242 外部ツールの活用
APIを利用して多ディメンション解析を実施する
サイト改善の方向性の1つに、トラフィックポートフォリオの最適化がありました(ワザ006を参照)。トラフィックを分割してコンバージョン率の高いセグメントを発見し、それを増やすアプローチです。一方、トラフィックを分割するセグメントの軸は、Googleアナリティクスでは通常、プライマリディメンションとセカンダリディメンションの2個、ピボットを利用しても最大3個までです。セグメントが網の目のように細かい、とまでは言えません。セグメントが粗い状態では解析上いくつかの問題がありますが、その例を以下のシナリオで説明します。
①[モバイル]配下の[概要]レポート(プライマリディメンションが[デバイスカテゴリ])で、セカンダリディメンションとして[メディア]を適用してコンバージョン率を比較したところ、パソコンのリスティング広告のコンバージョン率が高いことがわかりました。
②この場合、パソコンユーザー向けのリスティング広告に予算を投じると、サイト全体のコンバージョン率は高くなると推測できます。しかし、実際に実施するとなると対象が広すぎて、かなり効率が悪くなります。
③パソコンユーザー向けのリスティング広告が優秀だとして、さらに新規ユーザーとリピーターに分けるとどうなのか? 首都圏からアクセスしたユーザーと、地方からアクセスしたユーザーに分けるとどうなのか? 平日と休日に分けると? 日中と夜間に分けると? そこにも必ず、コンバージョン率の差があるはずです。
④セグメントの軸を細かくして分析すると、実はコンバージョン率がもっとも高くなるのは、首都圏に住むパソコンユーザーに対して平日の夜間にリスティング広告を掲載した場合、かもしれません。ここまで深掘りできれば、そのセグメントに集中して予算を投入することで効率よくコンバージョン率を高めることができます。
⑤また、「なぜ首都圏のパソコンユーザーが平日の夜間にコンバージョンしてくれるのか?」を考えれば、リスティング広告のキーワードの選定、広告文の作成、ランディングページのコンテンツなどについても、精度の高い仮説を立てられるはずです。
ここまでのシナリオは以下のように図示でき、6軸のセグメントによってコンバージョン率が高まるトラフィック(色の付いた部分)を発見できることになります。このような「多ディメンション解析」によってセグメントの網の目を細かくし、コンバージョン率などの重要指標を比較することは、訪問数の多いサイトで特に有効です。
多ディメンション解析のイメージ
実際に多ディメンション解析を実現するには、APIを経由してGoogleアナリティクスのデータをエクスポートします。その方法には、以下に挙げた4つがあります。
- Googleドライブ(スプレッドシート)のアドオン「Google Analytics」を利用する
- API経由でデータを抽出できるGoogleのアプリ「Query Explorer」を利用する
- アプリ型のツールやExcelのプラグインのようなサードパーティ製ツールを利用する
- Tableauなど、Googleアナリティクスに直接接続できるBIツールを利用する
いずれの方法でも、最大7つのディメンションを適用したデータを取り出すことができます。ただ、取り出したそのままの状態から知見を得るのは難しいため、ExcelのピボットテーブルやBIツールを利用し、表やグラフでのビジュアライズを行っていくことになります。
ポイント
- 「API」(Application Programming Interface)とは、異なるソフトウェアやサービスの間でデータや機能をやりとりするために決められた仕様のことです。
- 訪問数が少ないサイトでは、あまりセグメントを細かくするのはおすすめしません。それぞれのセグメントのトラフィックが少なくなってしまい、高コンバージョンのセグメントを発見し、増やせたとしても、サイト全体へのインパクトは限定されるからです。
APIと聞くと専門的に感じますが、実際にやってみると、それほど難しくはありません。多少の手間はかかりますが、高度な分析には必須です
本コンテンツは、インプレスの書籍『できる逆引き Googleアナリティクス 増補改訂2版 Web解析の現場で使える実践ワザ 260』を、著者の許諾のもとに無料公開したものです。記事一覧(目次)や「まえがき」は以下のリンクからご覧ください。
- 本書発行時点(2017年11月)の情報に基づいています。
- 本書は2色刷のため、画面はグレースケールとなります。