前編では、MacとiPhone、Keynote、PowerPointを組み合わせた効果的なプレゼン術を紹介していただいた林信行さん。中編では、ITジャーナリストとして活躍される林さんの情報収集術に迫ります。IT業界の最先端の情報を入手するノウハウは、私たちのビジネスシーンにも適用できる部分がたくさんありそうです。

林さんのTwitterのホーム画面。かなりの頻度でつぶやき(発言)が更新されており、林さんのつぶやきを追いかけている人(フォロワー)は2,000人に上ります

Googleを超える? 検索エンジンとしてのTwitter活用術

――今ブレークの兆しをみせる「Poken※1」をいち早く紹介されるなど、林さんの情報アンテナの感度はかなり高いですよね。どうやって情報をキャッチされているのでしょうか?

林:最近はTwitterの活用度合いがかなり上がっています。Pokenの創業者が来日してあるイベントで紹介されたとき、私は九州にいてイベントには足を運べなかったんです。

――講演などがあると、そのようなケースも出てきますよね。

林:そのイベントの様子を友人から聞いて、「これ面白そう」とTwitterでつぶやいてみたんですね。すると「見に来る?」という反応があって、見に行ったところ電話で創業者と話をさせてくれたので、その晩、宿泊先のホテルで取材させてもらえることになりました。

――すごい反応の早さですね......。このリアルタイム性がTwitterの魅力、ということでしょうか。

林:Twitterはお互いを認識している者同士が、気持ちよくリアルタイムに情報を交換している場です。私のTwitterには大勢のフォロワーがいますので、何か質問を投げかけると、先の例のようにすぐに何らかの反応が返ってくることも期待できます。Googleなどの検索エンジンは、ネット上のデータをクロールする関係上、検索結果に反映されるにはタイムラグがありますよね。Twitterは「リアルタイム検索エンジン」とも呼べるような存在だと思っています。

――Twitterはどのようなときに検索エンジンのような役目を果たすのでしょうか?

林:例えば、福岡でラーメンを食べたいとしましょう。Googleで「福岡 ラーメン」と検索しても、有名なお店やある程度決まりきった情報しか出てこないことが多いですよね。しかし、Twitterで「いま福岡だけど、おいしいラーメン屋さんを知りませんか?」とつぶやけば、「先週行ったあのお店がおすすめですよ」といった反応が返ってくるわけです。

――なるほど! 相手が人間で、しかも知り合いだったり好みが近い人だったりすれば、自分にとって適切な結果を教えてくれる検索エンジンとも言える存在になりうる、ということですね。

林:Twitterにつぶやきを返してくれるのは、その人が知識を持っていたり、そのときに書き込む余裕があったりする人たちです。お互いに助け合うというか、負担の少ない、気持ちのよいコミュニケーションとも言えますね。

「ギブ&テイク」でTwitterのフォロワーを増やす

――ただ、大勢のフォロワーを抱える林さんならともかく、フォロワーが少ない場合はそのような使い方は難しいように思います。まずは自分をフォローしてくれる人を増やすことが肝要だと思いますが......どうすれば増やせるのでしょうか?

林:これはブログの場合にもよく指摘されたことなのですが、やはりTwitterでも「ギブ&テイク」の考え方は大切だと思います。

――自分が有益な情報を提供すれば、他人から有益な情報を得ることができる、ということですね。

林:Twitterの場合、それを構えずに自然に行うことができると私は考えています。自分が今みんなに知らせたいこと、まずはそれをつぶやいてみて、反応があったらさらにつぶやき返してみる。それを繰り返すことで、次第に「この人面白い」と感じてくれるフォロワーが増えてくるはずです。

――ということは、Twitterのつぶやきは「公開」がおすすめということになりますね。

林:そのとおりです。ただ、取引先の情報や個人情報は出さないなど、プライバシーに配慮してつぶやきを発信する注意は当然必要ですよ。

Twitterの設定画面。[つぶやきを非公開にする]をチェックすれば自分の発言は公開されませんが、フォローしてくれる人も増えなくなります

林:「mixi」などのSNSとは違い、Twitterは自分が相手をフォローしても、相手が自分をフォローするとは限らず、非対称な関係となっています。まずは気になる人を探して、その人をフォローしてみることができるというのも、Twitterのよく考えられたところですね。

――その人がどういうふうにTwitterを活用しているか、まずは追っかけてみるというわけですね。

林:そういったところから始めて、どのようなタイミングでどのようなことを発言すればよいのか、徐々にその感覚が身につくと言えるかもしれません。

TwitterをRSSリーダー代わりにしてトレンドを逃さない

――人からの情報収集のほかに、ニュースサイトなどからの情報収集はどのようにされているのでしょうか? やはりRSSリーダーですか?

林:RSSリーダーって、精神的に負担になりませんか?

――未読の記事がたまると、開くのも嫌になることはあります(笑)

林:Twitterの「ニュースBOT」を使えば、友達のつぶやきと同列で、最新のニューストピックを表示させることもできます。私は福田首相の辞任もTwitterで知りました。ほかにも「時報」というタイムラインをフォローしていて、それが何時ごろだったか、あとからでもわかりやすいようにしています。

Twitterの代表的なニュースBOTである「ググるニウス」。Googleニュースの最新ヘッドラインをTwitterに取り込めます
「時報」は"○時をお知らせします"とつぶやくBOT。Twitterではつぶやきが現在時刻からの逆算([○分 ago from ○○]など)で表示されるため、いつ発言されたかを瞬時に知るのが難しいのですが、このBOTがあれば時刻を把握しやすくなります

――すべての情報源をTwitterに集めて活用しているというわけですね。

林:Twitterで情報をマッシュアップしているイメージですね。それにiPhoneを使えばTwitterをどこからでもチェックできますから、その点も大きいと思います。

――最近ではオバマ大統領の就任演説や、米旅客機がハドソン川へ不時着した事件などでも、Twitterの速報性が注目されるようになりましたね。

林:Twitterでは「#(ハッシュ)タグ」を付けることで、特定のテーマについての発言をひとまとめに検索されやすくするという習慣があります。例えば、北米で「American Idle」が放送されている時間であれば、それについてのつぶやきが多い様子が一目でわかりますよ。


iPhoneアプリケーション「Tweetie」でトレンドを表示。このときは米俳優のアシュトン・カッチャーさんが、Twitterでフォロワー100万人を達成したことが話題に
パソコンで利用できる「Twitter Search」のトップ画面。[Trending topics]では今トレンドとなっているキーワード(多くのつぶやきに含まれている言葉)がわかります

▼Twitter Search
※1:Poken(ポーケン)
スイス生まれのデジタル名刺ガジェット。専用のガジェットを触れ合わせると、お互いのプロフィールやブログのURL、Twitterのアカウントなどを交換できる。

▼Poken Japan

 後編では、林さんの時間管理術や取材術、そして2009年3月にネット上で話題になった、米国のサイトで林さんの発言がねつ造された問題についてお話を伺います。