232 タグマネージャの応用

初回訪問獲得キャンペーンの生涯価値を捕捉する

Googleアナリティクスの多くのレポートでは、コンバージョンがラストクリックに紐付きます。そのため、リスティング広告で初回訪問し、そのあとの自然検索でコンバージョンした場合、コンバージョンを発生させたチャネルは自然検索であり、リスティング広告とはなりません。これではチャネルの評価が適切に行えないため、[マルチチャネル]および[アトリビューション]配下のレポートが登場しました。

それらは優れたレポートであり、重要な知見をもたらしますが、直感的に理解するのは難しい面もあります。そこでおすすめしたいのが、初回訪問時のキャンペーンをカスタムディメンションとして作成し、それぞれのキャンペーンがもたらす価値を継続的に評価する、つまり生涯価値を記録する方法です。具体的には、以下のようにカスタムディメンションの作成とGoogleタグマネージャでの設定を行います。

カスタムディメンションを作成する

Googleアナリティクスで[範囲]をユーザーとしたカスタムディメンションを作成しておきます。ここでは例として、カスタムディメンションの名前を「初回訪問獲得キャンペーン」とし、インデックスには「1」が割り当てられたとします。

URLの変数を作成する

Googleタグマネージャで、種類が[URL]のユーザー定義変数を作成します。要素タイプは[クエリ]、クエリキーは「utm_campaign」とし、この変数にカスタムキャンペーンのパラメータ「utm_campaign」の値が格納されるようにします。作成方法はワザ231で解説したURLの変数と同じです。ここでは変数名を「utm_campaign」と付けたものとします。

ファーストパーティCookieの変数を作成する

続いて、種類が[ファーストパーティCookie]のユーザー定義変数を作成します。Cookie名を「_ga」とし、Googleアナリティクス(ユニバーサルアナリティクス)のCookieである「_ga」の値が格納されるようにします。ここでは変数名を「Cookie_ga」と付けたものとします。

初回訪問獲得キャンペーンの生涯価値を捕捉する - できる逆引き Googleアナリティクス 増補改訂2版

設定内容

変数の種類ファーストパーティCookie
Cookie名_ga

カスタムHTMLタグを作成する

今度はタグを作成し、タグタイプは[カスタムHTML]を選択します。HTMLのフィールドには以下のソースを入力しますが、これは先ほど作成した変数「Cookie_ga」の値からGoogleアナリティクスのCookieの有無を判定し、保有してなければ「new」というイベントを送信する、という意味になります。Cookieを保有していない=初回訪問である、と判定するわけです。このタグはサイト内の全ページで動作させるので、トリガーには[All Pages]を選択します。

<script>
  var TargetCookie = {{Cookie_ga}};
  if (TargetCookie == undefined) {
      dataLayer.push({'event': 'new'});
  }
</script>

2:ユニバーサルアナリティクスが発行するCookie(_ga)の保有状態を判定する。 3:undefined、つまり保有していなければ、 4:Googleタグマネージャに対して初回訪問を示すカスタムイベント「new」を発行する

初回訪問獲得キャンペーンの生涯価値を捕捉する - できる逆引き Googleアナリティクス 増補改訂2版

設定内容

タグタイプカスタムHTML
HTML(上記のコード)

加えて、このカスタムHTMLタグがGoogleアナリティクスの基本ページビュータグよりも先に動作するように設定します。ワザ209で解説したGoogleオプティマイズのタグと同様に、基本ページビュータグの[詳細設定]→[タグの順序付け]を編集し、このタグのほうが先に配信されるようにしましょう。こうすることで、初回訪問ユーザーにGoogleアナリティクスのCookieが付与される前に、Cookieの有無を判定できるようになります。

トリガーを作成する

初回訪問の発生時に発火するトリガーを作成します。種類は[カスタムイベント]を選択し、前述のタグが発生させるカスタムイベント「new」を捕捉するようにします。このトリガーは、次のページで作成するタグで利用します。

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設定内容

トリガーの種類カスタムイベント
イベント名new(作成したタグが発生させるイベント)
このトリガーの発生場所すべてのカスタムイベント

Googleアナリティクスのタグを作成する

初回訪問の発生をイベントとして送信するための、Googleアナリティクスのタグを作成します。ユーザーの初回訪問が発生したときに、インデックスが「1」のカスタムディメンションに変数「utm_campaign」の値をセットします。イベント自体の値はダミーでかまいません。

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設定内容

タグタイプユニバーサルアナリティクス
トラッキングタイプイベント
イベントトラッキングパラメータ(ダミーとして入力)
オーバーライド設定を有効
カスタムディメンション
インデックス 1
ディメンションの値 utm_campaign(作成した変数)

カスタムレポートを作成する

以上のタグを公開したうえで、以下のようなカスタムレポートを作成します。

カスタムレポートの設定内容

要素名内容
種類エクスプローラ
ディメンション初回訪問獲得キャンペーン ※カスタムディメンションとして作成
指標セッション数
トランザクション
収益
eコマースのトランザクション率

このレポートでは「初回訪問獲得キャンペーン」がディメンションとなり、実施したキャンペーンの名前(utm_campaignの値)が項目として表示されます。各指標には、それぞれのキャンペーンで初回訪問したとき以降のデータが蓄積されていきます。

例えば、あるリスティング広告のキャンペーンで初回訪問し、その訪問では購入しなかったユーザーが、そのあとに自然検索から10,000円、さらにメールから20,000円のトランザクションがあった場合、初回訪問を獲得したキャンペーンの収益が30,000円と表示され、生涯価値ベースのROIを把握できます。

キャンペーンをラストクリックベースではなく生涯価値ベースで評価することにより、ビジネスに本当に貢献している施策に予算を投じられます。