高度な活用・業界別ノウハウ
LINE Frontliner 野尻 猛 氏
まずは3カ月、LINE公式アカウントの基本機能を使い倒して成果を上げよう
飲食業界のLINE活用に詳しい野尻猛氏は、「飲食業界の客足がコロナ禍以前に戻ってきており、顧客の囲い込みと情報発信が来店率や売上の向上に大きく影響する」と話します。そのための具体的な施策となるメッセージ配信やクーポン、ショップカードのノウハウを伺いました。
顧客の囲い込みと情報発信を徹底的に行う
これまでの飲食店コンサルティングの経験から言えることは、飲食店のLINE公式アカウント運用で、3カ月間、徹底的に友だち集めと情報発信をして、4カ月目以降に成果が出なかった事例はありません。3カ月というのは、再来店が起こるまでの期間の1つの基準でもあります。LINE公式アカウントを友だち追加してもらうことで、顧客を囲い込むことが可能です。また、囲い込んだ顧客には、LINE公式アカウントからメッセージを配信でき、再来店を促せます。
発信する内容は「店舗に関する情報」にしましょう。飲食店側が顧客に広く認知されていると思っている情報は、実際には認知されていないケースがほとんどです。とある飲食店では、赤ちゃん向けのフードサービスを提供していました。赤ちゃん連れの顧客に好評だったため、店舗側はそのサービスが多くの顧客に認知されていると思っていましたが、実際にアンケート調査をしてみると、認知していたのは約半分にとどまりました。ですから、素材や調味料へのこだわり、季節に合わせたコースメニューのアレンジ、盛り合わせの内容を自由に変えられるサービスなど、店舗が工夫している情報を意識して、徹底的に伝えてください。「当然知っているだろう」と思い込まず、メッセージとして伝えることで、来店率の向上につなげられます。
なお、飲食店の場合、カードタイプメッセージのカードタイプ「プロダクト」でメッセージを配信するのがおすすめです。新メニューやおすすめ商品の写真、値段、説明を入れて紹介できます。同じくカードタイプメッセージのカードタイプ「パーソン」は、スタッフ紹介におすすめです。リッチメッセージも画像を使ってメニューを紹介できるので、ぜひ活用しましょう。
クーポンは少しの工夫で利用率を改善できる
LINE公式アカウントから配信するクーポンは、クーポンの割引率を上げなくても、ひと工夫することで利用率を高められます。
ある店舗では、配布チラシと店舗内のポスターに友だち追加用にQRコードを掲載し、どのQRコードで追加したかが分かるように、友だち追加経路のパラメーターを設定しました。チラシ経由の友だちは来店していない人も含まれますが、店舗経由の友だちは一度は来店している顧客です。そこで、チラシ経由のユーザーには、売上トップ3のメニューを紹介しつつ、3品注文すると100円引きとするクーポンを配布し、店舗経由のユーザーには、新メニューの注文で100円引きとするクーポンを配信しました。その結果、全員に500円引きクーポンを配布していたときは0.7%だったクーポン利用率が、3.8%に向上しました。
ユーザーは、割引よりも来店するきっかけとなる情報が欲しいのです。そのためには、どのような経路からLINE公式アカウントを友だち追加したのかを把握することが大切です。経路別に友だち追加したユーザーに発信する情報を出し分けることで、来店するきっかけを作る行動喚起を促せます。例えば、配布チラシから友だち追加したユーザーには、人気メニューと割引クーポンをセットで、店頭ポスターからであれば、新メニューのメッセージを配信することで来店を促せます。とある店舗では、こうした工夫で全体の売上が3カ月で10%増加しました。
ユーザーにクーポンを選ばせることで、クーポンの利用率を上げられる。
また、別の事例では、リッチメッセージを使って2つのクーポンのうち、どちらかをユーザー自身が選んで取得できるようにしました。ただクーポンを配布するだけでは、そのクーポンを使うか、あるいは使わないという2択だけになりますが、クーポンAまたはクーポンBと選択肢を掲示することで、ユーザーが自らクーポンを選べるため、クーポンを利用するモチベーションが上がります。この工夫によって、ある店舗ではもともと0.7%だったクーポン利用率が2.2%にアップしました。
ショップカードでリピーターを増やす
飲食店にとって、リピーターの数は売上に大きく影響します。LINE公式アカウントのショップカードはリピーター獲得に最適な施策です。まずは、2回目以降の来店を促すショップカードについて考えてみましょう。
2回目以降の来店を促すショップカード「ファーストカード」は、3ポイント(次ページの表を参照)ですべてがたまるように設定します。また、カードを取得した時点で1ポイントが獲得済みの状態にし、その日の支払いで2ポイント目を獲得できるようにしてください。すると、次回来店したときにゴールとなり、特典が得られることになるため、2回目の来店を促す効果が期待できます。ある店舗では、これで来店率が14%から27%に上昇しました。
3ポイントのファーストカードをクリアしたら、次は常連化を促すための「ゴールドカード」を用意しましょう。ゴールドカードは10ポイントを上限とし、毎回何らかの特典があるように設定します。ただ、すべてクリアするまでに、平均しておよそ1年くらいかかるでしょう。飲食店には「来店10回の壁」があり、来店8回目のリピート率と比べると来店9回目で落ち込む傾向にあります。そのため、ゴールドカードの8ポイント目のタイミングで常連ならではの特別な体験、例えば「名前入りジョッキの進呈」「誕生日月のお連れ様のドリンク代割引」などを特典として提供し、10回目に向けた来店を促すようにするとよいでしょう。
そして、ゴールドカードをクリアしたら、1ポイントが上限の「VIPカード」にグレードアップし、今後はこのカードを繰り返し使えるようにします。常連の証であるVIPカードには、さらに特別な体験を用意して、VIPカード以外の顧客のモチベーションアップにもつながるようにするのが効果的です。例えば、VIPカードを獲得した顧客の写真を、店内に提示するなどの特典が考えられます。これらの施策により、とある店舗では5年間で売上が2.8倍になりました。
来店や会計ごとにポイントを付与できる。
ショップカードを活用した来店施策の例
ショップカードの種類 | 上限のポイント数 |
---|---|
2回目の来店を促す「ファーストカード」 | 3ポイント |
常連化を促す「ゴールドカード」 | 10ポイント |
特別感を演出する「VIPカード」 | 1ポイント |
PROFILE
野尻 猛 氏
LINE Frontliner
株式会社CRMマーケティング 代表取締役社長
ドラッグストアの経営企画の責任者、飲食FC本部の経営戦略室の責任者を経て、2005年に株式会社クラブネッツ入社。NBや新規顧客創出専門のメディア事業本部を設立。マーケティング戦略やCRM施策に関わる中で、LINE事業でも営業戦略・有効活用事例づくりなどに多く関わる。
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