「自分だけのGoogle」のようなサービス

 Webで何かを探したいと思ったとき、Googleなどの検索エンジンを利用するスタイルはすっかり定着しました。
 その一方、過去に読んだ本の一文を探す、パソコンの中に保存したメモを探す、といった自分に近い情報をきちんと見つけ出すことは、昨今ではかえって難しくなってきています。
 Evernoteは、こうした問題を解決してくれます。Googleが世界中のWebにある情報を収集してすぐに取り出せるようにするサービスだとすれば、Evernoteは自分にとって大切な情報を蓄積して、自分に合わせて整理し、いつでもすぐに取り出せるようにしてくれるサービスです。

どんな情報も一発でノートに取り込む

 Evernoteではさまざまな情報を簡単に「ノート」として取り込むことができ、例えば興味を持ったWebページを1クリックで取り込めます。画像や音声ファイルもそのままノートに取り込め、ハードディスクの整理にも活用できます。
 また、レッスン24で紹介するドキュメントスキャナーを利用すれば、紙の資料をPDFファイルにしてEvernoteに取り込み、紙そのものは捨ててしまうことができます。デジタルカメラの写真はレッスン22で紹介する「Eye-Fi」を利用して、自動的に取り込むことができます。
 こうして取り込み、蓄積したノートは、「ノートブック」や「タグ」によって整理し、さまざまな条件で検索できます。仕事の案件別、取引先別のような整理ができるのはもちろん、「楽しい」「かわいい」「便利」のようなタグを付けて、後日「かわいい」タグを付けたノートを全部取り出す、というような使い方も可能です。

アイデアから人生の記録まで、何でも取り込もう

 例えば旅行に出かける際には、パソコンで調べた電車の乗り換え情報をEvernoteに取り込んでおいて、駅でiPhoneから確認する、という使い方ができます。打ち合わせの前に話したいアイデアをメモして、移動中にスマートフォンで確認しながら練り込むことも可能です。
 また反対に、旅先で名前を知りたいと思った花の写真を撮影しておき、帰ってからパソコンで調べることもできます。さらに、写真に写った文字を解析する機能があるので、もらった名刺や気に入ったレストランのメニューなどは、写真を取り込んでおくだけで後から検索することが可能になります。
 Evernoteは記録した日時や位置情報からノートを探すこともでき、整理が不十分なノートも、何らかの手段で見つけ出せるように、工夫がされています。用途を限定せず、さまざまな情報を取り込んでいきましょう。

iPhoneアプリケーションで 地図からノートを探している,地図上の位置に対応したノートの数が表示された

「Evernote」を検索したところ文字を写した写真が該当した,写真の中にある文字が黄色の枠で表示された

Evernoteはクラウドの中の「第2の脳」

 身の回りの情報や、忘れたくない思い出が蓄積されてくると、次第にEvernoteは、あなたのかわりに記憶してくれる「第2の脳」のような存在になってきます。
 例えば数年前の旅行で、何を食べたか、何を見たかということを詳細に思い出すのは困難です。しかし、Evernoteに写真やメモを取り込んでさえあれば、「時期はだいたいあの頃だった」「場所はあのあたりだった」「『おいしい』と書き込んでいたはず」といった断片的な情報から絞り込んで、目的のノートを探せます。そして、ノートを取り出し、しっかりと「思い出す」ことができます。
 Evernoteは単なる情報整理にとどまらない、体験や思考さえ保存できる「第2の脳」なのです。興味を持ったWebページから楽しかったできごとまで、過去に体験したどんな情報でも思い出せるようになったら、楽しいと思いませんか?

[ヒント]パソコンからもスマートフォンからも利用できる「クラウド」サービス

Evernoteの最大の特徴は、すべての情報がインターネット上のサーバーに保存され、パソコンやスマートフォンなど、どのデバイスからも利用できる点です。Evernoteに情報を取り込めば、どのように情報を持ち歩き、どこで情報を利用するかを考える必要がありません。こうした、インターネット上に情報や重要な機能を置いて利用するコンピューターの利用スタイルは 世界のどこかにあるサーバーからデータが届くことを「雲(クラウド)」に見立てて「クラウド」または「クラウドコンピューティング」と呼ぶことがあります。Evernoteは、クラウドの代表的なサービスとしても知られています。

[ヒント]オフラインでも利用できる

EvernoteのWindows/Mac版ソフトは、パソコンのハードディスクにサーバーと同期した情報が常に保存されます。そのため、ネット回線のトラブルなどでオフラインになっても、最後に同期された情報を利用して作業を続けられます。オフライン中の編集内容は次にオンラインになったときに自動的に同期され、ユーザー自身がネット環境をあまり意識していなくても、問題なく利用できるように配慮されています。また、iPhoneやiPad、Androidアプリケーションでも、第2章の各レッスンで解説する方法により、オフラインでの利用が可能です。クラウドサービスでありながら、ネット接続を必須とせず、状況に応じて柔軟に利用できることも、Evernoteの強みなのです。