第4回では格安スマホに移行するため必要な準備について解説しました。今回は実際にNTTドコモのiPhone 6sを、MNP(携帯電話番号ポータビリティ)制度を使って同じ電話番号のままIIJmioに移行する手順を紹介しながら、必要な作業や注意点を解説します。

移行の準備を整える

移行の手続きに入る前に、第4回で解説した準備を整えます。具体的には以下となります。

  1. 更新期間を確認し、いつ移行するかを決める
  2. キャリアに依存しないメールや通話料を節約できるアプリに移行する
  3. 利用するスマートフォンと事業者を選定する

今回のNTTドコモからIIJmioへの移行では、「My docomo」更新期間を確認したところ13カ月先だとわかったため、更新期間を待たずに移行することにしました。

利用するスマートフォン、および移行する格安スマホ事業者の選定には、第2回第3回を参考にしてください。

スマートフォン本体ごと事業者で購入するのでなく、手持ちのスマートフォンを流用するなどの場合は、機種および使用する回線(NTTドコモ、au、またはSIMフリー)に対応しているかと、その機種に合うSIMカードの形状は何か(nanoSIM、microSIMなどSIMカードの形状には種類があります)を忘れずに確認しておきましょう。

iPhoneの場合、iPhone 4sまでがmicroSIMカードで、iPhone 5以降はより小さなnanoSIMカードとなっています。Androidスマートフォンも最近のモデルはほとんどnanoSIMカードですが、古いスマートフォンや一部のSIMフリースマートフォンは、microSIMカードを採用しています。

格安スマホ事業者の手続きの方法を確認する

格安スマホ事業者を決めたら、手続きの方法を確認します。Webサイトから申し込む方法と、店頭で申し込む方法の2通りがあり、ほとんどの格安スマホ事業者はWebサイトから申し込むことになりますが、店頭での申し込みが可能な場合もあります。

Webサイト上での申し込みを行う場合は、申し込みが完了してSIMカードが届くまでの日程の目安や、自分で行う移行作業(以降で解説するSIMカードの差し換えなど)の内容も確認し、頭に入れておきましょう。

IIJmioでは「ご利用開始までの流れ」ページで申し込み方法や手続きの手順を確認できます。

店頭での手続きでは即日移行できる場合も

楽天モバイルなどは日本各地にショップを持っているほか、IIJmioやOCNモバイル ONEなどは各地の量販店に受け付けカウンターを設けていて、店頭での手続きができます。

店頭では即日で移行完了できる場合もあり、時間がないときに重宝します。また、料金や契約、初期設定などでわからないことがあっても、その場で質問できます。スマートフォンの契約や利用に不慣れな人は、まずは近隣に使いたい格安スマホ事業者の店舗や受け付けカウンターがないか、調べてみることをオススメします。

なお、店頭でも審査や手続き、切り替え作業には数時間かかる場合もあり、夕方や閉店間際だと同日中の開通に間に合わないことがあります。急ぐ場合は早い時間帯に行きましょう。

Webサイトで申し込むなら「エントリーパッケージ」がお得

Amazonなどで、格安スマホ事業者の「エントリーパッケージ」(名称は事業者ごとに違います)が500~1,000円程度で売られています。これを購入しておくと、Webサイトで申し込むときの手続き費用(通常は3,000円程度)が無料になるという商品です。

少し得できますが、注文してからエントリーパッケージが届くまでには数日かかる点には注意してください。時間に余裕があって、格安スマホ事業者が決まっているときは、エントリーパッケージが売られていないか探してみるといいでしょう。

移行元の大手キャリアでMNP予約番号を発行してもらう

移行手続きの最初は、現在利用している携帯電話会社で、「MNP予約番号」を発行してもらいます。

NTTドコモの場合はMy docomoでMNP予約番号の発行ができますが、auとソフトバンクでは、サポート窓口への電話か、ショップの窓口でしか発行できません。サポート窓口の電話番号は、利用中のスマートフォンからかける場合だとNTTドコモは「151」、auとソフトバンクは「157」です。

ちなみにMNPを使って他社に移行することを「転出」もしくは「ポートアウト」と言います。電話や窓口でMNP予約番号の発行を依頼するときには「MNP転出したいのでMNP予約番号が欲しい」と言いましょう。逆にMNPで他社から移行してくることを「転入」もしくは「ポートイン」と言います。

移行で節約できる金額、払うべき金額を計算しておくといい

MNP予約番号を発行する手続きの過程で、契約者を引き留めるためにポイント付与などの優遇策を提案されることがあります。この優遇策がお得かどうかをすぐに判断するために、あらかじめ格安スマホへの移行でどのくらい安くなるかを計算し、書き留めておくのもオススメです。

MNPで転出すると、転出元の回線契約は解約扱いになります。このとき3,000円程度の解約手数料がかかるほか、更新期間以外では9,500円の解約金がかかり、端末を分割払いにしているときは、残金の支払いも必要になります。MNP予約番号の発行時にはこうした費用も表示されるので、確認しておきましょう。

My DocomoでMNP予約番号を発行する手続きの途中では、現在転出した場合に支払うことになる金額や失われるポイントなどが表示されます。
My Docomo

MNP予約番号を発行してもらったら、間違いのないように書き留めておきます。MNP予約番号は15日間の有効期限が設けられていて、通常は発行時に有効期限も教えてもらえるので、その有効期限も合わせて書き留めておきましょう。

MNPでは、この有効期限内に移行手続きを行なって新しい回線に切り替える必要があります。店頭手続きではない場合は、格安スマホ事業者からの郵送などの時間がかかるので、移行先の格安スマホ事業者での申し込み手続きを行なう直前に、MNP予約番号を取得するようにしましょう。

手続きが完了すると、数字10桁のMNP予約番号が発行されます。

格安スマホ事業者のWebサイトで申し込みをする

MNP予約番号が手に入ったら、次はIIJmio(格安スマホ事業者)のWebサイトで申し込みを行います。このとき契約者の氏名や住所、MNP予約番号、クレジットカード番号などの入力と、身分証明書の画像のアップロードが求められます。事業者のサービスを利用するためにアカウントの新規作成が必要になることもあります。

さらに、申し込み手続き時に料金プランやオプションサービス、SIMカードの種類(サイズ)なども選択します。あらかじめ契約する料金プランを決め、SIMカードの種類も調べておいて、戸惑わないで済むようにしましょう。今回は「ミニマムスタートプラン」で「音声通話機能付きSIM(みおふぉん)」「nanoSIM」を選びました。

IIJmioのWebサイトで利用するサービスなどを選び、手続きを進めます。
IIJmio

ひと通りの情報の入力や身分証明書の提出を行ない、手続きや確認を終えると、あとは実際にSIMカードが送付されてくるのを待つことになります。だいたい1週間程度、早ければ3日程度で届きます。

手続き時に入力した情報が正しくなかったり、身分証明書の画像が正常ではない場合、訂正のやり取りや審査手続きに時間がかかることがあるので注意しましょう。

MNP転入手続きは契約者の身分証とクレジットカードが必要

格安スマホ事業者にMNP転入の申し込みをするには、Webサイトで行う場合も店頭で行う場合も、契約者の身分証明書(運転免許証など)が必要になります。画像としてのアップロードが求められるため、スマートフォンのカメラで撮影するなどしておきましょう。

また、MNP転出元と転入先の両方で契約者名義が同じでないといけないので、契約者を変えたいときは、あらかじめ転出元の携帯電話会社のショップなどで名義変更しておきましょう。

格安スマホの支払いはクレジットカードが使えますが、通常、クレジットカードの名義も契約者と同じである必要があります。クレジットカード以外での支払いに対応する格安スマホ事業者は少ないですが、一部の格安スマホ事業者は、デビットカードや口座振替による支払いにも対応しています。

MNP転入の手続きのために、身分証明書の画像のアップロードを求められます。

SIMカードが届いたら回線の切り替え手続きをする

格安スマホ事業者で手続きが完了したら、SIMカードが契約者の住所に送られてきます。今回のIIJmioの場合は、申し込んでから3日で届きました。

内容物を確認し、SIMカードを差し替える前にまず回線の切り替え手続きを行ないます。手続きの方法は格安スマホ事業者によって異なりますが、IIJmioの場合は電話を使います。

付属の説明書に書かれている「オンデマンド開通センター」に電話をかけて、音声ガイダンスに従って電話番号とSIMカードのID番号(ICCID)の一部をダイヤルで入力します。手続き内容は簡単ですが、オンデマンド開通センターの受付時間は9:00~19:00で、深夜などは切り替えができません。受付時間内に手続きをしましょう。

IIJmioから届いたSIMカードに同梱されていた、オンデマンド開通センターの説明書。

ほかの事業者では、Webページで切り替えを行ったり、事業者が切り替えを行ってからSIMカードを送付してくる場合などさまざまです。

事業者が切り替えを行ってからSIMカードが送付されてくる場合は、切り替えのタイミングを自分では選べません。また、切り替えや送付のタイミングで2日間程度、その電話番号が使えなくなる事業者もあります。

切り替えを忘れていると、自動的に切り替えられる場合も

切り替え手続きが完了すると、数時間以内に転出元のSIMカードが使えなくなり、代わりに転出先のSIMカードが有効になります。いつ切り替わるかは正確にはわからないので、急ぎの電話がかかってくるようなタイミングは避けた方がいいでしょう。

この回線切り替えのタイミングが、転出元の携帯電話を解約し、契約面で格安スマホに移行完了するタイミングとなります。MNP予約番号の有効期限内に切り替えないといけないので、事業者によっては期限が近づくと自動で切り替えられてしまう場合があります。IIJmioも、MNPの有効期限まで切り替えを行わなかった場合は自動的に切り替え(開通)されます。

転出元の更新期間でないタイミングで切り替えてしまうと解約金がかかることがあるので、更新期間の開始直前や終了直前では、切り替えのタイミングに注意しましょう。

スマートフォンのSIMカードを差し替える

切り替えができたら、スマートフォンのSIMカードを格安スマホのものに差し替えます。

SIMカードはICチップが入っているので、電極に触れるときは静電気などに注意しましょう。また、プラスチックを折ることになるので、折ったときの鋭い断面で指を傷つけるおそれがあります。手袋を使うと、静電気や指のけがを防止できます。

クレジットカード大のカードから、電極のない面を押すようにしてSIMカード部分を取り外します。手袋の利用が推奨されています。

スマートフォンのSIMカードスロットは機種によって位置が異なり、iPhoneなどでは側面にありますが、バッテリーが外せるAndroidスマートフォンは、バッテリーカバー内にあることもあります。説明書を見て確認しましょう。iPhoneなど一部のスマートフォンは、SIMカードの挿し替えに付属のピンが必要です。

SIMカードには向きと裏表があるので、挿入する方向は間違えないようにしましょう。iPhoneでは正しい方向でないとぴったりとはまらないようになっています。

NTTドコモのSIMカードから、IIJmioのSIMカードに交換します。

切り替え手続きをして回線が切り替わるまでは数時間かかるため、転出元のSIMカードを挿したままで、回線が切り替わってアンテナ表示が圏外になったことを確認してからSIMカードを挿し換えてもいいでしょう。

接続先の設定をする

回線が切り替わり、SIMカードの差し換えも完了したら、最後にスマートフォン側で接続先を変更する設定をします。

iPhoneでは「プロファイル」と呼ばれる設定情報をインターネット経由でインストールする必要があります。Wi-Fiに接続した状態で作業するか、回線が切り替わる前にインストールしておきましょう。

格安スマホ事業者が指定するURLにアクセスして行うか、指定のアプリをインストールして操作を行うかでプロファイルをインストールできます。SIMカードに同封されていた説明書などを元に操作しましょう。

なお、格安スマホ事業者のプロファイルをインストールすると、回線が切り替わっていなくても転出元のSIMカードではデータ通信ができなくなります(音声通話の発着信は可能です)。

iPhoneでプロファイルをインストールするには、アプリ「IIJmioクーポンスイッチ」を利用します。使い方は以下の記事を参照してください。
NTTドコモ版iPhone 5sでIIJmioの格安SIM「みおふぉん」を使う設定方法

以下のページからプロファイルをダウンロードすることも可能です。
iOS APN構成プロファイル | IIJmio

Androidスマートフォンの場合、[設定]メニューのモバイルネットワークに関する項目から、[アクセスポイント名]あるいは[APN]を格安スマホ事業者のものに変更する必要があります。

格安スマホ事業者のSIMカードに付属していた説明書などを参考に、[アクセスポイント名][ユーザー名][パスワード][接続方式]の4項目を設定しましょう。

SIMフリーのスマートフォンであれば、アクセスポイント名の設定メニュー内に主要な格安スマホ事業者の設定が用意されていて、それを選択するだけで設定が完了します。格安スマホ事業者からスマートフォンを購入した場合は、設定が済んでいる場合もあります。

接続先の設定が適切に行われていないと、回線の切り替えが完了し、格安スマホのSIMカードでアンテナ表示が圏内になっていても、データ通信ができなくなります。アンテナ表示が圏外になっている場合は、まだ回線が切り替わっていないか、エリア圏外の可能性があります。

なお、回線が切り替わると、転出元のSIMカードは使えなくなりますが、このSIMカードは携帯電話会社からのレンタルという形式になっているので、なくさないように注意し、ショップなどで返却しましょう。再利用するものではないので、急いで返却する必要はありません。

手順をしっかり確認し、ミスを起こさないようにしよう

以上が、MNPで格安スマホに移行する際の大まかな流れとなります。一連の中で特にトラブルにつながりやすい、注意が必要なポイントは、次の3点です。

  1. 申し込み手続き時の契約者確認が速やかにできるよう、情報を正確に入力すること。転出元の携帯電話会社に登録していた住所が古い場合などは、更新しておきましょう
  2. 回線の切り替えが完了し、接続先の設定が済むまで通信できなくなる点を考慮すること。重要な用事がないときに切り替え作業をしましょう
  3. SIMの差し換えと接続先の設定を慎重に行うこと。大手キャリアでは意識する必要のない作業ですが、格安スマホでは非常に重要です

また、MNP予約番号の有効期限も要注意です。すべての準備が整ったあとにMNP予約番号を発行し、手続きや設定がスムーズに行なえるようにしましょう。

慣れていないと少しわかりにくい部分もありますが、特別に難しいことはありません。案内や説明書をよく読み、正しい手順を確認しながら移行の手続きや設定を行ないましょう。