インプレスが「できる」まで
できるシリーズ25周年、おめでとうございます。4半世紀続いていると思うと、やっぱりすごいシリーズなんだなと再確認しています。
また、インプレスという会社に、ちょっとした御縁を感じています。インプレスの前身となるラジオ技術社の時代からムックの記事に携わったことから始まり、会社住所が市ヶ谷に移ったり、偶然にもインプレスが上場の際のベンチャーキャピタルで社内システムをお手伝いしていたり......。振り返ってみると人生の半分以上になる約30年間もお世話になっていることは、感慨深いものがあります。
できるシリーズに関わるまでは、当時ブームになりつつあったAT互換機のゲームやパーツを個人輸入で調達するとか、一部の好事家にむけての記事を手がけることが多かったように記憶しています。日本IBMからDOS/Vが提供されるようになり、AT互換機が注目され初めた時期でした。自分自身もAT互換機を嗜む好事家の一人であるという自負があり、同じ仲間の読者に役に立つ情報を発信したいという気概を持って執筆していました。
書籍を作りながらコミュニケーションを磨いた
できるシリーズに関わるようになって、次第に広い読者層に対して「理解が必要となる情報が読者に正しく伝えられているのか」を強く意識するようになりました。いまでも、限られた紙面で、どういった情報が役に立つのか、その情報をどのような順序で、どのような表現で説明すれば、誤解なしにスムーズに理解してもらえるのか? といったことを忘れないように意識して執筆しています。
筆者はライター業以外に、フリーランスで、IT関連のアドバイザーや、依頼によっては実際にシステム構築や運用をお手伝いの仕事をしています。この仕事においても、こちらの真意が相手に伝わっているのか? 相手が望んでいることは何なのか? と立ち止まって考えたり、振り返ってみる習慣ができて、顧客とのコミュニケーション能力が向上しているように自分でも感じています。これも少なからずできるシリーズに携わったからに違いないと思います。
編集者とのやり取りが最高の宝物
できるシリーズは書籍なので、編集者と何度も打ち合わせして作り上げていきます。打ち合わせの機会は、それほど多くはないのですが、この過程がとても楽しいのです。これは編集者との関係が良好であることが前提で、とてもいい状態で仕事をさせていただいています。加えて、第一線で活躍している著者の方々と共著の機会は、刺激的でモチベーション向上につながります。
できるシリーズに携われる著者は限られており、筆者がこのような境遇に身を置けることが貴重で幸せなことだと感じ、関係者にとても感謝しています。この境遇に甘んじることなく、今後とも、できるシリーズを通じて、役立つ情報を読者のみなさんに向けて発信していきたいと思います。
一番大切にしている時計を、「できる」で初めて共著した「できるNetscape Navigator 3.0」と記念撮影。25周年に合わせて、日付を25にしました
一ヶ谷 兼乃(いちがや けんの)
1963年鹿児島県出身。ネットワーク、セキュリティ、ITソリューションなどが専門分野。単にエキスパートの視点からでなく、1ユーザーとしての立場からの視点を大切にしている。近著に「できる Windows 10 改訂4版」「できるポケット Windows 10基本&活用マスターブック 改訂4版」などがある。
主な「できるシリーズ」の著書