245 外部ツールの活用
もっとも詳細なサイト利用状況で分析の自由度を高める
Googleアナリティクスが優れたWeb解析ツールであることは疑いようもありませんが、解析ツールの宿命として、データをセグメントごとに「丸めて」レポートを生成してしまいます。しかし、丸めていないデータも実は保持しており、実際に取得することが可能です。ここではGoogleアナリティクスを「データ収集の装置」としてのみ利用し、表やグラフでのビジュアライズはExcelやTableauなどのBIツールで行うための準備と分析例について解説します。
準備①:全ヒットの取得
Googleタグマネージャを利用し、カスタムディメンションに以下のデータを格納します。[範囲]はすべて[ヒット]を選択します。Googleアナリティクスがユーザーを一意に特定するIDである「cid値」(クライアントIDの値)とタイムスタンプを記録することで、すべてのヒットがユニーク化します。セッション中のページカウントは標準では取得できないため、Googleアナリティクスのトラッキングコードをカスタマイズして取得する必要があります。
- cid値
- タイムスタンプ
- リファラー
- セッション中のページカウント
準備②:ディメンションと指標のダウンロード
API経由で以下をエクスポートし、1つのファイルにまとめます。Tableauを利用すると、ファイルをダウンロードしなくても直接接続が可能です。
ディメンション
- cid値
- タイムスタンプ
- リファラー
指標
- セッション中のページカウント
- セッション数
- ページ
以上によって取得したファイルをExcel、または直接接続したTableauなどで分析します。あらゆるセグメントによる分析が可能ですが、以下で解説するような分析はGoogleアナリティクスではできないため、特に有効です。
ただ、このヒットベースデータの分析では2点、注意すべきことがあります。1つは、サイト利用状況の全ヒットを対象とするため、データ量が膨大であること。もう1つは、そもそもGoogleアナリティクスではできない分析を行うため、Googleアナリティクスのレポートと照らしあわせたデータの正確性の「検算」ができないことです。
そのため、最初はあえて小さな、人間でも確認できるボリュームのデータでビジュアライズを行い、正確性を確認したうえで、本番の大きなデータをビジュアライズすることをおすすめします。この手法を筆者は「Small Data Verification」と呼んでいます。
分析例①:ゴールデン導線
仮にサイト全体のコンバージョン率が1%だとすると、100人のユーザーが訪問し、コンバージョンするのは1人という計算になります。Web担当者としては「99人のユーザーはどこで消えてしまったのか?」という気持ちになるでしょう。一方で、仮にコンバージョンしたユーザーが100人いたとして、その半数が通るような「ゴールデン導線」とも言うべきページ遷移があるかもしれません。そのようなニーズに応えるのが、以下のビジュアライズです。
分析例②:コンテンツのアトリビューション分析
Googleアナリティクスの[モデル比較ツール]レポート(ワザ227を参照)では、チャネルごとのアトリビューション分析が行えます。一方、チャネルは問わないが、サイト内の「コンテンツ」に対してアトリビューション分析をしたいニーズもあると思います。例えば、「初回訪問でどのコンテンツを見て、次に、またその次に、どのコンテンツを見たユーザーがコンバージョンしているのか?」という疑問です。
以下はヒットベースデータを基に、コンバージョンしたユーザーの「既訪問回数ごとのページ滞在時間」をビジュアライズしたものです。初回訪問では「a.html」を見てもらうと滞在時間が長くなり、2回目の訪問以降では「e.html」が長くなる、ということがわかり、セッションを重ねるごとに、コンバージョンにつながりやすいコンテンツが変化することが伺えます。
全ヒットの取得と外部ツールの活用は、ある意味、究極的なWeb解析の手法です。あらゆる仮説を柔軟に検証できるでしょう。
本コンテンツは、インプレスの書籍『できる逆引き Googleアナリティクス 増補改訂2版 Web解析の現場で使える実践ワザ 260』を、著者の許諾のもとに無料公開したものです。記事一覧(目次)や「まえがき」は以下のリンクからご覧ください。
- 本書発行時点(2017年11月)の情報に基づいています。
- 本書は2色刷のため、画面はグレースケールとなります。