GoProの国内販売代理店であり、自動車販売やレース部品の開発などを手がける株式会社タジマモーターコーポレーション。代表取締役会長兼社長の「モンスター田嶋」こと田嶋伸博氏は、2015年の「パイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライムレース」(以下、パイクスピーク)における車載カメラに、GoPro HERO4 Silverを採用しました。過酷なレース現場で、GoProはどのように活用されているのでしょうか。
優先したのは画質と短時間でセッティングできる
ユーザビリティ
GoProを5台装着した「E-RUNNER」でパイクスピークを走る
田嶋氏は、米コロラド州で毎年開催されている自動車・二輪車のヒルクライムレース、パイクスピークにおいて、2006年から改造無制限のアンリミテッドクラスで6連覇を達成し、さらに2013年には電動自動車を用いるエレクトリッククラスでも優勝を手にするなど、トップレーサーとして輝かしい成績を残してきました。2015年のパイクスピークでは惜しくも優勝には届かなかったものの、前年のタイムを上回る結果でゴールし、総合2位を獲得しています。
パイクスピークで走らせるのは、同氏が開発に携わり、レースでも自らハンドルを握る電動レーシングカー「E-RUNNER パイクスピークスペシャル」。この車両の外部に3台、内部に2台、計5台のGoPro HERO4 Silverを取り付け、曲がりくねった急坂と標高4000メートルを超える空気の希薄なパイクスピークの、過酷を極めるレースの模様を余すところなく捉えます。
パイクスピークを疾走するE-RUNNER パイクスピーク スペシャル
田嶋伸博氏
株式会社タジマコーポレーション 代表取締役会長兼社長
電気自動車普及協会(APEV)代表理事
自ら創業したタジマモーターコーポレーションを経営するかたわら、「パイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライムレース」をはじめとする数々のラリー、ダートレースに参戦。2012年より「TEAM APEV」から電動レースカー「E-RUNNER」でパイクスピークに挑み、2013年、電動自動車部門で優勝。2015年は総合2位。
タジマモーターコーポレーション
電気自動車普及協会
TEAM APEV with MONSTER SPORT
カメラクルー1人でセッティングできる
扱いやすさを考慮して機種選定
Silverを選択した理由は、同氏によれば「画質と現場での扱いやすさのバランスを考えた結果」。単純に景色を捉えるだけでなく、車両に搭載したGPSやデータロガーの情報と組み合わせた車両分析にも動画を利用するため、高画質で映像を残せることが必要でした。
それと同時に、カメラ担当クルーがわずか1人だったことから、短時間で複数台のGoProを装着し正しくセッティングするには扱いやすさも考慮しなければなりませんでした。
Silverは背面にタッチディスプレイを備えており、「正確に、素早くフレーミング(位置合わせ)できる」こと、「撮影モードの設定確認と変更も迅速にできる」こと、といったユーザビリティ上の利点が大きかったと言います。
また、レースでの実走行時間は10分程度と短いものの、レースの進行状況によっては待ち時間が長くなることもあります。その点においても、電池持ちがよく、撮影できる時間が長いSilverのメリットを生かせると考えたのです。
レースではないドライブ中の撮影は2つの視点から
軽量なレーシングカーならではの設置の難しさも
GoProを取り付けるにあたっては、毎年新たに開発し進化している車両ということもあって、難しいところもありました。2015年バージョンの車両は軽量化で外装が薄くなったことから、GoProを取り付けた場合に振動で映像が見にくくなってしまう可能性が指摘されました。このため、設置場所の選定には慎重を要し、結果的に外部に3台、内部に2台を取り付けることになったといいます。
レーシングカーにおいては、こうした車両の特殊な構造による制限を除けば、ある程度自由にGoProを取り付けることが可能です。対して、公道を走行する一般的な車両では、安全のため取り付けられる場所は限られてきます(シチュエーション別撮影ガイド クルマ&バイク参照)。
車外だけでなく車内も撮影してにぎやかさ、楽しさを演出したい
普段のドライブをより楽しくするGoProの使い方、設置の仕方にはどんな方法があるのかについて、田嶋氏からアドバイスがありました。
第一歩となるGoProの機種選びでは、「記録として残すためか、作品づくりをするためか」といった観点が重要と話します。記録として残すのであれば、GoPro HERO4 Sessionのような安価な機種を複数使い、作品づくりのためであれば、4Kやハイスピード(スローモーション)など多彩な撮影が可能となるGoPro HERO4 Blackが向いているそう。
ドライブ中は、1台で外の景色を撮影し、もう1台で車内の様子を撮影するのもおすすめ、と田嶋氏。「みんなでわいわいやっている視点も撮影しておくと、後で編集した時に楽しい記録として残せる」といい、「その際には穴の空いたスケルトンバックドアを使って、音声をしっかり残せるようにすることも忘れないでほしい」と語りました。
スタートを待つ田嶋氏。GoProの設定はフルHD 60fpsまたは30fpsで、画角はWide。Protuneはオフにしている
●E-RUNNERのコクピット内部の映像進行方向とドライバーに向けて撮影。ハンドルさばきがしっかり見える
●レース中の車外の映像車外も前方と後方を撮影。前方は低視点の映像で迫力重視。後方は谷側の開けた景色を美しく映し出す