239 外部データとの連携
Googleアナリティクスを外部データで拡張する
Googleアナリティクスには、自社で任意のデータセットを用意し、それをGoogleアナリティクスのディメンションをキーに「後付け」できる「データインポート」という機能があります。
例えば、トラッキングコードをカスタマイズして会員IDを送信できるようにすると、Googleアナリティクスでは会員IDごとのセッション数、直帰率、コンバージョン率などがわかります。しかし、それ以上のことはわかりません。もちろん、個別の会員IDごとにサイト利用状況がわかるのは有意義なことなのですが、ある会員IDのユーザーがターゲットとする属性なのか、そうではないのかがわからないと、なかなかアクションに結びつかないのも事実です。
こうした場合に、自社が別に持っている会員IDごとの年齢、性別、累計購入金額に基づく顧客ランクなどをインポートすると、会員IDをキーとして、それらの情報とGoogleアナリティクスの指標を紐付けられます。会員の属性ごとに利用状況を把握できるため、「実店舗でよく購入する顧客はネットショップをどのように利用しているのか?」「顧客ランクAの会員はランクBの会員と比較して客単価が高いのか?」といったように、分析の視野を大きく広げられるでしょう。
インポートできるデータセットには、以下の8種類があります。
インポートできるデータセット
データセット名 | 説明 |
---|---|
払い戻しデータ | トランザクションの払い戻しデータ。あるキャンペーンから100万円の売り上げが発生したように見えても、その後、5万円のキャンセルがあった場合、そのキャンペーンの成果は95万円となる。このような注文のキャンセルはリアルタイム処理できないため、データインポートで実現する。 |
ユーザーデータ | 個別のユーザーのデータ。例えば、顧客IDをトラッキングビーコンに載せて送信すれば、CRMシステムが持つ顧客属性をGoogleアナリティクスにアップロードできる。 |
キャンペーンデータ | キャンペーンのデータ。カスタムキャンペーンのパラメータを利用しない(できない)場合でも、キャンペーンのIDさえGoogleアナリティクスに記録されていれば、そのキャンペーンのキャンペーン名、メディア、参照元、キーワードなどの属性を追加できる。 |
地域データ | 地域区分のデータ。自社のビジネスにあった独自の地域を設定したいときに利用する。 |
コンテンツデータ | コンテンツのメタデータ。標準ではページの属性はURLとタイトルしかないが、付加的なデータとしてカテゴリや著者名などをインポートできる。例えば、メディアサイトで著者やライターごとにページビューを評価したいときに利用する。 |
商品データ | 商品のメタデータ。eコマーストラッキングのパラメータとしてはSKUだけ送信することにして実装を簡略化し、その後、データインポートによって商品名やブランド、カテゴリ、金額などを追加できる。 |
カスタムデータ | 既存のディメンションをキーとして、付加的なディメンション情報を送信できる。例えば、セッション数(既訪問回数)でグルーピングし、1回~3回を「ビギナーユーザー」、4回~10回を「標準ユーザー」、10回以上を「常連ユーザー」と分類し、それぞれのセグメントごとにサイト利用状況を可視化するような用途で利用する。 |
費用データ | Google以外のリスティング広告やディスプレイ広告の費用データ。AdWordsはアカウントのリンクで費用データをインポートできるが、ほかの広告サービスについても費用データをインポートすれば、それぞれの広告ごとにROIを可視化できる。 |
データインポートは[管理]画面から行います。新しいデータセットを作成してデータセットの種類を選択し、データセットの名前と適用するビューを選択すると、以下のような画面になります。キーとなるディメンションを選択し、それに紐付けるディメンションを設定すると、データセットの「スキーマ」を取得できるようになります。スキーマを確認すれば必要なデータの列構造がわかるため、それに従って作成したCSVファイルをアップロードします。
管理 > データのインポート
ポイント
- 「払い戻しデータ」「費用データ」以外のデータセットでは、Googleアナリティクスにあるデータとアップロードしたデータが重複している場合に、どちらで上書きするかを選択できます。ただし、Googleアナリティクスのデータを上書きすると元には戻せません。
- 「費用データ」については、既存のデータがあった場合に「上書きする」「加算する」のオプションを選択できます。
- ユーザーの個人情報はアップロードできません。また、期間ディメンション(時間や分など)、地域ディメンション(国や都市など)を拡張するデータもアップロードできません。
- データアップロードは1プロパティあたり50データセットまで、1日のアップロード件数は50件までの制限があります。また、アップロードファイルのサイズは1GBが上限です。
- 何らかの事情でGoogleアナリティクスにデータをインポートできない場合は、Tableau(ワザ244を参照)などの外部ツールを使ってGoogleアナリティクスのデータと外部データを結合すれば、データインポートと同様のことが行なえます。
カスタマイズしたコードの実装が難しい場合でも、データインポートを使えばGoogleアナリティクスに自社のデータを集約できます。
本コンテンツは、インプレスの書籍『できる逆引き Googleアナリティクス 増補改訂2版 Web解析の現場で使える実践ワザ 260』を、著者の許諾のもとに無料公開したものです。記事一覧(目次)や「まえがき」は以下のリンクからご覧ください。
- 本書発行時点(2017年11月)の情報に基づいています。
- 本書は2色刷のため、画面はグレースケールとなります。