携帯電話でもクラウドとつながる

 レッスン1で紹介したGoogleのシュミットCEOの言葉には、「どこか“雲”の中にあるサーバー」ともう1つ、「どのようなデバイスからでも利用できる」という表現がありました。

 現在では、多くのユーザーがインターネットに接続できる複数のデバイスを持っていることが当たり前な状況になっています。パソコンを1台しか持っていなくても、携帯電話もサーバーにつながるデバイスの1つとして数えられますから、ほとんどの人が複数のデバイスを日常的に利用しているはずです。

 ほかにも、低価格なパソコン「ネットブック」や「CULVノート」、高い人気を誇るアップルのスマートフォン「iPhone」、さらにはテレビ、ゲーム機など、さまざまなインターネットデバイスが私たちの周りに存在しています。

多様な用途がクラウドを求めている

 複数のデバイスの活用を考えるとき、それらの間をつなぐ「ハブ(Hub)」的な存在として、クラウドが重要になってきます。

 ハブとは、ネットワークの中継点のこと。ハブを介して多くのデバイスがつながれば、それぞれが双方向でデータをやりとりでき、情報の一元管理などを実現できるようになります。

 例えば、スケジュールを管理するとき「パソコンと携帯電話で別々に予定を入力する」という状態は非常に不便です。パソコンと携帯電話をケーブルでつないで同期する方法もありますが、さらに便利で合理的なのは「インターネット上のサーバーで一元管理し、どのデバイスからアクセスしても同じ情報を入力・閲覧できる」という状態でしょう。

 また、新しいデバイスの登場は、新しい使い方も生みます。魅力的なデバイスを手にした人たちは「移動中にスケジュールを確認するだけでなく仕事もしたい」「離れて暮らしている家族の近況をテレビで知りたい」などと考えるようになり、それらのニーズを満たすためのサービスが生まれます。

 すると、そのようなサービスを安定して提供する強力なサーバー、つまりクラウドのニーズも高まります。クラウドコンピューティングはデバイスの進化が求めた、とも考えられるわけです。

●クラウドを通して複数のデバイスを活用

複数台のパソコン+iPhoneがおすすめ

 クラウドコンピューティングをより深く知るには、実際に体験してみるのが一番です。まずは、クラウドから提供される「サービス」を利用できるデバイスを用意しましょう。

 前述のようにパソコン1台+携帯電話でもOKですが、できれば複数台のパソコンを組み合わせて利用したほうが、クラウドのメリットを実感しやすくなります。例えば、デスクトップパソコン+持ち歩き用のノートパソコンやネットブックなどです。

 これらに加えて(または携帯電話の代わりに)スマートフォン、特にiPhoneがあれば理想的です。クラウドのサービスは海外の事業者が提供しているものが多いため、日本独自の仕様の携帯電話では利用できない場合があります。しかしiPhoneなら、本書で紹介するほとんどのサービスを利用可能です。

●クラウドを体験するために必要なデバイス

[ヒント]通信回線も確保しよう

各種サービスを利用するには、光ファイバーなどの高速な常時接続回線が使えると理想的です。また、無線LAN環境や外出先でもインターネットが使えるデータ通信カードがあると、なお便利です。

[ヒント]クラウドを体験できるさまざまなデバイス

インターネットに接続でき、クラウドのサービスを利用できるデバイスは、パソコンやスマートフォン以外にも多数登場しています。家庭で身近なものとしては、インターネット接続に対応したテレビや「Wii」「PlayStation 3」などのゲーム機があります。また、無線LANを利用して写真をインターネットにアップロードできるSDカード「Eye-Fi」や、同様の機能を本体に搭載したデジタルカメラも登場しています。さらに、今後流行しそうなデバイスとして、「タブレット型インターネットデバイス」と呼ばれるデジタルフォトフレームの高機能版のような製品が挙げられます。NTT東日本では、ニュースや天気予報、乗換案内、レシピなどの情報を配信する「待受情報配信サービス」と、その対応端末「光iフレーム(仮称)」のトライアルサービスを2010年3月末まで実施しています。それらと形状がよく似たデバイスとしては、Amazonの「Kindle」などの電子ブックリーダーも登場しており、日本の電子書籍はまだ充実していないものの、アメリカの電子書籍を購入して読むことができるようになっています。

無線LANを搭載し、ニュースなどのコンテンツをタッチパネルで手軽に見られる