起業しようと考えたこともなかった無職ひきこもり時代

「できるシリーズ」25周年おめでとうございます! 『できるWordPress』を執筆させていただきました星野邦敏です。今回のコラムは書籍のことというより、身のまわりの出来事など各著者それぞれの視点で「できる」にまつわることを、という依頼でした。

そこで当時、税理士法人で会計・税務・監査のサラリーマンをしていた私が、異業種のITで起業して書籍の執筆までさせていただいていることと、IT事業からさらに異業種のコワーキングスペースをはじめとした不動産運営事業を手がけるようになったことについて、お話させていただこうと思います。

私は中央大学法学部を2001年3月に卒業しているのですが、22歳から約5年近く無職で実家にひきこもっていました。いわゆる就職氷河期世代ですね。

新卒で就職しなかったことで完全に社会の入口を見失っていました。昼12時頃に起きて、「笑っていいとも!」を見て、それをビデオに撮っておいて同じ番組を1日3回見る、という、どうしようもなく何もしていないひきこもり生活をしていた経験があります。

さすがにこのままでは将来が見えないと思い、勇気を振り絞って社会に出たのは27歳の時。会計や税務という業界が無くなることはないだろうと思い、従業員数10人前後の税理士法人に就職しました。

働き始めてみたら、右も左も分からず、教えてくれる人もいない。非常に危機感をもちました。大学卒業後に5年近く無職だったことを激しく後悔して、一般的な人が1日8時間、週5日40時間働いているとしたら、土日を含めてその3倍は働こう、社会に接しようと考えました。

その頃に会社には伝えた上で、ITで副業も始めていて、はじめは知識も経験も人脈もありませんでしたが、結果的に税理士法人でのサラリーマンを辞めて、株式会社コミュニティコムという会社を設立して起業に至りました。

ホームページ作成の入門書を読んだことがIT関係の仕事を始めるキッカケでもありました。ITやインターネットの活用は副業と親和性が高かったのです。

今は自分がホームページ作成の入門書を執筆・監修させていただく側となり、当時の自分を思い返すと、書籍出版を通じて誰かの何かのキッカケになれているかもしれないので、大変に意義を感じています。

著者や監修者としてよく関わっているWordPressも、私が関わったのが2008年と早かったためにタイミングがよく、執筆・監修のお声がけをいただく機会が多かったのでしょう。もともと何もなかったところから起業して執筆までさせていただけているという点で、「できた」経験の1つです。

生まれ育った地元に7年前にコワーキングスペースを作る

東日本大震災の後、直接的な被災はしていませんが、ふと生まれ育った埼玉県さいたま市で何もしていないなと思いまして、東京から会社を移転させて戻ってくる形で2012年にコワーキングスペース7F(ナナエフ)を作りました。

最近でこそ「コワーキングスペース」の認知も高まってきましたが、当時は目新しかったと思います。もちろん、当時は店舗の運営は素人。それでも朝から晩まで業界に関わっていたことで、うまく軌道に乗せることができました。

今は一般社団法人コワーキングスペース協会の代表理事もしています。ここでも、素人がゼロから始めても、タイミングが合って、熱量があれば、なんとかなる経験をしました。

筆者が埼玉県さいたま市の大宮駅東口近くで運営している「コワーキングスペース7F(ナナエフ)」

新しい「できる」を見つけて

ゼロから1人で始めたことも、今では従業員数も40人を超えて、IT事業と不動産運営事業の他にも、埼玉県産の農作物を定期的に販売したり、障がい者が福祉作業所で作るクッキーを販売したり、という事業にも関わっています。

筆者が関わっている埼玉県産の農作物の販売

無職で実家にひきこもって何もしていなかった頃と比べたら「できる」ことは随分と増えました。「できる」ことが増えたことで、さまざまな経験をすることも多くの人とお会いすることもできました。

今年40歳になったのですが、あのまま実家にひきこもったまま今の年齢を迎える可能性もあったと思っています。27歳の頃に強い危機感をもって、やらない人生よりもやる人生を選んだのはよかったと思っています。まずはやったことで「できる」ことが増えて、何百倍か有意義な人生になっていると思っています。

今は自分がいたからこの業界がこうなったとか、自分がいたからこの地域がこうなったとか、そのようなことができるよう、これからも「できる」ことを増やしていき、次の10年20年30年と事業者として活動できればと考えています。

書籍を読んで独学でホームページ作成の勉強を始めたところから、もともと起業する意識もなかったのに、だいぶ人生が変わったと思っています。選択しなかった方の人生は分かりませんが、起業しない人生もあったと思います。ただ、今はとても有意義な人生になっていると感じておりまして、「できる」シリーズの書籍をはじめ、やはりいつの時代も本から学んで人生が変わることはあると思います。

もしよかったら私たちが書いた「できるWordPress」を手に取っていただき、インターネットで情報発信することのよさを感じていただけたらうれしいです。誰かの「できる」のキッカケになり、誰かの何かをやるキッカケになれたら、著者としてこれ以上うれしいことはありません。

あらためまして、「できるシリーズ」25周年おめでとうございます!


星野邦敏(ほしのくにとし)
1978年11月生まれ。埼玉県さいたま市出身。IT事業と不動産運営事業を展開する株式会社コミュニティコムの代表取締役。埼玉県さいたま市の大宮駅東口徒歩1分の「コワーキングスペース7F」・「貸会議室6F」・「シェアオフィス6F」の運営代表者。「大宮経済新聞」の編集長。他、一般社団法人コワーキングスペース協会の代表理事、一般社団法人さいたま市地域活性化協議会の代表理事、一般社団法人埼玉を食べるの理事、NPO法人クッキープロジェクトの理事、などを務める。

「できるシリーズ」の著書

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