048 拡張eコマースの設定
拡張eコマースで実装するトラッキングコードを理解する
Googleアナリティクスにおいて、ECサイトを分析するためのもっとも詳細なレポートは「拡張eコマース」機能によって有効になります。[コンバージョン]メニューの[eコマース]および[マーケティング]配下に、以下のようなレポートが生成されます。
- ショッピング行動
- 決済行動
- 商品リストの販売状況
- サイト内プロモーション
- オーダークーポン
中でも、特に利用価値が高いのが[ショッピング行動]レポートです。このレポートでは「すべてのセッション」「商品表示が発生したセッション」「カートへの追加が発生したセッション」「決済が発生したセッション」「トランザクションの発生したセッション」の5段階で、ECサイトにおけるセッションをファネルとして描きます。
バージョン > ショッピング行動
さらに、これらのファネルをデバイスカテゴリ、チャネル、参照元、メディア、キャンペーン、商品などに分割して確認することもできます。結果、ファネルのどのステップでユーザーが離脱しているのかがわかり、ECサイトの改善について「いちばん効果が出そうなところに施策を当てる」ヒントとすることができます。
ただし、[ショッピング行動]レポートを生成するためのトラッキングコードの実装には、かなりの工数がかかります。標準的なeコマーストラッキングではトランザクションが発生したゴールページ(サンキューページ)にのみ挿入すればいいトラッキングコードを、商品詳細ページ、カート追加アクション、決済開始ページにも埋め込んでいくイメージです。例えば、商品詳細ページの表示があったことを示すコードの例は、次のページのようになります。
ga('require', 'ec'); ga('ec:addProduct', { 'id': 'P12345', 'name': 'Dekirumon T-Shirt', 'category': 'Apparel/T-Shirts/ShortSleeve', 'brand': 'Impress', 'variant': 'White', }); ga('ec:setAction', 'detail');
1:拡張eコマースの実装に必須のコマンド。最初の行にそのまま入力する
3:ec:addProductコマンド。商品情報の追加の計測を行う
4:id値。引数として、商品IDやSKUなどを指定する
5:name値。商品名などを指定する。4と5のいずれかは必須となる
6:category値。商品カテゴリなどを指定する。「/」で区切って5レベルまで階層化できる
7:brand値。商品ブランドなどを指定する
8:variant値。商品の種類(色など)を指定する
11:ec:setActionコマンド。「detail」(商品詳細ページの表示)というアクションの計測を行う
コードの意味としては、個別の商品が持つ情報とともに、そのページが11行目にある「detail」、つまり商品詳細ページであることを伝える内容になっています。id、name、category、brand、variantなどは当然、商品ごとに変わるので、サーバー側から動的に各ページのHTMLソースに書き出す必要があります。
そして、この商品がカートに入った場合には、11行目を以下のように書き換えます。
ga('ec:setAction', 'add');
ec:setActionコマンド。「add」(カートへの追加)というアクションの計測を行う
最後に、この商品が購入された場合には、商品の価格・個数をec:addProductコマンドにセットします。加えて、トランザクション全体の属性を付与した「purchase」をec:setActionコマンドにセットし、トランザクションの詳細をGoogleアナリティクスに送信します。
ga('ec:addProduct', { 'id': 'P12345', 'name': 'Dekirumon T-Shirt', 'category': 'Apparel/T-Shirts/ShortSleeve', 'brand': 'Impress', 'variant': 'White', 'price': '3000', 'quantity': 1 }); ga('ec:setAction', 'purchase', { 'id': 'T12345', 'affiliation': 'Dekirunet Store - Online', 'revenue': '3540', 'tax': '240', 'shipping': '300', });
7:price値。商品の価格を指定する
8:quantity値。商品の数を指定する
11:ec:setActionコマンド。「purchase」(商品の購入)というアクションの計測を行う
12:id値。注文番号などのユニークな値でトランザクションIDを指定する。この値は必須となる
13:affiliation値。トランザクションが発生したショップやアフィリエイトを指定する
14:revenue値。トランザクションで発生した収益額や販売額を指定する
15:tax値。トランザクションで発生した税額を指定する
16:shipping値。トランザクションで発生した送料を指定する
上記のコードは、もともとのページビューを送信するトラッキングコードの以下の行の間に挿入します。拡張eコマースのコードだけでは、トラッキングビーコンを送信する機能を持たないためです。
ga('create', 'UA-XXXXXXXX-Y', 'auto'); ...... ga('send', 'pageview');
2:拡張eコマースの各コードは、Googleアナリティクスのトラッキングコードのこの位置に挿入する
このように複雑な設定を伴うため、公式ヘルプを参照するとともに、社内のシステム部門やシステムベンダー、タグのカスタマイズに強いコンサルタントなどと相談しながら、実装を進める必要があります。
ポイント
- [ショッピング行動]レポートはデモアカウント(ワザ021を参照)でも確認できます。
拡張eコマースの実装には、相当な工数がかかります。以上の情報を考慮しつつ、システム担当者との調整を図ってください。
本コンテンツは、インプレスの書籍『できる逆引き Googleアナリティクス 増補改訂2版 Web解析の現場で使える実践ワザ 260』を、著者の許諾のもとに無料公開したものです。記事一覧(目次)や「まえがき」は以下のリンクからご覧ください。
- 本書発行時点(2017年11月)の情報に基づいています。
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