2008年は「小型モバイルPC元年」

 最近、小型で携帯性のよいノートPCに、価格破壊とも言える現象が起きています。

 小型のノートPCといえば、従来は20〜40万円という価格が普通でした。一部で10万円前後のノートPCが登場したこともありましたが、大きなヒットにはなっていません。

 しかし、2007年にASUSTeKが5〜6万円以下という驚くべき価格で「Eee PC 4G-X」を発売すると、状況が一変します。この製品は2007年10月から2008年6月までに、全世界で約200万台を出荷するというヒット商品になりました。

 「Eee PC 4G-X」のヒットを受け、2008年にはライバル各社が魅力的な商品をこの価格帯に競って投入し、ブームのような様相を呈しています。この市場に参戦している主なメーカーには、日本HPや日本エイサー、工人舎、デルなどがあり、富士通やレノボなどもこの市場に参入することがうわさされています。

代表的な小型モバイルPC

0.ASUSTeK「Eee PC 901-X」

小型モバイルPCブームの火付け役「Eee PC」シリーズの中心的機種。実勢価格59,800円前後
http://eeepc.asus.com/jp/product2.htm

0.「HP 2133 Mini-Note PC」

大手ブランド参入の先陣。ビジネス向きの機能とデザインを備える。実勢価格59,800円前後(スタンダードモデル)
http://h50146.www5.hp.com/products/portables/personal/mini_note2133/

0.工人舎「SA5KL08A」

小型・軽量PC が得意な日本メーカーの機種。1kgを切る軽さが魅力。実勢価格59,800円前後
http://jp.kohjinsha.com/models/sa/

0.日本エイサー「Aspire one」

台湾のメーカーが開発。性能のバランスがよく、デザインも秀逸。実勢価格54,800円前後
http://www.acer.co.jp/one/

さまざまなジャンルのモバイル機器が生まれている

 一方、「Eee PC 4G-X」が発売されたころと同時期に、小型のノートPCやインターネット端末を表す新しい言葉が多数登場しています。まだ一般に定着したと言うには早いのですが、ここで扱う「小型モバイルPC」を理解するには知っておいてほしい言葉ばかりなので、以下で解説しておきましょう。

●UMPC(Ultra Mobile PC)
 2006年ごろからインテルやマイクロソフトが提唱している小型のノートPCを指します。7インチクラスの液晶ディスプレイを備え、OSはWindowsを搭載。「タブレットPC」の小型版といった印象が強いマシンです。

 ペンでタッチパネルを操作したり、ソフトウェアキーボードで文字を入力したりといった使い方が基本ですが、機種によっては通常のキーボード(ハードウェアキーボード)や操作ボタンを備えています。最近の機種では、ウィルコムの「WILLCOM D4」や富士通の「LOOX U」シリーズなどがこのジャンルに分類されます。

●MID(Mobile Internet Device)
 インテルが2007年ごろから提唱している言葉で、ポケットに入るサイズでインターネットを便利に利用できる端末のことです。OSはWindowsに限定されず、オープンソースのOS「Linux」をベースにしたものや、携帯電話によく採用されている「Symbian OS」を搭載しているものもあります。ゲーム機や携帯音楽プレーヤーでも、インターネットに接続して活用することを重視している端末は、このジャンルに分類されるでしょう。

●スマートフォン(Smart Phone)
 PCやPDAのような機能を備えた高機能携帯電話のこと。OSには「Windows Mobile」などが用いられ、ユーザーが自らアプリケーションをインストールすることで、機能の拡張やカスタマイズができるものが多くなっています。代表的な端末は、ウィルコムの「WILLCOM 03」、イー・モバイルの「EMONSTER(S11HT)」など。アップルの「iPhone」もスマートフォンです。

●ネットブック(Netbook)
 「Eee PC」シリーズの登場をきっかけに、低価格のノートPCが大きな注目を集めるようになってきましたが、その一端にはブロードバンドインターネットの普及も関係しています。Webアプリケーションの活用を前提としてPCを利用できるようになった結果、PC本体のディスク容量を減らしたり、OSなどに一世代前のものを採用したりなど、ハードウェア/ソフトウェアが若干旧式のものであっても、PCを実用的に使えるようになったのです。このような端末は、特にネットブックと呼ばれています。

小型モバイルPCは「ネット活用に特化したPC」

 このような分類は、必ずしも正式に定義されたものではなく、多少解釈が異なる場合もあります。また、これらの定義そのものも、時代とともに変化していくことでしょう。

 筆者は、これらのうち「ネットブック」というジャンルに注目しています。そして、ここでは直感的にわかる「小型モバイルPC」という言葉で表現しますが、両者はかなり近く、ほぼ同義と考えています。つまり、小型モバイルPCは「ネットブックの特徴を持った新ジャンルのノートPC」だと表現できます。

[ヒント]「ASUSTeK」とは?

ASUSTeK Computer Inc.(アスーステック・コンピューター)は台湾に本社を置くPCメーカーで、ASUS(アスース)は同社のブランドネームです。初めて聞く方も多いかもしれませんが、PCの自作を楽しむユーザーの間では、マザーボードのメーカーとして人気があります。また、東芝や日本HP、ソニー、デル、アップルなど、世界中の大手ブランドPCの受託メーカーとしても知られています。

[ヒント]Webアプリケーションは小型モバイルPC活用のキモ

小型モバイルPC(ネットブック)の活用に、Webアプリケーションは欠かせません。Webアプリケーションを使えば、Microsoft Officeのように高価かつ多くのコンピュータ資源(CPUやメモリ、ディスク容量)を要求するソフトをインストールする必要性が減ります。結果、PC本体のコストダウンにつながるだけでなく、モバイルに最適なPC活用ができるようになります。