高度な活用・業界別ノウハウ

業界別ノウハウ|EC・小売編 LINE Frontliner 倉橋 美佳 氏

メッセージの出し分けで、リピート率を大幅改善。LTV向上でECサイトの売上がアップ

EC・小売業界のLINE活用に詳しい倉橋美佳氏は、「コミュニケーションのデジタル化、顧客データの活用、そしてアプリ活用がEC・小売業界のトレンドになっている」と話します。これらのトレンドを踏まえたLINE公式アカウントの活用と売上アップのノウハウを伺いました。

手軽で楽しいLINEらしいメッセージ配信をしよう

LINE公式アカウントを運用すると、友だちになったユーザーのデータが蓄積され、ユーザーの行動や属性に合わせたコミュニケーションが可能になります。ECサイトや小売では、まず次の2つの施策に取り組むことをおすすめします。

1つは、ユーザーが友だち追加したときに送信できる、あいさつメッセージで、そのアカウントとどのようなコミュニケーションができるのかを伝えましょう。ある化粧品のECサイトでは、あいさつメッセージでキーワードを伝えて、そのキーワードをユーザーが送ると、自動応答でクーポンを発行する仕組みを用意しました。ユーザーにキーワードを送るというアクションをとってもらうことで、自社のLINE公式アカウントをより印象付けられます。もう1つは、リッチメニューの活用です。リッチメニューに、売れ筋商品の購入ページへの導線を用意しておきましょう。商品画像と誘導メッセージを設定しておくだけで、そこから「商品が毎月いくつか購入される」という状況を作れます。

LINE公式アカウントからのメッセージは、シンプルなほうが読まれやすい傾向にあります。接客時に伝えるような商品説明や使い方を紹介したら、詳しい情報は購入ページで見てもらうようにリンクを設定しましょう。

また、コミュニケーションアプリという特性から、クイズやゲームなどエンターテインメント性を意識したメッセージを用意するのも効果的です。配信頻度が多いとブロックが発生することを心配するかもしれませんが、「配信頻度が高いからブロック率が上がる」という確たる根拠があるわけではありません。それならば、より自社の個性を出しつつ、ユーザーにとって価値のある情報を配信しましょう。

ターゲットに合わせた配信

EC・小売業界において、メルマガ配信はリピート購入のための施策として根強い人気があります。株式会社ペンシルが支援する数社のLINE公式アカウントを調査したところ、LINE公式アカウントのみでつながるユーザーが平均で3割で、残りの7割がメルマガとLINE公式アカウントの併用でした。つまり、LINEでしか接触できないユーザーが3割いることになります。メルマガ配信と組み合わせることで、さらなる顧客との接触に期待できます。

メルマガとの併用とその効果

メッセージの出し分けで、リピート率を大幅改善。LTV向上でECサイトの売上がアップ|LINEビジネス活用公式ガイド 第2版

(株式会社ペンシル調べ)

全体のうちLINEでしか接触できないユーザーが28%存在し、メールと併用すると72%まで接触率が増える(左)。顧客とやりとりを行うまでの引き上げ回数は、LINEのみは4.4回となり、引き上げが早くなる(右)。

また、LINE公式アカウントから配信するメッセージのほうが、メルマガよりも開封率やリンククリック率が高い傾向にあります。株式会社ペンシルの調査では、LINE公式アカウントのメッセージ開封率はメルマガの約6倍である65.5%、本文中のリンククリック率はメルマガの約20倍となる33.2%にも上ります。リピート率の向上に、LINE公式アカウントは欠かせないといえるでしょう。

LINE公式アカウントとメルマガのクリック率の比較

メッセージの出し分けで、リピート率を大幅改善。LTV向上でECサイトの売上がアップ|LINEビジネス活用公式ガイド 第2版

LINE公式アカウントのメッセージは、メルマガに対して開封率では約6倍、本文中のリンククリック率では約20倍もの向上が見られた。LINE公式アカウントとの併用で、さらなる集客効果が見込める。

とはいえ、メッセージの一斉配信ばかりでは、ユーザーからの反応を高められません。そこで活用したいのが、オーディエンス機能によるユーザーの行動や属性に合わせた配信です。特にECサイトでは、LINE公式アカウントの友だち追加をどこから行ったのか(ECサイト内のバナー、SNSの投稿など)によってメッセージを出し分けられる、追加経路オーディエンスの活用がおすすめです。例えば、商品に同梱しているチラシのQRコードから追加したユーザーは「すでに購入している人」、ECサイトのバナーから追加したユーザーは「サイトを訪問している人」と判断し、それぞれに適したメッセージを配信できます。

もう1つやっておきたい施策は、友だち追加からの経過日数などの条件によって、自動的にメッセージを配信するステップ配信です。ECサイトの場合、商品購入の数日後に使い方や使用感について伺うメッセージを配信すれば、ユーザーへのフォローにもなります。このステップ配信でもオーディエンスの活用が可能なので、例えば1週間以内にメッセージ内のリンクをクリックしたユーザーは購入意欲が高いと判断し、その人たちだけに特別なセール情報を配信する、といった施策を行うことが可能です。

LINE広告、LINEミニアプリでさらに効果を拡大

友だちの数を増やすための施策の1つとして、LINEアプリ内に友だち追加を促す広告を出せるLINE広告の「友だち追加」があります。獲得できた分だけの支払いになるので、安価に新規の友だちを獲得できます。

友だちを獲得するための広告は、LINE公式アカウントの管理画面からも設定できます(LINE公式アカウントの「友だち追加広告」)。配信ターゲティングを絞りたいなら、きめ細やかな設定ができるLINE広告の管理画面からの出稿がおすすめです。例えば、ウェブトラフィッオーディエンスを使えば、サイト訪問者に絞った配信が可能です。また、既存顧客のメールアドレスアップロード機能を使えば、既存顧客でLINE公式アカウントの友だちになっていないユーザーに絞って広告を配信できます。

友だち追加を促す広告を出稿する場合は、特典をアピールするのがおすすめで、特に効果があるのがすぐに使える割引クーポンです。友だち追加されたら、前述したステップ配信を使って、数日後にクーポンの使い忘れがないかフォローのメッセージを送りましょう。そうすることで、新規の友だちによる売上アップも見込めます。

さらにLINEを活用したい場合は、LINEミニアプリの導入を検討してください。独自のアプリ開発はコストがかかりますし、なかなかインストールされないという課題がありますが、LINEミニアプリであれば、QRコードを読み込むだけで利用できます。ECサイトや小売では「デジタル会員証」のLINEミニアプリを使って、登録したユーザーのみにクーポンを配信すればリピート購入を促せます。

メッセージの出し分けで、リピート率を大幅改善。LTV向上でECサイトの売上がアップ|LINEビジネス活用公式ガイド 第2版

LINEミニアプリを使えば、LINE上でデジタル会員証を即時発行できる。会員証のバーコードを読み込むことで、ポイントの付与や来店データの記録も可能。LINE公式アカウントのリッチメニュー内やECサイト内に起動リンクを設置したり、小売店内のポスターにQRコードを掲載したりして、ユーザーにデジタル会員証を利用してもらえる工夫をするとよい。

PROFILE

LINE Frontliner 倉橋 美佳 氏|LINEビジネス活用公式ガイド 第2版

倉橋美佳 氏
LINE Frontliner
株式会社ペンシル 代表取締役社長 CEO

株式会社ペンシル入社後、ダイレクトマーケティング支援を得意とし、ECサイトを中心に総合的なWebコンサルティングに従事。LINEを使ったコミュニケーション設計支援や研究事例を持つ。2016年、代表取締役社長に就任。ダイバーシティやDXを軸にグループを牽引。

本コンテンツのご利用について

本コンテンツは、インプレスの書籍『はじめてでもできる! LINEビジネス活用公式ガイド 第2版』を、著者であるLINE株式会社の許諾のもとに無料公開したものです。各サービスの内容は、書籍発行時点(2023年6月)における情報に基づいています。