快適な視聴には映像よりも音声が重要!

 Ustreamは「誰でもテレビ局」などといわれることもあり、ライブ中継をするにあたっては映像に関心が行きがちです。しかし本当に大切なのは、映像よりも音声です。
 中継する側にいると気づきにくいですが、実際にいくつかの番組を視聴してみると、よくわかります。音声がダメな番組は、いくら映像がよくても視聴するストレスが非常に高いのです。
 視聴ユーザーは、自分のかけがえのない「今」という時間を使ってあなたのライブ中継を視聴してくれます。ソーシャルストリームに「音が聞こえにくいのですが」などのコメントが寄せられたら、すぐに対策を取りましょう。よくある原因は、使用している中継用ソフトの音量設定が低い、またはマイクの配置が悪いことです。
 この問題を放置したままライブ中継を続けると、視聴ユーザーはどんどん離れていきます。離れていくばかりか「音ひどいから離脱」などとツイートを残して去る人も出てきます。あなたの大事なイベントや商品のために設定したソーシャルストリームに、こうしたツイートが蓄積されるのはよくありません。中継をしているあなただけでなく、そのイベントに出演している人たち全員の印象まで悪くなりかねないのです。
 ここでは音声のクオリティを高めるためのマイクの選びかたや使いかたについて解説します。

外部マイクとオーディオインターフェースを使おう

 ライブ中継で扱う音声の中でも、もっとも大切なのは、出演者や発表者が話す声です。ベストな状態で人の声を配信するには、外部マイクを適切に使用して声を取り込み、「オーディオインターフェース」という機材を通して聞きやすく整えてからパソコンに音声を入力します。
 人間の脳には優秀なノイズキャンセリング機能があり、喫茶店や発表会場などで耳からノイズ混じりの音が入ってきても、そこから大事な人の声だけを抽出し、聞くことができます。
 ところがマイクが取り込む音にはすべての音が同じように含まれていて、脳が処理しているようには再現してくれません。これをそのまま配信すると、聞き取りにくい音声になってしまいます。
 聞き取りやすいクリアな声を取り込むためには、どのようなマイクをどの位置に置くかが重要になります。
 また、パソコンのマイク入力端子は「とりあえず付いています」という程度のものなので、ノイズの混入やレベルの不一致(マイクが出力できる音量とパソコンが要求する音量の不一致)が起こりやすく、決して高音質で音声を取り込むのには向いていません。そこで役立つのが、オーディオインターフェースです。
 オーディオインターフェースは、アナログ音声信号をパソコンで扱いやすいデジタル信号に変換し、同時にノイズの低減や低音域・高音域のイコライジング(音質の調整)などを行う機器です。聞き取りやすい音を作り、劣化させずにパソコンに取り込むことができます。

マイク選びのポイント[1] 形状

 マイク選びには専門的な知識が要求され、なかなか難しいものです。しかしUstreamのライブ中継で音質を向上させるためには、マイクの種類や特性について、大ざっぱにでも理解しておく必要があります。知っておくべきマイクの特性には、大きく分けて「形状の違い」、「音響特性の違い」、「出力端子の違い」の3種類があります。
 形状には、カラオケなどで使う「ハンディ型」、アイドルがコンサートのときに使うような「ヘッドセット型」、テレビのアナウンサーが使うような「タイピン型」、テレビ電話の会議室にあるような「バウンダリー型」などがあります。
 ラジオやテレビ業界の専門家と違い、Ustreamではアマチュアがしゃべることになるので、マイクの扱いに不慣れだと考えられます。ハンディ型マイクは持ちかたによって音質が著しく変わってしまうため、タイピン型やヘッドセット型のように、マイクの位置と口の位置が常に一定の距離に保たれるものをおすすめします。

マイク選びのポイント[2] 音響特性

 次に、音響特性の違いです。これは、主に指向性の違いのことを指します。カメラに広い範囲を撮影できる広角レンズや狭い範囲を切り取る望遠レンズがあるように、マイクにも音声を取り込める範囲があり、これを「指向性」と呼びます。
 マイクを向けた正面だけの音を狙う指向性の狭い製品は、周囲のノイズを排除して話し手の声だけを取り込むことができます。指向性が狭く、1人の声だけを取り込むことが想定されたマイクを「単一指向性」と呼びます。前方と後方の2つに狭い指向性を持つ「双指向性」のマイクもあります。一方、指向性の広いマイクは、会議などで机の真ん中に置いておけば、部屋全体の音を取り込むことができます。このようなマイクは「無指向性」と呼びます。
 例えば4人が丸テーブルを囲むように座った状態で単一指向性のマイクを使用すると、特定の人以外の声がまるで聞こえないといった失敗につながります。それでは無指向性マイクならば「大は小を兼ねる」になるかというと、エアコンや部屋の外の音まで拾ってしまい、別の問題が出てくることもあります。状況に応じて最適なマイクを選んでください。

マイク選びのポイント[3] 出力端子

 出力端子の違いは、マイクの音声がどのような端子を通じて出力されるか、という部分です。業務用で使われる3つのピンを使った「キャノン端子(XLR端子)」や、家庭用の製品でよく使われる、ギターなどとも同じ「フォーン端子(TS端子/TRS端子。ピンジャックとも)」があります。フォーン端子には標準、ミニ、マイクロという大きさのバリエーションがあり、マイクへの電源の供給を同時に行う「プラグインパワー端子」もあります。
 また、オーディオ機器全般で使われる端子に、ピン端子(RCA端子とも。AV機器でよく使われる赤と白の端子)があります。
 マイクがあらかじめ用意されている発表会場などでは、マイクとオーディオインターフェースの端子が合うかを確認しておく必要があります。
 種類は多くありませんが、USB端子の付いたマイクも発売されています。こうしたマイクでは、オーディオインターフェースを通さなくてもデジタル化したクリアな音声をパソコンに取り込めます。入力する音声がマイクだけでよい場合は、USBマイクを利用することで荷物の軽量化が図れます。

状況別のマイク選びのコツ

 マイク選びは、ライブ中にどのような状況で話し手が話すかによって変わってきます。ここでは登場する人数や状況別に、ポイントを解説します。

0.1人で話す場合

 1人で話す場合に注意する点は、話しながらパソコンのキーボードを打つかどうかです。ノートパソコン内蔵のマイクを利用すると、マイクはカメラの横やキーボードの横に付いているため、キーボードを打つ音が、視聴ユーザーにはこちらが思っている以上に大きく聞こえる場合があります。
 これを避けるためには、パソコン内蔵のマイクは使わず、Skype用のヘッドセットなどを使うことをおすすめします。ヘッドセットでは電話並みの音声を確保することができます。
 さらに音質にこだわり、ラジオのようにクリアな音声にアップグレードしたい場合は、USB接続の指向性の狭い外部マイクを使うとよいでしょう。RODEの「PODCASTER」やBlueの「Snowball」などが最適です。

0.2人で話す場合

 2人で話す場合、横に並んで話すか、対面になって話すかで、マイクのセッティングは大きく変わってきます。
 並んで話す場合はPODCASTERやSnowballのような指向性の狭いマイクでも対応できます。しかし対面になると、2台のマイクを使わなければいけなくなります。
 そのようなときは、Blueの「Yeti」が重宝します。Yetiは設定によって単一指向性、双指向性、無指向性、ステレオの切り替えができるので、人数が多い座談会にも利用できます。

0.座談会形式で多人数が話す場合

 多人数が小さなテーブルを囲んで話すような場面であれば、1本のマイクで収録できます。Yetiを無指向性に設定し、テーブルの中心に置くとよいでしょう。1本のマイクで収録するときは人の個体差による音量を調整できないので、現場での配置にも気を配る必要があります。
 座談会のテーブルが大きくて人が離ればなれに座る場合では、マイクを人数分用意する必要があります。その場合は複数のマイクの音声をいったんオーディオインターフェースにまとめる必要があります。マイクの本数が多い場合は、複数の音声入力を合成するためのミキサーを通すこともあります。

[ヒント]定番のオーディオインターフェースローランド「UA-4FX」

ローランドのオーディオインターフェース「UA-4FX」は、もっとも多くのライブ中継現場で使われている定番の製品です。価格が手ごろでコンパクトなことと、USB端子から電源の供給ができるため電源ケーブルを必要としない手軽さが魅力です。「ノイズを取る」「音をシャープに」「低音の音圧アップ」「高音の音圧アップ」という4種類の音声の調整機能を搭載しており、会場のミキサーからの音声やマイクなどを接続することで、これ1台でたいていの場面でのライブ中継がこなせます。

[ヒント]マイクが多いときはミキサーを利用しよう

オーディオインターフェースは多数の音声入力には対応していません。それよりも多くのマイクを利用する場合には、2つの方法があります。多数の音声入力をまとめられるミキサーを通してからオーディオインターフェースに接続する方法と、USB出力ができるミキサーを利用し、オーディオインターフェースの機能を兼ねさせる方法です。前者なら市販されている膨大なミキサーから好みの機種が選べます。後者は機種は絞られますが、BEHRINGERの「XENYX X1204USB(実勢価格2万5千円前後)」などがおすすめです。

[ヒント]圧倒的な機動力を発揮するワイヤレスマイク

出演者・発表者から中継機材までの距離が十メートル以上離れるような場合になると、ケーブルの取り回しが大変になります。そのような場面ではワイヤレスマイクを活用しましょう。おすすめの製品は、ソニーの業務用ワイヤレスマイク「UWP-V1」です。もともと定評のあった旧モデルを改善し、耐久性、音質ともに向上。タイピン型なので装着も簡単です。有線マイクと比べると高価ですが、複数セットを用意しておけばわずらわしいケーブルが必要なくなり、とてもすっきりします。