【Excel講師の仕事術】自己流のエクセル、卒業しませんか? この連載では、エクセルを操作するときの「ルール」を決めることで、ミスを減らして業務を効率化していく仕事術を解説します。

ルール 28
安易に「%」を使わず倍率や増減で表現する
事実とは異なる第一印象を与えてしまうことがある

表示方法を変えていち早く数字を伝える

費用対効果「127%」や前月比「154%」など、変化量を表すときにはたいてい「%」を使います。しかし、いかなる状況においても最適な表現かというと、そうではありません。注意深く判断し、ほかの表現への変更も検討すべきというのが、本記事で紹介するルールです。

具体例を挙げましょう。以下は、ある広告キャンペーンの費用対効果を商品ごとに表したものです。このうち「乃木坂ハイボール」のキャンペーンは、費用対効果が「100%」でした。

このように報告されて、みなさんはどのような印象を持つでしょうか。100%なら、割といい結果のような気がしませんか?

費用対効果をパーセンテージで表した表

前月比「100%」でいいの? エクセルで表す変化量は「%」が最適とは限らない【Excel講師の仕事術】

少し考えれば分かるのですが、費用対効果が100%というのは、費用をかけた分以上の儲け(効果)がなかったということで、悪い結果です。この表自体に間違いはないのですが、数値から最初に受けるイメージが少々おかしなことになります。

もう1つ、具体例を挙げましょう。以下は9月と10月の売上実績をまとめた表ですが、「乃木坂ビール」はめでたく前月比「100%」を達成しました。こう聞くと、まるで前月から売上が2倍に伸びたかのように感じませんか?

前月比をパーセンテージで表した表

前月比「100%」でいいの? エクセルで表す変化量は「%」が最適とは限らない【Excel講師の仕事術】

こちらも先ほどと同様、ちょっと考えればおかしなことに気付きます。前月比が100%というのは、単に横ばいだったということで、まったくもってよい結果ではありません。

不思議なことですが、費用対効果にしろ前月比にしろ、100%という字面や響きだけで、なぜかよい印象がしてしまいます。報告の仕方によっては「100%の増加」と受け取られてしまうリスクすらあり、誤解を生みやすい資料となってしまうのです。

倍率や増減で分かりやすく表示する

まずは費用対効果から、解決法を考えてみましょう。そのヒントは競馬のオッズにあります。

例えば「単勝4.4倍」といったら、的中したときに投資した金額が4.4倍、つまり10,000円が44,000円になることを表します。これと同様に、費用対効果を倍率で示したのが以下の表です。

費用対効果を倍率で表した表

前月比「100%」でいいの? エクセルで表す変化量は「%」が最適とは限らない【Excel講師の仕事術】

乃木坂ハイボールは「×1.0」、つまり1倍で、何の儲けもないことがすぐに分かります。ほかの2商品も「439%」「364%」という数値より、効果の度合いが直感的に理解できるのではないでしょうか。なお、「×」はセルの書式設定で表示しています。

数字の前に掛け算の「×」を付ける

前月比「100%」でいいの? エクセルで表す変化量は「%」が最適とは限らない【Excel講師の仕事術】

次は前月比です。こちらは単純に、今月分から前月分を引いて、増減を絶対値で表すと分かりやすくなります。

前月比を増減で表した表

前月比「100%」でいいの? エクセルで表す変化量は「%」が最適とは限らない【Excel講師の仕事術】

乃木坂ビールは横ばいではあるものの、前月比で微増していることが伝わります。また、「乃木坂ワイン」が他商品に比べて大きく伸びていること、「乃木坂ハイボール」が前月比マイナスで、何らかの対策が必要であることも明確になりました。

業界や業種、報告する内容によっては、%での表現はもちろん有効であり、全否定するつもりはありません。しかし、「今月を前月で割ってパーセンテージスタイルにすれば一丁上がり」といった業務フローが無感覚に定着している現場は多く、それに対して警鐘を鳴らしたいというのが、このルールの意図になります。

%の数値から受ける印象に惑わされず、事実をしっかり伝えるためにも、倍率や増減での表現をぜひ選択肢に加えてください。

マイナスの数字が含まれるときは特に注意

さて、変化量を%で表すときには、ほかにも注意したいケースがあります。その典型例が、計算にマイナスの数値を含む、例えば、売上や利益で赤字が発生しているケースです。

以下は単月の予算実績対比表ですが、1点、おかしな部分があります。[営業利益]行に注目してください。

予測比をパーセンテージで表した表

前月比「100%」でいいの? エクセルで表す変化量は「%」が最適とは限らない【Excel講師の仕事術】

この月の営業利益はもともとマイナスの予算で、実績もマイナスだったのですが、思ったよりも赤字を抑えられました。つまり、優秀な結果だったのですが、予算比は「82%」と未達であるかのような数値です。

「-6,124」は「-7,435」の82%ですから、計算自体は間違っていません。しかし、負の値を含むため数値の意味が異なり、事実とも異なる印象になってしまいます。普段から予実管理をしている人にとっては、見慣れた光景ではないでしょうか。

原因は、予算比を同じ数式のオートフィルで入力していることにあるのですが、その方法に無理はありません。IF関数を使って条件分岐させ、赤字のときだけ数式を変える方法もありますが、非現実でしょう。よりシンプルな解決策は、前述のように増減、ここでは予算と実績の差を絶対値で表すことです。

差を増減で表した表

前月比「100%」でいいの? エクセルで表す変化量は「%」が最適とは限らない【Excel講師の仕事術】

これなら、予算に対して実績が増えており、ポジティブな結果であることが分かります。また、赤字を解決するための「利益改善目標」として、今月はいくらプラスになればいいかまで数値として加えておけば、より事実を把握しやすい資料になるでしょう。

もし、みなさんの職場内で赤字解決のプロジェクトが動いているなら、単純に割り算で%を求めただけのワークシートで管理するのはナンセンスです。赤字のときこそ、数値を正しく追える資料を新しく作成するなどして取り組んでください。

まとめ
  • 費用対効果や前月比の%は時として誤解を生む
  • 倍率や増減で表現するのがシンプルな解決策
  • 予算や実績がマイナスのときの予算比に注意