衝撃的な軽さ、打ちやすいキーボード、そして高級感あふれるデザインの3拍子そろった「VAIO type P」。売れ行きは好調なようで、一時期はソニーの直販サイト「SonyStyle」にアクセスしにくくなるほどでした。筆者も2009年1月の発表直後にSonyStyleでVAIO type Pを購入し、使うこと約2ヵ月。今では、このパソコンを手放せないほどになりました。

「VAIOオーナーメイド」でカスタマイズして購入

 SonyStyleでパソコンを購入する際は、「VAIOオーナーメイド」を利用して本体のCPUやストレージなどを自分で選択することが可能です。筆者は次のような組み合わせを選択しました。

項目 標準スペック カスタマイズ後のスペック
CPU(プロセッサー) Atom Z520(1.33 GHz) Atom Z530(1.60 GHz)
ストレージ HDD(60GB) SSD(64GB)
Bluetooth なし 搭載

 まずはCPUです。VAIO type PにはWindows Vistaが搭載されていることもあり、店頭モデルの標準スペックでは少々力不足になるだろうと予想。そこで、CPUの性能を1段階上げ、「Atom Z530(1.60GHz)」を選択しました。

 また、取材などで持ち運ぶことが多くなるため、ストレージは衝撃に強いSSD(64GB)を選択し、データのやり取りや拡張性を考えてBluetoothも搭載。「ディスプレイ/LANアダプター」と「ウォールマウントプラグアダプター」も注文しました。その他はすべて標準スペックのままか[なし]にしています。ちなみに、カラーはSonyStyle限定の「オニキスブラック」。刻印サービスはメッセージが思い浮かばなかったので利用していません。

 以上の組み合わせで、価格は104,800円。店頭モデルの実勢価格は80,000円前後ですから、約25,000円アップとなりました。

SonyStyleのVAIOオーナーメイドでは、自分の好みに合わせてCPUやストレージの組み合わせを変更できます

▼SonyStyle
http://www.jp.sonystyle.com/

やることだらけの初期設定

 2週間弱で無事に納品されたVAIO type Pですが、届いてすぐに起動してみて気になったのが、Windows Vistaの緩慢さです。VAIO type Pは標準で2GBのメモリを搭載していますが、それでも少々ストレスを感じます。そこで、プリインストールソフトやWindows Vistaの一部機能を停止するカスタマイズを行いました。

ウイルス対策ソフトを「Norton AntiVirus 2009」に変更

 真っ先に行ったのがウイルス対策ソフトの入れ替え。購入時にはマカフィーの「PCセキュリティセンター」の体験版がプリインストールされていますが、これを「Norton AntiVirus 2009」に変更しました。Norton AntiVirus 2009は、以前のバージョンに比べ「動作が軽くなった」と評判のセキュリティソフトです。

ウイルス&スパイウェア対策ソフトの「Norton AntiVirus 2009」。パッケージ版は5,670円(シマンテックストアの価格)

▼Norton AntiVirus 2009
http://www.symantec.com/ja/jp/norton/antivirus

Windows Vistaのインデックス作成はオフに

 次に、Windows Vistaの各種設定を変更します。Windows Vistaには検索用のインデックスをバックグラウンドで作成する機能があり、これが動作しているとCPUの使用率が高くなってしまいます。VAIO type Pに検索が必要になるほど大量のデータをためておくことはないので、Cドライブのプロパティにある[検索を速くするため、このドライブにインデックスを付ける]のチェックをはずし、インデックスの作成をオフにしました。

Cドライブのプロパティは、[スタート]-[コンピュータ]をクリックしてドライブの一覧を表示し、Cドライブを右クリックして[プロパティ]をクリックすると表示されます

SSDの自動デフラグも解除

 また、Windows Vistaではストレージのデフラグを自動で行いますが、ストレージがSSDの場合はあまり必要ありません(SSDではデフラグが不要というわけではありませんが)。むしろ、デフラグによってSSDの寿命が短くなってしまう恐れもあります。そこで、[ディスクデフラグツール]の[スケジュールどおりに実行する]のチェックもはずしました。

[ディスクデフラグツール]を表示するには、[スタート]-[すべてのプログラム]-[アクセサリ]-[システムツール]-[ディスクデフラグツール]をクリックします

必要のない視覚効果は無効に

 視覚効果の変更も、Windows Vistaのパフォーマンス向上に効果的です。筆者は[パフォーマンスオプション]で、[アイコンのかわりに縮小版を表示する][ウィンドウとボタンに視覚スタイルを使用する][スクリーンフォントの縁を滑らかにする]以外の効果をオフにしました。

 すべてオフにすればパフォーマンスはさらにアップするはずですが、Windows Vistaらしい見た目が失われてしまったり、ウィンドウのボタンが押しにくくなったりといったデメリットがあるので、この3つだけは残しています。

視覚効果を変更するには、まず[スタート]-[コンピュータ]をクリックし、[システムのプロパティ]-[システムの詳細設定]をクリックします。[詳細設定]タブの[パフォーマンス]にある[設定]をクリックすると、[パフォーマンスオプション]が表示されます

「VAIOコンテンツ解析マネージャ」は常駐を解除

 さらに、VAIO type Pでは標準で「VAIOコンテンツ解析マネージャ」が常駐(バックグラウンドで常に動作)しています。これは「VAIO MusicBox」(レッスン4を参照)で音楽などを楽しむために必要ですが、コンテンツの解析にはかなりのCPUパワーを消費します。

 スペックの高いパソコンなら問題ないかもしれませんが、VAIO type Pには少々荷が重すぎるため、常駐はオフにしました。同じくプリインストールのソフトに、GPSや無線LANから位置情報を取得する「VAIO Location Search」がありますが、こちらもオフにしています。

VAIOコンテンツ解析マネージャの設定は、レッスン4「VAIO MusicBoxに自分の好きな曲を追加するには」の手順4にある画面で[情報]タブをクリックすると変更できます

[ユーザーアカウント制御]を無効化

 最後に、パフォーマンスとはあまり関係ありませんが、Windows Vistaの[ユーザーアカウント制御]も無効にしました。VAIO type Pは完全にパーソナルなパソコンなので、常に「管理者=自分」となり、制御の必要はないからです。何か設定するたびに警告画面が表示されるのは、操作性を損なう原因にもなります。

ユーザーアカウント制御を無効にするには、まず[コントロールパネル]の[ユーザーアカウントと家族のための安全設定]をクリックします。さらに[ユーザーアカウント]-[ユーザーアカウント制御の有効化または無効化]をクリックすると有効・無効を切り替えられます


 これだけの「ダイエット」を行った結果、筆者のVAIO type Pは、ある程度快適に動くようになりました。快適さの感じ方は人それぞれだと思いますが、少なくとも筆者はイライラすることはありません。文字入力もキー操作にしっかり追従しますし、画像処理ソフトを使ったバッチ処理も比較的スムーズにできました。ウィンドウを開くときに一瞬待たされることはありますが、どれも許容範囲内。モバイル用途のパソコンとしては、十分満足できる操作感を実現できています。

ほかには代えがたい「軽さ」の魅力

 初期設定を乗り越えると、最初に感じたストレスはすっかり消え、強い不満は感じていません。むしろ、冒頭に述べたように手放せない「相棒」になっています。

 ここまで愛用するようになった理由は、VAIO type Pの「軽さ」と「キーボードの打ちやすさ」にあります。今まで購入してきたノートパソコンは、どれも1kgを超えていましたが、VAIO type Pは前述の組み合わせでちょうど590g。最近のハイスペックなケータイが140g前後なので、ケータイ約4台分の重量です。ACアダプターなどと一緒に持ち運んでも1kgを下回ります。コンパクトなミニノートPC(ネットブック)でも、ここまで軽いものはなかなかありません。

 筆者が取材に出掛けるときは、デジカメにICレコーダー、ケータイ、筆記用具、名刺などを持ち歩いていますが、ここに1kgオーバーのパソコンが加わると、やはり「重い」と感じます。ところがVAIO type Pにしてからは、荷物の重さを意識することがなくなりました。

 結果として、使うかどうかがはっきりしないときも、パソコンを持ち歩く習慣がつきました。今では、記者会見や取材のメモにVAIO type Pが欠かせません。

VAIO type Pはサイズが小さいため、手持ちのすべてのバッグに入りました。持ち運ぶときはソニー純正のソフトケース(家電量販店で購入)を使っています

ライティング業務にも大活躍のキーボード

 重量だけなら、ほかにも選択肢はあります。しかし、VAIO type Pが仕事の用途でも使えるのは、キーボードを快適に打てるサイズで設計されているからです。

 VAIO type Pのキーピッチ(キーの間隔)は約16.5mm、キーストローク(キーの深さ)は約1.2mmで、両手でしっかりとタイピングできます。ストロークはやや浅めですが、慣れればスピーディーに文字を打てるようになります。[半角/全角]キーが通常のキーボードとは異なる場所にあったり、[Shift]キーが小さかったりと変則的ではありますが、実際の使用にはさほど影響はありません。

VAIO type Pのキーボード。通常は[Esc]キーの下にある[半角/全角]キーが[Esc]キーの右にあるなど、変則的な配置をしています


 強いて難点を挙げるなら、スティックポインターの「プレスセレクト」が使いにくいことでしょう。スティックポインターを押し込むとクリックの代わりになる機能ですが、敏感すぎて誤操作することが多かったので、この機能はオフにしました。とはいえ、スティックポインター自体は思い通りに操作できるので、マウスなしでも十分作業できます。

キーボード中央にあるスティックポインター。プレスセレクトの設定は[コントロールパネル]の[マウス]で変更できます

小すぎる文字はDPI変更で改善

 一方、VAIO type Pのディスプレイはキーボードに合わせたサイズのため画面解像度が変則的で、少々見にくいという難点もあります。画面解像度は1600×768ドットと、通常のパソコンに搭載されるディスプレイよりもはるかに横長です。表示は精細ですが、わずか8インチのディスプレイでは非常に文字が小さくなり、個人的には2時間程度作業すると疲れてしまいます。

 そこで、筆者はWindows Vistaの[DPIスケール]の設定を[大きなスケール(120DPI)]に変更し、文字やアイコンを大きく表示できるようにしました。

[DPIスケール]は、[コントロールパネル]の[デスクトップのカスタマイズ]をクリックし、[個人設定]-[フォントサイズ(DPI)の調整]をクリックすると表示されます。[カスタムDPI]をクリックすれば詳細な設定も可能です


 ただ、それでも大画面のディスプレイのようにはいきませんし、一部のソフトでは文字が読めなくなるといった支障をきたす場合があります。また、文字やアイコンを大きくすると、その分使える表示領域が減ってしまうので、複数のソフトを同時に起動し、それぞれを確認しながら作業するといった場合も注意が必要です。縦長でウィンドウのサイズを変更できないソフトだと、ボタンを押せなくなることもあります。幸い筆者の使用環境では問題ありませんでしたが、読者のみなさんはそれぞれの環境に応じて設定してみてください。

 このような特性を考慮し、筆者はVAIO type Pを「取材のメモや短めの原稿を1~2本書くときのツール」と決めて使っています。海外出張などでたくさんの原稿を書く必要があるケースでは、B5サイズのVAIO type Tも併用しています。

 今回は初期設定やテキスト入力などに焦点を絞ってレビューしましたが、もちろん、ネットやメールなども使っています。次回はネット関連の使用感やバッテリーの持ちなど、「モバイル」ならではの魅力をレビューします。