「Python in Excel」でExcelの可能性が広がる
Microsoftは、プログラミング言語の「Python(パイソン)」をExcelで利用できる機能「Python in Excel」を2023年8月末に発表しました。Pythonは、数値計算や統計分析、アプリケーション開発、AI開発における機械学習など、さまざまな分野で広く使われている言語です。
Excelから利用するには、新関数「PY関数」をセルに入力して、続けてPythonのコードを記述するとのこと。Pythonのコードがクラウド上で処理されて、結果がワークシートに表示される仕組みです。
任意の処理を実行できるライブラリが豊富、文法がシンプルで分かりやすいなどの理由から、Pythonはノンプログラマーからも人気です。「Python in Excel」は、Pythonの開発環境のセットアップも不要。データ分析や分析結果の視覚化などを簡略化できると公表されており、大きな話題を呼んでいます。
Microsoftによる解説動画(英語)。「Python in Excel」により、Excelからプログラミング言語の「Python」を利用できるようになります。
Excelには複雑な処理を自動化できるVBA(Visual Basic for Applications)もありますが、YouTubeやGoogleマップ、Instagramなどの開発にも使われるモダンな言語であるPythonが利用できることにより、Excelがさらに便利になることが期待されます。
本記事執筆時点ではプレビュー版が公開中です。一般ユーザーが「Python in Excel」を利用できるようになるのはもう少し先ですが、提供後にできるようになることをまとめて見てみましょう。
データを集計&視覚化できる
新関数「PY関数」を利用して、引数にPythonコードを指定すると実行されます。クラウド上で処理されて結果がワークシートに返されます。Pythonの実行環境を用意する必要はありません。
PY関数を入力してPythonコードを入力すると、Excelのデータを元に集計したり、グラフ化したりできます。
さまざまなグラフを作成できる
Excelの標準機能だけで表現することが難しい特殊なグラフを作成できるようになります。一般的な棒グラフはもちろん、ヒートマップや数値の大きさを色で表現するヒートマップ、データの分布を表すバイオリンプロット、密集度を表すスウォームプロットなど、Pythonのライブラリを活用して表現できます。
「Matplotlib」や「seaborn」などのライブラリを利用して、さまざまなグラフが作成可能になります。
機械学習や予測分析が可能
「Python in Excel」には「Anaconda」ディストリビューションが採用されています。AI開発に必要なライブラリも豊富に用意されており、統計処理や機械学習などの処理も容易に実現できます。
機械学習による天気予測のモデルです。
すばやくデータを整形できる
VBAが必要になる正規表現を使ったデータ加工も簡単になります。指定したパターンによるデータ形式の標準化といった高度な整形も効率的です。
正規表現を使用して日付を抽出している例です。
既存のExcelの機能と連携できる
数式やグラフ、ピボットテーブルなどのExcelの機能と互換性があります。Pythonのライブラリの依存関係について意識する必要はなく、いつもの作業をスムーズに行えます。
Excelの機能と連携できます。ファイルの共有なども可能です。
Excelの機能だけでは難しかった処理も簡単になりますね。これまで複雑な処理はVBAで記述するのが主流でしたが、「Python in Excel」の実装によってPythonのライブラリを利用できるようになると、Excelの使い方も変わってくるでしょう。
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