高度な活用・業界別ノウハウ

高度な活用 LINE Frontliner 中根 志功 氏

顧客理解とユーザーコミュニケーションをもとに効果を高める、LINEのサービス活用術

LINE公式アカウントやLINEミニアプリを中心とする、ユーザーのニーズや心理にフィットした最適なコミュニケーション設計について、株式会社originalsの代表でLINE Frontlinerの中根志功氏に伺いました。

顧客理解を重視してコミュニケーションを考える

──中根さんの経歴やお仕事についてご紹介ください。

中根 前職では、2021年9月まで大手日用品メーカーに在籍し、LINEミニアプリを活用した取り組みをしていました。2018年に株式会社originalsを創業してからは、商品やサービスを"定番"として使い続けてもらうために、「顧客理解」を重視したデジタル化の支援をしています。

──中根さんが顧客理解を重視している理由は何でしょうか?

中根 お客さまによって商品を購入する理由がそれぞれ異なるからです。同じブランドの化粧品を購入するお客さまでも、販売店で特定の店員から買いたい人(プロセス重視)、普段使いするため買い忘れがないようにしたい人(プロダクト重視)など、ニーズはさまざまです。オンラインコミュニケーションもユーザー一人ひとりに合わせたアプローチが必要で、そのためには顧客理解が何より重要となります。

6つのポイントで顧客理解を実践

──顧客理解のためのチェックシートを作成いただきました。

顧客理解のためのチェックシート

中根 1は、対象者とインタビュアーが1対1で行う「デプスインタビュー」を新規顧客に実施したかどうかです。コロナ禍を経てお客さまの行動が大きく変わり、実施すべき集客・販促施策も変化しています。顧客理解に関心がある企業・店舗は、ユーザーが商品やサービスをどうやって知り、購入に至ったのかなどを理解するために、こうした調査を実施してほしいと思います。

2は、自社の商品やサービスをどれくらいの人が購入・利用しているのかをさまざまな指標で把握することで、施策を実行する際の予測や判断がしやすくなります。仮に今売上が減っていても、利用者が増えていれば、売上を回復させることができます。

3は、企業・店舗が発信した情報を、ユーザーが進んで受け取ってくれるかどうかに直結します。ライフスタイルが多様化する現在、ユーザーに情報を確実に届けるには、受け手のタイミングが重要です。このタイミングを事前に確認して一人ひとりに都合のよい時間にメッセージ配信できると、おのずと開封率は高くなります。

4は、ユーザーと対話ができているかを段階別に示しています。メーカーであれば、電話での問い合わせ対応を行うコールセンターに加え、チャット対応をしているか、LINEのアンケートでユーザーの声を聞いているか、複数のタッチポイントでコミュニケーションができているかなどをチェックしてください。さらに、収集した情報を受けてLINEのメッセージやメールで情報発信できているか確認しましょう。

5は、自社の商品やサービスが、SNS上でどのように語られているかの理解度に関わります。#(以下ユーザータグ)の設計をしてSNSを運用できている企業・店舗は少数ですが、ユーザーの自発的な情報発信を確認すべきです。例えば、SNSで自社の商品やサービスに関する投稿に含まれるユーザータグを見れば、そこから利用シーンなどが分かり、集客・販促施策のヒントが得られます。

6は、LINE公式アカウントの発信で、ユーザーの生の声を含めた情報を届けられているかです。商品についてさまざまな情報を体系立ててまとめるのが自社サイトの役割だとすると、LINEではお客さまの生の声をリアルに伝えるとよいでしょう。 具体的に言うと、リッチメニューから 5で発見したSNSのタグに外部リンクすれば、LINE公式アカウントを友だち追加したユーザーにオーガニックなクチコミを見てもらうことができます。適切なハッシュタグがない場合は、キャンペーンを実施して特定のハッシュタグを付けた投稿を促すことで、ユーザーの生の声をSNS上で増やすことができます。

ネイティブアプリ不要! LINEミニアプリを生かす

──ユーザーとのつながりを強化する上で、LINEの強みをもっとも発揮しやすいサービスを教えてください。

中根 LINEミニアプリはぜひオススメしたいと思います。LINEのユーザーであれば数タップでLINEミニアプリを利用開始でき、LINE上でさまざまな機能を使えるので、別途アプリをダウンロードする必要はありません。日本でLINEを毎月使っているユーザーは9,500万人(2023年3月末時点)いるので、設計次第では導入後のアクティブ率もネイティブアプリ(自社アプリ)より期待できますし、顧客にプッシュ通知付きでアプローチできるのも利点です。

リッチメニューにユーザーが求めるコンテンツを配置する

──LINE公式アカウントの先進的な活用事例について教えてください。

中根 株式会社タカラトミーでは、LINE公式アカウントを各種ブランドを包含した、企業ブランドアカウントで開設・運営しています。しかし、当然ですがブランドのファンによって求める情報が異なります。

そこで、originalsが提供しているツール「La Nature」(以下ナチュール)を用いて開発を行い、リッチメニューを着せ替えできる機能を活用しています。

特定のブランドの新商品情報や活用例など、ユーザーが知りたいコンテンツにワンタップでアクセスできるリッチメニューをブランドごとに切り替え式で用意しており、ユーザーが好みに合わせて設定できます。

LINE公式アカウントのメッセージはプッシュ通知できますが、リッチメニューを活用することで、ユーザーが自ら知りたい情報を取りに行くプル型のコンテンツも用意できます。LINE公式アカウントのリッチメニューは、他のSNSにはないLINEならではの機能です。ナチュールは有償のツールで、タカラトミーの着せ替えられるリッチメニューも同ツールを利用しています。一方で、リッチメニューは無料で利用できる範囲でも工夫ができるので、ぜひ活用してほしいです。

顧客理解とユーザーコミュニケーションをもとに効果を高める、LINEのサービス活用術|LINEビジネス活用公式ガイド 第2版

メインメニューは共通。1タブで切り替えるサブメニューはユーザーの好みで着せ替えられるブランド別のメニューとなる。

LINEミニアプリで店頭起点の顧客接点を増やす

──LINEミニアプリの最新活用事例を紹介してください。

中根 中国には白酒(バイジュウ)という伝統的なお酒があります。これを日本で生産して「百花百獣(ヒャッカヒャクジュウ)」というブランドで販売を開始しました。メインターゲットは外国人観光客で、その方々に向けて、LINEミニアプリを個別開発して提供しています。

このLINEミニアプリでは、ARカメラを起動でき、商品がARのマーカーとなり、カメラで読み取ることでARコンテンツを表示できます。商品がお土産としてプレゼントされることを想定し、贈られた人がAR撮影して誰と、どこで飲んだのかを贈り主に伝えられるようにしました。また、ARコンテンツで撮影した画像はSNSなどにシェアできるため、UGC(ユーザーが作成したコンテンツ)としてクチコミ効果も期待できます。

ARカメラを使うためのLINEミニアプリを起動するには、専用のQRコードを読み取ります。QRコードは商品に同梱されているリーフレットや、販売店のポスターなどに印刷し、顧客接点がある場所にこれらのQRコードを掲示して、LINEミニアプリに誘導しています。

また、このLINEミニアプリは利用のハードルを下げるために、ARカメラとシェア、ECサイトの3つの機能だけに絞り、シンプルにしました。他にも外国人観光客をターゲットにしていることから、商品に同梱しているリーフレットにはLINEミニアプリを起動するためのQRコード以外に、現地アプリに対応したQRコードも載せています。さらに、日本に居住する外国人や訪日外国人が利用しやすいように、英語と中国語に多言語対応しているのがポイントです。

度な活用 顧客理解とユーザーコミュニケーションをもとに効果を高める、LINEのサービス活用術|LINEビジネス活用公式ガイド 第2版

LINEミニアプリの起動用QRコードと中国現地のアプリのQRコードを印刷している。

度な活用 顧客理解とユーザーコミュニケーションをもとに効果を高める、LINEのサービス活用術|LINEビジネス活用公式ガイド 第2版

LINEミニアプリを起動し、ARをタップするとARコンテンツが表示される。

PROFILE

LINE Frontliner 中根志功|LINEビジネス活用公式ガイド 第2版

中根志功 氏
LINE Frontliner
Originals&Co. 代表

2001年カネボウ株式会社入社。2014年DMP導入・運用。2016年花王株式会社DMC出向。横断型CRMプロジェクト発足(花王/カネボウ化粧品/花王Gカスタマーマーケティング)。同年8月カネボウ化粧品 『スマイルコネクト』店頭連携アプリとスマホで肌水分が計れる『肌水分センサーデバイス』を開発/導入。OMO_CRMアプリ開発、PM担当。2020年KANEBO、LUNASOL、SENSAIブランド、2021年estブランドLINEミニアプリ開発。現在は花王を退職して、2018年に自身が立ち上げたOriginals&Co.の代表に専念。DXコンサルティング、DX戦略マップ策定、オリジナルCX開発支援などLINEプラットフォームの活用に従事。

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本コンテンツは、インプレスの書籍『はじめてでもできる! LINEビジネス活用公式ガイド 第2版』を、著者であるLINE株式会社の許諾のもとに無料公開したものです。各サービスの内容は、書籍発行時点(2023年6月)における情報に基づいています。