デザイン思考とデザインスプリント

皆さん、こんにちは。ジャスパーといいます。2019年に『実践 スタンフォード式 デザイン思考 世界一クリエイティブな問題解決』という書籍を、そして2022年2月には『デザインスプリント 最短で最良の答えを導く実践フレームワーク』(以下、本書)を出版しました。

デザイン思考については以前お話ししましたが、あらためてデザイン思考とは、そして今回の書籍のテーマであるデザインスプリントについてもご紹介させてください。

デザインスプリント著者インタビュー

著書『デザインスプリント』を持ち、微笑むジャスパーさん

デザイン思考とは「問題解決のための考え方」です。共感(Empathize)、定義(Define)、アイデア(Ideate)、プロトタイプ(Prototype)、テスト(Test)といったプロセスを行きつ戻りつしながら進めることで、人々が持つ本当の課題やニーズを正しく読み解き、サービスやプロダクト開発に生かしていく手法として近年注目されています。

なぜ注目されているかというと、「人」こそがサービスやプロダクト、システムのつくり方やあり方に影響を与える、重要な要素になっているからです。特定の人の課題やニーズを解くことで、世界中で同じ悩みを持つ人々の役に立つことができるかもしれません。

「人々が持つ問題」を考えることは、「人」について考えることです。技術があるから、おもしろそうだから、だけではなく、「本当に困っていることは何だろう」「本当に必要なものは何だろう」と人に深く共感し、よりよいサービスやプロダクトをつくること、それこそが今必要なことではないかと考えます。

そのデザイン思考をベースに、企業や組織の課題解決に効果を発揮するのが「デザインスプリント」です。デザインスプリントは、その当時Googleに在席していたジェイク・ナップ氏によって開発され、課題に最速で答えを出すフレームワークとして、シリコンバレーをはじめ、さまざまな企業で取り入れられています。

その詳細はジェイク氏の書籍『Sprint:How to Solve Big Problems and Test New Ideas in Just Five Days』(邦訳『SPRINT 最速仕事術―あらゆる仕事がうまくいく最も合理的な方法』ダイヤモンド社:2016年3月刊)で紹介されています。

具体的には、5日間という制限時間の中で、連続したワークショップを通じ、アイデアを出し、試作品をつくり、ユーザー検証を行い、その結果を元に意思決定することで、最短で最良の答えを導き出します。

この5日間を長いと思うか短いと思うかは人それぞれでしょう。私は、意思決定のできる立場の人に5日間という時間をとっていただくのは、決して簡単なことではないと思っています。そのために、はじめる前にはメンバーに確認をとり、予定を確保したり、会議室を押さえたり、資料を集めたりといった細々した作業も欠かせません。

本書では準備の過程から実際の進め方までできる限り記しましたので、詳しくはぜひ本書をご覧いただけたら幸いです。

チームメンバーとのコミュニケーションの重要性

また、デザインスプリントを成功させるためには、チームメンバーとのコミュニケーションが重要です。本書でもコミュニケーションのポイントとして、意識したいことを4つ紹介しました。

コミュニケーションの4つのポイント

  • 理解と共感、そしてリスペクト
  • 柔軟なスケジュール感
  • 心理的安全性を確保する環境づくり
  • 準備とファシリテーションを重視

最近では新型コロナウイルスの影響もあり、リモートワークが一気に普及しました。出勤時間がなくなり快適になった部分もありますが、コミュニケーションの難しさや、いかにチームの生産性を高めるかという課題にぶつかっている人も多いのではないでしょうか。

今まで会議室に集まって行っていたワークショップが、オンラインではうまく機能しなくなった、チーム内でのコミュニケーション不足でプロジェクトがうまくいかなくなった、そんな経験をされた人も多いと思います。

そこで本書には掲載していない、ワークショップの際に私がよく使うアイスブレイクを、いくつか紹介します。デザインスプリントのワークショップでは、初日のチームビルドや毎朝、昼食後の勢いをいかに保つか、ファシリテーターは悩むことがあるでしょう。

そのような場合に、気分転換を兼ねてエクササイズを行うことで、チームの雰囲気を改善することもできます。また、毎朝のルーティンとして行うことで、各日程のワークショップに取り組む雰囲気づくりや、アイデア出しにも役に立ちます

おすすめアイスブレイク

タッチブルー(Touch blue)

  1. 最初の1人が、「色」や「特徴」を決めて、それをチームに言います。「青色のもの! 」や「木製のもの! 」など。
  2. ほかのメンバーは、手近な場所にある指示されたものを探して触りましょう。手を伸ばすところより、少し歩いたりして椅子から立ち上がりましょう。
  3. 最後の1人が、次の色や特徴を決めて、1から繰り返します。

オンラインで行う椅子取りゲーム的な感じでしょうか。毎回の最初などに2~3回行うことで、チームの雰囲気をやわらかくできます。

これは、以前あるワークショップで学んだことですが、場の空気をよくするだけでなく、自宅でのチームメンバーの仕事ぶりを理解することができます。

チームシンボル(Team Symbol)

これは何か事前に決めたタイミングで、チーム全員が同じジェスチャーをする、という決まりをつくっておくものです。プロ野球のウェーブや足踏み、サッカーのチャントのようなものでしょうか。

例えば休憩明けのタイミングや、いいアイデアが出たとき、よい反応があったときなど、チームの一体感を出すのに意外と効果があります。初日にファシリテーターがタイミングを3つほど決め、チームでそれぞれの際にどんなポーズをするか決めてもらいましょう。

例えば、前回は以下のようなポーズで行いました。

  • 休憩明け : 「家」を表す
  • よいアイデアを聞いたとき : ハートを表す
  • 驚くような反応があったとき : びっくりを表す

ポーズを決めたら、ホワイトボードにメモをしておきましょう。最初は照れるかもしれませんが、ワークショップが進むに連れ、チームがアクションをとっていくと気分も盛り上がるようになりますよ

カウントトゥ20(Count to 20)

チームで順番に1から20まで数える、という単純なものです。誰が言ってもいいのですが、もし2人以上が同時に番号を言ってしまったら、もう一度1からやり直しです。つかえずに20まで数えることができたら全員で「ジャジャーン」と言って、チャレンジしたことを称賛しましょう。

このエクササイズは、最初のアイスブレイクというよりは、チームが疲れてきたとか、気分転換に行います。アイデアが煮詰まったようなときや、チームの発言が止まってきたようなときに行ってみましょう。

ローテーションDJ(Rotation DJ)

作業の際に使う音楽を、ローテーションでDJをしていく、というエクササイズです。音楽のセットリストはファシリテーターも準備しますが、例えば1人につき1コマずつ、BGMを準備してもらいましょう。長さに決まりはありませんが、だいたい10分から長くても60分くらいのイメージ、お気に入りのリストをSpotifyなどで探してもらってください。

基本的にBGMで、作業に集中できる曲を選んでもらいましょう。チームメンバーは初対面同士の場合も多いので、お互いの好みを知るということだけでなく、作業に集中するためにリードする音楽を選ぶ、ということを学んでもらいます。

4種類のアイスブレイクを紹介しましたが、それぞれのチームに合わせてアレンジしていただいくのもおすすめです。ぜひ皆さんのチームに合った方法を考えてみるのも楽しいと思います。

デザイン思考やデザインスプリントのワークショップなどは私の個人プロジェクト「クリエイティブ増し増し」のサイトでも紹介していきますので、よければチェックしてみてください。

インプレスグループ創設30周年フェア

デザインスプリント著者インタビュー
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本書は4月24日~4月30日まで30%オフ、さらに4月21日から3日間限定で全文公開します。

前回のインタビュー

デザイン思考を使ってイノベーションを起こそう! 「実践 スタンフォード式 デザイン思考」著者インタビュー

新たなアイデアを生み出す方法として、いま「デザイン思考」が注目されています。しかし、「デザイン思考っていまいちわからない」という方も少なくないでしょう。デザイン思考とはどういうものか? どうやって実践するのか? 2019年9月6日に新刊「実践 スタンフォード式 デザイン思考」を上梓した、ジャスパー・ウさんに聞きました。

著者プロフィール

デザインスプリント著者インタビュー

ジャスパー・ウ(Jasper Wu)

スタンフォード大学による「d.school」でデザイン思考を学び、デザイン思考のワークショップファシリテーターとしてキャリアをスタート。株式会社メルカリを経て、株式会社U-NEXTではCXOを務めた。またプライベートでは「増し増し.inc」を立ち上げ、"Unlock your creativity"を テーマにデザインワークショップやトレーニングなどを行っている。

クリエイティブ増し増し

デザインスプリント 最短で最良の答えを導く実践フレームワーク(できるビジネス)

デザインスプリント著者インタビュー
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決めるべきことを決めて正しく解決する手法

「デザインスプリント」とは課題解決のアイデアを短期間でテスト・検証するために使われるフレームワークです。5日間という制限時間の中で、連続したワークショップを通じ、アイデアを出し、試作品を作り、ユーザーテストを行い、その結果を元に意思決定することで、最短で最良の答えを導き出します。本書は著者がこれまで学んできたデザイン思考・デザインスプリントのメソッドに、アジアの文化や考え方を加えた手法を解説しています。また、リモート環境下での効果的なやり方や、目的や日程に合わせたカスタマイズ法も紹介しています。

  • 著者:ジャスパー・ウ
  • 定価:1,760円(本体 1,600円+税10%)
  • ページ数:224ページ
  • ISBN:978-4-295-01337-2

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実践 スタンフォード式 デザイン思考 世界一クリエイティブな問題解決(できるビジネス)

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デザイン思考「実践」の教科書

著者は、デザイン思考教育の総本山であるスタンフォード大学d.school在学中に、デザイン思考のファシリテーターとしてキャリアをスタートし、卒業後は楽天やメルカリでデザイン思考を実践してきました。本書は、著者がこれまで学んだd.schoolの授業や、ファシリテーターとしてかかわってきたワークショップをベースとし、デザイン思考を身に付けるための具体的なノウハウを解説しています。全章を通して、「実践」に重きをおいており、デザイン思考の考え方やスキルを身に付けられる構成になっています。

  • 著者:ジャスパー・ウ
  • 監修:見崎 大悟
  • 定価:1,760円(本体 1,600円+税10%)
  • ページ数:224ページ
  • ISBN:978-4-295-00732-6

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構成:渡辺彩子(インプレス)