道端から飛び出してきた野良犬と目が合ったのが運の尽きでした。今では野良犬なんてめったに見かけませんが、30年以上前は珍しくありませんでした。バイクというのはライダーの視線の方向に進むもので、野良犬と衝突した「MotoGuzzi V35 Imola」は私を置き去りにして、10メートルほど先で炎上してしまいました。私自身は幸い(といってもかなりひどい)擦り傷だけで済みましたが、それがバイクを辞めた日となりました。

実は、その犬は野良犬ではなく、近所で有名な「放し飼いの飛び出し犬」だったそうです。犬はそのまま逃げてしまったのですが、後日、クルマに轢かれて短い「犬生」を終えたという話を聞きました。もしかすると、私がその遠因になっているかと思うと心が痛みます(とはいえ、放し飼いというのもいただけませんね)。

30年の時を隔ててよみがえったバイク愛。出会いはこれからも。

古い写真なので画質はよくないですが、在りし日の「MotoGuzzi V35 Imola」。

その後、30年以上バイクのことはすっかり忘れていたのですが、なんとなくYouTubeを観ていると、モトブログの動画がいくつもあがっていて、どれもとても楽しそうにみえるのです。コロナ禍の影響もあり、バイクブームが訪れていたようで、完全に消滅していたと思われた私のバイク熱に火が付いてしまいました。そんなこんなで、長い時間を経てのリターンライダー誕生となったわけです。もちろん、過去の経験もあって超安全運転ですが、バイク、とても楽しいです。

30年の時を隔ててよみがえったバイク愛。出会いはこれからも。

現在の相棒「Suzuki GSX-8S」。ライダーの聖地と言われる有間ダムにて。

思えば、人生ってこういったひょんなことで大きく変わるものです。友人に誘われてたまたま参加したワインスクールで知り合った人が、いとこと同じ職場の人で、なぜか今の妻になっていたり、出版社に勤めていた大学の同級生から本を書いてみないかと言われたことがライターとして30年以上も活動するきっかけになったりと、数え上げればキリがありません。きっと、こういったセレンディピティ(偶然の幸運なできごと)が人生を面白くするのでしょう(バイクの事故は幸運とは言えませんが)。

ただ、私自身は飽き性なので、情熱を維持しつつ継続することはとても苦手です。しかし、「できる」シリーズとともに、30年以上も執筆を続けられたのは、読者のみなさんや、編集者のみなさんのおかげだとしみじみ思います。改めて、できるシリーズ30周年おめでとうございます。


羽山 博(はやま ひろし)
有限会社ローグ・インターナショナル代表取締役

京都大学文学部哲学科(心理学専攻)卒業後、NECでユーザー教育や社内SE教育を担当したのち、ライターとして独立。ソフトウェアの基本からプログラミング、認知科学、統計学まで幅広く執筆。現在、有限会社ローグ・インターナショナル代表取締役、東京大学、一橋大学講師(いずれも非常勤)。

「できる」シリーズの著書

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