デジタル化が進んでも手書きは不可欠

パソコンを前にして何時間もウンウンうなっていたのに、ノートとペンを手にした途端、スラスラとアイデアが出てきた......。そのような経験はないでしょうか?

キーボード歴35年、タッチタイプ歴29年で、手書きよりもキーボード入力のほうが文字をすばやく残せる筆者でも、手書きのほうが「頭の中を整理できるなぁ」と感じます。

最近では、Zoomなどのオンラインミーティング(Web会議/ビデオ会議)も増えています。フェイス・トゥ・フェイスでのコミュニケーションなら、言葉では伝えにくい考えを手元にある紙にチャチャッと書いて説明できますが、オンラインではそうもいきません。ホワイトボード機能があるとはいえ、「紙に書いたものを見せたい!」という衝動に駆られることもあるでしょう。

とはいえ、紙に書くと、なくさないように保管しておくのが大変です。また、あとで探したり、ほかの人と共有したりするのが難しくなります。

そこで、筆者がたどり着いたのが「デジアナ文具」と呼ばれるジャンルの製品です。デジアナ文具に明確な定義はありませんが、「デジタルとアナログを融合させた、いいとこ取りのアイテム」と表現できるでしょう。

デジアナ文具って何?

筆者所有のデジアナ文具の例。キーボードでの文字入力や、オンラインでのミーティングがビジネスの主流になった現在でも、やはり手書きには独特のメリットがあります。

手書きの文字をデジタルなテキストとして保存

デジアナ文具の代表的なメリットとして挙げられるのが、紙にペンで書いたアナログな情報を、デジタルなデータとして保存できるという点です。

筆者はあまり字がきれいなほうではなく、そのためパソコンで文字を残したいと思うようになったのですが、それでもペンを握った手で書いたほうが、頭の中を整理できると感じています。また、活字になったものを見返すより、味わいのある自分の文字を読むほうが要点が分かりやすく、記憶に残りやすいように思います。

デジアナ文具であれば、ペンを使って自分の筆跡で文字を書いていくことができ、書いたものをスマートフォンの専用アプリに保存できます。

これだけで、場所を取らない保管が可能になりますが、最近のデジアナ文具ではアプリ内にOCR機能を持つものもあります。OCR(Optical Character Recognition)とは「光学的文字認識」、つまりスキャナーなどで読み取った手書き文字をデジタルのテキストに変換する技術で、画像内の手書き文字を認識することも可能です。

このOCR機能を使えば、蓄積したデータを検索したり、メール本文やWord文書などへ再利用したりすることも簡単にできます。例えば、ミーティングの議事録をノートに手書きし、テキスト化したものを再利用して清書する、字のきれいな人であればデジタル化したノート画像をそのままメール添付する、といった使い方ができるので、ほかの人との共有までもがスピーディーに実現します。

ミーティングの議事録は、見返すのが早ければ早いほど記憶の定着率がアップしますし、高い熱量を保てるので、チーム全体の生産性にも貢献できるでしょう。

デジアナ文具って何?

普通のノートに手書きしたメモをデジタルなテキストとして保存するには、あとで入力し直す必要があります。しかし、OCR機能を持つデジアナ文具なら、手書きメモからテキスト化することが可能です。

発想を妨げず、直感的に表現できる

デジアナ文具は、アイデア出しや考えの整理という点でも役立ちます。

頭の中にあるアイデアをパソコンで表現しようとしたら、いつの間にか見栄えの調整に時間を掛けていた......といったことはないでしょうか? テキストの大きさや配置などが気になって、肝心の「発想」から注意が逸れてしまう、といったことが起こりがちです。

しかし、紙にペンで書いていく場合、見栄えはあまり気になりませんし、頭の中にあるアイデアを思ったとおりに表現できます。発想力をとどめる要因がないため、脳内のものをどんどん出していけるはずです。

デジアナ文具って何?

矢印やイラストが入ったメモをパソコンで作ろうとすると時間がかかってしまいますが、手書きならものの数分で書き上げられます。また、手書きは慣れ親しんだアウトプットなので、発想の妨げにもなりません。

しかも、デジアナ文具で書いたものは、その場だけの使い捨てにはなりません。デジタル化して保管できるため、似たような案件にぶつかったときにキーワードで検索して取り出し、考えをトレースできるのです。

いわゆる「ゼロイチ」(ゼロからイチを生み出す方法)では時間がかかりますが、すでにあるものを応用するため、作業時間の短縮につながります。

デジアナ文具って何?

デジアナ文具は、スマートフォンなどの専用アプリと連動させることで真価を発揮します。書いたものを、そのままの見た目でデジタル化して保存することが可能です。

デメリットがあるとすれば、導入コストが通常の文房具に比べて高いこと。一般的なノートとペンであれば合計200円ほどで手に入りますが、デジアナ文具はノートタイプのもので1,000円程度、カメラが内蔵された特殊なペンでは1万円以上するものもあります。

デジアナ文具の具体的な製品や価格帯については、次回の記事で解説します。