機種選びのチェックポイントを知っておこう

 数多くの小型モバイルPCが登場し、選択肢が多いことはうれしいことですが、どれを選んだらよいのか悩ましくもあります。とはいえ、自分にピッタリの機種やオプションを選ぶことも楽しみのひとつ。ここでは、これから小型モバイルPCを購入する方のために、いくつかの着目点を紹介しておきます。

 なお、代表的な機種のスペックはこちらで紹介しているので、併せて参照してください。

0.全体のデザインと素材感

 小型モバイルPCは常に持ち歩いて使うものですから、軽く、持ち運びやすい大きさや形である必要があります。しかし、まずはお気に入りのデザインであることが一番です。2008年9月現在で発売されている機種には、できるビジネスマン系からカラフルなかわいい系、いかにもメカといった質実剛健系まで、いろいろと好みに合わせて選べるデザインがそろっています。

 また、写真で見ただけではわかりにくい点として、ボディの質感も重要です。小型モバイルPCでは低価格・軽量を実現するため、「EeePC 901-X」のようなプラスチック系の素材が主流ですが、中には「HP 2133 Mini-Note PC」のように、金属製のボディにこだわっている機種もあります。1.27kgと重量がありますが、プラスチックよりも丈夫ですし、クールなイメージがあります。

ボディはすべて金属製。高級感のある質感を実現している

0.キーボードの使いやすさ

 キーボード選びのポイントはキーピッチ(キーとキーの間隔)です。小型モバイルPCは小さなボディにキーボードが詰め込まれているので、キーとキーの間隔が狭くなっています。また、変則的な配列も多くあります。ただ、筆者の経験では意外と慣れるものです。

 慣れることが難しいのはキーの硬さの好みです。硬すぎるキーボードは長時間打っていると疲れますが、逆に柔らかすぎると正確に打てたか不安に感じながら打つことになります。実際に実機で確かめてから購入することをおすすめします。

キーピッチは約16mm。一部のキーは変則的な配置をしている

キーピッチが約17.5mmと広いため打ちやすい。感触は柔らかめ(写真は英語キーボードモデル)

0.ポインティングデバイス(タッチパッド)の使いやすさ

 ノートPCのポインティングデバイスとしてはタッチパッドが主流で、小型モバイルPCでも多くの機種に搭載されています。ただ、本体そのものが小さいためにタッチパッドに十分な面積がとれず、小さくて使いにくい場合があります。また、タッチパッドとキーボードが近くに配置されているため、タイピング中にパッドに触れてしまい、マウスポインターが意図せずに動くことがあります。

 さらに、「Eee PC 901-X」はボタンが硬め、「HP 2133 Mini-Note PC」と「Aspire one」はボタンが横に配置されているといった違いもあります。タッチパッドもキーボードと同様、操作性で好みが分かれやすいので、実機で確かめる必要があるでしょう。

 一方で、マウスを持ち歩くことにこだわっている人もいます。小型モバイルPCと別にマウスを持つのは、荷物がひとつ増えるので嫌う人もいますが、最近は携帯性のよいマウスも増えており、タッチパッドより快適な操作感が得られるという意味でマウスは魅力的です。なお、「Eee PC 901-X」には標準でマウスが付属しています。

他機種に比べて縦幅が広いタッチパッドを備えている。ボタンのクリック感は硬め

ボタンがタッチパッドの左右に配置されているため、クリック操作には若干の慣れが必要

0.液晶ディスプレイのサイズと画面解像度

 小型モバイルPCの液晶は、携帯性と価格を考慮して7?8インチを中心に比較的小さいサイズのものが搭載されています。そのため、デスクトップPCなどに比べると表示できる情報量は限られます。

 画面解像度の面では、多くの機種で横方向に1024ピクセル以上の解像度があるので、ほとんどのWebページは縦スクロールだけで読めます。現在使っているPCの解像度を落として、シミュレーションしてみるのもよいでしょう。

 なお、機種によっては液晶テレビなどよりも色再現性が弱い(色が若干薄い)場合があります。また、タッチパネル搭載の機種は便利な半面、液晶の上に重なっているタッチパネルを透過して光が届くという構造上、液晶の視認性が悪い場合があります。

「Eee PC 901-X」の標準解像度(1024×600)で見える範囲,「HP 2133 Mini-Note PC」の標準解像度(1280×768) で見える範囲

0.CPU性能とOS

 小型モバイルPCを選ぶうえでは、現時点で最速のCPUや最新のOSで機種を選ぶよりも、バッテリーの駆動時間や携帯性、安定性を優先して考えるのがおすすめです。その理由を説明しましょう。

 まずCPUについては、高性能なCPUであるほど電力消費量も多くなる傾向があるからです。外出先ですぐにバッテリーが切れてしまっては、小型モバイルPCもただの荷物になってしまいます。

 OSについては、仕事の都合などでWindows Vistaが必要な場合は別として、Windows XPであってもまったく問題ありません。Windows XPのほうが処理が軽く、数多くの修正によって安定性が向上しているため、トラブルに遭う確率も低くなるはずです。

 マイクロソフトは小型モバイルPCなどへのプリインストールに限り、Windows XP Home Editionの提供期間を「2010年6月またはWindows Vistaの次バージョンが発売されてから1年後まで」と延期しています。これはまさしく小型モバイルPCブームに対応したものと言われています。

0.記憶装置の違いと容量

 これまでパソコン内にデータを保管する記憶装置としてはHDD(ハードディスク)が定番でしたが、最近ではフラッシュメモリを採用したSSD(Solid State Drive)を使う機種も登場しています。

 メカニカルで精密な構造をしているHDDは、衝撃に弱く壊れやすいという欠点があります。一方、SDカードなどと同じ構造をしているSSDは、軽量で衝撃に強いのが特長です。さらに、データの読み出し速度が高速で、消費電力が小さいというメリットもあります。モバイルという利用シーンに適した記憶装置と言えるでしょう。

 ただ、SSDはHDDに比べて高価なため、コストの問題で大容量のものが搭載できない点には注意が必要です。SSD搭載機種を選んだ場合、常にデータ容量を節約しながら使う工夫が必要になります。

 例えば、SSDを搭載した代表的な機種である「Eee PC 901-X」の記憶装置の容量は、計12GB(Cドライブに4GB、Dドライブに8GB)しかありません。Cドライブの空き容量は初期状態では1GB強ですが、「Windows Update」を適用しただけで800MB程度にまで減ってしまいます。そのため、新たにソフトをインストールするときはCドライブを使わず、もっぱらDドライブを使うという工夫が必要になってきます。

 一方で、HDDを搭載した「HP 2133 Mini-Note PC」はスタンダードモデルで120GBの容量があります。これだけの容量があれば、普通のノートPCと同じ使い方ができます。

 こうしたことを考えると、無理に最新のSSDを選ぶよりも、目新しさはなくても大容量が利用できるHDDを選択したほうが、窮屈な思いをせずに安心して小型モバイルPCを活用できるはずです。最終的には、自分の利用方法ではどの程度のデータ容量が必要かをイメージしたうえで、SSDかHDDかを決めるとよいでしょう。

SSD搭載の「Eee PC 901-X」では、初期状態のCドライブの空き容量は1GB強

「Windows Update」を適用すると、Cドライブの空き容量は800MB程度になる

0.拡張性(外部インターフェース)の有無

 小型モバイルPCは携帯性を重視しているとはいえ、周辺機器と組み合わせて使うための拡張性も、使いやすさを大きく左右します。例えば、ネットワークに接続するための無線LAN、iPodや外付けDVDドライブなどを接続するためのUSBポート、デジカメのメモリカードから写真を読み込むためのメモリカードスロットなどです。

 「Eee PC 901-X」をはじめ、ほとんどの機種がこれらの拡張性を備えていますが、ポートの数などは異なります。必要なさまざまな周辺機器と接続できるよう、カタログや実機でしっかり確認して購入する機種を選びましょう。

左側面には有線LANポート、USBポート、マイク・ヘッドフォン端子を備える

右側面にはMMC/SDカードスロット、USBポート×2、外部ディスプレイポートを備える

0.バッテリーの持ちとACアダプターのサイズ

 モバイルでの利用が中心となる小型モバイルPCでは、バッテリーの駆動時間も重要です。カタログに記載されている駆動時間を確認しておきましょう。機種によっては、別売りで大容量のバッテリーが用意されています。

 また、ACアダプターのサイズや重量も調べておくと安心です。小型モバイルPCを持ち歩くときはACアダプターを一緒に持ち歩くことも多いので、ACアダプターの携帯性も重要です。残念ながらACアダプターのサイズや重量はカタログには掲載されていないことが多いので、店頭で調べるか、Webのレビュー記事などを参考にするしかないのが現状ですが、大事なポイントです。

購入後に「不便さ」を感じない機種を選ぼう

 以上のように、小型モバイルPCを選ぶ際に検討すべきことはたくさんあります。ユーザーそれぞれに利用スタイルや好みが異なるので、どれを最優先にすべきかはなかなか決められません。 参考までに、筆者が特にこだわるポイントを3つ挙げましょう。

1. 携帯性(毎日持ち歩けるサイズ・重量)
2. キーボードの使いやすさ
3. いつも手元において使いたくなるデザイン

 理由は、「慣れや工夫でカバーできない」「買った後で気に入らなくなると、まったく使わなくなってしまう」という可能性があるからです。無駄な出費にしないための最低条件と言えるでしょう。

 筆者は、毎日カバンに入れて持ち歩くPCの重量は1kg前後が限度と考えています。使い勝手の悪いキーボードでは、カバンから取り出す頻度も上がりません。外観も重要で、人に自慢できるくらいお気に入りのものでないと、持ち歩く気にはならないものです。

 とはいえ、これらはあくまで筆者の基準です。読者のみなさんも自身の判断で、もっとも適した機種を見つけてください。

[ヒント]Microsoft Officeが付属する機種はある?

Microsoft Officeの有無が機種選択の基準のひとつ、という方も多いと思います。小型モバイルPCでは従来のPCに比べ、プリインストールされているソフトが少ないのが普通ですが、例えば工人舎のSAシリーズには、「SA5KL08F」というMicrosoft Office Personal 2007搭載の機種があります。また、「Eee PC 901-X」には、「StarSuite 8」というMicrosoft Officeと互換性のあるオフィスソフトが付属しています。