Part1 Section 08 Slackの特徴
Slackがデジタルシフトに最良の選択である理由
オンライン会議室の全貌を知る
デジタルシフトによる働き方の変化を、「オンラインで働く」として紹介してきた。非同期のオンライン会議室を中心に、超並列で働くことによって、情報共有や意思決定が圧倒的に速くなるイメージを持っていただけたと思う。
ここからは、オンライン会議室であるSlack自身について話したい。Slackがどのような機能で「オンラインで働く」環境を作り出すのか、また、ビジネス用のチャットはほかにもある中で、Slackのどこがユニークで優れているのかを見ていこう。
Slackは2013年に8月にアメリカでサービスを開始したビジネス用コラボレーションツールだ。チャットを中心に、PCからもスマートフォンからも利用でき、カスタマイズ性に優れたツールとして日本でも話題になった。
ただし、当時は日本語に対応していなかったため利用のハードルはやや高く、初期に注目していたのはITエンジニアなどが中心だった。2017年11月に日本語化され、日本でも広く使われるようになっていく。
PCブラウザー版Slackのメイン画面
「人」に送るメール、「場」で話すSlack
Slackはメールよりも手軽で、スピーディに会話ができる。宛先を選択したり件名を書いたり、「お世話になっております」のような書き出しを付けたりしなくていいのが、わかりやすい点だ。
実は、Slackとメールとの違いには、手軽さよりも重要なことがある。それは、チャンネルという「場」を中心にやりとりすることだ。
メールは、宛先を選択して「人」に届ける。そのため、やりとりしていた相手が異動し、新任の担当者に代わった場合には、過去のやりとりを共有するために引き継ぎ作業をしなければならない。やりとりの途中で関係者が増える場合には、それまでの経緯をまとめて共有したうえで、話を進める必要があるだろう。
チャンネルでやりとりする場合は、人がどれだけ出入りしてもやりとりは継続され、特に引き継ぎ作業をしなくても、新任者は過去のログでやりとりを読める。また、直接の関係者でなくても、関心のある人は誰でもチャンネルに参加可能だ。
このようにオープンな情報共有を実現できることが、メールとの大きな違いだ。長期的に運用しているほど、この効果は強く実感できるようになる。
チャンネルで「場」を作る
オープン指向と情報整理への配慮
続けて、Microsoft TeamsやGoogle Chatなどのライバルと比べて、Slackが優れている点を紹介していきたい。
ビジネス向けのチャットは、前ページでも触れた「場」であるチャンネルと、特定のユーザー間だけで会話する「ダイレクトメッセージ」(DM)という機能を持っている(ツールにより名称は異なる)。やりとりはチャンネルを中心に行うが、使いやすくするためにチャンネルの命名ルールを整理できる機能を持つのは、主要なツールの中ではSlackだけだ。
チャンネルは誰でも自由に作成できるのが望ましいが、命名ルールがバラバラでは収拾が付かなくなる。Slackではチャンネル名に付ける固定の文字列「プレフィックス」を設定し、「プロジェクト用チャンネルの名前は『#pj-』から始める」のようなルールを、チャンネル作成画面に設定できる。これによって、大規模な組織で使っても自由度が高く、同時に情報が整理された運用が可能だ。
社外とも連携しやすいコラボ機能
社外と連携しやすいコラボ機能も充実している。企業で導入しているSlackにゲストとして社外のユーザーを招待できるほか、有料プランを利用している企業どうしで「Slackコネクト」機能を利用し、お互いの企業に所属するユーザーが参加したチャンネルを作成できる。
これにより、自社のアカウントを使って他社のSlackのチャンネルにも参加が可能になる。アカウントの切り替えなどを必要とせず、社内とも社外とも会話ができるのは便利だ。
チャンネル名とプレフィックス
チャンネルを作成する際の名前の入力時に、プレフィックスを一覧から選択可能にできる。
外部ツールとの連携機能も充実
外部ツールとの連携機能は、 Slackの特に際立った特徴だ。Section 6で紹介したように、多くのSaaSと連携できる。これにより、人と人とのやりとりだけでなく、各種ツールからの情報もSlack上に集約できるようになる。
Slackコネクトのようなコラボ機能に、外部ツールとの連携と、Slackには組織内やSlackの機能内で完結せず、広く連携して展開しようという思想が強く感じられる。これは実にオンラインでの仕事に向いた考え方だ。社外との協業に前向きな企業や、長期的に使いこなしを深めていきたいと考えている企業には、特におすすめできる。
使う楽しみを増やすカスタム絵文字
今やSlackに限らず、ビジネスのやりとりに絵文字を使うことは当たり前となっている。簡単な返信や「読みました」の意味で絵文字を返すのは、すでに一般的だ。
Slackがユニークなのは、ただ絵文字を使えるだけでなく、ユーザーが独自に画像を追加して、絵文字を増やせる「カスタム絵文字」機能を持っている点だ。
Slackのようなコミュニケーションツールを普及させるには、利用者であるチームのメンバー自身が楽しみ、身近に感じて日常的に使うことが大切だと筆者は考えている。使っていく中でツールの価値が実感され、定着し、なくてはならないものになっていく。
そのためのフックとして、この機能はシンプルながら非常に魅力的だ。以降のパート2で紹介する事例でも、複数の企業で絵文字を楽しんで利用している様子が伺えた。
豊富な絵文字とカスタム絵文字
最初から豊富な絵文字が用意されているうえに、独自のカスタム絵文字も追加できる。
このコンテンツは、インプレスの書籍『Slackデジタルシフト 10の最新事例に学ぶ、激動の時代を乗り越えるワークスタイル変革(できるビジネス)』の内容をWeb向けに再構成したものです。
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