208 A/Bテストの実施
オプティマイズによるA/Bテストの進め方を理解する
Googleが提供するA/Bテストツール「Googleオプティマイズ」は、2017年3月から正式版となりました。基本機能は無償で利用できますが、機能制限がなくサポートも受けられる有償の「オプティマイズ360」もあります。ここでは無償のオプティマイズを使って、A/Bテストを実施していく全体像について解説します。
A/Bテストの概要
A/Bテストとは、同一の時期にサイトを訪問したユーザーに対して複数の異なるクリエイティブ(ページのデザインや構成要素、内容など)を提示し、それぞれのコンバージョン率を比較することで、勝者となったクリエイティブを採用するサイト改善手法です。
あるユーザー群には「オリジナルのページ」、別のユーザー群には「オリジナルとは異なるクリエイティブのページ」を閲覧してもらい、「どちらのユーザー群のほうが、より目的の行動を起こしやすいか?」を比較します。その結果に有意な差があると確認できた場合に、勝者のクリエイティブを実際のサイトに反映するわけです。
A/Bテストのイメージ
「同一の時期に」が重要なポイントで、今月はあるクリエイティブ、来月は別のクリエイティブと、時期によってクリエイティブを変えて比較するのは意味がありません。季節性や競合の状況といったクリエイティブ以外の影響を排除できないことに加え、1人のユーザーが両方のクリエイティブを見てしまうなど、正確性を阻害する要素が大きくなるからです。
また、A/Bテストは一般的に、ユーザーのターゲットを絞って実施します。万人にとって最適なクリエイティブを探すのは、現実的ではありません。例えば「新規ユーザー」や「特定のキャンペーンから誘導されたユーザー」、あるいは「特定の国・地域からのユーザー」といったように、特定の状況にあるユーザーにとって最適なページを見つけ出すことをゴールとします。
A/Bテストを繰り返していくと、「どのような状況で訪問したユーザーに、どのようなクリエイティブを見てもらえばコンバージョン率が高まるのか?」という知見が積み重なっていきます。こうした知見は将来的に、サイトを訪問したユーザーの属性や過去の行動にあわせてページを動的に出し分ける「パーソナライズ」の実現にもつながっていくでしょう。
A/Bテストの実施手順
オプティマイズによるA/Bテストの実施手順は、以下の通りとなります。かなりの長丁場となるので、まず全体の流れを理解し、今どの部分の作業をしているのかを把握しながら進めていくことをおすすめします。そうすることで、やり残しも防げるはずです。
①テスト対象ページを特定する
例えば「あるランディングページに特定のキャンペーンから大量のトラフィックが誘導されているが、直帰率が高く、結果としてコンバージョン率が低い」といった、課題となる状況を見つけます。この例では「あるランディングページ」に対して、A/Bテストを実施する価値がありそうです。トップページや最近作った特集ページなど、漫然と決めてはいけません。
②テストの内容を考える
オリジナル(①のページ)に対抗する、別のクリエイティブについて考案します。対象はメインビジュアル、リード文、説明文、Call To Actionに加え、「機能紹介」「ユーザーの声」「今だけ限定」といったページ内の各モジュールの配置順などが考えられるでしょう。ユーザーの期待値を想定し、オリジナルのページがユーザーの期待値に沿っていない理由を熟慮したうえで、それを解決する仮説を立て、別のクリエイティブとして表現していきます。
③オプティマイズのアカウントを開設する
Googleアナリティクスと同じGoogleアカウントですぐに開設できます。③~⑦については、次のワザ209で具体的に解説しています。
④コンテナを作成する
テストを制御するスクリプトを配信する「コンテナ」を作成します。オプティマイズのアカウント開設後に最初のコンテナが自動的に作成されるので、最初のテストでは不要です。2つ目以降のテストを実施する際には、このステップが必要になります。
⑤Googleアナリティクスに接続する
テストのデータを計測し、効果測定を行うため、Googleアナリティクスのプロパティ/ビューとリンクします。テストを実施するページがあるサイトのプロパティと、正しく目標設定がしてあるビューを選択しましょう。
⑥スクリプトを取得する
オプティマイズの管理画面から、「オプティマイズプラグイン」と「ページフリッカー防止コード」を取得します。オプティマイズプラグインは、Googleアナリティクスのトラッキングコードの一部に貼り付ける形で使用します。
ページフリッカーとは、別のクリエイティブ(対抗パターン)が表示される直前に、一瞬だけオリジナルが表示されてページが「ちらつく」現象のことを言います。これを最小限に抑えるためのスクリプトがページフリッカー防止コードです。
⑦テスト対象ページにスクリプトを挿入する
テストを実施するページに、⑥のスクリプトを挿入します。オプティマイズプラグインは必須、ページフリッカー防止コードは推奨です。
⑧Chromeのアドオンをインストールする
オプティマイズには、HTMLソースを直接編集することなく、オリジナルのページから簡単な操作でテスト用のクリエイティブを作成できる「ビジュアルエディタ」が用意されています。これをChromeで動作させるためのアドオン(無料)をインストールします。⑧~⑨については、ワザ210で具体的に解説しています。
⑨テストを作成する
オプティマイズの管理画面でテストを作成します。設定項目は次の通りです。
Googleオプティマイズでのテストの設定項目
設定項目名 | 内容 |
---|---|
名前 | テストを識別するための名前。 |
対象ページ | オリジナルとなるページ。「エディタページ」とも呼ぶ。URLで指定する。 |
種類 | [A/Bテスト][多変量テスト(MVT)][リダイレクトテスト]の3種類から選択する。[A/Bテスト]は正確には「A/B/nテスト」であり、2つ以上のパターンでも実施できる。 |
パターン | オリジナルの対抗となるパターン。仮説を検証できるような画像、テキスト、色などのクリエイティブを投入する。ビジュアルエディタを使用し、オリジナル(テスト対象ページ)を編集する形で作成することもできる。 |
目標 | テストの評価基準となる指標。リンクしたGoogleアナリティクスのビューにある目標の完了数のほか、ページビュー数や直帰数などから選択できる。 |
ターゲット | テストの対象となるユーザー。「セッションの何%をテスト対象とするか?」「テスト対象セッションの何%に対抗パターンを見せるか?」について設定できる。テストが実際のコンバージョンや収益に大きなインパクトをもたらすことがないよう、重要なページはトラフィックを限定して実施するのが望ましい。 |
⑩テストを開始する
オリジナルに対して実際に対抗パターンが表示されるようにし、テストを実施します。テストは「週によるユーザーのサイト利用状況の差異」を検証するため、最低1週間は継続します。
⑪テスト結果を確認する
オリジナルと対抗パターンのページのうち、統計的に見て、どちらがより目的の行動を起こしてもらいやすいかをレポートで確認します。レポートはオプティマイズの管理画面のほか、テストとリンクしたGoogleアナリティクスの[ウェブテスト]レポートでも確認できます。
ポイント
- A/Bテストは1つのプロジェクトと考えましょう。社内の複数人のメンバーが、プロジェクトマネージャーを中心に統一された思考でアクションを起こすことが成功への近道となります。
- テスト対象とすべきページや、ページ内の要素については、オプティマイズの公式ヘルプにも記述があります。参考にするといいでしょう。
サンプルテスト
A/Bテストで成果を出すには、対象ページの特定がまず重要です。「改善に成功したら大きなビジネスインパクトがあるページ」を選びましょう。
本コンテンツは、インプレスの書籍『できる逆引き Googleアナリティクス 増補改訂2版 Web解析の現場で使える実践ワザ 260』を、著者の許諾のもとに無料公開したものです。記事一覧(目次)や「まえがき」は以下のリンクからご覧ください。
- 本書発行時点(2017年11月)の情報に基づいています。
- 本書は2色刷のため、画面はグレースケールとなります。