前編ではCULVノートPCの概要を紹介しました。今回は実際にCULVノートPCを使い、ネットブックと比較しつつその使用感をレポートします。

検証用のCULVノートPCには東芝の「dynabook MX/33」(いわゆる「ネットノート」)を使用。比較対象のネットブックは筆者私物の「IdeaPad S10e」です。

dynabook MX/33はCULVノートPCとして標準的なスペック。一方IdeaPad S10eは約1年前の製品とあって、現行のネットブックに比べるとやや性能が低いです。またdynabook MX/33はOSがWindows 7 Home Premiumであるのに対して、IdeaPad S10eのOSはWindows XP Home Edition SP3と、環境の違いもあります。あくまで筆者の主観による比較であることをご了承ください。

CULVノートPCはネットブックの不満点を克服できるか?

筆者はIdeaPad S10eを主にネット利用端末として活用しています。「ネット」ブックだけに快適なネットライフが送れると思いきや、画面解像度が低いためにWebページが見にくかったり、YouTubeがときどきコマ落ちするなど、ちょっと予想外の不便さ(というより筆者の確認不十分)にイライラしてしてしまうことがあります。

モバイル利用もあまり快適とは言えません。IdeaPad S10eはバッテリー駆動時間がそれほど長くないので、例えばランチで入った店で取材先とのやり取りをまとめたくても、起動したらバッテリー残量が残り10%......ランチだけ食べてそのまま帰社、ということもあります。

そこで、筆者にとってゆずれない
・画面の情報量(画面解像度)
・YouTubeなど動画サイトでの動画再生
・モバイル利用
の3点に注目して、CULVノートPCの実力を確かめます。

画面の情報量増加は効率アップにつながる―CULVノートPCの画面解像度をチェック

まずはWebページの表示をチェック。IdeaPad S10eの画面解像度が1,024×576ピクセルなのに対し、dynabook MX/33は1,366×768ピクセルなので、Webページ全体が見渡しやすく、Webページの情報がパッと頭に入ります。IdeaPad S10eではちょっと横スクロールしなければならないようなWebページでも(これがまた難儀する)、dynabook MX/33では全体が表示され、左右に空間ができるくらいです。

また、画面解像度が高すぎて画面の文字が小さく見づらいということもなく、画面解像度とディスプレイサイズのバランスがちょうどよく感じます。


dynabook MX/33でWebページを表示

IdeaPad S10eでWebページを表示

情報収集ツールとして愛用しているRSSリーダー「Google Reader」では特に画面解像度の高さのありがたみを感じます。
記事の見出しや概要のみを表示する場合、IdeaPad S10eではアイテムが1~2つしか見えないのに対し、dynabook MX/33で見えるアイテムは3~4つ。一度に見える範囲が大きくなるだけで、情報収集の効率は格段にアップします。


dynabook MX/33でGoogle Readerを表示

IdeaPad S10eでGoogle Readerを表示

趣味でよく訪問する画像まとめサイトでも、画面解像度は重要です。IdeaPad S10eの場合、画像の読み込みが遅くスクロールがガタガタするうえに、縦の画面解像度が足りなくて画像の下部分が表示されないことがあります。下のようなかわいい動物の萌え画像も、IdeaPad S10eでは全体が表示されず残念な結果になっていますが、dynabook MX/33ではしっかりと全体が表示されます。


dynabook MX/33で画像のまとめサイトを表示

IdeaPad S10eで画像のまとめサイトを表示


Office(Excel)の画面もチェック。下の画像を見ていただければ一目瞭然ですが、dynabook MX/33ではIdeaPad S10eと比べ広い範囲のセルを表示できます。表全体のデータを把握しやすく、IdeaPad S10eほど頻繁に縦横にスクロールする手間はなくなるので疲れが少ないです。

表の一部分の編集ならまだしも、一から表を作成するのは画面のせまいIdeaPad S10eでは気が重い作業でしたが、dynabook MX/33ではそれほどストレスを感じません。動作もIdeaPad S10eと比べてキビキビしているので、従来のモバイルPCを使う感覚でOffice(Excel)を使えます。


dynabook MX/33でOffice(Excel)を表示

IdeaPad S10eでOffice(Excel)を表示


HD動画でないかぎりコマ落ちはなく快適―CULVノートPCでYouTubeなどの動画サイト閲覧

動画サイトを見るのが好きな筆者としては、先に挙げた3つの条件の中でも特に、YouTubeなどの動画サイトの快適さを重視しています。IdeaPad S10eで再生すると、動画によってはコマ落ちが激しく、ストレスがたまることがあります。

最近とんでもなくかわいい動きをする猫の動画があるとTwitterで知り、IdeaPad S10eを使ってYouTubeで再生してみると、コマ落ちが激しくてかわいいポイントがわからず、イライラを通り越して「時流から取り残されてしまった」と感じたことがありました。

dynabook MX/33ではそんな寂しい思いをせずに済みそうです。IdeaPad S10eを使っているときと同じ接続環境(Wi-Fi環境)でYouTube、ニコニコ動画、GyaO!などを閲覧してみましたが、IdeaPad S10eと比べてコマ落ちはほとんどありません。

またIdeaPad S10eでは、YouTubeの動画再生画面が表示された際、少し下にスクロールしないと動画の表示枠全体が表示されません。この微調整がいつも手間なのですが、dynabook MX/33は画面解像度に余裕があるので面倒な調整は必要ありません。


dynabook MX/33でYouTubeの再生画面を表示

IdeaPad S10eでYouTubeの再生画面を表示(動画の表示枠全体を表示するには、少し下にスクロールする必要がある)

ちなみにdynabook MX/33でも、YouTubeの高画質動画はあまり快適に再生されませんでした。HD(1,280×720)動画の再生は少し厳しく、なんとか視聴できるレベル。フルHD(1,920×1,080)動画となると、1秒1コマの監視カメラ映像のように再生されてしまい、視聴に耐えられません。YouTubeでは基本的に、通常品質の動画を再生する方がよさそうです。

安心して快適に持ち運べる醍醐味―CULVノートPCのモバイル利用

筆者は仕事柄、取材先でメモをとったり、打ち合わせのあと、次の案件の合間にカフェに立ち寄ってレポートをまとめたりと、IdeaPad S10eをモバイル利用する機会が多くあります。そんなときに気になるのがバッテリーの持ち。IdeaPad S10eのバッテリー駆動時間が約5.3時間なのに対し、dynabook MX/33は約9.5時間(いずれも標準バッテリー搭載時)と約2倍長持ちです。

以前、会議が2時間も長引いてしまってIdeaPad S10eの充電できないまま取材先に向かったら、バッテリー残量がほとんどなくて頭が真っ白......ということがありました。公称値では約5.3時間でも、実質的には3時間前後でバッテリーが切れてしまいます。

試しにIdeaPad S10eであればバッテリー切れになるような時間(3時間前後)dynabook MX/33を使い続けてみましたが、それでもバッテリー残量が40%ほど残っており、その後も3時間ほど使えたので大変頼もしさを感じました。モバイル利用では「バッテリー切れの心配がない」という安心感がなによりも重要です。


また外観もモバイル利用にとって大きなポイントです。外出先で使う際は周囲の目が気になるもの。外出先でよく見る「VAIO」シリーズや「Let'snote」シリーズに比べると、IdeaPad S10eは小さいうえに外観がプラスチックなので、おもちゃのように見られてしまうのではないかと気になって、使うのを躊躇してしまうことがあります(筆者だけでしょうか?)。

一方dynabook MX/33はデザインがよいうえに、IdeaPad S10eのようなおもちゃっぽさがないので、堂々とテーブルに広げて使えます。


「高級感」とまではいきませんが、ネットブックに見られるプラスチック全開の安っぽさは皆無。またネットブックほど小さすぎず、しっかりとした所有感があります

カフェのテーブルに置いても違和感ゼロ。むしろデザイン的にちょっとした優越感を感じます

●まとめ

以上、Web閲覧やモバイル利用というシチュエーションでdynabook MX/33を使用してみましたが、画面解像度、動画処理速度、バッテリー駆動時間、外観の点でdynabook MX/33はIdeaPad S10eより使いやすいと感じました。またOfficeの使いやすさから、ビジネス用途としての本格活用も期待できると思います。

CULVノートPCは本当に「買い」か?

CULVノートPCがネットブックよりも使いやすいのはわかりました。ではずばり、CULVノートPCは本当に「買い」なのでしょうか?

「今年こそ話題のネットブックを買ってみたいけど、CULVノートPCも気になった」「『Let'snote』シリーズのような高いモバイルPCを買うお金はないけど、安くて使えるサブのパソコンが今すぐほしい」という人にとって、CULVノートPCは「買い」だと思います。

Windows 7搭載・Office非搭載モデルの店頭販売価格を平均すると、ネットブックは大体4~6万円台、対してCULVノートPCは大体6~8万円台。Web閲覧やYouTubeでのストレスが一掃され、どこにでも持ち運べるスタイリッシュなデザインを楽しめるのであれば、この約2~3万円の価格差は高いと感じません。

CULVノートPCはほとんどの機種に光学ドライブが搭載されていないなど、メインのパソコンとして使うには機能不足の感があります。ただ、サブのパソコンとしてさまざまな場面で活躍させたいのであれば、性能・持ち運びやすさ・価格とのバランスの面でCULVノートPCは非常に優秀だと思います。昨年の時点ですでにCULVノートPCが出ていたら、筆者は間違いなくCULVノートPCの方を買っていたでしょう。

しかし、筆者のような「今持っているネットブックを買い替えたい」という人にとっては、CULVノートPCは「買い」ではないかもしれません。購入を見送るのも一つの手だと思っています。

例えば筆者は、昨年5万円を支払ってIdeaPad S10eを買いました。そして今年は8万円を支払ってdynabook MX/33を買うとすると、2年間で13万円をパソコンに投資したことになります。13万円あればCULVノートPCよりも上のクラスのパソコンが買えることを考えると、ちょっと躊躇してしまいます。

今使っているネットブックでもう1年我慢して、来年いい思いをするか。我慢は精神的によくないと言い訳してCULVノートPCを買ってしまうか。皆さんはどちらでしょうか? 筆者は後者を選び、仕事をスピーディーに片付けて、かわいい猫動画に萌える日々を手に入れたいと考えています。


(できるネット+編集部 諏訪)