CHAPTER 2-5
米Dell EMC(デルEMC) [マシュー・コブレンツ氏]
データ活用こそが自社のビジネスを守り競争を勝ち抜く原動力になる
世界的なPCメーカーであるデルは、製品の販売におけるデータ活用からDomoの利用を開始した。決め手となったのは「コネクターの豊富さ」だ。すでに営業活動での利用も始まり、競争力を高めるエンジンとなっている。
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本コンテンツは、インプレスの書籍『最強のデータ経営 個人と組織の力を引き出す究極のイノベーション「Domo」』を、著者の許諾のもとに無料公開したものです。記事一覧(目次)や「はじめに」「おわりに」は以下のリンクからご覧ください。
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既存ツールに接続できる豊富なコネクターが決め手に
BTO
をベースとした直販により、数多くの企業や一般消費者に支持されている世界最大規模のPCメーカーがデルだ。2015年にはストレージ機器メーカーのEMCを買収し、幅広いエンタープライズ向けのソリューションを展開している。「Build To Order」の略。ここではCPUやストレージ容量などをカスタマイズできるPCの受注生産方式のこと。
このデルにおいて、販売が飛躍的に伸びる一方で課題となっていたのが、増大し続ける大量のデータの有効活用である。営業効率や市場ニーズを分析し、社内の関係部門にアドバイスする役割を担うマシュー・コブレンツ氏は、その課題は一般的なBIでは解決できなかったと話す。
「私たちは販売情報を評価しようと四苦八苦していました。CRMからデータをエクスポートしても、Excelでは処理しきれないため、いくつかのBIツールを試していました。その中にはファイルベースでの情報共有が社内でうまくいかず、効率面で難があるものもありました」
そうした中で出会ったのがDomoだった。コブレンツ氏は、Domoがデータを取得するために必要な多数のコネクターを備えていたこと、そしてすばやくデータを取り込めることが決め手になったと振り返る。
「本当に気に入ったのは、Domoが500以上のコネクターを標準で備えており、簡単に異なるデータソースに接続できたことです。当社のIT部門は私たちのためにコネクターやデータソースを別途構築する必要がなく、データの取得にかかる時間を大幅に短縮できました。Domoのデモにおいては、実際に当社のCRMツールに接続し、インポートが完了するのを目の当たりにしました。その操作に要した時間は、わずか10分ほどです」
Domoのようなツールにおいて、必要なデータを簡単に取得できるかどうかは大きなポイントだ。自社がもともと利用しているツールからデータを取り込むために独自のカスタマイズが必要になるのでは、コストの増加につながるだけでなく、IT部門の協力を取り付けるための時間や労力もかかってしまう。
しかし、豊富なコネクターが用意されているDomoであれば、カスタマイズする必要も、IT部門に負担を強いることもなく、迅速にデータを取り込んで可視化や分析が行える。このメリットは極めて大きい。
デルEMC
マシュー・コブレンツ 氏
Matthew Coblentz
Competitive Intelligence Analytics Service
Dell EMC
CRMに接続してインポートする操作は、わずか10分ほどで完了した
データから行動を起こすことに重役たちも同意
デルにおいて、Domoの導入当初は少人数で使い始めたものの、ユーザーは徐々に増えていき、現在ではさらに規模が拡大している。Domoの価値に気づいたことで、多くの社員がこぞって使い始めた様子が伝わってくる。
一方で、Domoの具体的な利用方法について、コブレンツ氏は細かくルールを定めていないと言う。
「『料理の鉄人』を覚えているでしょうか。あらゆる食材が揃った素晴らしいキッチンがあり、シェフがそれらをさまざまに組み合わせて料理の腕を競うテレビ番組です。Domoで自由にデータを組み合わせてカードを作成できるのは、まさにそのイメージでしょうか。自分が作ったカードを気に入ったら、それをガバナンス委員会に持ち込めば、どう扱うかを決めてくれることになっています」
Domoではデータを可視化するだけでなく、得られたインサイトからアクションを起こすことも徹底されているようだ。それはコブレンツ氏の次の話からも伺える。
「ある重役がDomoを見て『これはどういう状況だ?』と尋ねてきたら、私たちは『それにデータを付けて回答したら、あなたは何をしてくれるのですか?』と返します。これには『あなたは真剣に聞いているのか、そうではないのか』を問う意味もあるのですが、驚いたことに、重役たちはその質問が本当に気に入っているようでした。重役たちは少し抵抗されることが好きですし、私たちが真剣であることも伝わるからです」
経営層やマネージャーから何らかの問い合わせがあったとき、データに基づいて回答するとともに、何らかの新しいアクションを引き出そうとする。こうした姿勢がデータドリブンにビジネスを展開していくことにもつながっているのだろう。
営業チームやWebサイトまで分析の幅が広がっていく
デルでは製品の企画、あるいは複数の製品をバンドルして販売する際、それらを効率的に売る方法について、コブレンツ氏のチームに問い合わせる社員が増えているという。こうした活動からは、すでに大きな成果が生まれている。
「あるデータ保護製品を共同販売するたびに、1万ドルの利益を生み出すことがわかりました。これは年間で5,000万ドルもの利益になる規模です。この手法は幅広い人気を得て、さらに多くの施策が始まるきっかけにもなりました」
コブレンツ氏のチームでは、販売に関するもの以外にも、Domoを使ってさまざまなデータを分析している。例えば、営業部門のメンバーにおけるデータ活用が売り上げにもたらす影響を分析したところ、契約件数や金額に大きな差があることがわかったそうだ。
また、デルのWebサイトにおける顧客の関心の有無や、情報の鮮度の重要性についても分析し、ビジネスにつながる知見を得ている。コブレンツ氏は「Domo以外のツールでは成し得なかった」と高く評価する。
「どのようなツールも大量のデータを出力してくれますが、こうした貴重な発見を提供してくれるのは、Domoのほかにありません。私が経営層に見せるのは、Domoだけです」
大量のデータを扱えるツールはあっても、貴重な発見を提供してくれるのはDomoだけだ
顧客が欲しいものがわかれば強力な販売メッセージに
最後に、コブレンツ氏は社内のメンバーが「情報武装」することの重要性を語ってくれた。
「お客さまが必要としているものを提示できることは、営業チームの大きな強みになります。これは、情報武装した営業チームは、普通の営業チームよりもはるかに高い業績を上げられる、ということです。『お客さまが欲しがっているものがわかる』というのは、何よりも説得力のある販売メッセージになります。私たちはDomoでビジネスを変革できると信じており、それによって競争力はさらに高まるでしょう」
丸腰で顧客を訪問する営業と、情報武装した、すなわち顧客が何を欲しがっているのかを把握している営業では、結果に大きな差が生じるのは必然だ。コブレンツ氏の発言からは、データ活用こそが自社のビジネスを守り、競争に勝ち抜く原動力であることを強く感じ取ることができた。