現在、非常に多くの事業者が格安スマホの通信サービスに参入しています。そのため、初めて格安スマホサービスを契約するとなると、どこと契約すればいいかを判断して選ぶのは、意外と難しいと思います。
同じデータ通信量で比較した場合、料金面ではどの事業者でもあまり差はありません。格安スマホのサービスを選ぶときは、使う端末や通話量、データ通信量シェアの有無など、料金以外の条件に注目しましょう。
第2回での端末選びに続き、今回は格安スマホサービス事業者の選び方について、いろいろな面から解説します。
利用する端末による事業者選びの制約
格安スマホの事業者を選ぶとき、最初に考える必要があるのは、利用するスマートフォン(端末)による制約です。
NTTドコモかauか、またはSIMロックフリー(解除済み、またはSIMロックなし)か、iPhoneかAndroidか、またはこれから事業者と一緒に選ぶのかにより、選べる選択肢は異なってきます。
いま使っているiPhoneを使う場合
いま使っているiPhoneを格安スマホとして使うならば、該当するモデルを動作確認機種として公表している事業者を選ぶと確実です。どのiPhoneが格安スマホとして使えるかは、第2回で詳しく解説しています。
auのiPhoneは、auのネットワークを利用しているケイ・オプティコムのサービス「mineo」のAプランで利用できます。残念ながらほかに選択肢はありませんが、mineoはiPhoneでも比較的使いやすい格安スマホ事業者です。
NTTドコモのiPhoneは、NTTドコモのネットワークを利用している格安スマホ事業者で利用できます。UQ mobile以外の格安スマホサービスは、NTTドコモのネットワークを利用しているので、非常に幅広い選択肢があります。しかし一部の事業者はiPhoneをサポートしていないので、必ず使っているiPhoneのモデルとiOSバージョンを動作確認機種として公表いる事業者を選びましょう。
アップルストアで販売されているSIMロックのかかっていないiPhoneや、SIMロックを解除したiPhoneは、NTTドコモとauのどちらとしても使えます。ただし事業者によっては対応モデルが限定されることもあるので、やはり事業者の公表している動作確認機種リストを確認しておきましょう。
iPhoneを格安スマホとして使う場合、事業者が提供する「プロファイル」をiPhoneにインストールする必要があります。iPhoneが動作確認機種となっていても、新モデルやiOSをアップデートした環境では古いプロファイルが使えなくなることもあるので、新モデルやiOSのバージョンアップ時に早いタイミングで動作検証やプロファイルの更新をしてくれる、iPhoneのサポートが手厚い事業者を選ぶのもオススメです。
iPhoneのサポートが特に手厚い格安スマホサービスとしては、IIJmioやmineoが挙げられます。IIJmioは技術力に定評があり、独自に研究・解析を行なっています。mineoはiOSのバージョンアップ時、24時間体制で動作検証を行なってサイトの公式ブログ上で公開するなど、素早い対応をこれまでしてきた実績があります。
mineo公式サイトの「mineoからのお知らせ」ページでは、新しいiOSへの対応に関する情報を掲載。詳細な検証結果は、公式ブログ「マイネ王スタッフブログ(王国通信)」で公開されます。
mineoからのお知らせ
マイネ王スタッフブログ(王国通信)
いま使っているAndroidスマホを使う場合
いま使っているAndroidスマホを格安スマホとして使う場合も、その機種を動作確認機種として公表している事業者を選ぶのが確実です。大手の格安スマホ事業者は、動作確認した機種のリストをWebサイト上で公開しているので、契約前に必ず確認しておきましょう。
NTTドコモのAndroidスマートフォンは、NTTドコモのネットワークを使う格安スマホ事業者で利用できます。UQ mobile以外はNTTドコモのネットワークを使っているので、選択肢は非常に多いですが、事業者によって動作確認機種は異なります。また、テザリングなど一部の機能が使えない機種もありますが、ここは事業者による違いは基本的にありません。
一方、auのAndroidスマートフォンは一部の機種のみmineoのAコースかUQ mobileで利用できます。この2社で動作確認機種が少し異なるので、自分の機種を確認しておきましょう。なおVoLTE対応機種の場合は、SIMロックを解除したうえで、VoLTE対応のSIMカードを利用する必要があるなど、導入方法が特殊になるため注意が必要です。
UQ Mobileの対応端末一覧ページ。メーカーやSIMの種類から検索が可能です。
UQ mobile 対応端末一覧
auプラン(Aプラン)動作確認端末一覧
新たにスマートフォンを購入する場合
流用ではなく新しくスマートフォンを用意する場合は、格安スマホのサービスとセットで購入することも考えられます。
多くの格安スマホ事業者は、格安スマホのサービスとスマートフォンの端末をセットで販売しています。そのような場合は割引が適用されて安く買えるだけでなく、事業者の推奨機種のような扱いとなるため、設定が簡単になったりサポートが受けやすくなったりします。
そのほかでも、メーカー直販や家電量販店、中古ショップなどで入手することも可能です。普通の格安スマホ事業者は、新品のiPhoneを取り扱っていませんが、UQ mobileやワイモバイルは、少し古いiPhone(2016年8月時点では2013年発売のiPhone 5s)を取り扱っています。
UQ mobileはKDDI(au)の子会社、ワイモバイルはソフトバンクのサブブランドで、それぞれiPhone向けのサービスでは、大手キャリアと格安スマホの中間のサービスを提供しています。一般の格安スマホに比べると月額料金がやや高いですが、無料通話が付属するので、通話が多い人にとっては選択肢として悪くありません。
しかし通話をほとんどしない場合は、最新のiPhone SEをアップルストアで買ってその他の格安スマホを別に契約しても、長期的に見た総額はあまり変わりません。最新機種が使えるぶん、iPhone SE+その他の格安スマホの方がオススメです。
重視する条件から利用サービスを選ぶ
利用したい機種に対応した格安スマホのサービスの中から、どのような条件を重視するかで利用する事業者とサービスを選びます。
ここでは「データ通信の容量」「通話サービス」「家族シェア」「販売店連動サービス」の4つの条件を取り上げます。いずれも、適した条件を選ぶどうかでトータルの料金がけっこう大きく変動します。どのようにしたいかを考えながら読み進めていってください。
データ通信の容量で選ぶ
格安スマホの月額料金には、それぞれ1カ月に通信できるデータ容量が設定されていて、各事業者、利用者に合わせた大小のデータ容量プランを用意しています。
どのくらいのデータ容量がいいかは、スマートフォンの利用スタイルによって異なります。現在大手キャリアのスマートフォンを使っている人は、サポートWebサイトなどで自分が毎月どのくらい通信しているかを確認し、それを参考にデータ容量を決めるといいでしょう。
Wi-Fi接続していない環境で動画をたくさん視聴する人だと、容量が大きいプランが必要になります。そうでない人の場合は、たいていの事業者では3GB前後のプランがコストパフォーマンスに優れているのでオススメです。動画など大容量のコンテンツを利用するときは自宅などのWi-Fi環境を利用するようにすれば、通信容量の節約も可能です。
また、多くの格安スマホ事業者では、最大通信速度を200kbps程度の低速に制限する設定に切り替えることで、設定されたデータ容量を消費せずに通信できるようになります。
簡単に制限のオン・オフを切り替えたり、当月の残容量を確認できるアプリを提供している事業者もあるので、そうした便利な機能やアプリの有無で事業者を選ぶのもいいでしょう。
mineo Dプランの基本データ容量別料金の例
データ容量 | 基本料金 | 1GBあたりの料金 |
---|---|---|
500MB | 700円 | 1,400円 |
1GB | 800円 | 800円 |
3GB | 900円 | 300円 |
5GB | 1,580円 | 316円 |
1GB | 2,520円 | 252円 |
mineoのDプラン(ドコモプラン)は、上記のデータ通信のみの料金に、それぞれプラス700円で音声通話も可能になる形。1GBあたりの料金は3GBで大きく下がり、大容量の通信が必要なければお得に使えることがわかります。
mineoが提供している通信速度切り替えアプリ「mineoスイッチ」。使用可能な容量を確認しながら、高速通信が可能な「節約OFF」と低速にしてデータ容量を消費しない「節約ON」を切り替えられます。
通話サービスで選ぶ
格安スマホ事業者の多くは、安価なデータ専用のプランと、月額600円程度高い音声通話もできるプランの両方を提供しています。データ専用プランは、タブレット端末やモバイルWi-Fiルーター端末向けなので、メインに使うスマートフォンで使うのにはオススメできません。
LINE電話など、データ通信で電話をかけることができるインターネット電話サービスもありますが、インターネット電話からは110番や119番などに緊急通報できないので、ほかに通話できる端末を持ち歩かないなら、音声通話付きのプランを強くオススメします。
格安スマホでは、大手キャリアのように通話定額プランが標準ではなく、国内通話ならば通常、30秒で20円の通話料金がかかります。大手キャリアの通話定額プランと同じ感覚で、格安スマホでもたくさん通話をすると、料金総額が増えることもあるので注意しましょう。
一部の格安スマホ事業者は、通話の割引サービスを用意しています。たとえばmineoは、30分の通話がセットとなったオプションを用意しています。また、楽天モバイルやOCN モバイル ONEは、インターネット電話で5分以内の通話がかけ放題となるオプションや料金プランも提供しています。不特定の相手に電話をかけることが多い人は、こうしたオプションや料金プランを活用するといいでしょう。
一方、家族や友だちなど、いつも決まった相手に電話をすることが多い人は、「LINE」や「FaceTime」「Skype」などの利用者同士が無料で通話できるアプリを活用するのもオススメです。
楽天モバイルの「楽天でんわ 5分かけ放題オプション」。月額850円で、5分以内の国内通話がかけ放題になります
楽天モバイル: 5分かけ放題オプション
家族シェアで選ぶ
大手キャリアでは家族の契約をまとめると割引になるサービスを提供していますが、一部の格安スマホ事業者も、家族で使うと安価になる料金プランを提供しています。
IIJmioの「ファミリーシェアプラン」は、基本料金は月額3,260円ですが、月額700円(4回線目以降は1,100円)で音声通話できる回線を追加できます。合計10GBの通信ができるので、3人以上の家族に最適です。
たとえば「ファミリーシェアプラン」を4人家族で使う場合は、月額3,260+2×700+1,100=5,760円となり、1人あたり月額1,440円となります。ただし4人あわせて月10GBまでなので、データ通信量が家族がいるときは、その人だけ別のプランを利用することも検討するといいでしょう。
また、家族でシェアしなくても、スマートフォンで使う音声通話付き回線とタブレットなどで使うデータ通信専用回線の2回線を1人で使ってシェアすることもできます。データ通信専用であれば、音声通話付きの回線を追加するよりも安価に済ませられます。
同様のシェアプランは「OCNモバイル ONE」なども提供していますが、事業者ごとに少しだけ価格体系が異なるので、自分の利用状況にあった事業者を見極めましょう。
IIJmioの「ファミリーシェアプラン」解説ページではプランの詳細を確認し、「IIJmio料金チェック」で簡単な料金シミュレーションもできます。
ファミリーシェアプラン IIJmio
販売店や連動サービスで選ぶ
ビックカメラやイオンといった量販店も、独自ブランドの格安スマホサービスを提供しています。これらはIIJなどの大手通信会社が通信ネットワークを担当しているので、品質面では問題ありません。
近くに店舗があれば購入手続きが簡単にできます。しかし、購入後のサポートは店舗では受けられずWebサイトや電話経由になるため、大手キャリアのショップのような利便性はありません。あらかじめ注意が必要です。
楽天モバイルやmineoなどは販売店ではありませんが、独自ショップの一部でサポートも行っています。サポート可能なショップが近所にあれば、とても頼りになります。
格安スマホにはさまざまな事業者が参入していますが、もともと通信会社ではない事業者の場合、本業と連動するサービスを提供していることもあります。
たとえば楽天モバイルは、楽天市場の「楽天スーパーポイント」で月々の使用料金を払ったりもできます。
この記事の執筆時点では詳細は未発表ですが、LINEが独自の格安スマホサービス「LINE MOBILE」を2016年夏より開始する予定です。料金などは発表されていませんが、LINEのメッセージや電話に利用したデータ通信の容量がカウントされないサービスになるとのことです。
このような、特定サービスだけデータ通信の容量がカウントされず、制限の対象とならない格安スマホのサービスは、そのサービスのユーザーには大きなメリットとなります。ただしLINE MOBILEでは音声通話サービスが提供されない見込みなので、ほかに音声通話できる端末を持ち歩かない人には、あまりオススメできません。
楽天モバイル「店舗」ページでは、全国の楽天モバイルショップを探せます。
楽天モバイル:店舗(楽天モバイルショップ)
自分のスマートフォンとデータ通信量にあった事業者を選ぼう
実はこれ以外にも、多くの人が気にしている条件があります。それは通信の速度です。「格安スマホは遅いのでは?」という点はやはり非常に気になるところでしょう。
第1回でも述べたように、格安スマホの通信速度は大手キャリアと大きく変わるわけではありません。しかし事業者によって、混雑時の通信速度が変わってくることはあります。
一般的に、利用者が急速に増加し、それに対応した回線増強が追いついていない事業者は、通信速度が低下しがちな傾向があります。しかし、利用者が多くなれば事業者は回線増強を進め、通信速度が速いとされる事業者には利用者が集中して遅くなってしまうこともあるので、回線速度は日々刻々と変化します。そのため、「どの格安スマホ事業者が速い/遅い」と断言することは非常に難しくなっています。
回線品質を見るならば、IIJやOCNなど、老舗・大手のインターネット通信会社によるサービスの信頼性が高い傾向はあります。しかし利用者も多いので、通信速度の絶対的な指標になるとは言えません。最初から「格安スマホは通信が遅くなることもある」くらいの気持ちで利用しましょう。
通信速度よりも、使いたいスマートフォンがサポートされているか、料金プランが自分に合っているかに主眼を置いて事業者を選ぶことをおすすめします。
▼関連リンク
mineo
UQ mobile
IIJmio
楽天モバイル
OCN モバイル ONE