今回の「できる人」は、ITジャーナリスト、コンサルタントとして数多くの執筆・講演依頼をこなす林信行さん。最近ではiPhoneの伝道師的存在としても知られている林さんですが、Macを使ったプレゼン&取材術やTwitterの120%活用法など、独自のノウハウをたっぷり語っていただきました。前・中・後編の3回に分けて紹介します。
Keynote+iPhoneで自由自在にプレゼンを操る
――林さんはiPhoneやMac関連の取材・執筆だけでなく、講演、特にプレゼンが印象に残ります。いったいどのようなツールを使っているのでしょうか?
林信行さん
ITジャーナリスト
modiphi社およびpopIn社アドバイザー。'90年ごろからIT業界、特にアップル社周辺の動向を取材し、初代iPodの発表会も取材。最近ではiPhone関連の講演活動を精力的に行っている。近著に「iPhoneショック」(日経BP刊)、「アップルの法則」(青春出版社)、「アップルとグーグル」(インプレスR&D刊、共著)、「できるポケット+ iPhone iPhone+iPod touch対応」など。
林:私の場合、まずはMacを使うという前提になりますが、アップルのオフィススイート「iWork '09」のプレゼンソフトである「Keynote」と、「Stage Hand」というiPhoneのアプリケーションを使っています。
――Stage Handというのは、アップルがAppStoreで販売している「Keynote Remote」とは別のアプリケーションですね?
林:はい。Stage Handのほうが価格が高い(編集部注:Keynote Remoteは115円、Stage Handは900円)のですが、その分Keynote Remoteより高機能ですね。例えば、Keynote Remoteではスライドを順番に進めていくかたちになりますが、Stage Handではプレゼンの流れに応じて、どのスライドを表示するかを臨機応変に変えることができます。
林さんがプレゼンで愛用しているiPhoneアプリケーション「Stage Hand」。プレゼンを聞いている人々の反応に合わせて、表示するスライドの順番をその場で変えることもあるそうです
――なるほど。これまでのプレゼンで同じことをしようとすると、スクリーンに操作している様子が表示され、流れが途切れてしまうこともありましたね。
林:話したいことをメモしておけばカンペにもなりますし、iPhoneをタップすることでレーザーポインターのように使うこともできます。スライドではなく私に注目してほしいときは、スライドを瞬時に消すこともできるんですよ。
Stage Handでスライドを表示した状態。そのスライドを表示したときに話す内容をメモしておき、プレゼン中に参照することができます
Keynoteのスライド。Stage Handを利用すれば、高価なレーザーポインターを使わなくても、iPhoneでタップするだけでスライド上の注目してほしい点を強調できます(ここでは右下の画像をポイントしています)
――すごいですね! これを知ってしまったら、今までのプレゼンスタイルには戻れませんね......。
林:そうでしょう。Keynoteに関しては、私の周囲でもPowerPointから乗り換える人が増えています。特にIT系のセールスパーソンに多いですね。
――営業をされる方が、ですか? 営業職といえばWindowsのPowerPointを使っている印象がありますが。
林:プレゼンは詰まるところ成約を取ることが目的。プレゼンツールで説得力が増して、成約率が上がるならやって損はない、ということですよ。
KeynoteとPowerPointの合わせ技で資料作り
――林さんのプレゼン資料は「動き」があり、見ている人を飽きさせない魅力があります。資料の作成には、どのようなソフトを使っているのですか?
林:Keynoteのほかに、「Microsoft Office:mac2008」のPowerPointを組み合わせています。
――どちらも似たようなソフトに思えるのですが......。
林:まずKeynoteは、プロのデザイナーではない一般の方でも、優れた印象を与えることができるテンプレートや機能を備えています。これはアップルの製品全般に言えることですけどね。
▼Keynote
――Keynoteの機能面では、特に何がプレゼンに効果的なのでしょうか?
林:一番は「マジックムーブ」という機能で、文字や図形などに簡単に動きを付けることができます。プレゼンに与えられた40分~1時間という時間の中では、メリハリを付けることが大切です。いくら内容が優れていても、何かしらの工夫がなければ、聞いている人々の集中力は続きませんからね。
――確かに、ずっと同じパターンのスライドが順に送られていると、だんだん疲れてきてしまいます。
林:最近では「笑い」も大事なアクセントだと位置づけていますが、プレゼンの中に動きのあるエフェクトなども使って、5分に一度くらいは視覚的に「おっ」と感じてもらえるようにしています。その1つがKeynoteのマジックムーブだと言えますね。プレゼンの威力を効果的にアップできるのに、海外でもまだ知名度や活用度がそれほど高くないのはもったいない話です。
――では、PowerPointはどのような場面で使うのでしょうか?
林:Keynoteが感情に訴えかける「右脳的」なツールであるとすると、PowerPointは「左脳的」な作業に適していると思います。例えば「SmartArtグラフィック」という機能は、図解を作成するうえでかなり強力なツールです。ビジネスパーソン向けのプレゼンなどでは概念的な込み入った説明が求められますが、それをスマートにこなすことができますよ。PowerPointで作成した図解はKeynoteにそのままコピー&ペーストできるので、先ほどのメリハリも意識しながら、プレゼンを構成していくわけです。
――いずれにしても、MacとiPhone、そしてこれらのソフトを組み合わせると、プレゼンの威力が数段高まりますね。帰りにMacを買いたくなってきました(笑)
▼mactopia Japan「Apple's Eye」
▼過去のコラム一覧(No.229以降)
▼過去のコラム一覧(No.1~228)
中編では、林さんのTwitterを活用した情報活用術をご紹介します。