007 サイト改善の考え方

サイトの質を向上させ、スループットを最適化する

サイト改善のもう1つの方向性として挙げられるのが、サイト内でのコンバージョン率を高める施策です。セッション数あたりのコンバージョンを増加させることから、筆者は「スループットの最適化」と呼んでいます。ECサイトをイメージすると以下のような施策が考えられます。

ランディングページの最適化(LPO)

ユーザーがサイトを訪問して最初に表示するページを「ランディングページ」と呼びます。最適化によって直帰率を下げ、有効訪問数を増やす効果があります。

サイト内検索の最適化

サイト内検索は購入意欲の高いユーザーによく利用されます。最適化によって、商品詳細ページなどのコンバージョンにつながるページへのトラフィックを増やせます。

レコメンデーションの最適化

商品詳細ページなどで、関連商品やおすすめ商品を表示するレコメンデーションを導入している場合、その位置や商品の選択ロジックの最適化によってコンバージョン率を改善できます。

エントリーフォームの最適化(EFO)

ショッピングカートや資料請求フォームの使いやすさを改善できれば、ユーザーのカート完遂率やフォーム完遂率が高まり、結果的にコンバージョン率の向上が見込めます。


少々複雑ですが、以下の表に例を挙げます。これらはサイト全体のトラフィックをランディングページの種類でセグメントし、商品詳細ページ以外へのランディングは、さらにサイト内検索とレコメンデーションの利用有無でセグメントしたものです。

スループットの最適化 実施前

商品詳細ページ
ランディングページ セッション数 直帰率 表示数 表示率
商品詳細ページ 2,000 60.0% 2,000 100.0%
商品詳細ページ以外 8,000 38.0% 3,700 46.0%
(うち、サイト内検索を利用) 1,000 - 300 30.0%
(うち、レコメンデーションを利用) 1,000 - 1,000 100.0%
合計(サイト全体) 10,000 42.0% 5,700 57.0%
カート コンバージョン
ランディングページ 投入数 完遂率 購入数 購入率
商品詳細ページ 300 50.0% 100 5.0%
商品詳細ページ以外 370 50.0% 185 2.3%
(うち、サイト内検索を利用) 240 50.0% 15 1.5%
(うち、レコメンデーションを利用) 30 50.0% 50 5.0%
合計(サイト全体) 570 50.0% 285 2.9%

※横に長い表を2段に分けて掲載しています

このサイトにおけるスループットの最適化のシミュレーションにおいて、実行した施策と改善率は以下の通りです。

1 商品詳細ページ以外のランディングページを最適化し、直帰率を1/2に下げた。
2 サイト内検索のデザインを改善し、利用セッション数を2倍にした。
3 サイト内検索の検索結果を改善し、商品詳細ページへの到達を2倍にした。
4 レコメンデーションの位置と商品の選択ロジックを調整し、利用数を2倍にした。
5 エントリーフォームを最適化し、カートの完遂率を50%から80%に向上させた。

スループットの最適化 実施後

商品詳細ページ
ランディングページ セッション数 直帰率 表示数 表示率
商品詳細ページ 2,000 60.0% 2,000 100.0%
商品詳細ページ以外 8,000 1 19.0% 4,800 60.0%
(うち、サイト内検索を利用) 2 2,000 - 1,200 3 60.0%
(うち、レコメンデーションを利用) 4 2,000 - 2,000 100.0%
合計(サイト全体) 10,000 27.0% 5,700 68.0%
カート コンバージョン
ランディングページ 投入数 完遂率 購入数 購入率
商品詳細ページ 200 5 80.0% 160 8.0%
商品詳細ページ以外 480 5 80.0% 384 4.8%
(うち、サイト内検索を利用) 160 5 80.0% 96 4.8%
(うち、レコメンデーションを利用) 120 5 80.0% 160 8.0%
合計(サイト全体) 680 80.0% 544 5.4%

※横に長い表を2段に分けて掲載しています

すると、サイト全体のセッション数は10,000と変わりませんが、コンバージョン率が2.9%から5.4%に改善し、購入数が285から544に増加します。特定の流入元からのトラフィックのボリュームが増えない場合に有効な手段となるでしょう。

ポイント

  • スループットの最適化は流入元にかかわらず、どのようなトラフィックにも有効です。よって、トラフィック自体を増やす施策に先立って実行するのが合理的となります。
  • 商品詳細ページにおけるカートの投入数(率)を高める施策、いわば「商品詳細ページ最適化」も有効です。写真点数の増加、ユーザーレビューの追加、カート投入ボタンのA/Bテスト、Web接客ツールの導入などが具体的なアクションになります。

トラフィックが増えなくてもコンバージョン数を増やせるのが、スループットの最適化のメリットです。