なんでもライブ中継していいわけではない

 Ustreamは、iPhone1台さえあれば、すぐにライブ中継ができます。ボタンひとつであらゆる映像も音も全世界に配信できてしまうということは、実に画期的なことです。
 しかし、なんでも勝手にライブ中継してしまっていいわけではありません。「撮影禁止」とされている店内や美術館では、Ustreamでのライブ中継ももちろん禁止です。その他の場面でも、ライブ中継してはいけないもの、あらかじめ許可が必要なものがあります。次に、代表的な例を紹介します。

他の人を映すには許可が必要――肖像権

 肖像権とは、簡単にいえば「自分の姿を他者に使用されない権利」です。もっと大きな枠で捉えたプライバシー権という「自分の私的な情報や活動について、他者に知られない権利」もあります。
 「肖像権」「プライバシー権」は、法律で明確に定義されている言葉ではありません。しかし、メディアの過剰な報道や、一般ユーザーが携帯電話などで写真を撮影し、公開するようになったことなどに対抗するような形で、耳にする機会が多くなっています。
 記憶に新しいところでは、Googleが「ストリートビュー」のために無断で撮影を行い、道路に面した家の様子や、自動車のナンバーなどが映っていることが問題となりました。抗議を受けたGoogleは、家の様子を映さないようにカメラの位置を下げる、車のナンバーなどにぼかし処理を徹底的に行う、といった対策をしています。
 例えば「街の人混み」をライブ中継するのならば、カメラを地面に向けて足下だけを映す、遠くからひとりひとりの顔がわからないように映す、といった配慮が必要です。もちろん、あらかじめ相手の許可を得ていれば、顔を映すことなども問題はありません。イベント会場などでは、ライブ中継を行うことを事前に周知し、参加者の許可を得ておきましょう。

なにげない「街の風景」を映したいときなどには、通行人の肖像権に配慮を。またイベントなどのライブ中継では、事前に周知し、ライブ中継に映る可能性があることを知っておいてもらいましょう

他者の「著作物」の扱いに注意――著作権

 絵、写真、文章、建造物、さらには音楽や朗読など、人が創作したものを総称して「著作物」と呼びます。もちろん動画もそのひとつです。これらの著作物には、創作した人の「著作権」があり、著作権を持つ人(著作権者)に無断でライブ中継してしまうことは、著作権の侵害として、罪に問われる可能性があります。
 著作権の問題は非常に複雑で難しいですが、基本的には、マンガのページを撮影して配信する、テレビ番組をそのまま配信する、市販のCDを番組のBGMとして流す、といったように、他の人の著作物を主要なコンテンツとして使うことはダメ、と考えてください。他者の著作物であっても、街の様子を撮影した中に映り込んだポスターや、近くで流れたためマイクが拾ってしまった音楽などについては、著作権侵害を問われることは、まず考えられません。
 著作権侵害は「親告罪」といい、著作権者が訴えることで、はじめて罪に問われるという特性を持っています。つまり、著作権者の許可を得ていれば問題にはなりません。
 テレビ番組の映像や映画など商用の著作物も、理論的には許可を得れば利用してよいことになります。しかし、そのための手続きは難しく(どのように扱われるかを事前に確認できないため)、一般的には、許可を得ることは困難だと予想されます。

Ustreamの利用規約を確認し、遵守しよう

 Ustreamの利用規約では、番組の内容に関して、これまでに解説した肖像権や著作権に関する内容のほか、ヌード、中傷、低俗、暴力的、などの禁止も定めています(「6. 当社ユーザーの義務」の6)。これは、投稿型のWebサービスとしてごく一般的な禁止事項です。Ustream Live Broadcasterからのアカウント登録時に表示されるものとは内容が異なるので、改めて確認しておきましょう。

Ustreamの利用規約(http://www.ustream.tv/terms)。合わせて、肖像権や著作権について説明した「USTREAMで配信   する前に(http://www.ustream.tv/jp/copyright/2)」も読んでおきましょう

[ヒント]ちょっとした行き違いが取り返しのつかないトラブルを生むことも

Ustreamの話ではありませんが「飲み会の記念写真だと思って撮ってもらった写真が、友達のブログに載っていた。ブログで公開されるなんて思っていなかったので困る!」といったトラブルを、時おり耳にします。インターネットにいちど公開された情報を、完全に削除することは困難です。おおもとはお互いのちょっとした認識のズレが、取り返しのつかないことになってしまうこともあります。こうした場面で重要なのは、心情的な「納得できるかどうか」ということです。インターネット上に自分以外の情報を公開するならば、あらかじめ説明して許可を得てから行いましょう。

[ヒント]著名人には「パブリシティ権」もある

タレントなど、その人の肖像が経済的価値を持つと考えられるケースでは「パブリシティ権」も問題になります。著名人の映像などを勝手に配信することは、価値がある肖像を勝手に利用したとして、損害賠償を請求されるなどの可能性があります。

[ヒント]JASRACなどの管理楽曲がライブ中継で利用可能に

2010年7月6日に、USTREAM AsiaはJASRAC、イー・ライセンス、JRC(ジャパン・ライツ・クリアランス)の3つの著作権管理事業者と包括的利用許諾契約を締結しました。これにより、Ustreamの番組で3事業者が管理する楽曲を演奏したり、歌唱したりした動画を配信することが可能になります。ただし、CDなどのアーティストが演奏した音源は、アーティストの著作権があるため、そのまま利用できるわけではないことに注意してください。