089 重要な指標

「1回のセッションあたりの値」を正しく理解する

Web担当者が重視する指標としては直帰率やコンバージョン率が代表的ですが、ビジネスにさらに直結する指標として「1回のセッションあたりの値」という指標があります。ECサイトにとっては最重要と言っていい指標です。eコマーストラッキングを行っている場合に、[参照元/メディア]レポートや[すべてのキャンペーン]レポートなどで指標グループとして[eコマース]を選択すると確認できます。

使用画面集客 > すべてのトラフィック > 参照元/メディア

「1回のセッションあたりの値」を正しく理解する - できる逆引き Googleアナリティクス 増補改訂2版

1回のセッションあたりの値は割り算によって求める指標で、分子となる「値」はeコマースの収益と、完了した目標の値(目標として設定してあるコンバージョン1件の経済的価値)の合計です。分母はセッション数になります。

そして、この指標を用いると「サイトに本当に価値をもたらしているセッションはどれか?」がわかります。例えば、今日、自然検索トラフィックから100セッションあり、100万円の価値が生まれたのであれば、自然検索からの1回のセッションあたりの値は1万円となります。

なぜこの指標が重要かというと、直帰率やコンバージョン率はビジネスに「直結」する指標とは言えないからです。例えば、2つのメールマガジンによる施策の効果測定を行い、次のページのような結果になったとします。

メールマガジンA

セッション数2,000
直帰率20%
コンバージョン数100
コンバージョン率5%

メールマガジンB

セッション数1,000
直帰率80%
コンバージョン数10
コンバージョン率1%

これだけ見ると、誰でもメールマガジンAのほうが優れていると考えるでしょう。一方、このサイトがECサイトだとして、eコマーストラッキングを実装するとともに、コンバージョンから発生した収益と1回のセッションあたりの値を追加してみます。

メールマガジンA(eコマース設定済み)

セッション数2,000
直帰率20%
コンバージョン数100
コンバージョン率5%
収益¥100,000
1回のセッションあたりの値¥50

メールマガジンB(eコマース設定済み)

セッション数1,000
直帰率80%
コンバージョン数10
コンバージョン率1%
収益¥100,000
1回のセッションあたりの値¥100

収益というビジネス上のKGIへの貢献はどちらも10万円ですが、効率性の観点で優れていたのは、実はメールマガジンBであることがわかります。よって、これらのメールマガジンの配信などに費用がかかる場合は、メールマガジンBに多くの予算を割くべき、と判断できます。ほかの実務においても、1回のセッションあたりの値は以下のような分析で効果を発揮します。

  • 自然検索とリスティング広告のセッションの価値を比較する
  • サイトのリニューアル前後のセッションの価値を比較する
  • サイト内検索の利用セッションと非利用セッションの価値を比較する

ポイント

  • 1回のセッションあたりの値は「セッションごとの平均収益額」とも言い換えられます。
  • EC事業者はコンバージョン率ばかりに注目しがちですが、例えばメールマガジンで、単価の低い商品を案内すればコンバージョン率は高くなる傾向になります。メールマガジンの効果測定では、収益に加えて、1回のセッションあたりの値に注目するべきです。

1セッションあたりの価値はビジネスに直結する効率を端的に表すため、ECサイトでは特に重視すべき指標です。