CHAPTER 4-3
成功に導くチームビルディング

利用拡大と定着化を促進する5つの重要ロールと2つの体制

Domoを組織全体に浸透させ、現場の個人が自発的に利用することを目指すには、プロジェクトを推進するためのチームビルディングが重要になる。中核となるメンバーの役割と、成功しやすいチームの体制について見ていこう。

最強のデータ経営:利用拡大と定着化を促進する5つの重要ロールと2つの体制

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本コンテンツは、インプレスの書籍『最強のデータ経営 個人と組織の力を引き出す究極のイノベーション「Domo」』を、著者の許諾のもとに無料公開したものです。記事一覧(目次)や「はじめに」「おわりに」は以下のリンクからご覧ください。
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プロジェクトの初期段階を牽引する3つの役割

Domo導入の初期プロジェクトを進めるにあたっては、それに参加する自社のメンバーの人選にも気を配りたい。いかに素晴らしいシステムやツールであっても、ただ「使えるようにした」だけでは導入に成功したとは言えない。その有用性を組織全体に周知し、積極的に活用しようという空気を生み出してはじめて、利用の拡大と定着化への道が拓かれる。

そこで「旗振り役」となる人選が重要になるわけだが、Domoでは、これまでの導入・定着化におけるベストプラクティスとして、プロジェクトチームの重要ロール(役割)が規定されている。

実際、筆者がDomoの導入を支援していた企業でも、プロジェクトチームの方々に役職や職種、スキルに応じた役割を担っていただいた。この重要ロールに沿ってチームを構成することで、スムーズにプロジェクトを進め、全社的にDomoを定着させていくことが可能になる。

下図にDomoの導入・定着化における5つの重要ロールと、それぞれが担う領域を示した。中でも中心的役割を担うのが、「エグゼクティブスポンサー」と「メジャーDomo」、「データスペシャリスト」の3つとなる。まずは、これらを順に説明していこう。

最強のデータ経営:利用拡大と定着化を促進する5つの重要ロールと2つの体制

Domoの導入・定着化における重要なロール(役割)

強い権限で導入を推進する「エグゼクティブスポンサー」

エグゼクティブスポンサーは、自社における強い権限と影響力によってプロジェクトの後ろ盾となる役割だ。もっとも高い視点である「戦略」の領域を担い、組織全体にわたってDomoの導入・定着化を後押ししていく。

次に説明するメジャーDomoと協力しながら、自社のビジネスに活用できるDomoの環境構築に責任を負うが、導入にあたっての作業に直接関わるわけではなく、その方向性や優先順位の決定に力を注ぐ。プロジェクトのマイルストーンを設定し、定期的に進捗をレビューするのもエグゼクティブスポンサーの仕事だ。

このロールには、経営者やCxOがふさわしい。Domoの導入には経営層によるコミットが必須であり、それを社内に広く示す意味でも、エグゼクティブスポンサーは経営者やそれに近い人物であるべきだ。

プロジェクトの進行中は、人材をはじめとしたリソースの不足、予算の制限、いわゆる「社内政治」のような他部門との調整も必ず発生してくる。それらが障害となったときにも、経営層が持つ権限と組織的影響力があれば乗り越えられるだろう。

リーダーとしてプロジェクトを成功に導く「メジャーDomo」

メジャーDomoは実質的なプロジェクトリーダーであり、導入・定着化のすべてにわたって取り組みを主導する役割を担う。Domoが確実に、かつ継続的に自社にとって価値をもたらすために重要なロールだ。

Domoを導入する目的や、ビジネス的な価値を生むための戦略を明確にして経営層と現場への理解を広めるほか、自社におけるDomoのスタンダードな利用方法やベストプラクティスを確立し、それを周知していくことに責任を負う。カバーする領域も「戦略」の一部から「ビジネス」、そして「テクニカル」の一部と幅広い。

社外のコンサルタントとの窓口を担うのもメジャーDomoであり、プロジェクトを成功に導くためのキーマンと言える。まさに旗振りの中心人物だ。

このロールには、現場のビジネスを知りながらも戦略的な視点で判断できる、事業部門のマネージャークラスが適任となる。他部門との調整も必須の役回りとなるため、コミュニケーション能力が高く、社内で良好な人間関係を築いている人物が望ましい。もちろん、Domoを使いこなせるITスキルも必要だ。

最強のデータ経営:利用拡大と定着化を促進する5つの重要ロールと2つの体制

チームの技術面をサポートする「データスペシャリスト」

データスペシャリストは、プロジェクトチームにおいて「テクニカル」の領域を専門的に担う役割だ。ビジネスの意思決定に必要なデータを社内外から収集し、それらがDomoで利用できることを保証する責任を負う。

自社の基幹システム、CRM、MA、Web解析、デジタル広告などのシステムやツールに精通していることが求められ、データが格納されている場所やアクセス方法を把握しているほか、データの取得方法などについても理解している人材が適任となる。そのため、このロールには情報システム部門のメンバーで、相応の権限とスキルを持つ人物を選びたい。

データの取り扱いは自社のガバナンスやセキュリティポリシーにも影響するため、データスペシャリストはそれらを熟知した上で、機密情報などを適切に管理する必要がある。加えて、クラウドサービスなどの利用規約を順守し、社会的風潮にも適した形でのデータ活用が守られるよう、チームのメンバーを助ける役割も担う。

ここまでに登場したエグゼクティブスポンサー、メジャーDomo、データスペシャリストは、Domo導入のプロジェクトにおいて不可欠なメンバーだ。社内における最小のチーム構成はこの3人で、それに社外のコンサルタントなどが加わることになる。

利用拡大のために活躍する「Domoマスター」

Domo導入の初期プロジェクトが成功し、第2、第3のプロジェクトを通じて利用範囲が広がっていくと、エグゼクティブスポンサー、メジャーDomo、データスペシャリストの3人では対応しきれなくなるだろう。そこで検討したいのが、第4のロールである「Domoマスター」の任命だ。

Domoマスターがカバーするのは「ビジネス」と「テクニカル」の領域となる。プロジェクトが策定したDomoの利用拡大・定着化の戦略を実行し、データの加工やカードの作成、ダッシュボードの構築、アラートの設定など、いわば戦術面を担当する。

このロールにはDomoの専門知識、そしてデータの利用と分析に関するスキルが求められる。データスペシャリストと協力してデータを準備するとともに、ビジネス価値を生むカードやダッシュボードを構築することに責任を負う。データに強く、「アクショナブルな可視化」を理解している現場のメンバーが適任だろう。

さらに、Domoマスターは現場でDomoを利用するエンドユーザーを支援するためのトレーニングプログラムを開発したり、Domoの使い方に関する質問に答えたりする役割も担う。特にトレーニングは重要で、社内勉強会などの取り組みを主導するリーダーシップがほしいところだ。

なお、メジャーDomoとDomoマスターはカバーする領域が近いが、メジャーDomoはより大局的な戦略面を、Domoマスターはそれを具現化する戦術面を担当するという点で役割に違いがある。また、メジャーDomoは社内に1人だけ置くのが適切だが、Domoマスターは部門ごとなど複数人の配置が想定されている。

現場への浸透を推進する「チームチャンピオン」

Domoの利用拡大が進み、全社的な定着化が進み始めたところで意識したいのが、第5のロールである「チームチャンピオン」だ。Domoを熱心に利用して自分の成果やチームへの貢献に注力する、部門や個々のチームにおけるパワーユーザーが該当する。

チームにおいてDomoの利用を啓発したり、メンバーへの日常的な指導やサポートに取り組んだりなど、メジャーDomoとDomoマスターの活動を現場に浸透させる役割を担う。カードの作成・編集といったDomoの専門知識を持ち、さらに学ぼうとする意欲を持っている人物が適任だ。

Domoの利用が全社レベルにまで広がってきたとき、このロールは大きな役割を果たすことになる。Domoマスターではエンドユーザー全員に目が行き届かなくなるほか、現場で必要とするすべてのカードを作成することも難しくなるためだ。

チームチャンピオンがDomoマスターに代わり、現場における日常的なDomoの利用を推進できるようになれば、Domoの全社的な定着化がほぼ完了したと見ていいだろう。

最強のデータ経営:利用拡大と定着化を促進する5つの重要ロールと2つの体制

利用拡大・定着化のチームを運営する2つのパターン

Domoの利用拡大・定着化を進めていくにあたっては、どのようにガバナンスを効かせていくかもポイントになる。そのためのプロジェクトチームの体制には、下図に示した2つがある。

最強のデータ経営:利用拡大と定着化を促進する5つの重要ロールと2つの体制

成功のための2つのチーム体制

まず考えられるのが「中央集権型」で、チームが中核となって活動する体制だ。各部門にはDomoに関する権限を委譲せず、常にチームが働きかける形をとるため、標準化や統率が容易であるというメリットがある。

一方の「ハブ&スポーク型」は、中核となるチームはありつつも、各部門にDomoマスターを配置することで、それぞれにDomoの権限を委譲する体制だ。組織としての柔軟性を高めたり、部門ごとの自律性を育てたりする上でメリットがある。

社内に中核となるチームを置かず、各部門がそれぞれにDomoを導入する「分散型」とでも言うべき体制も、部門ごとの課題を解決できるという意味で、ないわけでない。しかし、同じ役割を担うメンバーが社内に重複したり、トレーニングやサポートが個々に行われたりする点で非効率となる。

これまでのDomoの利用事例を見ると、中央集権型とハブ&スポーク型のいずれかの体制で成功している企業が多い。各部門のベストプラクティスが共有されることで、利用拡大と定着化がいっそう早く進むだろう。

早期の成功体験で全社的な利用に弾みをつける

Domoの利用拡大・定着化を成功させるポイントには、「早期に成功体験を得る」ことも挙げられる。プロジェクトチームの活動を社内で広く理解してもらうとともに、Domoの有用性を強調する上で重要だ。

短期間でインパクトのある成果を生み出すには、社内で影響力のある人物、例えば取締役や主要事業のリーダーが抱えている課題を解決したり、業績向上の後押しをしたりすることをプロジェクトのゴールにする方法がある。また、社内に広く知られるため、多くの社員が頻繁にアクセスするデータを改善の対象にするのもいいだろう。

その上で、目安として30~45日間(CHAPTER 3-1でも述べた5週間程度)で、1つのプロジェクトが成果を出すことを目標にするのがよい。Domoの導入を成功事例として早期に周知できれば、全社的な利用に向けて大きなステップを踏み出せるはずだ。

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