高度な活用・DX事例

CASE 05 企業のLINE活用 | 株式会社大丸松坂屋百貨店

LINEによって利用ハードルを下げて急成長! ファッションのサブスク「AnotherADdress」

株式会社大丸松坂屋百貨店が展開するレディースファッションのサブスクリプションサービス「AnotherADdress」では、LINEのMessaging APIを使ったユーザーとの円滑なコミュニケーションを実現しています。サービスを担当する田端竜也氏、窪川有咲氏にお話を伺いました。

百貨店発、ファッションのサブスクリプション

──AnotherADdressはどのようなサービスですか?

田端氏 月額11,880円(税込)で、ハイブランドの服を3着レンタルできるサブスクリプションサービスです。費用には、送料、クリーニング・修繕費、交換費などがすべて含まれており、レンタルしたアイテムは割引価格で購入することもできます。

女性全般をターゲットとしており、特に40代前後の都市型のビジネスウーマンがメインユーザーです。ファッションの力を借りて、プレゼン、商談、会食などをもっと自分らしく楽しみたいという方が多いです。

2021年3月に事前登録を開始し、同4月から正式にサービスを開始しました。利用するには、まずサービスとLINEのID連携、LINE公式アカウントを友だち追加し、続いてAnotherADdressのWebサイトでメールアドレスとパスワードを登録します。その後、プランに申し込みをすると有料会員となり、サービスを利用できます。2021年11月現在、登録者数は5,500人、サービス利用者は700人となっており、新規ユーザーは登録からサービスの利用まで半年ほどお待ちいただいている状況です。

──なぜこのサービスを開始したのでしょうか?

田端氏 北米で5年ほど前からファッションのサブスクリプションサービスが人気で、企画を温めつつ、2年前から準備を開始しました。

目指したのは、サスティナブルなビジネスモデルです。アパレル業界全体の課題として、大量生産・販売による服の廃棄があるので、その解決策として可能性を感じています。また、経済の低迷でファッションを楽しむ人が減ってしまったので、このサービスを通じておしゃれのハードルを下げて、楽しさを伝えたいです。

リッチメニューからWebサイトを表示

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ネイティブアプリと同じ感覚で、「AnotherADdress」のLINE公式アカウントのリッチメニューからWebサイトを利用できる。

「LINE前提」のハードルの低さが功を奏した

──AnotherADdressは、LINEのMessaging APIを使ってユーザーとやりとりをしています。LINEの利用を前提でサービスを設計した理由は何ですか?

田端氏 2年前に準備を始めたときにユーザーにヒアリングしたところ、LINEでサービスに関する通知が届いても違和感がないということが分かりました。そのため、通知やメッセージのやりとりはすべてLINEで行い、サービスはWebサイトベースで構築することを、初期段階で決定しました。

専用のネイティブアプリを開発することも検討しましたが、OSのアップデート対応が煩雑になりそうで断念しました。また、LINE公式アカウントのリッチメニューからサービスにログインできればユーザーにも便利なため、ネイティブアプリは必要ないと判断しました。実際、サービスサイトのマイページ、商品ページへのアクセスは、6割以上がLINE経由となっています。

窪川氏 サービス利用に関するメッセージは自動配信ですが、ユーザーからの問い合わせは手動で対応しています。現在、有料会員は700人ほどですが、その半分以上の方とLINEチャットでやりとりしています。

──サービスのKPIは何に設定していますか?

田端氏 LINEのID連携と友だち追加は、無料会員登録と同義なので、その数をKPIにしています。ローンチ当初は1,000人を目標としましたが、わずか半年で5,500人を超え、想定以上の反応に驚きました。集客にあたり広告は一切使っておらず、SNS上のクチコミなどから広がりました。LINEで利用ハードルを下げたことも功を奏したと感じています。

LINE公式アカウントのKPIはメッセージの開封率です。サービスサイト上で導入している他社ツールと連携して、新商品情報や注文情報、返却商品情報などを発信しています。開封率は7割を超えることもあり、サービスへのログインや利用促進していることが分かります。

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注文完了・返却期日などのメッセージを、ユーザーに合わせて自動配信している。

チャットを通してユーザーの顔が見える

──Messaging APIを利用したメッセージでは、どのような配信をしていますか?

田端氏 サービス利用に関する情報全般です。レンタルアイテムの注文完了、返却日前のリマインド、割引購入の案内、返却完了などについて、プッシュ通知で自動配信しています。お客さまからの個別の問い合わせはすべて手動で返信していますが、対応時間外はAI応答メッセージで対応時間を案内しています。

──お問い合わせのチャットはどのように対応していますか?

窪川氏 サービス開始当初は私が、現在はもう1人を加えて、2人体制で対応しています。当初は、登録後の利用開始時期を明示できていなかったため、月に300件ほど問い合わせがあり、対応するのが大変でした。現在は、主にオーダー変更や集荷時間の変更など、サービス利用に関する問い合わせが月130件ほどあります。

LINEチャットでのやりとりになるので、皆さん気軽に質問してくれますし、こちらが「対応しました」と伝えるとお礼や喜びのスタンプを送ってきてくれます。通常のテキストのコミュニケーションよりも、感情が伝わってきますし、お客さまとの距離が近く、フラットなコミュニケーションができています。

田端氏 新規サービスは、通常コールセンターの立ち上げがセットになりますが、本サービスでは用意していません。一応、オフィスに問い合わせ対応の電話がありますが、これまでお客さまからはたったの1件しかかかってきたことがなく、他はすべてLINEチャットでの対応です。コールセンターは、人材配置やマニュアル整備などコストを要しますが、それらもまったくかかっていません。

──今後のサービス展開について教えてください。

田端氏 社内では、スタートダッシュがうまくきれていると評価されています。これまでサービスの退会人数は1桁で、率にすると1%程度です。これは、ユーザーからも評価されている証だと思います。

サービス開始時には、「店頭売上に影響を及ぼすのではないか」とブランド側から不安の声もあがりましたが、レンタル商品の買取の仕組みもありますし、サービスを通してブランドを知ってファンになる人もいるので、ファッションの楽しさを伝えるツールとして認知されつつあります。

今後は、会員数3万人、50億円の売上をまず数年かけて達成したいです。モノのサブスクリプションサービスは、メンズファッション、キッズファッション、アウトドアグッズ、家具、アートなど他のジャンルにも大きく拡大する余地があります。

また、サービスを提供していくにあたり、データ分析に力を入れたいです。離脱率、休会率、LTV(顧客生涯価値:1人の顧客が企業にもたらす利益の指標)の分析などを通して、収益を上げるための施策や、お客さまの好みに合わせたパーソナルレコメンドなどを実施していきたいです。

PROFILE

LINEによって利用ハードルを下げて急成長! ファッションのサブスク|LINEビジネス活用公式ガイド

田端竜也 氏
株式会社大丸松坂屋百貨店 経営戦略本部 DX推進部
AnotherADdress 事業責任者

2011年に大丸松坂屋百貨店(J.フロントリテイリング)に入社。売場運営、IT新規事業開発室を経て、2016年から経営戦略統括部に所属。グループのオープンイノベーションの推進者として日米を往復し、スタートアップ投資ならびに事業開発に従事。社内ベンチャーとして「AnotherADdress」を立ち上げ、事業責任者として拡大を推進。明治大学大学院にて経営学修士、マレーシア工科大学大学院にて経営工学修士を取得。

LINEによって利用ハードルを下げて急成長! ファッションのサブスク|LINEビジネス活用公式ガイド

窪川有咲 氏
株式会社大丸松坂屋百貨店 経営戦略本部 DX推進部
AnotherADdress CRM担当

2013年に大丸松坂屋百貨店(J.フロントリテイリング)に入社。大丸東京店にて自主編集売場(紳士カバン・婦人雑貨)の販売業務を経験後、2015年より同店の広告・Web担当として販売促進・解析に5年間従事。店舗HPのセッション数をグループNo.1まで成長させる。2020年6月より社内立ち上げの公募による選抜を経て、「AnotherADdress」立ち上げメンバーに。CRM担当として、顧客満足度と顧客ロイヤルティ向上を目指す。

本コンテンツのご利用について

本コンテンツは、インプレスの書籍『はじめてでもできる! LINEビジネス活用公式ガイド』を、著者であるLINE株式会社の許諾のもとに無料公開したものです。各サービスの内容は、書籍発行時点(2021年11月)における情報に基づいています。記事一覧(目次)や「はじめに」は、以下の「関連まとめ記事」のリンクからご覧ください。

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