手を出す必要はありません。定例レポートで集計してきたデータや計算式を、そのままGoogleデータポータルのダッシュボードに移植すればOKです。

特に以下の3つが、ダッシュボードを設計・導入するときに重要な要素となります。

  • データのフォーマット(形式や型)
  • 重要な指標の計算式
  • データを見る順序

データドリブンなビジネスのための入り口に

Googleデータポータルは、データを定常的に観察するために最適なツールです。Excelで行っていた単純作業から手を離し、必要なデータをいつでも自然に見られるようにすることで、意思決定のための有益な議論に時間を割くことができます。

そして、Excelによるレポートから移行するのも簡単です。CSVファイルやGoogleスプレッドシートにあるデータを「データソース」として取り込み、これまでと同じフォーマットや計算式を再現して、シートに相当する「ページ」を使って意図通りの順序で見せることが可能になります。

【Googleデータポータル】レポートとダッシュボードの違い。Excelから移行すべき理由とは?

Googleデータポータルにおけるデータソースへの接続画面。GoogleスプレッドシートやGoogleアナリティクス、Salesforceなど、Webに存在するデータベースにはアカウントの認証だけで接続できます。

【Googleデータポータル】レポートとダッシュボードの違い。Excelから移行すべき理由とは?

パソコンに保存されているCSVファイルをアップロードし、ダッシュボードの元データとして使うこともできます。

データに基づいで意思決定やアクションを実施することを「データドリブン」と呼びますが、Googleデータポータルは、データドリブンなビジネスを始める入り口となるでしょう。本コンテンツでは次回から、Googleデータポータルの具合的な導入・設定・使い方について触れていきます。