格安スマホに移行するには、スマートフォンの準備と格安スマホ事業者の選定以外にも、必要な準備があります。忘れていると移行手続きのときに余計な手数料がかかったり、メールが使えなくなったりもするので、必要なことは事前に把握しておきましょう。

今回は格安スマホに移行するために必要な準備と、格安スマホへの移行後を見据えて使い始めておきたいメールなどの準備をまとめて解説します。

2年契約の更新期間を確認し、移行のタイミングを決める

格安スマホへの移行を検討しているのならば、まずは現在使っている回線契約の「更新期間」がいつかを確認しましょう。

大手キャリアは通常、2年の期間拘束契約(いわゆる「2年縛り」)をすることで、基本料金の割引を行なっています。これは解約を申し出ない限り自動更新される仕組みで、24カ月ごとに2カ月間ある更新期間以外で解約するには、9,500円の解約金がかかります。格安スマホに移行するならば、解約金のかからない更新期間に行なうのがオススメです。

更新期間が遠く、半年以上先になる場合は、解約金を払って移行しても元が取れます。格安スマホに移行すれば、ケースによって毎月4,000~5,000円程度安くなるので、その差額によってトータルの支払い額が安くなるためです。

大手キャリアでは、端末購入時に24カ月間の割引が付属しますが、この割引は途中で解約すると消失してしまいます。しかし格安スマホは大手キャリアの割引後の料金より安くなるケースが多く、その場合は割引を全部受けるより、格安スマホに移行した方がお得になります。

各キャリアの更新期間の確認方法

●NTTドコモ

「My docomo」にログインし、[ドコモオンライン手続き]の[ご契約内容確認・変更]にある[ご契約プラン]で契約満了月を確認します。

My docomo | NTTドコモ

●au

「auお客さまサポート」にログインして、[契約の確認・変更]の[契約内容を確認/変更する]にある[ご契約情報]の[誰でも割]で更新期間を確認できます。

auお客さまサポート

●ソフトバンク

「My Softbank」にログインして[契約内容の確認・変更]の[ご契約内容の確認]にある[料金プラン]で更新期間を確認できます。

My SoftBank(マイソフトバンク) ホーム |ソフトバンク

各社のサポートサイトでは、自分が毎月どのくらいデータ通信をしているかも調べられます。このデータ通信量もチェックしておけば、格安スマホで契約するデータプラン選びの参考になります。

いずれのキャリアも、月々の料金を増やしたり長期契約サービスをやめたりすることで、期間拘束がなく、いつでも解約金なしで解約可能な契約にできます。スマートフォンの新製品発売を待ちたいなど、すぐに格安スマホに移行できない場合は、更新期間中に期間拘束契約のないプランに変更し、移行タイミングを待つのもいいでしょう。

MNPの手続き方法を理解し、必要かどうか判断しておく

大手キャリアから格安スマホに移行するときも、大手キャリア間の移行と同様に「MNP」(携帯電話番号ポータビリティ)制度を使うことで、同じ電話番号のまま移行できます。

MNPを利用するには、現在の回線契約を解約する前に、現在利用している携帯電話会社にMNP利用を申し出て、「MNP予約番号」を発行してもらいます。MNP予約番号は、各携帯電話会社のサポート窓口への電話や各ショップ、サポートサイト(NTTドコモのみ)で発行してもらえます。

MNP予約番号を取得したら、格安スマホの事業者と契約するとき、MNPを利用する旨を伝え、MNP予約番号を伝えてから手続きをすることで、同じ電話番号を格安スマホで利用できるようになります。

なお、MNP予約番号には発行から15日間という有効期限が設けられていますが、移行元の回線から移行先の回線に入替手続きが行なわれたタイミングで、MNP予約番号が有効である必要があります。また、入替手続きのタイミングで元回線が解約・停止となるので、2年契約の更新期間に合わせる場合は、そこに間に合うように手続きする必要があります。

格安スマホ事業者にMNPで新規加入すると申し込んでも、それから回線の入替手続きまで、最長で1週間程度かかることがあり、事業者によっては申込時に10日程度の有効期限が残っている必要があるので、MNP予約番号は格安スマホ事業者に申し込みをする直前に取得するようにしましょう。

また、格安スマホ事業者での申し込み手続きがスムーズに行なえるように、MNP予約番号を取得するさらに前に、格安スマホ事業者側での手続き手順を確認し、必要書類などの準備しておくのがオススメです。

MNPの詳細な手順については、第5回で解説します。まずはMNPが必要かどうかを確認しておきましょう。

キャリアメール以外のメールサービスに移行しておく

大手キャリアを解約すると、NTTドコモの「○△□@docomo.ne.jp」やauの「○△□@ezweb.ne.jp」、ソフトバンクの「○△□@softbank.ne.jp」というキャリアが発行しているメールアドレス(キャリアメール)は使えなくなります。家族や友だちとの連絡用に使っているなら、別のメールサービスに移行する必要があります。

すでにキャリア以外のメールサービス、例えばGoogleの「Gmail」やアップルの「iCloud」、Yahoo! JAPANの「Yahoo!メール」、マイクロソフトの「Outlook.com」などを使っているならば、格安スマホ移行後も、それらのメールアドレスを使えます。

これらのメールサービスをまだ使っていないときは、新しくメールアドレスを取得し、そちらに移行しましょう。

新規の移行先としてオススメなのはGmailです。Androidスマホとの相性がいいだけでなく、iPhoneやパソコンでも利用しやすく、迷惑メールフィルタや検索機能も優秀で、ほかのサービス同様に無料で利用可能です。ちなみにAndroidスマホを使う場合は、アプリストアなどのサービスを使うために、Gmailのメールアドレス(Googleアカウント)が必要になります。

iPhoneでは[設定]の[アカウントの追加]でiCloud、Google(Gmail)などのアカウントを追加し、[メール]アプリで利用できます。

iPhoneで格安スマホを利用するならば、iCloudもオススメです。ただしiCloudはiPhoneとMac以外では使いづらいので、AndroidスマホやWindowsパソコンも使うのであれば、Gmailを使う方がいいでしょう。

格安スマホに移行してしまう前に、まず新しいメールサービスの利用を開始しましょう。普段からメールをやり取りしている相手に新しいメールアドレスを伝え、十分に周知されて古いメールアドレスでのやりとりがなくなったことを確認してから格安スマホに移行するのが、理想的です。

多くのオンラインショップやWebサービスは、ユーザーIDや連絡先としてメールアドレスを使っています。これらにキャリアメールを使っている場合は、格安スマホに移行する前に変更しておきましょう。変更を忘れて元のメールアドレスが使えなくなると、アカウント情報の変更ができなくなることもあるので、注意が必要です。

メールアドレスの変更の周知には、ある程度の時間がかかるはずです。更新期間のタイミングによっては、移行の数カ月前から新しいメールアドレスを使い始めて、移行しやすいように時間をかけて準備しておいてもいいでしょう。

通信・通話の節約を実践する

格安スマホに移行しても、データ通信の容量が大きすぎたり、長時間通話をしたりしてしまっては節約になりません。通信料が少なめのプランに合わせた通信料節約の方法や、通話料金を節約する方法を知り、実践しましょう。

データ通信量節約のため「動画」に注意しよう

格安スマホも大手キャリアと同様に、4G回線や3G回線などの携帯電話のネットワークで通信できるデータ量に制限があります。毎月どのくらいのデータ量を通信できるかは、契約プランによって異なります。自分の利用スタイルに合わせたプランに契約しましょう。

一般的な利用スタイルなら、月間3GB程度で足りますが、利用頻度が高かったり、動画など大容量コンテンツを多用していると、より多くのデータ通信をします。

格安スマホでは、月間3GBのプランは月額1,600円程度ですが、月間10GBのプランは月額3,200円程度になります。どちらにせよ大手キャリアよりは安いですが、データ通信量を節約し、より安いプランに契約するのもオススメです。

自宅にブロードバンド回線があり、Wi-Fiがつながっていれば、そのWi-Fi経由で通信することで、格安スマホの月間データ通信量を消費しないで済みます。お店などに設置されている公衆無線LANも活用しましょう。

とくに動画はケタ違いにデータ通信量が多いので、なるべく自宅のWi-Fiや公衆無線LAN経由で視聴しましょう。動画をWi-Fiであらかじめダウンロード保存しておける、オフライン再生機能のある動画サービスを利用するのもオススメです。

ストリーミング系の動画アプリの一部は、動画の画質を選べます。たとえばYouTubeアプリは、右上のメニューにある「設定」で「Wi-Fiの時のみHD再生」(iPhoneの場合)や「モバイルデータの上限設定」(Androidの場合)をオンにしておくと、4Gや3G回線で動画を視聴するとき、画質を落とすことでデータ通信量を節約できます。利用している動画アプリに同様の設定があるかどうか確認してみましょう。

iPhoneの[YouTube]アプリの設定画面で[Wi-Fiの時のみHD再生]をオンにすると、4Gや3G回線では低画質で動画を再生し、データ通信量を抑えます。

ただし、どちらにしても動画は静止画やテキストに比べるとケタ違いに大きなデータ量となるので、Wi-Fi以外での動画視聴はなるべく避けるのがオススメです。

動画以外にも、アプリのダウンロードでも、大量のデータ通信が伴うことがあります。4Gや3G回線経由でアプリをダウンロードするときは、そのアプリサイズに気をつけ、100MBを超えるようなアプリは、なるべく自宅のWi-Fiや公衆無線LANでダウンロードするようにしましょう。

とくにゲームアプリは、アプリ自体が数百MBと動画並のサイズだったり、アプリ自体のサイズが小さくても、ゲーム開始時に大量のデータをダウンロードしたりします。ソーシャルゲームの初期チュートリアルを繰り返す、いわゆる「リセットマラソン」は、4Gや3G回線経由で行なうと、場合によっては非常に高く付くことに注意しましょう。

「電話」から「LINE」などの音声通話アプリに切り替えよう

格安スマホには、大手キャリアにあるような通話定額プランがありません。そのため、通話量が多くなると、格安スマホの方が大手キャリアよりも高くなることがあります。とくに仕事などで不特定の相手にたくさん電話をかける人は注意が必要です。

家族や友だちなど特定の相手との通話が多く、相手もスマートフォンを使っていれば、データ通信だけで利用できるインターネット電話サービス(「電話」以外のアプリを使った音声通話)を利用することで節約できます。

インターネット電話サービスとしては、「LINE」がオススメアプリのひとつです。メッセージやスタンプのやり取りのために利用している人も多いので、多くの人との通話に使えます。

また、LINEアプリに搭載されている「LINE OUT」機能を使えば、携帯電話には1分14円、固定電話には1分3円、国際電話は国によっては1分1円からという格安料金で発信できるので、LINEを使っていない人との通話も安く利用できます。ただしLINE OUTは110番などへの発信はできないので注意しましょう。

LINEの「LINE OUT」では相手の電話と通話が可能です。通話料金は「クレジット」としてアプリ内で購入し、チャージします。

このほかにもiPhone同士で簡単に使える「FaceTime」、パソコンでよく使われている「Skype」など、いろいろなインターネット電話サービスがあります。1台のスマートフォンで複数のインターネット電話アプリの待受ができるので、相手によってこれらのインターネット電話サービスを併用することもできます。

よく話す相手との通話手段の移行は、メールサービスの移行と同様に早いタイミングで行なって慣れておきましょう。格安スマホ移行のハードルが下がります。

格安スマホへの移行は焦らず準備をしっかりと

格安スマホに移行するには現在の契約の更新期間内がベストタイミングとなりますが、月々の料金差が小さくないので、半年以内に更新期間が来るのでなければ、すぐに格安スマホに移行しても元が取れるでしょう。

しかし格安スマホの場合、一部の事業者をのぞき、店頭ですぐに新規契約の手続きができるわけではありません。とくにMNPを利用するとなると、手続きが増え、余分に時間がかかることがあります。

そのため、格安スマホへの移行は1、2カ月前から準備するのが理想的です。今回解説した必要な準備は、大きく分類すると次の5つでした。再度まとめておきます。

  • 現在の契約の更新期間を確認し、いつ移行するか決める
  • MNPを利用するか決める
  • キャリアに関係なく利用できるメールサービスに移行しておく
  • 通話料を節約できるアプリに通話環境を移行しておく
  • 特に動画視聴に関して、データ通信料を節約できる使い方を実践しておく

次回は、現在利用しているiPhoneをMNPで格安スマホに移行する具体的な手順を紹介しながら、実際の移転作業と手続きのポイントを解説します。