CHAPTER 2-6
米DSi [ランス・ティーシェン氏]
デジタル法科学の分野でも広がるデータの一元化と共有のインパクト
「コンピューターフォレンジック」という、やや聞き慣れない分野でもDomoの利用が進んでいる。異なるツールの多様なデータを統合し、定着化にまで成功してきたノウハウを、米DSiのキーマンに聞いた。
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本コンテンツは、インプレスの書籍『最強のデータ経営 個人と組織の力を引き出す究極のイノベーション「Domo」』を、著者の許諾のもとに無料公開したものです。記事一覧(目次)や「はじめに」「おわりに」は以下のリンクからご覧ください。
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米国で成長している法的証拠としてのデータ活用
「コンピューターフォレンジック」(Computer Forensics)という言葉をご存知だろうか。フォレンジックは「科学調査」の意味で、PCやサーバー、スマートフォンなどに残されたデータから法廷での提示に適切な形で証拠を集め、保護するための技術を指す。
米国テネシー州のナッシュビルに拠点を置くDSiは、コンピューターフォレンジックのほか、米国などでの民事訴訟においてデータを相手側に開示する制度である「eDiscovery」(電子証拠開示)の手続きをサポートする企業だ。
DSiはこうしたサービスを世界中の大企業に対して提供しており、顧客から収集したデータは500TBに達するとしている。ランス・ティーシェン氏は、同社の事業について次のように説明する。
「私は2005年にこの仕事を始めましたが、当時でも非常に目新しいものでした。今では業界として、とても大きく成長しています。米国は訴訟が多く、それに関連するデータも急激に増え続けているためです」
米DSi
ランス・ティーシェン 氏
Lance Thieshen
Vice President of Operations
DSicovery, LLC(DSi)
大量のデータを加工して弁護士や企業に提供
日本ではまだ馴染みのないコンピューターフォレンジックだが、その業務内容は次のようなものだ。
「私たちは大量のデータを扱いますが、ITをまったく理解していない弁護士には、とても管理できません。よって、当社はそれを妥当なレベルにまで減らそうとします。例えば、一連の電子メールのやりとりの記録があれば、重複しているデータは除去して、弁護士がレビューしやすいようにします。ただし、除去した跡は残し、参照のために核心部分だけは残すようにします。こうした作業を、さまざまなツールを使って行っています」
実際にはもっと複雑だと前置きしつつも、「以上が当社業務の短い説明です」とティーシェン氏。一方でDSiの顧客には「インテリジェンスガバナンス」がない、すなわち「正しい方法でデータを管理するための方針がない」企業も多く、リスクが高まる原因になっているとも補足した。
異なるツールのデータをまとめて3つの目的で利用
ティーシェン氏は以前の職場でBIツールを使った経験があり、コンピューターフォレンジックやeDiscoveryに生かせないかと考えた。
DSiでは当初、複数のデータ加工ツールやフィルタリングツール、CRMツールなどを利用しており、フォーマットの異なるさまざまなデータが社内に散在していた。何らかのツールを用いてそれらを1つにまとめれば、強力な情報が得られるのではないか。そう考えたティーシェン氏が最終的に選んだのがDomoだった。
現状での利用方法について、ティーシェン氏は次のように説明する。
「当社にはDomoユーザーが85人います。目的は3つあり、1つ目は調査業務、2つ目は顧客向けのダッシュボード。3つ目は社内チームによる情報共有で、会計部門やIT部門、経営層がさまざまな方法で使っています」
米国は訴訟が多く、コンピューターフォレンジックの業界が大きく成長している
あえて強制しないことでDomoの定着に成功
ただ、DSiの社内におけるDomoの定着を目指すうえでは、いくつかの課題があったとティーシェン氏は言う。
「経営層からの支援の獲得、ビジョンの浸透といった点に加え、利用するメンバーの専門知識の不足や懐疑的な態度に苦労しました。当社には、自分の業務とITの関わりが少ない社員もたくさんいるからです」
そこでティーシェン氏は、社内の各チームからDomoの理解度が高い人を選び出し、「パワーユーザー」に仕立て上げることでDomoを定着させるという手法を採った。
「新しいことのために学び、その知識をチームと共有する意思を持つ社員を探しました。彼らがDomoの魅力を伝えてくれると私は信じていたので、利用を強制しようとは思いませんでした。結果、瞬く間に社内でのDomoの利用が広がりました」
この経験について、ティーシェン氏は「アーリーアダプターの特定と小さな成功を重ねること、そして進捗状況の透明化が鍵になった」と感じているそうだ。
なお、DSiは技術系の人材を新たに雇い、こうした利用拡大をDomoのコンサルティングに頼らず、すべて社内のメンバーで実現している。
社内のアーリーアダプターに任せた結果、瞬く間にDomoの利用が広まった
顧客へのライセンスなど幅広い利用を計画中
Domo導入のメリットは、DSiの財務面にも大きく現れたとティーシェン氏は言う。
「私たちはカウンセル・オン・コール(Counsel On Call)社と合併しましたが、その過程で大量の財務報告書を提供する必要があり、Domoがとても役に立ちました。また、数件の新規契約にも貢献しています。Domoがあることで、当社が提供できるサービスや価値を顧客にはっきりと示すことができたためです」
DSiではDomoの社内開発コンテストを実施し、全社に向けてプレゼンする機会も設けているという。さらに、Domoのライセンスを社外、すなわち顧客にまで広げ、幅広く利用していくことも考えているようだ。
「社内および社外の両方で、Domoを拡大していくことを計画しています。それは本当にエキサイティングですし、お客さまも楽しみにしているに違いありません」