こんにちは、できる編集部の井上薫です。突然ですが、人間関係は順調ですか? 社会人生活振り返れば、苦手な人と一緒のチームだったとき、本当に辛かったですね。

今回は、おなじみ住職で精神科医で、書籍「『あるある』で学ぶ 余裕がないときの心の整え方(できるビジネス)」の著者でもある川野泰周さんに、職場の人間関係で困っっているときの対処法を伺います。

相手の話に意識を向ける「マインドフル・リスニング」

――苦手な人と一緒に仕事をしなければいけないとき、どうすればいいでしょうか?

川野 誰でも苦手な人はいるものです。会社という組織の中で上司や部下との人間関係に悩んでいる人がいかに多いことか。

職場だけではありません。本来はくつろげる場所であるべき家庭においても、夫婦間、親や子供との関係など、近しい人たちとの関係に悩みを抱えている人は驚くほど多いものです。

――皆さん、人間関係で悩んでいるんですね。

川野 もし、苦手な人と同じプロジェクトになったときも、きちんとコミュニケーションをとっていかなければ、いい仕事ができませんよね。

より信頼感のある、温かな関係性を手に入れたいとき、あるいは取り戻りたいとき私は「マインドフル・リスニング」をお勧めしています。

――マインドフル・リスニング!? マインドフルに聴くって、どういうことですか?

川野 私たちは日頃、相手の話をよく聴いているようで、実はほとんどはうわの空ということが少なくありません。ハーバード大学の心理学者であるマシュー・キリングスワースが2010年に発表した研究データによれば、人間は50%近くの時間を「今やっていること」について考えずに過ごしているそうです。

これは人と会話をしているときにもあてはまります。そう、人間は本来他者の話をよく聞かないものなのです。

――たしかに! 苦手な人だと、とくに聞いてないかもしれません。

川野 そこでまずは、相手の話に注意を向けて一生懸命に聴くトレーニングをしてみましょう。大切なのは漫然と「聞く」のではなく、意識して「聴く」気持ちを持つことです。

聴き終わったら、その人がどんな気持ちで話をしたのか推測し、それを言葉に出しましょう。

たとえば相手が過去の悲しい経験について語ったときには「Aさんは本当に悲しい思いをしたのですね」と、いうように。気をつけなければいけないことは、いきなり反対意見や疑問で返さないこと。

反対意見を言うときも、相手の言葉をいったん肯定してから

――反対の意見を言いたいときは、どうすればいいのでしょうか?

川野 どうしても反対意見を言いたいときには相手の言葉を肯定したうえで、言うようにします。

――では、相手の気持ちが推測できないときは?

川野 その場合は、相手の発言内容をサマライズ(短くまとめて反芻)するのです。

――あまり悩まなくてもできそうですね。こんな簡単なことで本当に人間関係がよくなるのか、ちょっと不安なくらい...。

川野 疑念をお持ちかもしれませんが、苦手な相手との関係性を良くしたいなら、まずはその相手を尊重し、集中して話を聴くことが大事です。人間誰しも、話を一生懸命に聴いてもらえることは嬉しいのです。

とくに関係が悪いと、相手は「話半分程度にしか聞いてもらえないだろう」という先入観を持っています。そんな相手に対してマインドフルな聴き方を繰り返せば、相手の接し方も徐々に優しさを帯びたものに変わってきます。

――自分から与えた優しさが自分に戻ってくる、因果応報(いんがおうほう)ですね!実践してみます。ありがとうございました。


次回予告
休日なのに仕事のことばかり考えて、正直しんどい br>

川野泰周(かわのたいしゅう)さん
精神科・心療内科医/臨済宗建長寺派林香寺住職。

1980年横浜生まれ。2004年慶応義塾大学医学部医学科卒業後、精神科医として診療に従事。2011年より建長寺専門道場にて3年半にわたる禅修行、2014年末より横浜にある臨済宗建長寺派林香寺住職となる。現在寺務の傍ら都内及び横浜市内にあるクリニック等で、うつ病、神経症、PTSD、睡眠障害などに対し薬物療法と並び禅やマインドフルネスの実践を含む心理療法を積極的に取り入れた診療にあたっている。
著書『あるある』で学ぶ 余裕がないときの心の整え方(できるビジネス)」。